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「ユー様、おはようございます。」
「おはよう、ナビー。」
イベント期間が終わり、いつもの朝がやってきた。いや、イベント期間中も、朝はこんな感じだったか。
そのイベントだが、各サーバーの様子について、まとめウィキに情報が集まってきていた。それによると、俺たちのサーバーは、優秀な成績だったようだ。
一番ヤバいサーバーは、外周のモンスターに街を蹂躙された上に、アンデール登場から1分保たずに人類が全滅したらしい。具体的には以下のような感じだ。
- 戦闘職プレイヤーの大半は、ギリギリまでダンジョンにいたため、街側の準備は全く進んでいなかった。
- 生産職その他は準備を進めていたが、10日目に、アンデールの僕たちに一掃された。
- ダンジョン通いのプレイヤーが戻ってきたら、街は跡地になっていた。
- アンデール戦は、闇フィールドによる消灯空間発生と、秒間3%のスリップダメージ、ついでにモンスターの軍勢に囲まれた状況下で開始。開始5秒で即死したプレイヤーが多発。
- 何とかアンデールの能力を鑑定で来たプレイヤーによると、アンデールの基礎能力が1.5倍、周辺モンスターは2倍まで強化されていた。
また、大半のサーバーでは、物資不足のため、大集団戦で消耗させられ、かなり苦しい戦いであったようだ。それと、混乱や未了をばらまくモンスターがいた影響で、プレイヤーや住民間の連携がうまく行かないケースもあったらしい。
なお、上の結果に至ったサーバーは、「強いモンスターと戦いたい」勢が集まっていたようだ。要は「少々厳しいくらいでちょうど良いから、俺は協力しない!」ということだったらしい。それだけ、ダンジョンでの稼ぎが魅力的でもあったようだ。
そんな結果を確認した後だと、あの参謀ことリョーマは優秀だった。もちろん、彼一人の力ではないし、俺もちょっとは貢献しただろう。だが、彼は「参謀」と呼ばれるだけのことをしたのだから。さすがに、「滅び草の人」みたいな乗りで「参謀」の名は付かないだろう。
「ユーさん、いる?」
宿の個室で思いに耽っていたら、部屋の入口から声がした。アヤの声だ。
俺は、部屋を開けた。
「おはよう。今後の話だったな。」
「うん、そうだよ。イベントも終わっちゃったしね。」
「私もいいかな?」
そして、リーネさんもいたと。まぁほっといても勝手に来るだろうとは思っていたんだが…
「それじゃ今後ことなんだが…」
「うん。私も、ユーさんと一緒にいたいんだ。ダメかな?」
「唐突だな。理由を聞かせてくれ。」
「笑わずに聞いてね。ユーさんやブレイオちゃん、ラフィちゃんと一緒にいると楽しそうなんだ。それと、そろそろ一人で活動するのって難しいのかな?って思って。」
「楽しい… か。あと、雪原にしても大草原にしても、一人で進むのが厳しい時期なのは事実だな。ブレイオやラフィを育てているのはそういう理由だし。」
基本的に、戦闘職が完全なソロで通用するのは、第3マップくらいまでだ。そこから先は、仲間、ゴーレムなど、何らかの手段を駆使して手数を増やしたり、弱点を補ったりする必要がある。俺の場合、技能相性もあって、トマの塔をソロ攻略できたが、ヒマラン大草原ではブレイオと一緒でも躓いたのだ。
「そっか。ブレイオちゃんやラフィちゃんって、そういう感じか。アレ?おくたんちゃんは?」
「おくたんは、仲間ではあるが役割が戦闘じゃないからな。ちなみに、おくたんを戦闘要員に改造する予定は無いぞ。」
「あぁ、そういえば、おくたんちゃん、戦ってなかったね。」
「それで、パーティだったな。俺としては、固定パーティに捕らわれる必要はないと思うが、今まで通り、一緒に活動するのはかまわないと思っているぞ。」
「え?なんで?」
「パーティだと、離れられる距離の制限とか、召喚枠の制限とかが出るからだな。アヤさんだって、自由に見て回りたい時があるだろう?」
「ん?えぇと… あ!そっか。つまり、一緒にいてもいいんだよね?」
今更だが、このゲームの1パーティの枠上限は、ゴーレムや召喚モンスターも含めて6枠だ。ただし、召喚獣やゴーレムは、2対目以降からパーティ枠にカウントされるようになっている。このため、6人で召喚モンスターやゴーレムを6対従えて12人パーティを組むことは可能だ。
この仕様であるため、「ユー、おくたん、ブレイオ、ラフィ、リーネ、アヤ、フリーン、ルナー」というパーティはセーフだ。俺が連れているおくたん、及び、アヤが連れているフリーンがパーティ枠から外されるからだ。
なお、以前 N3 で共闘した拳士集団「スピリットフォース」時は、俺はおくたんを召喚しないことで、「俺+ブレイオ、拳士5人」が成立した。それと、 E6 でラフィを再生した時、あの場には「ユー、ブレイオ、ラフィ、カナミー、ルーウェン、リーネ、カイム」がいたので、枠としてはギリギリだった。アステリアがあそこにいたら、枠の都合で誰かに離れてもらう必要があっただろう。
なお、召喚士などの使役職であれば、パーティ枠を超えて召喚できるようになる。「印術」でも召喚を扱うので、アヤもたぶん持っている… はずである。いや、レベルが足りてなくて持ってないかもしれない…
「やっぱり一緒になったか。まぁ、反対する理由は私には無いからかまわないんだけれど。」
「その話だと、リーネさんも、まだ一緒に活動するでいいのか?」
「えぇ~!ひどくない?お姉さん、ユーさんたちにこんなに尽くしてるんだよ?」
「当初の目的が、強くなるために、理がある時には一緒に活動する、という話だったからだな。もちろん、一緒にいてくれると俺としては助かる。だが、リーネさんだって、やりたいことはあるだろう?」
「アハハ、ユーさん、相変わらずその辺しっかりしてるよね。ユーさんと一緒にいる方がお得みたいだから、これからも一緒がいいな。私一人だと、あんな体験はできなかっただろうし。」
ということで、パーティは継続されることになった。では、次に今後の予定を話し合おう。
「俺としては、途中になっているナザ島の地下迷宮の攻略か、雪原の街への到達を目指したい。本当は西の開拓を進めたいんだが、どうも、始まりの街が混雑しているようでな。」
「私は、ヒマラン大草原か、雪原の街に行ってみたいな。ラフィちゃんの召喚石って興味あるんだ。あと、西だっけ?私も行ったこと無いよ。」
「私は二人に従うよ。あまり探索していないのは北だから、雪原超えには興味があるね。あとは、行ったことのないダンジョンがあればうれしいかな?」
まずは、希望を率直に出し合ってみた。結果、優先度が高いのは北マップのようだ。
「だが、そうか。召喚石を何とかしたいなら、先に東が良いかもな。その後、召喚に必要な素材を見繕って、西の開拓のついでに育成… というのでどうだ?」
「なるほど。確かに、理に適ってるね。さりげなく、カイムにお願いする前提になっているけれど。」
「まぁ、そうだな。そこはカイムさんに助力を願うことになるだろう。あるいは、アインステーフに、それっぽい人がいるかもな。あそこ、悪魔がワラワラ出てきたのだから。」
「ん?言われてみると、まだ何かあるかもしれないね。未探査の場所もあったし、行ってみるのも良いかな。」
「えっと… ユーさん、リーネさん。協力してくれるのはうれしいんだけれど、いいの?」
「かまわないぞ。草原なら、強くなったブレイオとラフィの試運転もできる。素材集めなら、ナザ島の地下迷宮や、ホムクの試練洞窟の氷帝は一考の余地がある。地下迷宮のエクストラが不明だから、そっちを探すのもありかもしれないが…」
「私もかまわないよ。西の開拓をしたいなら、その手順が妥当だと思うし。」
「ところでアヤさんは、召喚枠を増やす技というのは持っているんだよな?」
「ん?枠を増やす?よくわからない。」
「えっと、召喚枠拡張とかだな。要は、印術でたくさん召喚できるようになる技になる。」
「え?あぁ、そういうことなら、持ってるよ。 召喚枠拡張1 だね。同時召喚できるモンスターの制限を緩和する、って書いてあったよ。」
とりあえず、アヤが新たな召喚石を入手しても、「枠が足りなくて召喚できない」という悲劇は防がれたようだ。ただし、召喚石のモンスターを呼び出すと、それで枠が埋まってしまうので、印術による召喚ができなくなってしまうだろう。
「え?あ、そっか。どうしよう?印術使えなくなっちゃうのかな?」
「印術のレベル上げだな。 召喚枠拡張1 という表記なら、成長して 2 とか 3 になれば解決するはずだ。」
「あぁ、なるほど。よかった~。アレ?ユーさんは、どうにもならないの?」
「俺は召喚系の職業じゃないから、その辺りの自由が効かなくてな。とりあえず、枠が足りない時はおくたんなどを送還するぞ。」
こうして、少々の不安要素はあるものの、これからの活動方針が決まった。
その後、必要な補充を済ませて、俺たちはヒマラン大草原に向かった。なお、現在の俺のインベントリーは以下の通りだ。
インベントリー (通常アイテム):
ポーション X 15
MPポーション X 15
ハイポーション X 5 (緊急用)
ハイMPポーション X 5 (緊急用)
ミストポーション X 5 (パーティ回復効果がある。緊急用。)
毒消しポーション X 9
安定ポーション X 9
魔払いポーション X 9
復活薬 X 3 (主にアヤの事故死対策)
テント X 3
煙玉 X 3
松明 X 9
魔除けの葉 X 100
脱出の札 X 3
修復効果付き魔引板 X 4
作業用手袋 X 6
布マスク X 9
水中花のタオル X 6
木製テーブル&チェアセット (6人用) X 1 (椅子の増加に合わせて買い替え)
盛り土用砂入り袋 X 15 (ラフィが加わったので増やした)
滑雪そり(小型) X 2 (評判が良かったので増やした)
高級携帯食 X 9
おにぎり X 6
串焼き X 12
ドライフルーツ X 6
炭酸ジュース X 6
ブレンド茶ば X 12
浄水筒(中) X 1 (ラフィも加わったので1ランク大きくした)
冷却コップ X 3
発熱コップ X 3
ダンジョン発見機 X 1
インベントリー (貴重品):
冒険者証 X 1
旅人の鍵 X 1
ゴーレムコントローラー (おくたん) X 1
解放の証 (視覚) X 1
契約の証 (ブレイオ) X 1
契約の証 (ラフィ) X 1
インベントリー (装備品):
魔弾鋼のナックル X 1
防雪手袋 X 1
白木の杖 X 3 (使い勝手が良いので予備もこっちに移した)
耐海武術着 X 3 (ラフィが増えたので)
魔樹綿の帽子 X 1
銀編の魔布帽子 X 1 (適宜、魔界の黒帯と入れ替える)
防風のマント X 1
スパイクブーツ X 1
致命の指輪 X 1
輝印石の腕輪 X 1
経験の腕輪 X 1