14-01 朝食しながら予定を決める

改定:

本文

「ユー様、おはようございます。」

「おはよう、ナビー。今日は、二人と合流して街を観光するぞ。そのために、まずは冒険者ギルドに行きたいぞ。」

「了解しました。まずは宿から出ます。こっちです。」

昨日は、時間が遅かったこともあり、最短距離で商業都市ウェビンの宿に入った。まぁ第3マップの街なので、やるべきことをこなしたら、さっさと第4マップへ向かうのもありかな?と考えている。

とりあえず、宿の入口でアヤたちと合流することになっているので、そこへ向かうことにした。

「あ、ユーさん、おはよう。」

「ん?アヤさんか。早いな。」

「うん?さっき来た所だよ。昨日は迷惑かけちゃったね。」

「今が大丈夫なら問題無いぞ。どうせ、昨日は夜も遅かったから、結果がどうあれ、宿に直行しないといけなかったからな。」

そして、入り口まで来るとアヤと遭遇した。とりあえず、変な技能は生えていないようだ。

「それで、今日はこれからどうする?」

「とりあえず飯だな。ここには食堂は無いし、満腹度がピンチだと思うぞ。」

「え?あ!本当だ!何か食べないと…3%しか無いよ!」

「お、二人とも早いね。それで、ご飯だっけ?隣にレストランがあるよ。」

「ん?朝から入れるのか?」

「たぶんね。行ってみようよ。」

リーネさんも出てきたようだ。そして、隣にレストランがあるらしい。

(ナビー。隣にレストランがあるそうだが、わかるか?)

(はい。この宿へ向かう道中で視認しています。入口へ先導可能です。)

幸い、昨日、宿に連れて来られる過程でナビーの視界にも入っていたようだ。これなら、地図のアップデートができていない現状でも何とかなるだろう。

(宿の出口はこっちです。)

(レストランはこっちです。)

(レストランに到着しました。入口は閉じています。こっちです。)

宿から外に出て、ナビーの先導に従い歩くと、程なくして目的のレストランに到着。そのまま案内させ、入り口に向かった。

杖で触れた入口は木製の扉になっていて、押すと普通に開いた。ドアノブはあったが、ひねる必要は無かった。いわゆる、重さで勝手に閉じるタイプの扉なようだ。

そのまま、ナビーの先導に従いカウンターへ向かった。

「いらっしゃいませ。お食事ですか?お持ち帰りですか?」

「6人席を一つ。で、食事だな。従魔がいるんだ。」

「あぁ、了解しました。えっと、席へのご案内は…」

「あぁ。私が連れて行くよ。空いてる所にてきとうに座っていいかな?」

「あ、はい。了解しました。って、え?リーネちゃん?」

どうやら、リーネさんの知り合いが働いているお店なようだ。

「あぁ、今は冒険者に戻ってるんだよ。で、席いいかな?」

「あ、はい。もちろんです。」

その後、俺たちは着席。そして、朝食を食べながら、今後の話をすることにした。

なお、食べているものは全員同じ、ピザトーストのように具が挟み込まれたパンと、野菜がゴロゴロ入ったスープだ。朝食っぽい感じではあるが、夕食を食べていなかったので、けっこうガッツリした食事にしている。

「わぁ、あっさりしていて食べやすいね。」

「だな。量はあっさりじゃないが、くどさを感じないから、モリモリ食べられそうだ。」

「うん、私たち、夕食を食べていなかったもんね。これくらい食べないと、お昼まで保たないか。」

「あ、ホットケーキっぽいのもある。食べちゃおうかな…」

「俺は満腹度的に大丈夫だが、二人は食べて良いと思うぞ。」

「ユー。アヤのそれ、食べてみたい。」

そして、ホットケーキなんてものもあるらしい。ラフィが反応したのは、「甘くて柔らかい物」だからだろう。

かまわないので、ラフィの分も注文してもらった。

「メイレン。美味しいと思う物はあった?」

「うん。スープ、美味しい。野菜が元気。」

「野菜か~。みずみずしい感じが好きなのかな?」

アヤはメイレンと何度か食事もしているらしい。それでわかってきたこととして、メイレンは、新鮮な野菜を使った料理が好みであるようだ。

検証によって、妖精種は「自然と同調する」という設定のためか、野菜を好む傾向があることが知られている。メイレンもそれに準じているようだが、それに加えて、「新鮮」という条件もありそうだ。

「ブレイオはどうだ?刺激は少ないだろうけれど。」

「問題無い。これも美味い。」

ブレイオはいつも通り、普通なようだ。まずいとか嫌いとかが無いのは幸いである。

「ところで、これからどうするのかな?」

「俺がやりたいのは、ギルドでいくつか依頼を受けることだな。あとは、せっかくの商業都市だから、掘り出し物探しはしたいぞ。」

「あ、街中を見て回るの、私も行きたいよ。あと、メイレンと洗浄だっけ?その依頼もやろうと思うんだ。」

「なるほどなるほど。二人がしばらく滞在するなら、私もギルドに通おうかな?」

リーネさんは、またギルド職員のお世話でもするのだろうか… まぁ、迷惑にならないならかまわないか。

「あとは、荒野のダンジョン探しか。優先度はそんなに高くないけれど。」

「ユーさん、けっこうダンジョン入ってるよね?まだ行くの?」

「ダンジョンでしか得られない物はいっぱいあるからな。小さな積み重ねではあるが、積もれば山になるぞ。」

「ユーさんが言うと、本当そう思うよ。初めてソルットで出会った時と、強さの次元が違っちゃっているからね。」

とりあえず、特に反対も出なかったので、都合が良い時には一緒に行動しつつ、ウェビンで観光や依頼をこなす、ということになった。

「あ、ケーキ来たよ!」

そこへ、例のホットケーキが到着したようだ。なお、結局俺も食べることになったので、ブレイオの分も含めて6つ注文してあった。

「あ、ユーさん。中心にバター乗ってるし、カラメルっぽいのが付いてる!私が小さく切ろうか?」

「なるほど。そういう系か。なら、すまないが切ってもらえると助かる。」

どうやら、カフェなどで出てくるスイーツ仕様のパンケーキが出てきたようだ。

あれ、盲人がそのまま食べようとすると事故が起こるものである。というのも、バターやカラメルが偏ったり、うまく切れなかったりして、結局、食べる時にベッチャベチャになることが多いからだ。まぁ、洗うなり拭き取るなりすれば良いのだから、一人、あるいは同胞とだけで食べる時には気にする必要が無いものだが…

「うん、できた。これなら大丈夫かな?」

「わ!あや、凄い。キレイ!」

「そうだね。切り分けたのに飾り付けられたみたいになってるよ。」

「うん。こういうの楽しいんだ。もしかして、みんなのも切ったがいいかな?」

その後、アヤは全員のケーキを同じように小さく切り分けていた。リーネさんのまで切り分けていた辺り、いわゆる女子力… というより、そういう飾り付けっぽいことが好きなんだろう。

「ん。柔らかい!ふわふわ!」

「小さく切り分けられたのに、しっかりふんわりしているなんて、さすがだね。」

「うん、美味しい。ほんわかするよ。」

「ん。アヤ。私も切り方覚えたい。」

「いいよ。今度、一緒に練習しようよ。」

女性陣… いや、ラフィはちょっと違うかもしれないが、とりあえず3人の感想はこんな内容だった。そして、ラフィが画家技能に目覚めてしまうのか… まぁ、本人が望むなら止めはしないが。

「温かくて甘い。ケーキ、美味しい。」

「カラメルとバター入りと聞いたが、そんなにたっぷりかかっている感じではなかったか。まぁ、甘ったるいと胃もたれするし、朝食だからこんなものか。」

「ん?主人。ケーキとやらを朝から食すのは難しいのか?」

「いや、異界の話だな。そうか。こっちだと、胃もたれなんてなかったか。」

どうやら、今食べている物が現実の朝食に近似していたため、錯覚をしてしまったようだ。この世界は、朝から焼き肉を食べても、体がどうにかなることは無い。他種族混在の世界なので、「必要なもの、食べられるもの、食べたいものを食べるのが当たり前」な世界だ。

その後、朝食を終えた俺たちは、まず冒険者ギルドへ向かうことにした。依頼を確認した上で、やりたいことをやろう、といった感じだ。