1-5 チュートリアル後半、盲人旅行の必須アイテム

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「始まりの街に入りました」

とりあえず街に入った。

「ナビー、チュートリアルの途中で悪いが、先に白杖が欲しい。」

「白杖、それは盲人などが持つ杖ですか?」

「その通り。この街で買えるか?無いなら、1.3メートルくらいの普通の杖でいい。戦闘用じゃないから、木の棒でもいい。」

「雑貨屋、または武器屋での確認が必要です。」

「わかった。じゃ、まずは雑貨屋に向かいたい。さっきまでと同じように先導してくれ。」

「了解しました。雑貨屋はこっちにあります。」

ということで、ナビーに従って雑貨屋を目指す。

ナビーが、街中でも目的地を指示すれば先導してくれることは確認済みだ。そして、街にどんな施設があるかは、ウィキで調べてあるし、聞けば教えてもくれる。

ただし、まだ杖が無いので前方注意。

手の甲を前に向けて垂らし、すり足気味に歩く。こうすれば、ぶつかるとすれば手になる。すり足にすれば、段差に引っかかるリスクも少ない。

この歩き方、合理的なので現実でも普通にやるのだが、とあるゲームで遭遇するゾンビの姿勢そのままらしい。まぁ、やらないとゾンビを通り越してスプラッタになりかねないので止めるつもりは無いが。

幸い、あまり人が徘徊していないのか、避けてくれるのか知らないが、ぶつかることはなく雑貨屋まで行きついた。例のゾンビウォークのせいでないと祈りたい。

まとめウィキによると、過去の出来事として、種族をスケルトンにして街中を徘徊していたら、浄化をくらったという話もあった。今それが来ないということは、問題は無いのだろう。

そんなことを考えながら歩いて…

「ここが雑貨屋の建物です。」

着いたらしい。

「なるほど。店の中へ入るから先導してくれ。」

「わかりました。入り口はこっちです。」

ナビーは、普通に入り口も建物の中も導いてくれる。扉や壁はすり抜けるので、こっちで開け閉めする必要はあるが、逆に言うと建物の中もしっかり着いてきてくれる。もちろん、最短距離で壁を通り抜けるみたいなおかしなことはしないぞ。

で、扉があると思って手を出していたのだが、そのまま建物の中っぽい空気になってしまった。開けっぱなしだったのだろうか?

「いらっしゃい。」

奥からおばちゃんっぽい声がする。店主で良さそうだ。

「どうも。ここで白い杖、盲人用の杖は売っているか?」

とりあえず立ち止まって聞いてみる。

「ん?盲人の杖かい?白くは無いが、盲人が使っている杖ならあるよ。」

「なるほど。杖を確認させてもらいたい。」

「ということは、あんたが盲人かい。持ってくるから、そこで待ってな。」

まとめウィキの「世界設定」のページの一つに、このゲームに、盲人がそれなりの数登場することが記されている。

これは、ゲーム内の種族が多様なことに起因している。例えば、盲人である代わりに、土に干渉して、地上または地中にある物体の状態を寒波できる「土竜人種」という種族がいる。プレイヤーもこれになることができる。

なお、プレイヤーに関わる盲人NPCも確認されている。心眼や聴力系の特殊技能を取得する際に登場する。目隠しをしたプレイヤーを助けてくれるらしい。

ということで、盲人用の杖の一つくらいあるんじゃないか?ということで聞いてみたら、あるようだ。無くても、丈夫なただの杖を使う予定ではある。

「杖はこれとこれだね。握ってみな。」

杖を握らせてもらえたので、振ってみる。

普通の杖だが、使い勝手は悪くない。

両方を触鑑定してみる。

柔木の杖

種別: 素材・木材

説明: 杖状に加工された木材。よくしなるため体を支えたり武器にしたりすることには向かないが、折れにくい。

価格: 400p

樫の杖

種別: 武器・杖

説明: 初心者用の攻撃杖。杖技能が使用可能。

価格: 700p

杖技能とは、杖やメイスのような武器を用いた技能だ。強烈なスウィングで薙ぎ払ったり、刺突を繰り出したりできる。なお杖は魔法の触媒にもなるため、そっち方面の技能も一部含まれている。

「柔木の杖は良いな。だが、杖じゃなく素材?それに、素材のわりに価格が高いな。」

「あぁ、柔木の杖ね。魔法の宝玉を付ける前のものだからさ。隣の村から仕入れたものだよ。」

なるほど。武器としては未完成だから、ゲーム的には「素材」なのか。そして、隣の村というと、第2マップの素材になるから、割高なのか。

とりあえず両方を購入しておくとしよう。

「なるほど。では、この杖を2本とも購入したい。1100pだ。」

「ん?2本かい?」

「あぁ。両方とも初めて使うから、一本は道中で折れた時の予備だな。」

白杖とは、折れる時には折れる物。故に、可能なら複数本を持ち歩くことが望ましい。

現実だと、杖のように長い物を2本も持ち歩くのは厳しいため、ヌンチャクや如意棒のように、縮められる杖を持ち歩くものだ。だが、この世界では、アイテムがメニュー一発で出し入れできるので、普通の杖でも持ち運びが容易だ。むしろ、戦闘中は杖は収納するだろう。

「なるほどね。まぁ、買うって言うならどっちでもいいさね。それと、ちょっと待ってな。」

そう言うと、おばちゃんは杖を回収して、離れていった。

奥の方で何かをしているような音がした。

「ほれ。杖先をちょっと加工しといたよ。」

戻ってきたおばちゃんから杖を手渡された。

白杖は、地面を滑らせるもの。そのためか、滑りやすくなるようにしてくれたらしい。

「おぉ。確かによく滑るな。これはありがたい。感謝する。」

「何。さっき、あんたが振っているのを見たからね。」

このおばちゃん、やるな。杖先を観察していたようだ。

さっそく、購入した柔木の杖を振りながら店を後にする。

うん、現実でやっているのと変わらないが、外を歩くときに杖があるとやっぱり安心だな。

「ナビー。チュートリアルに戻りたい。」

「わかりました。では、最後のチュートリアル、冒険者ギルドでの登録を行ないます。」

「おぅ。じゃ、冒険者ギルドへの先導をしてくれ。方法はさっきと同じで良い。」

「わかりました。冒険者ギルドは、こっちになります。」

というわけで、ナビーの声に導かれるままに歩く。

杖はもちろんふりふりする。前方が確認できるようになったので、足取りは少し軽くなった。街の外ならもっと堂々と歩けるだろう。

なお、街中だと歩きスマホしているプレイヤーもいる。正確には、歩きながらステータスやアイテムの整理をしているため、前方をちゃんと見ていないのだ。動画でもぶつかっている人が何人かいた。

そういう人は、この杖が原因で転ぶこともあるかもしれない。だが、視覚があるくせに前方不注意している方が悪いので、こっちは堂々としていて良い。現実でもそうだが、どうしようもないことだ。

ナビーに導かれ、歩いたり角を曲がったりを繰り返してしばらく…

「冒険者ギルドに到着しました。」

ついにギルドに到着したようだ。

「わかった。このまま入るから受付まで先導してくれ。」

「了解しました。入口はこっちです。」

ナビーの先導に従い進むと、杖がぶつかった。扉らしい。

動画によると扉は引き戸らしかったので、取っ手を探して横に引っぱる。

開いたのでそのまま中へ

「私の声の所まで直進して下さい。」

さらに言われるがままに直進。受付カウンターらしき物体に杖がぶつかった。

「え?こ こんにちわ。こちら、冒険者ギルドです。」

遠くから声がした。女性のようだが、驚いているような印象だ。

ここは受付だと思うが、盲人がこんなところに何しに来たんだ?といった所だろうか?

とりあえず、こっちの用事を進めよう。

「冒険者登録をお願いしたい。」

「冒険者登録ですか?えっと…」

「今はできないのか?」

「いえ、そんなことはありません。では、この水晶に触れて下さい。」

そう言いながら、職員は何かを机の上に置いた。確か手で握れば良いのだったか。

「あ、そっちじゃないです。手、持ちますね。こっちこっち。」

手があらぬ方向に向いていたらしく、無理やり運ばれた。

これは運んでもらった方が良いな。変に手が引っかかって、乗っているものが飛んでいったら面倒だ。現実でも、いろんなものが飛んでいく。

ふと思ったのだが、レベルが低いとはいえ現在は武僧に就き、体術系の技能を獲得している。いずれは、軽く引っかけたものが、ギャグアニメみたいにぶっ飛ぶこともあるかもしれない。

「そのまま水晶を握ってください。」

そんなことを思いつつ、受付の指示に従い、ガラス玉のような物体に手を重ねる。

「はい。登録完了です。冒険者証はこちらになります。」

しばらくすると、そう言われた。確か、動画でも音はしていなかったので、微かに光る… みたいな反応があったのだろう。

そして、「冒険者証」という物体を手に乗せられた。人によっては、胸に付けたり、首から下げたりするらしい。が、表示される情報はステータスからも見られるそうなので、さっさとしまってしまう。

ただ、一応触鑑定はしておこう。

名前: ユー

職業: 武僧

冒険者: ランクF

貢献度: 0/10

受注クエスト:

なし

まとめウィキには、以下に挙げる要約が掲載されていた。

「今日は助かった。」

「はい。ランクアップに向けて、努力されることを希望します。」

受付は終了した。盲人なのでどうこたえるか迷った様子だったが、とりあえず定型句を述べた感じなようだ。ここに一人で来ている時点で、それで問題無いのだ。

「称号 異界の旅人 を獲得しました。」

そして、プレイヤーがチュートリアルを終了すると獲得できる、そのまんまな称号が手に入った。