2-6 畑を荒らすゴブリンを駆逐せよ

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「おーい、そこのあんた!助けてくれ!」

朝に会った農家さんっぽい声がした。

「どうかしたのか!」

とりあえず声をあげて返答してみる。

「ゴブリンの群れがこっちに来ているんだ。一緒に戦ってくれるか!」

確か、畑エリアをウロウロしていると、かなり低い確率だが、そういうイベントがあるとまとめウィキにあったな。

一緒に戦うと言うが、これを承諾すると、なぜかモンスターがこっちに狙いを定めてくる。故に、MPKの一つとも言われていた。

MPKとは、大量のモンスターを引き連れて相手に接近、そいつに擦り付けて、モンスターに相手を狩らせる手法のことだ。正面からの勝負では勝てない相手や、PK行為ができないゲームで、どうしても倒したいプレイヤーがいる時に行われることがある。

今回の場合、住民がモンスターを引き連れて、こっちに擦り付けようとしている状態だ。クエスト扱いなので、倒せるなら褒章はもらえるが、モンスター多数を同時に相手するので、初心者が安易に受けてはいけない、とウィキではまとめられていた。

ただし、今回の場合、ゴブリンの数は多くても15匹くらいだ。また、統制も無く、間隔もそれなりに開いているので、滞りなく処理できるなら、2~3対1を数回… といった難易度に落ち着く。

故に、モンスターを引き寄せて集団にまとめる手法「モンスタートレイン」の考え方やリスクを学べるイベントとも言われている。MPK自体はプレイヤーを倒すために行われるが、モンスタートレインは、狩の手段として自ら行なう場合もあるのだ。

持ち物、残MPなどを確認する。

結果、MPは70%ほどだった。今のレベルなら、ゴブリンは掴んでからの強撃で一撃なので、そんなに消費しないだろう。

ちょうど良いか。午前中の成果は微妙だったし、失敗しても失うものもほとんど無いな。なら、やろうか。

「わかった。ゴブリンをこっちに回してくれ!」

ということで受諾。

「突発クエスト 畑を荒らすゴブリンを駆逐せよ が開始されました。」

畑を荒らすゴブリンを駆逐せよ:

種別: 突発クエスト、戦闘クエスト

依頼主: 農家の男

内容: 向かってくるゴブリンを殲滅する。

報酬: 薬品アイテム10種、NPC好感度上昇

納期: なし

注意: 自身が死亡するとクエスト失敗となる。

「すまねぇ。俺はあっちのゴブリンを倒す。あんたは、この辺のゴブリンを頼む!」

農家さんは、そんなことを言いながら、俺の前を通り過ぎていった。

これにより、ゴブリンのターゲットは農家さんから俺に切り替わっただろう。それは良いのだが…

「ナビー。ここって、畑を挟んだ場所だよな?」

「はい。今ユー様の正面に畑がありますよ。」

「だよな。ここまでゴブリンが来ている時点で、いろいろまずい気がするんだ。その辺りってどう思うよ?」

「私にはわかりません。ただ、ゴブリンは生物を見つけると、そちらを優先的に襲う性質があります。このため、ユー様が発見されているなら、畑が荒らされる可能性は低いでしょう。」

とりあえず、畑の近くで戦闘しても問題は無いらしい。なら、ここで待ち受けるとしよう。

通常のプレイヤーなら、囲まれることや、回避などを見据えた動きやすさを優先するため、少なくともここからは離れるべきだろう。しかし、俺は待ち狩スタイル。後ろが水場なら、ゴブリンに回り込まれることも無いので、ここで迎え撃つのが得策だろう。

そんなことを考えていると、ゴブリンの鳴き声が近づいてきた。

「ギャギャーッ!」

「ギャッギャッ!」

「ギャーッギャーッ!」

2匹?3匹?とりあえず1匹ではないな。まぁどちらでも良いか。

そのまま構えていると、上から何かぶつかってきた。棍棒だろう。

位置がわかったので接近し掴み、魔拳を乗せて強撃!

「ギャーッ!」

ゴブリンは、吹っ飛んで一撃で倒れた。レベルアップの恩恵もあるが、魔拳を加えることで火力を増した形。

続いて、横から何かがぶつかった。ゴブリンの拳だったようだ。

至近距離にいるなら、掴んで足払いで転ばせる。そして、上から強撃を打ち下ろして倒す。

3匹目は… いないのか?それとも、怖気づいたか… たぶん、いなかったのだろう。

このペースなら問題無いな。一匹ずつ一撃で狩るとしよう。

そんな戦いが4匹ほど続いたが、次に来たのは複数だった。

正面のゴブリンを掴んだ時、隣から攻撃を受けた。だが、その程度問題なし。

まずは掴んだゴブリンを吹っ飛ばす。その後、再び横からの攻撃を受け、位置を把握。掴んで足払いからの強撃だ!

その後、また単体ゴブリンが続いた。3匹ほどだっただろうか?

最後に、ちょっと大きな足音がする。農家のおっちゃんか?

「グギャッギャー!」

違うようだ。農家のおっちゃんはそんな声では泣かない… はず、たぶん。

とりあえず様子を見ていると、何かが首にぶつかろうとして、跳ね返った。首狙いの攻撃だったのだろうが、残念だな。

位置が特定できたので、掴みかかり、強撃を打ち込む。

「グギャーッ!」

一撃では落ちなかった。やはりゴブリンとは違うようだ。

確かゴブリンの上位種は、ソードゴブリンやゴブリンメイジのような、職に就いているゴブリンっぽい感じだっただろうか。あとはホブゴブリンか?

「グギャーッ!」

考えていたら、叫びながら突っ込んできた。声のおかげで、動きはだいたいはっきりしているな。

俺は、魔拳からの強撃で迎え撃つ。

「グ グギャー!」

こっちの力勝ちだったらしく、敵はノックバックして倒れたようだ。

近づき、足で触れている状態にして、再び強撃の準備。ついでに、空いている手で触れ、触鑑定する。

ゴブリンファイター:

Lv: 5

種別: モンスター、ア人

HP: 19%

状態: 敵対、怯み

説明: 戦士として覚醒したゴブリン。より強い武器を求めて旅人を襲うことが多い。筋力に優れ、大剣や大斧、槍などでも片手で振り回せる。

やはり上位種だった。しかも、S2 ミーミ平原でも強い方のモンスターである。

でも、さようなら。残りHPも少ないし、怯んでいる内に倒すに限る。

強撃を打ち下ろすと、いつものエフェクト音が聞こえた。

「ゴブリンファイターを倒した。経験値41を獲得しました。」

「レベル6に上がりました。」

「イベント: 畑を荒らすゴブリンを駆逐せよ をクリアしました。」

「技能 逆境を超える心 を獲得しました」

こうして、結局、15匹近いゴブリンを殲滅することができた。

なお、防具をしっかり整えていたこともあり、残HPは癒気で回復しつつ60%だった。

ゴブリンファイターの攻撃は、ゴブリンよりは重かった。が、耐えられないほどではなかったな。

それはそうと、珍しい技能が出た。

逆境を超える心:

効果: 厳しい戦闘条件である時に、HP、MPの自動回復を促進

どうも、いろいろな偶然が重なったようだ。

イベント戦のため逃げられない。後ろが水場なので自由にも動けない。前方にゴブリンの群れ。一人。レベル差がそんなに開いていない。

ということで取得できたらしい。これ、抜け道の類かもしれない。

なお、通常のプレイヤーだと、遠距離攻撃で数を減らすか、そもそも水場から離れて敵地に突っ込むので、この条件が満たしにくくなると思われる。

でも、習得方法は周知されているので、工夫すればだれでも習得可能だ。

適正レベルな狩場でモンスターを引き連れて走り川などへ逃げ込む。で、超強力な防具にパージして、待ち狩をすれば良いのだ。

パーティを組んでいる場合は、釣ってくるモンスターが増えるだけなので、足の速いメンバーががんばれば行けるだろう。

ところで、首を横から切られたのに、受けたダメージが少な過ぎないか?という疑問があるだろう。そろそろ答えるとしよう。

そのからくりは、「盲人」と、「正々堂々」のシナジーだ。

端的に言えば、相手の武器の軌道がわからないので、いつの間にか首に刺さっていた、認識できない以上は正面からの攻撃でも不意打ちであり、正々堂々によって大幅削減された!ということだ。

まず、「正々堂々」だが、感知できない行動であるほど、その影響を削減する技能だ。

例えば、モンスターが気配を完全に消して、後ろから首を切りつけたとしよう。その場合、攻撃を受ける側が一切関知できなければ、正々堂々による削減効果は100%になる。つまり、完全無効だ。

なお、削減がダメージではなく影響であることもこの技能のユニークな点だ。これ、状態異常などの成功率や強度にも影響するのである。例えば、呪われた板を手に取っても、それを呪いと認識できない限り、全く影響が生じないのだ。

そして、この技能にシナジーを与えるのが「盲人」と「鈍感」だ。

「盲人」は、視覚を用いた相手の認識を不可能にする。これにより、正面からの攻撃でさえ、正々堂々に夜削減効果が強く働くようになる。なぜなら、相手の武器が直撃する軌道がわからないし、場合によっては攻撃していることがわからないのである。

具体的には、遠くから心臓に向けて投げたナイフが不通に効力を失うことになる。それだけでなく、正面に立って直接心臓を突こうとして、ようやく少し体を指圧するだろうか?といったレベルなのだ。

さすがに、「正面の敵からの攻撃」であれば、その認識があるため、100%削減にはならない。が、「視覚は情報の90%以上を制する」と言われることから、その影響は小さくない。下手をすれば、文字通り90%以上を削減してしまうだろう。

さらに「鈍感」を得ることで、直感などを用いた感知が働かないようにしている。これは技能習得にも影響するので、今後、冒険を続けていっても、同じ戦闘スタイルが続けられることでもある。

そんな俺に攻撃を通す方法は何か?それは、俺が普段の戦闘で行なっている行為、掴んでからの直接攻撃である。

掴んだ状態なら、俺は相手をはっきり認識しているし、相手は俺の拳が見えているので、不意打ちにはなりえない。故に、攻撃はほぼ100%通る。

逆に言うと、確定はしていないが、グラップラー系、組付き系、取り込み系には注意が必要だ。グラップラー系は、掴んで投げるので100%通る。その他は、初動では効果を示さないだろうが、抜け出せなければ強度が増していくだろう。