本文
「ユー様、おはようございます。」
「おはよう、ナビー。予定通り、平原に出てゴブリン狩するぞ。先導を頼むな。」
「わかりました。ミーミの村 出口はこっちです。」
時刻は 7:13 だ。昨日の内に準備は整えたので、さっそくゴブリン狩に出かけようか。
ナビーの先導に従い、出口を目指す。南側の出口から出れば良いだろう。
そうやって歩いていると…
「あの、外に出るんですか?」
何か走ってきて話しかけられた。女性のようだ。
「そうだ。あんたは?」
「あ、どうも。私は、冒険者のアヤと言います。」
「これは丁寧に。俺も冒険者で、ユーだ。」
とりあえず名前を名乗り合う。
「あれ?プレイヤー、で、冒険者?でも、盲人?」
「そうだな。それがどうかしたか?」
「その、今、外はゴブリンが群れているので、一人では危険だと思う?あ、思います。」
「一人だと危険?それは、ゴブリンの大集団が近くにいるのか?」
「大集団って… えっと…」
「わからないか。あぁ、もしかしてあんたは、住民じゃなくプレイヤーか?さっき言ってたっけか。」
「え、はい。ユーさんと同じプレイヤーです。」
どうやら、この人はプレイヤーらしい。そういえば、相手を「プレイヤー」と呼ぶのはプレイヤーだけだったな。
だから何だ?という話だが…
「そうだったんだ。ということは、ユーさんは、ゴブリン大量発生を受けて、稼ぎに来たということかな?」
「そっちが素か?ロールプレイみたいなこだわりが無いなら、敬語でなくてもかまわないぞ。」
「え?あ、すみません。じゃ、普通にしゃべらせてもらいます。」
「ちなみにさっき言った大集団というのは、50匹とか100匹とかが群れている状態だな。冒険者ギルドの図書室に要注意情報の一つとして載っているぞ。」
「そうなんだ。えっと、2~3匹のゴブリンがあちこちにいる感じなので、大丈夫… いや、ちょっと待って。そうじゃなくて!」
大集団がいないなら問題は無いな。というか、まとめウィキでも、ここで大集団が出てくるという話は聞いていない。
ということなので、歩き出そうとしたら、後ろから腕、いや、小手を掴まれた。
「すまないが、離してくれないだろうか。ソロプレイの予定なんだ。」
「え、あ、その、ごめんなさい。でも、一人で大丈夫?道とか、わかんないんじゃないかって?」
「あぁ、それなら大丈夫だ。道については、ナビーを使えば案内してくれるぞ。」
「え?ナビーってそんな機能あったっけ?」
「あるぞ。俺は昨日ここに来たが、ナビーのおかげで来れているんだ。」
ナビーをこんな風に活用している人は少ないだろう。
一般的なナビーの使い方は、立ち寄ったギルドの情報を参照したり、システムに関するヘルプだからな。あとは夜道の案内くらいだ。
それも、まとめウィキにある情報なのが味噌。あそこを利用するのは、ガチで攻略を目指すプレイヤーや、情報収集を大事にしているプレイヤーであって、ゲーマーの全てではない。まだ小手を離してくれないこの人は、ウィキを利用していないか、昔利用したけど忘れちゃったのだろう。
「それと、戦闘については、昨日ゴブリンキラー系を手に入れたんだ。これがあれば、処理はだいぶ早いと思う。」
「ゴブリンキラー系?」
「武具屋で買える装備だな。元の能力は初期装備と変わらないが、ゴブリン特効が付いていて、シールダーみたいな硬い相手にも通るんだ。」
「そんな装備あったんだ~。」
「というわけだから、狩に向かいたいんだ。離してもらっていいか?」
「え、あ、はい。すみません。お騒がせしました。」
ようやく離してくれた。では、行くとしよう。
「助かる。アヤさんも、狩に出るなら気をつけてな。」
そう言葉を残して、俺は歩き出した。
気を取り直して、ゴブリン狩に繰り出そう。
「S2 ミーミ平原に入りました。」
「よし。少し村から離れたら、交通路を外れてゴブリン狩するぞ。」
「わかりました。ご武運を。」
S2 ミーミ平原も、ただ抜けるだけなら、まっすぐ南に延びている交通路を通れば良い。S1と違ってノーエンカウントとはいかないが、不要な戦闘を避けられることは確かだ。もちろん、フィールドボスは除くが…
というわけで、ある程度村を離れた。
「ナビー。この平原について聞きたい。交通路から外れた道を歩くのに問題はあるか?例えば、穴が開いているとか、木や岩が多くて邪魔だとかだ。」
「S2 ミーミ平原には、所々にゴブリンの巣や木々はあります。ただ、小石や穴のような、歩くことを阻害するような障害物は少ないです。」
「つまり、S1のように、自由に歩き回ってもあまり問題は無いということか?」
「その通りです。ただし、遮蔽物が少ないということは、モンスターに見つかりやすいということでもあります。注意して下さい。」
「そうだろうな。だが、それは願ったりかなったりだ。むしろ見つけて欲しいからな。」
というわけで、交通路を外れ始める。
平原の交通路は、荷車が通るためか、滑らかな土だった。そこを外れると、下り坂となっていた。いわゆる田んぼ地帯のようだ。
下りきって、杖で触れた土は、ほぼ変わらなかった。ただ、荷車で慣らされた地面ではないが、走るのには支障は無さそうだ。
と思ったら、背の低い草むらがあった。ナビーに聞くと、草むらは所々にあるらしい。
そして、近くに木の矢が落ち始めた。きっと、アーチャーが俺を見つけたのだろう。
「ギャギャーッ!」
「ギャッギャッギャッ!」
木の矢の方向から、ゴブリンが近づいて来ている。たぶんアーチャーではないだろう。
杖を収納して構えていると、横振りの棍棒がぽふった。当然、位置が把握できたので、掴んで強撃!
「ギャッ!」
ノックバックはしたようだが、耐えている。S1のようには行かないらしい。
その後、横から鉄の何かがポフった。刀のようだったが、今は前のゴブリンを処理する。
改めて近づき、掴んで連撃!それで倒した。
そのあと、後ろからまたポフったので、向きを変え、捕まえる。触鑑定の結果、ゴブリンニンジャだった。
ゴブリンニンジャ:
Lv: 8
種別: モンスター、ア人
HP: 100%
状態: 敵対
説明: 斥候に覚醒したゴブリン。他の集団に紛れ込み、後ろに回り込もうとする。
掴んでいるので、投落したら倒せた。紙耐久だった様子。
「ゴブリン, ゴブリンニンジャを倒した。経験値を23獲得しました。」
「ギャギャッ!」
けっこう近い距離から声がした。そして、また木の矢が転がった。
もしかして、アーチャーが近くまでやってきたのだろうか?
「ギャギャーッ!」
正面だ!そして、木の矢が、体を指圧した。超至近距離だ!
普通に接近、そして捕まえた!
ゴブリンアーチャー:
Lv: 9
種別: モンスター、ア人
HP: 100%
状態: 敵対
説明: 狩人に覚醒したゴブリン。弓や投石で獲物を狙撃する。
纏水からの連撃で普通に倒せた。アーチャーの初討伐だ!
なぜアーチャーはここまで近づいてきたのだろう?木の矢の回収のためか?それとも、この辺りに何かあって、逃げられなかったのだろうか?
「ゴブリンアーチャーを倒した。経験値を13獲得しました。」
とりあえず、鉄のナックルはこの辺りで良いだろう。こっちも試してみなければ…
俺は、ゴブリンキラーグローブに交換し、再び狩り始めた。
最初に標的になった、いや、挑んできたのは…
「グギャッギャッ!」
「グギーグギー!」
「ギャッギャー!」
3匹くらいの集団の鳴き声だった。
一匹が声をあげながら突進してきたので、受けると、それは大盾だった。お圧来向きのシールダーだ!
とりあえず、盾に向かって強撃を打ち込んでみる。
すると、ドカンという音がして、シールダーがぶっ飛んだ。しっかり盾を貫通した様子。
次に、右から槍っぽい何かでつつかれたので、槍を掴んで、投落!
地面にたたきつけられたゴブリンは、そのまま砕けた。一撃だ!
次に、後ろから何かでつつかれた。またニンジャか!
向きを変え、掴み、そして強撃!吹っ飛んで… あ、砕けた。
最後に、起き上がったシールダーが再び突撃してきた。
受けてから攻撃でも良いが、ぶつかるタイミングが予想可能だったので「反撃」を準備。
結果、振るった拳が盾にぶつかった。シールダーは、ぶっ飛びながら砕けた。
「ゴブリンシールダー, ゴブリンランサー, ゴブリンニンジャを倒した。経験値を38獲得しました。」
うん。さすがのゴブリン特効だ。シールダーが倒しやすいのもそうだが、並みのゴブリンだと普通に一撃でやれるな。
なお「反撃」は、カウンター系の攻撃技だ。拳が相手の攻撃にぶつかった場合に、その攻撃を弾き返す特性がある。その代わりに、相手の攻撃にぶつけないとただのパンチで終わる上に、消費MPが多い。また、力の差があり過ぎると普通に押し負ける。
そのまま、しばらくは文字通りのゴブリンキラーになった。
ただし、途中で単体のゴブリンボクサーと遭遇。残しておいた獣革のナックルに換えて遊んだ。
ここのボクサーは、なんと足払も使ってくるのだ。足払自体にダメージはほとんど無いが、掴みからの攻撃なので、ム対策だとガッツリ効果を受ける。まぁ転ばされた俺に対してボクサーがやるのはただのキックなのだが。
ただ、これを利用して、俺は受身の訓練を行なった。
足払は、掴んでから転ばせる技であるため、掴んだ後のアクションが決まっている。故に、受け身の練習に都合が良いのだ。
そんな遊びもしつつ、夕方までゴブリン狩を続けた。
最も激しかったのは、ボクサー、ランサー、ファイターX2、プリーストという5匹構成だった。
ゴブリンプリースト:
Lv: 7
種別: モンスター、ア人
HP: 21%
状態: 敵対
説明: 治療術に覚醒したゴブリン。同種の味方を回復し続けるため、群れにいたら真っ先に倒すべき相手だ。
最初は、ゴブリンファイター3匹だと思っていた。
だが、実際には1匹プリーストが混じっており、吹き飛ばしたファイターを回復、その間にもう1匹のファイターが襲ってくる、という連携を取ってきたのだ。
そして、途中でボクサーとランサーが参戦してしまったのだ。
最終的には、プリーストのMPが尽きたらしく、自ら杖をたたき付けてきたので迎撃。そこでプリーストの存在を知ったのだった。
なお、S2に登場するゴブリンプリーストが、瀕死の味方を前線復帰できる程度まで回復させられる回数は、多くて3回である。さすがにレベルが低いので、その程度で済んでいる、といった所だ。
今後、複数のゴブリンが疑われる場合には、回復させる暇を与えない、つまり、一撃で狩るか、追撃を入れるとしよう。