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「プレイヤー アヤからパーティ申請があります。了承しますか?」
明日の共闘に向けて、パーティ申請を受けた。
これを許可すると、晴れてパーティとして扱われるようになる。
なお、このゲームでソロとパーティとでは、以下の5つが違う。
- 獲得経験値が人数に応じて減少。今回の場合、経験値は55%になる。
- ドロップはメンバー毎に個別判定。ただし、ドロップ率が人数に応じて減少。今回の場合、一人当たりのドロップ率が55%に低下。
- メニューなどから、パーティメンバーのステータスが参照できる。
- パーティチャット機能を用いて、距離に関係なく連絡が取れる。 (要ログイン)
- 一部の技能がパーティメンバーに鑑賞できる。 (要ログイン)
経験値とドロップ率低下は、まぁ仕方ないといった所だ。人数が増えたのだから、それだけ狩れということになる。
ステータスやチャットについては、まぁ必要かな?といった所だ。鑑定しないと相手の能力や状態がわからないのは不便だ。特に状態異常。
最後の技能干渉だが、これは離れたパーティメンバーに祈祷を届けたり、視界を共有したりする技能のことだ。対象が目の前にいなくても発動できるので、クエストを分担してこなす時に重宝する。
「え?な 何?何なの!これ!」
「どうかしたか?」
「あ、えっと。武僧って、こんなガッチガチの防御型になるの?」
どうやら、俺のステータスを覗いたらしい。パーティを組む目的の一つではあるのだが、落ち着きの無いヤツだ。
「普通はならないぞ。特に器用を切ると遠距離攻撃が悲惨なことになるし、敏捷もここまで下げるとモンスターを捉えることが難しくなるからな。」
「だよねぇ。って、じゃ、ユーさんは遠距離攻撃はどうするの?それに、狩なんてできるの?」
「追いかけて狩るということはしないぞ。モンスターは、あっちから勝手に寄ってくるから、それだけ狩れば良いという迎撃スタイルだ。だから、魔法も近接特価にしている。」
「近接?あっ!水球や土球が変わってる。でも、槍はあるよ?」
「魔力拳の効果が入るから、槍は飛ばないぞ。ドリルパンチだな。」
「それって、飛ばないってこと?魔力拳って、そんな凄い技能だったんだ。」
「デメリットは重いが、理解して使えば強力な技能だぞ。」
「あぁ、動画で言ってた。特化系技能だよね。デメリットをプレイスタイルに合うように誘導することが大事って。」
「そんな感じだな。詳しくは、明日見るのが早いと思うぞ。」
話をしつつ、俺も彼女のステータスを確認してみた。
名前: アヤ
レベル: 8
体力: 10
魔力: 21
筋力: 10
防御: 9
精神: 25
知性: 18
敏捷: 18
器用: 30
技能:
適性: 小刀7, 印術6, 描画12, 彫刻12, 魔法(土6), 採集4
技術: 鑑定8, 魔力操作7, 危険感知5
支援: 世界知識
小刀: 疾突, 刀払, 連切
印術: 魔印(役霊, 炎鎖), 魔陣(), 遠隔発動
描画: 模写, 速記, 産色
彫刻: 刻刀, 硬刻, 空刻
土: 土球, 集土, 土槍, 画土
採集: 採取量増加
装備:
銅の小刀, 銅編の布衣, 木綿の頭飾り, 獣革のブーツ, 獣革の小手, 銅の首飾り
小刀
効果: 刀剣適性の一つ。小刀を扱うことに特化した技能。
印術:
効果: 描いた印や魔法陣から魔法を引き出す技能。
描画:
効果: 絵を描いたり、飾ったりする技能。
彫刻:
効果: 絵や印などを刻み付ける技能。
世界知識:
効果: この世界に関する知識への理解を支援する技能。
危険感知:
効果: 自身に対する敵意、脅威などを感じ取る技能。
こいつ、けっこう遊んでるじゃないか。
まず、能力、技能が「画家」に近い。習得している技も、本来のレベル帯を飛び超えている。
器用特化にした上で、印術に必要なこともあって、いろんな所に描きまくったのだろう。その努力は認める。
一方、印術師としての能力は微妙である。
さすがに魔力、精神が大事だとは認識していたようだが、器用に全振りし過ぎである。それと、敏捷や筋力の切り捨てが少ないため、本来なら魔力、精神に次いで優先すべき知性が並み水準まで落ちている。
そして装備。
「彫刻刀になりそうだから小刀を選んだんだ!」という声が脳内再生されそうだ。実際、「刻刀」が刀剣類による彫刻を可能とする技なので、これで目的は果たせる。
ただ、体力と防御が低く、筋力も高いとは言えないので、至近距離で使う武器を選ぶべきではないだろう。器用が突き抜けているのでパリィはできるだろうが、小刀でやるにはリーチその他が厳しい。
「ねぇ、ユーさん。変な顔しているけれど、どうしたの?」
「あぁ、俺もアヤさんのステータスを見ていた所だ。」
「あぁ、そうなんだ。で、何がそんな不思議だったの?」
「能力や技能が、印術師というより画家寄りだなと思っている。」
「うん。絵を描くのに必要な技能は絶対に欲しいから入れて、あとは、動画やAIの案内に従って、印術師の技能を選んだんだ。」
「そうか。ちなみに、画家という職業もあったんだが、あえて印術師を選んだのか?」
「え?そうなの?画家って、どういう感じなの?」
画家を知らなかったらしい。動画で見たという印術師は戦闘職、画家は生産職にカテゴライズされていたため、確認することが無かったと思われる。
「画家は、基本は生産職の一つだな。描いた絵や作品で商売したり、建物や装備品をコーディネイトしたりする際の補正が強くなるんだ。」
「ふ~ん。それは楽しそう。でも、印術や魔法の補正は小さくなるんでしょう?それだと、冒険するにはちょっと厳しいかもしれないから、今のままでいいや。がんばれば、画家みたいなことはできるんでしょう?」
「それは可能だ。職業は補正を与えるものであって、他のことができないわけじゃないからな。それに… 職業意外にも補正を強くする方法はあるぞ。俺が持っている称号みたいなものだ。」
一瞬、二次職の話をしようと思ったが止めた。第5マップまで進むと解放される要素であり、ちゃんと職業2つ分の補正が得られるようになるのだ。
「そう、称号。それ、どうやったら手に入れられるの?」
「職業の本に載っていたはずだ。同じ道を究める者から学べと。つまり、同系統の職業の相手に同行して観察したり、そういうモンスターと戦ったりすることだな。」
「あ、確かにそんなこと書いてあったね。絵描きは始まりの街で見たと思うから見せてもらえばいいのかな。印術は、どうだろう?」
「それは俺もわからない。ただし、魔法陣や召喚といった要素に分けて観察すれば、行けるかもしれないぞ。」
「あぁ、そういう考え方はありなんだ。」
「武僧は複合職だから、拳士と僧侶の技能を個別に観察してもOKなんだ。俺が観察したのはどっちもゴブリンだったけどな。」
「ふ~ん、となると、ゴブリンメイジの観察って有効かもね。あ、でも、魔法陣が出てこないからダメか。」
「あんがい、ギルド内やお店の店員に魔法陣描けるか聞いてみて、描けるなら見せてもらうのが近道かもな。」
「おぉ、それは良いかも。すぐ行かないと!」
「せめて飯を食ってからにしような。満腹度が泣くぞ。」
「あぁ、本当だ。それに、よく考えたら夜だった。称号は逃げないんだし、今度で良いか。」
ちょうど良いタイミングで注文していた料理が届いた。
「え?ユーさんの所、パンがいっぱい!」
「パン大盛+シチューだ。意外と好みになったぞ。」
「うん、好みって大事だね。私は、今はいろいろ食べてみている所だよ。」
「俺もそうだな。今日は満腹度回復を優先したからパン大盛にしたが。」
「そういえば空腹耐性ってあるけど、それのせいで食べ物があまり入らないとかあるの?」
「無いぞ。満腹度が減りにくいだけで、ちゃんと腹は減るからな。それに、満腹度100%になっても、食べることはできるぞ。」
「そうなんだ。100%を超えた分、ってどうなるの?」
「いわゆる脂肪になるとかじゃないぞ。ただ、食べ過ぎると過食体質になって、逆に腹が減りやすくなるみたいだ。大食いプレイヤーの動画に出ている人が言っていた。」
「そっか。じゃ、常識的な範囲で超えることがあるのは仕方ない、でもほどほどにって感じなんだね。」
「そのようだ。ちなみに、このパン大盛+スープは、満腹度が90%回復だから、空腹の時用だな。」
「90%も回復するの?さすが、パン山盛りがだもんね。」
過食体質、正確には「大食の胃袋」とは、会話で挙げた通り、満腹度が内部値で150%を超えるほどの食事を繰り返していると習得する技能だ。
習得すると、満腹度の最大値が200%になる。その代わりに、満腹度の減少速度が平常時で1.3倍、走ったり暴れたりすると1.5倍ほどになる、とまとめられていた。
さらにその上に「無限の胃袋」なる技能もあったりする。こちらは、何でも食べられ、満腹度の上限も500%になる。ただし、食用、飲用アイテムの効果が無くなり、満腹度の減りも2倍ほどに跳ね上がるそうだ。
「あ、そうだ。属性魔法って、地面とかに魔力を流したりすれば習得できるとあったんだけど、水や木って、どうしたらいいんだろう?」
「水属性や木属性が欲しいのか?」
「うん。描画や彫刻と相性良いと思うんだ。いずれは炎や氷も欲しいし。」
「考え方は土属性とだいたい同じだぞ。水に魔力操作をしたり、水魔法を観察したりすれば良い。」
「それが、水への魔力操作、やっているんだけど、まだ習得アナウンスが来ないんだよ。」
「湧き水や滝のように、流れている水を相手にする必要があるぞ。滞留している水からは魔力が抜けていくから。」
「え?あ、そっか。そういうことだったんだ!」
「そうだな。ちなみに俺は、始まりの街にあった畑の湧き水の前で訓練したぞ。地下水が流れてくるのだそうだ。」
「そうなの?じゃ、ゴブリン祭りが終わったら、行ってみよう!」
「水属性を使うゴブリンメイジを探して、魔法を観察した方が早いかもだけどな。」
「それで、木属性の方はどうなの?やっぱり、枯れちゃうけれど草や葉っぱに魔力操作なの?」
「枯れるのが嫌なら木の幹だな。地中から潤沢に魔力を循環させているから。」
「あぁ、なるほどね。葉っぱのように小さなものだと、魔力を塗りつぶしちゃうから枯れちゃうんだっけ?」
ふと、雑草刈りクエストが木属性魔法の習得とギルド貢献度稼ぎに有効なのでは?と思ってしまった。
だが、そこまで考えた後、盲人だと雑草見えないから、雑巾がけが満足にできないのでは?という結論に至って萎えた。
そんな話をした所で食事も一段落。時間を揃えてログインし、狩をすることになった。