3-8 S2 共闘、最後のゴブリン祭り

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ログインしたら 5:01 だった。アヤとの待ち合わせまで3時間近くある。

「ユー様、おはようございます。」

「おはよう、ナビー。雑草刈りクエストの雑草って、一面に生えていると思うか?」

「全体が雑草かどうかはわかりません。しかし、クエストの情報によると、数年間放置されている畑を復旧するための作業とされています。このため、一面が雑草で覆われている可能性は高いでしょう。詳細は問い合わせてみて下さい。」

「なるほど。ナビーは、雑草へと俺を先導することは可能か?」

「雑草かどうかは私にはわかりませんが、畑の草の上であれば案内できます。もし、本当に雑草しか無い畑であれば、ユー様の希望に答えられるでしょう。」

「それはいいな。それと、畑の大きさはどのくらいだ?」

「依頼対象は畑の1区画となっているため、約1ha、100m×100mになります。」

昨晩はギルドでログアウトしたので、当然、現在地もギルド内だ。このため、掲載されている依頼をナビーはちゃんと取り込んでいる。

その結果、畑の雑草刈りクエストは、盲人でもこなせそうなことがわかった。ただ、範囲が想定より広いので、今から受けるのは止めておくべきだろう。

そもそも、雑草を魔力拳で握りつぶすのだから、MPが溶けていくだろう。そうなると、ゴブリン狩どころではなくなるか。

「ふむ。明日も残っていたら受注を検討しよう。それと、薬草などを仕分けるクエストはあるだろうか?」

「薬草を仕分けるクエストは常時依頼として掲載されています。今すぐにでも開始できるでしょう。」

ということなので、時間になるまで薬草の仕分けを手伝ったのだった。

一緒に仕分けをしていた職員からは、「ゴブリン大量発生中、受けてくれる人が激減して困っていた、もっと早く受けて欲しかった」と愚痴られた。俺は、「そんなに困るなら、報酬そのままでも良いので、この期間中は常時依頼から緊急依頼辺りへと格上げするべき」と伝えておいた。

「ユーさん、おはようございます。今日はよろしくお願いします。」

その後、後ろから話しかけられた。予定の時刻になり、ログインしてきたアヤだろう。

「こちらこそよろしく頼む。とりあえず、出口に向かおうか。」

「うん。あ、そうだ。ユーさん、私が案内するからついてきてよ。」

そう言いながら、アヤは歩き出したので、俺は少し後ろからついて行こうとした。だが。

「あぁ、ちょっと待ってくれ。アヤさんの足音が静かすぎて、どこに行ったかわからなくなるから無理だ。」

「え?あっ、そうなの?じゃ、どうしよう?」

「そうだな。悪いが、俺がナビーに先導してもらって前を歩くから、後ろから来てくれるか?」

「なるほどね。わかった。あと、私にユーさんのナビーを見えるようにしてもらえるかな?」

「あぁ、そうだな。そうしよう。」

ナビーの閲覧をパーティメンバーに許可した上で、俺はナビーに先導を依頼、いつも通りに村の出口へと歩き始めた。

「ユーさんって、そんな感じで歩くんだ。」

「あぁ。ナビーに声を出してもらうようにしている。ナビーの声は、モンスターには聞こえないからな。」

「あぁ、ナビーはモンスターと干渉できないって、ナビーの声も聞こえないってことか。納得。」

「S2 ミーミ平原に入りました。」

「ナビー、少し進んだら交通路を外れてゴブリン狩をするぞ。」

「わかりました。交通路はこっちです。」

こうして、ゴブリン狩3日目は幕を開けた。

「わぁ、今日もあっちこっちにゴブリンがいっぱい!」

「そうか。ちなみに、群れが多そうなのはどこだ?」

「そのまままっすぐ進んだら、けっこういるよ。もしかしてユーさん、アレに挑むの?」

「せっかく群れが近いならそうしようかと考えている所だ。アヤさんはどうする?」

「わかった。私は隠れて印の準備をしているよ。お互い干渉しない方がいいんだったよね?」

「そうしてくれると助かる。」

鑑定した結果、彼女には遠視系の技能が無かった。それなら、リアルの視力が優秀だとしても、はっきりと見えているゴブリンは、けっこう近いはずだ。俺は、まっすぐに進んでいった。

「ギャギャ!ギャッギャーッ!」

何か騒いでいる声の後、集団が近づいてきているような音もし始めた。まさか、けっこうな数の群れとやらを釣ってしまったのだろうか?

とりあえず強化 防御を準備して構えておく。杖もしまっておく。

一方、アヤは、ゴブリンの群れに近づいていくユーを観察しつつ、印術による攻撃の準備を進めていた。

しかし、ここで問題発生。「けっこういる」と言った時、3匹のゴブリンが3グループ程度だったのが、今は20を超える集団に膨らんでいるのだ。

あの様子だと、ゴブリンの一匹がユーに気づき、叫んだことで、近くの野良ゴブリンを引き寄せてしまったようだ。

「ユーさん!逃げて!」と叫びたいが、我慢する。昨日の取り決めで、干渉しない萌芽好ましい、と言っていた。

ユーの敏捷を考えると、逃げることが不可能だろう。あと、叫んだことが原因で、自分まで発見されてしまうこともまずい。

そして、混じっていると思われるゴブリンメイジから炎球が放たれ、ユーさんに直撃した。さらに、一番近いゴブリンファイターから、横薙ぎに剣がたたきつけられた。

しかし、おかしなことが起こっていた。ユーのHPは1%しか減っていない。いや、その1%も回復してしまった。実質的にノーダメージだ。

その後ユーは、目の前で棒立ちしていたゴブリンファイターに接近し、掴み、殴りつけた。「掴撃」という技らしい。その一撃で、ゴブリンファイターのHPが半減以下まで落ちていた。

と思ったら、左右からゴブリンが接近、片方から槍、もう片方から斧が突き出された。しかし、ダメージは3%も無かった。

防御って、ガッチガチに固めると、あんなに硬くなるのだろうか?私、狼とゴブリン5匹くらいに襲われて死んじゃったのに…

ユーは怯むことなく、槍の方を掴んでゴブリンごと投げ飛ばしていた。その攻撃で、槍ゴブリンは消滅していた。ログによると、ゴブリンランサーという上位種だった。

でも、ユーの戦闘スタイルというのがだいたいわかった。あの超防御力で受け止めつつ、至近距離に来た敵だけを攻撃しているのだ。モンスターの群れに突撃する様子も、さっきから炎球を連射しているゴブリンメイジを探す様子も見られない。

そうなると自分の役割は、まだユーと離れているゴブリンの排除だろう。ユーのおかげで十分な準備ができた。攻撃を始めるとしよう。

一方のユー。

さっきの叫び声の後、その後に感じた足音。ゴブリンの集団を引っかけてしまったのかもしれない。何匹いるかはわからないけれど。

ただ幸いなのか、アヤは決め事を守ってくれている。怯えて言葉も出ないだけかもしれないが、大人しくしていてくれるなら何とかはなるだろう。

構えていると、何かがポフった。どうやらゴブリンメイジの先制攻撃らしい。石や水が地面に落ちる音が無く、風も感じなかったということは、炎だろう。まぁいつもの事だが。

その後、正面から剣で切りかかったらしいゴブリンファイターに、掴撃を打ち込んだ。この技は、掴んだ後にパンチやキックなどを選べる融通の利く技だ。俺の場合は魔力拳との相性も考慮して、パンチである。

こうして戦いが始まった。ゴブリンランサーを投落し、別のファイターに水槍ドリルパンチを打ち込んだ。

おや?キックを打ち込んできた君はボクサーかな?だが悪い。数が多いので今回はスパはできないんだ。纏水の魔拳で一気にたたく。

そうやって戦っていると、離れたところでゴブリンがギャーギャー叫び始めた。さらに仲間でも呼ぶのだろうか?HPもMPもたっぷりあるので、まだまだ行けるぞ。

引き続き、近づいてきたゴブリンたちを処理する。おや?ゴブリンプリーストを倒した通知も出たぞ。さっきぶつかってきたゴブリンだろうか?

そうして戦っていると、ゴブリンの声がなくなった。騒いでいたので正確な数はわからなかったが、15くらいは処理しただろうか…

だが、戦闘のログを確認して驚いた。25匹ほどのゴブリンが倒されていた。最初に炎を使用していたと思われるメイジなども含まれている。

アレ?でも、杖やメイスで殴ってくるゴブリンはいなかったと思うのだが… まさか、杖が無いから斧で代用しました!みたいな感じだろうか?

「ユーさん、お疲れ様!」

後ろから話しかけられて思い至る。アヤが後衛を狩ったのだろう。

「あぁ。けっこうな群れになったみたいだが、無事だな。アヤさんの支援も助かった。」

「うん。群がっていたゴブリンはユーさん一人で大丈夫そうだったから、離れていたゴブリンを攻撃していたんだ。途中からユーさんの方に突っ込んでいっちゃったのもいたけれど。」

「そうらしいな。プリーストが体当たりってどういうことだ?と思ったが、理解できたよ。」

結果を確認しつつ話は続く…

「そうだ。防御って、すごく上げた方がいいの?私、あんな数に囲まれたらすぐ死んじゃうよ。」

「あぁ、俺の場合は防御とダメージ軽減効果の合わせ技なんだ。だから、普通の盾役とは違うぞ。」

「それって、正々堂々だっけ?」

「そうだ。俺の場合は視覚で相手の動きを把握できないから、たいていの攻撃が不意打ち扱いになるというからくりだな。」

「それって、正面から振られた武器でも?」

「正面から振ると言っても、振り下ろし、切り払いなどいろいろあるからな。どこに当たるか認識できない以上は不意打ちという判定らしい。」

「それって、ユーさんを倒す方法無いんじゃ?」

「弱点ならちゃんとあるぞ。具体的には、掴む、組み付くなどからの攻撃だな。俺がゴブリンを攻撃する時にわざわざ掴んでいるのもこのためだぞ。」

「あぁ、正々堂々って、こっちにも効果があるんだっけ?それで、いつも掴んでいたんだ。」

「そんな感じだ。というわけで、同じような感じで狩ろうと思う。」

「うん。大丈夫。がんばろうね。」

お互いに結果を確認できた所で狩を続行。

アヤにゴブリンの群れていそうなエリアを見つけてもらい俺が接近、寄ってきたゴブリンを俺が、溢れたゴブリンを彼女が狩るというスタイルを続けた。

そうそう。彼女の印術も間近で拝聴できた。たまたま、残り3匹くらい離れた位置にいたゴブリンを処理している時だった。

近くの地面からゴブリンがじたばたしているような音がした。ゴブリンは地面を這って移動したり、地面から生えてきたりはしないはずなので、アヤの仕業だと思う。で、触鑑定したら、こんなことがわかった。

ゴブリンプリースト:

Lv: 8

種別: モンスター、ア人

HP: 37%

状態: 敵対, 拘束, 燃焼

説明: 治療術に覚醒したゴブリン。同種の味方を回復し続けるため、群れにいたら真っ先に倒すべき相手だ。現在は印術「炎鎖」に縛られている。

「炎鎖」は、ミーミ村の図書にあった気がする。まとめウィキ情報では、印から炎の鎖が表れて、近くの敵を縛りつつダメージを与えるというものだった。序盤の印術なので威力も拘束時間もしょぼいが、足止めと削りをこなせるので、戦闘直後のばら撒きに便利、とまとめられていた。