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「アヤさん。悪いが、引き揚げたい。主に武器が壊れそうだ。」
「う~ん。私もそうしたい。満腹度もだいぶ減ってきたし、狩過ぎて疲れちゃったし。」
ということで、村に戻ってきたら、 14:11 だった。
まさか、5時間ほどで、ゴブリン200匹ほど狩るとは思わなかった。換金したら合計40000p、当分して20000pの稼ぎになりそうだ。
原因は、やはりアヤがゴブリンの群れを発見できることだろう。一人で宛もなくうろつく場合と比べると、狩効率は3倍以上違う。平原タイプのマップだから当然の話ではあるが。
ギルドの食堂で食事を取る。俺は満腹度60%以上残っていたので、焼き野菜と焼き魚のサンドイッチにしよう。
「ユーさん、今日はありがとう!おかげで、お金も経験値もたっぷりだし、技能も増えたんだ。」
「そうか。こっちもレベルが上限まで上がったぞ。諸々の準備を済ませたら、S3に向かう予定だ。」
今日一日で、彼女は新たに「潜伏」技能を得たらしい。隠れることに特化した隠密系の技能だ。トラッパースタイルで狩をするなら悪くないだろう。
あと、レベル12まで上がったそうだ。そりゃ、元のレベルが8だったのだし、あれだけ狩れば納得の結果と言えるだろう。
一方の俺は、レベル13に上がった。よく2つも上がったものだと思うが、この数を狩ったのだから納得するしかない。
「ねぇ、ユーさんは、この後はどうするの?」
「時間もあるし、まだ残っているなら雑草刈りクエストをする予定だ。貢献度が欲しいからな。」
「雑草刈り?確かに、そういうお手伝いクエストがあるみたいだけれど…」
「あとは雑草に魔力拳を試す予定だな。うまくいけば訓練になって一石二鳥だ。」
「あぁ、そうかも。ねぇ、それ、一緒にやろうよ。私もMP残っているから。」
「木属性魔法が欲しい」と言っていたし、正直、一人でやると時間的に微妙なことになりそうだった。なので誘ってみよう、という思いはあった。結果、振ってみたらこの反応である。
「かまわないが、今日一日程度じゃ習得には至らないぞ。あとMPが無くなった後は普通の草刈りになるから、そのつもりでいるんだぞ。」
「うん。それは仕方ないよね。でも、MPポーションを飲めば良くない?」
「そうだな。まぁ、資金に余裕があるなら… と言った所じゃないか?それに、回復量は少ないから、湯水のようにというわけにはいかないと思うぞ。MPポーションは飲用必須だし。」
「それもそうか。でも、1~2本くらいはありだと思うよ。」
ということで、MPポーションを2本ほど仕入れて雑草刈りクエストを二人で受注した。
なお、クエスト前に、そこら辺の雑草を握って、魔力の干渉を感じられることは確認した。これで、今日でなくても、いつかは技能も習得できるだろう。
「依頼元の畑に到着しました。雑草刈りが可能です。」
「わぁ~!雑草が伸び放題!」
「数年間も放置していたみたいだからな。俺は右側から刈っていくから、アヤさんは左から刈ってもらえるか?刈り場がぶつかるのは効率が悪いだろう?」
「うん。これだけ草だらけだと、どっちから刈っても変わらないと思う。えっと、魔力操作を意識すればいいんだったよね?」
「そうだ。魔力操作を意識するといい。」
ということで、手分けして雑草刈りを進める。
魔力拳に魔力を集め、雑草を握る。雑草は魔力に撒けて枯れてしまうが、ちゃんと道端の雑草と同じ反応をしていた。
なお、この方法で枯らした雑草は破壊した扱いとなるらしく、何も残らずに消滅する。枯れた草などを残すには、生産職などが覚える技「乾燥」を使うなどの処理が必要だ。
逆に言うと、魔力で握っても刈った扱いになるし、もっと言えば火炎魔法で焼き尽くしてもOKだ。ある動画では、雑草刈りを「野焼き」と称していた。
なお、雑草を最も早く刈る方法は、炎ではない。10秒で雑草を消滅させたという動画では、斬撃属性を付与した音波を飛ばす大規模魔法が用いられていた。当然、10秒中9秒が準備時間である。
そんなことを思い出しながら、黙々と握っていく。ナビーに聞いた所、この畑は隙間なく草だらけであるらしいのだ。
途中でMPが切れたので、ポーションを含みつつ、さらに雑草握りを続ける。だんだん慣れてきたようで、右手、左手と、交互に草を握る作業を繰り返していった。
そして、17時を過ぎる頃… ナビーいわく、半分ほどのエリアの雑草を刈り終えたようだ。もうMPも切れているので、買ってきた手袋をはめて地道に抜いているぞ。
「ユーさ~ん、もう終わったんですか~?」
「こっちは半分は終わったぞ。その様子だと、もうアヤさんのMPも空っぽみたいだな。」
「そう。今は手で抜いてるよ~。」
しまったな。小刀で切れば良いと最初に言っておけばよかった。
「アヤさん。抜くのがきついなら、小刀で茎を切ってみたらどうだ?」
「え?そんなのじゃ雑草はまた生え… って、えぇ~!」
「枯らした草は何も残らずに消えただろう。理屈としては同じだぞ。」
「あぁ、そうか~~!」
「それはそうと、手伝ったが良いか?」
「う~ん、お願い。もうMPも無いから、ただ切るだけになっちゃうし。」
ということで草抜き続行。掴んで抜いていく。
なお、この方法で抜いた雑草は、採取扱いになるため、インベントリーに貯まっていく。一応、触鑑定もしておいた。
雑草:
種別: 素材・草
説明: どこにでも生えている特に効果の無い雑多な草。
生産職や呪術師、農家であれば、こんな雑草でも素材として使うことができる。ただ、そうでない者にとってはゴミ同然である。売っても0pだ。
加えて、使えると言っても、効果は最低限なので、序盤のレベル上げなど限られた用途だ。
18時を過ぎる頃、ようやく畑から雑草が消えた。クエスト達成である。というわけで、ギルドに戻って晩飯だ。
「ユーさん、お疲れ様~。」
「おぅ、お疲れ様。」
「正直、あんなに雑草だらけだとは思わなかったよ~。」
「俺もそうだ。アレは雑草なんてかわいいものじゃなかったな。」
「だよね~。でも、魔力操作の練習とかにはなったよ。」
「俺もだ。何か良い方法を考えないとつらいな。」
「それ同感。今度は森で練習するよ。」
「森でやる時は入り口付近が良いぞ。レベル的に勝てるとしても、モンスターが増える森の奥でやる必要は無い。」
「うん。そうする。」
そう言いつつ、雑草刈りクエストはまた受注しようと考えている。理由は貢献度だ。
受付で会話して確認した所、目標としている貢献度にまだ足りていないようだった。貢献度が一定値を超えると、ちゃんとイベントが起こるので、そこまで稼ぐ必要があるのだ。
「ところで、ユーさんはこの後どうするの?」
「俺は、もうしばらく村に滞在して、準備ができたらS3だな。」
「そっかぁ。私はN2かな。キトル山に行ってみようかなって考えているんだ。」
「滝がキレイな山だと聞いているな。」
「そう。きっといい絵が描けると思うんだ。それに、水属性魔法の修行に良いって聞いているんだよ。」
「滝は流れる水だし、水量もたっぷりだからな。魔力操作には良いと思うぞ。」
「うん。でも、始まりの街の畑でも習得できるって言っていたよね。どうしよう?」
以前話をしていた水属性魔法の件だ。彼女は、ため池辺りで試していたらしい。
「キトル山の滝まで行くのが厳しければ畑でやるしか無いだろう。ただ、滝まで行けるなら、そっちの方が効率は良いと思うぞ。魔力操作なら、全身で水を感じられるし。」
「全身で?それって、滝行みたいなのをしないといけないんだっけ?」
「いや、滝行はしなくて良いぞ。水しぶきが来ない程度の位置に立って、全身で水を感じるように魔力を操作すると良いんだ。」
「あぁ、良かった。けっこう人いるみたいだし、服を着たままじゃないとちょっと…」
「滝行は、やれば生える技能はあるけれど、キトル山でやるなら見張り必須だぞ。モンスターが出るからな。」
「あ、そっか。滝行する人がたまに死んじゃうって聞いたことある。」
滝行を繰り返していると生える技能は、「滝の心」だ。効果は小さいが損の無い技能なので、俺もいずれ習得したい。
滝の心:
説明: 滝に親しんだことで授かった祝福の一種。瞑想系技能効果上昇(微)、水耐性上昇(微)、冷気耐性上昇(微)、防御、精神上昇(微)
「俺も、いつかはキトル山の先には行ってみたいと思っている。が、先にS3に行きたくてな。」
「そうなんだ。S3を目指すのは、装備?レベル上げ?」
「それらもあるぞ。装備が強ければ、冒険をゆっくり楽しめるからな。」
「そっかぁ。じゃ、共闘はおしまいだね。」
「そうだな。まぁ、またどこかで会うこともあるだろう。機会が合えば、また組もう。」
「うん。ユーさんも、お元気で!」
そうして、食事を取った後、俺たちはパーティを解散した。
お互いにゲームを遊ぶ目的も、今やりたいことも違うのだ。これは仕方ないことだろう。
明日からは、S3攻略の準備だ。転移ゲートに向けて、励もう。
名前: ユー
種族: ヒューマン
職業: 武僧
性別: 男
称号: [下級武僧], 異界の旅人, 夢見る者, 第1マップ突破者
HP: 100%
MP: 100%
状態: なし
所持金: 44300p
満腹度: 100%
レベル: 13
経験値: 0/1359
体力: 34
魔力: 23
筋力: 20
防御: 36
精神: 20
知性: 36
敏捷: 4
器用: 6
技能:
適性: 体術10, 魔力拳7, 気留術7, 魔法(土5, 水5)
技術: 触鑑定4, 精神集中1, 受身4
支援: 捕獲握力強化, 逆境を超える心, 不動の守り
耐性: 空腹耐性
特質: 盲人, 鈍感, 効果変化 欠損, 正々堂々
体術: 強撃, 足払, 投落, 連撃, 反撃, 掴撃
気留術: 癒気, 瞑想, 強化, 帰療
魔力拳: 魔拳, 魔盾, 爆拳
土: 纏土, 集土, 土槍
水: 纏水, 集水, 水槍
装備:
鉄のナックル, 銅編の下級武道着, 銅編の革帽子, 鉄の小手, 獣革の膝宛, 合革の靴, 綿布の靴下, 守り石の首飾り