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打ち上げから30分後… 俺たちはギルドの地下にいた。正面には気合を入れているダナンドがいる。
ダナンドのパーティメンバーは、見学するらしい。職業的に魔法が飛び交うことは無いだろうが、とりあえず近づき過ぎないように言っておいた。遠距離攻撃できるのは俺じゃなくダナンドだが…
(強化 防御、精神)
「ユーさん。行くぜ!」
そう言いながら、ダナンドは俺の元へ突っ込んできた。まだ距離があったので、さっさとかけられる強化を済ませる。
そうして構えていると、腕の当たりに衝撃!
強撃を打ち込まれたらしい。突っ込んできての強撃だったので、元の3割超は通っただろうか…
俺はダナンドの体を掴み、掴撃を打ち込む。投げ技だと受け身を取られるからだ。
「んぐ、やるな!」
この過程で体に触れたことで触鑑定による更新。HPを2割ほどは削ったようだ。
「だが、まだだ!」
ダナンドはバックステップで俺から離れていった。
たぶん回復や強化はしてくるだろう。こちらも癒気を使ってHPを戻しておく。
その後、何かが俺にぶつかった。気弾だろうか?
「クッ、武僧って聞いていたが、硬いな。」
ダナンドはそうこぼしながら近づいて来た。反撃を使うか… いや、それは悪手だろう。
そう思っていたら、高等部に何かがぽふった。正面からの攻撃に見せかけての打ち下ろしだったようだ。
「え?」
驚いて出た声でダナンドの位置判明。後方に回り込んでいたようなので向きを変えつつ、左手で強撃!
ダナンドは急いで受け止めたようで、吹き飛びなし。だが予定通り。
右手に準備していた水槍ドリルパンチを打ち込む。
「あっ!ぐーっ!」
知性が低い拳士の弱点の一つは魔法攻撃だ。加えて、一般的には敏捷を重視して軽装を選ぶので、突属性を複合するドリルパンチの直撃はかなり厳しいだろう。
ダナンドもその常識には抗えず、そのまま倒れてしまった。詰みだ。
魔力拳の技、爆拳をたたき込むと、ドリルパンチで7割吹き飛んだHPが0になり、ダナンドはその場から消えた。
少しすると、ダナンドが部屋に入ってきた。死に戻り後、すぐ帰ってきたようだ。
「いやぁ、あんたやるな。水槍をあんな風に打ち込まれるとは思わなかったぞ。」
「ダナンドの実力から、受身はあるだろう、というのがわかったからな。だから、強撃をオトリにさせてもらった。」
「そりゃあったし、受けに使ったぞ。それが失敗だったのか。」
「モンスターが相手なら、あの受けがベストだと思うぞ。せっかく近づいたのに自分から離れたら必殺技がたたき込めないからな。」
「なるほどなぁ。さすがに拳士相手だと違うってことか。戦い方も似てくるしなぁ。」
「ダナンドは足に自信があったように思うぞ。足技も使ったらどうだ?」
「そうだな。ユーさんがほとんど動かないから手ばっかり気にしていたが、考えてもみればそうするべきだったな。」
「まぁ、俺は足技はあまり使わないからな。武僧は足より拳の方が強いというのもあるが。」
結果的には、正々堂々による初見殺しと、ダナンドの拳士としての弱点を突いて倒した形になるだろう。もう一度戦うと、違う結果になるはずだ。
「ところでユーさん。さっき、脳天から拳振り下ろされたのに、なんで平然としていたの?アレ、この辺りのゴブリンが一撃で倒せるくらい強いんだけど!」
「あ、そうだ。俺も気になった、というか仰天したぞ。おかげで隙を晒したわけだが。」
「遠くから見ていたけど、どう考えても完璧に直撃していたよね。しかもユーさん気づいていなかったし。」
「あぁ、それは不意打ち対策の技能を持っていたからだな。打ち下ろし攻撃が完璧に不意打ちになったせいで無効になった感じだ。」
「えぇ~!そんな技能あるの?」
「なるほどなぁ。無効系技能の反応だったか。防具が硬くて貫けないとか、スライムをぶん殴った時とは違う反応だったから、理解できなかったんだ。」
「今後、そういうモンスターが出てくるかもしれないってことなのね。私も気をつけないとやられそう。」
近接戦闘をする者は、確かにこういう特性を知っておくべきだろう。攻撃が妙な弾かれ方をしたのが原因で目の前で呆けていたら危険だろう。
そんなことを思っていたら、後ろからまた何かがぽふった。いや、横からもだ。
「うっわ!」
「無効って怖い。矢が刺さらずに落ちた。」
どうやら、不意打ちを試してきたものがいたようだ。まぁ気持ちはわかるし、宣言したら不意打ちではなくなるので仕方無いだろう。
「あの、ユーさん。申し訳ございません。ケガは… してないんですよね。びっくりです。」
「私もごめんなさい。でも、どうしても知っておくべきと思って。」
「離れて見ていたが、改めて驚かされたぞ。アルカの剣、首切りコースだったし、アレ一番威力高い技じゃなかったか。」
「うん。これは注意しないといけないってわかるよ。剣が何か壁のようなものに当たって弾き飛ばされちゃったし。」
その後ダナンドと俺の二人は、受身のスパーリングに興じた。もちろん提案したのは俺だ。
「あんた、ゴブリン相手にこんなことしていたのかよ?」
「体術使いとの戦闘経験は、拳を育てるのに必要だからな。この辺りだとゴブリンしかいなかったから、今日こうしてダナンドさんと訓練できるのはうれしいぞ。」
「確かにゴブリンしかいなかったな。なら、この訓練には意味があるな。」
ダナンドは、俺のいろいろな技に対し、受けに徹した。リクエストもあったので水槍や爆拳も使ったぞ。
一方ダナンドには、技や攻撃部位を宣言してから打ち込んでもらい、それを受け止める訓練をした。拳士の自己バフ投落を直受けすると、HPが7割減ったのも良い経験だった。
投げ技の受けについては、今後も育てていきたい所だ。「柔軟」や「投げ技耐性」技能があれば、このダメージを減らせるからな。
そんな仕分け&決闘から4日が経過した。
この間、雑草刈りのおかわりや、薬草の仕分けをこなした。それと、ゴブリン祭り後の平原もうろついて、出現モンスターの変化を確認した。
そうそう。ゴブリンの巣のアイテム仕分けの報酬は、現場で浄化した聖銀の小手と、もう1つのアイテムだった。
緑石の指輪:
種別: 防具・アクセサリー
説明: 宝石の埋め込まれた魔法のアクセサリー。木属性魔法の効果を増幅する(小)
これは、木属性魔法の効果を増幅できるアクセサリーだ。そして俺は、ついに畑の雑草刈りを通じて、木属性魔法を習得できた。
魔法(木):
説明: 魔法により植物や自然の力を利用する技能。
纏緑: 自然のエネルギーを拳に纏わせる。
育緑: 触れている木、葉、花などの成長、回復を促す。
実はS3に続くフィールドボスは、物理、土、そして水属性に強く、木属性が大弱点なのだ。「S3 港町へ続く野道」という名称からわかる人はわかるだろうが、陸上で動ける水属性のモンスターなのである。
というわけで、必要な道具類も買い揃えた俺は、ミーミ平原横断に挑むことにした。
なお、買い揃えたアイテムは、S1の時と同じく、携帯食やテント、煙玉などだ。冒険者ギルドの情報だとミーミ平原から次の街までは片道2日、俺の足なら3日はかかるだろう。失敗した時の帰還も考慮して7日分を用意してみた。
それと、「携帯食を食べ続けると飽きる」というまとめウィキの内容は正しいことを理解したので、今回からは「ドライフルーツ」も持つことにした。
「ドライフルーツ」とは、文字通り乾燥させた果実類だ。なお、売られていた果実は複数種あったが、インベントリーの機能を用いて、全て「ドライフルーツ」という名称でまとめている。ドライオレンジ、ドライピーチ、ドライストロベリー… などと通知されてややこしかったからだ。
名前: ユー
種族: ヒューマン
職業: 武僧
性別: 男
称号: [下級武僧], 異界の旅人, 夢見る者, 第1マップ突破者
HP: 100%
MP: 100%
状態: なし
所持金: 34700p
満腹度: 97%
レベル: 13
経験値: 0/1359
体力: 34
魔力: 23
筋力: 20
防御: 36
精神: 20
知性: 36
敏捷: 4
器用: 6
技能:
適性: 体術11, 魔力拳7, 気留術7, 魔法(土5, 水6, 木2)
技術: 触鑑定5, 精神集中3, 受身6
支援: 捕獲握力強化, 逆境を超える心, 不動の守り
耐性: 空腹耐性
特質: 盲人, 鈍感, 効果変化 欠損, 正々堂々
体術: 強撃, 足払, 投落, 連撃, 反撃, 掴撃
気留術: 癒気, 瞑想, 強化, 帰療, 浄気
魔力拳: 魔拳, 魔盾, 爆拳
土: 纏土, 集土, 土槍
水: 纏水, 集水, 水槍
木: 纏緑, 育緑
装備:
鉄のナックル, 銅編の下級武道着, 銅編の革帽子, 聖銀の小手, 獣革の膝宛, 合革の靴, 綿布の靴下, 守り石の首飾り, 緑石の指輪
インベントリー (通常アイテム):
ポーション X 14
MPポーション X 21
解毒ポーション X 5
解毒草 X 5
携帯食 X 35
ドライフルーツ X 7
テント X 7
煙玉 X 7
虫避け薬 X 5
布マスク X 5
インベントリー (貴重品):
冒険者証 X 1
インベントリー (装備品):
柔木の杖 X 1
樫の杖 X 1