04-01 目指せ、S3

改定:

本文

「ユー様、おはようございます。」

「おはよう、ナビー。今日から、ミーミ平原を横断して、港町へ向かうぞ。先導を頼むな。」

「はい。S2 ミーミ平原の南端へ向かいます。こっちです。」

ナビーの先導に従い、平原の南下を始める。

ミーミ平原は、ゴブリンの数が減った代わりに、獣や鳥、虫、スライムなどのモンスターが出るようになった。

最初に出会ったのは、足元にかみついてきた2匹の虫だった。連撃で処理しつつ触鑑定した結果は以下の通りだった。

オオイモムシ:

レベル: 7

種別: モンスター・虫

HP: 47%

状態: 敵対

説明: 獲物が近づくと地中から出てくる。力も強いが臆病でもあり、地中から出てくるのは威嚇のためとされている。

毒吐き毛虫:

レベル: 7

種別: モンスター・虫

HP: 36%

状態: 敵対

説明: 体内に毒を持つ大型の毛虫。なお、体毛は清潔、且つ、毒をはじく性質があるため重宝もされている。

片方は毒持ちだったが、すぐに倒したので毒はかからなかった。毒消しは用意していたから、かかったらそれはそれで治せたわけだが。

どちらも動きが遅く、物音がほとんど聞こえないため、倒すなら吹き飛ばさずにその場で殴るが吉だ。吹き飛ばしてどっか行ったら追いかけられないからな。特にミーミ平原は交通路から外れたら坂なので、転がってしまうだろう。

次に襲ってきたのは、上からだった。頭に体当たりして、弾かれて地面に落ちた。落下した後にピーピーと鳴いていたので、纏土からのパンチで仕留めた。

ラッシュバード:

レベル: 5

種別: モンスター・鳥

HP: 88%

状態: 敵対、怯み

説明: 敵を見つけると矢のようにまっすぐ突撃してくる。体は貧弱だが、出現する地域では上空にも注意が必要だ。

武具屋で、南端へ向かう旨を伝えた所、「本来は前や後ろに気をつけろ、と言いたいが、そうだね。頭を包む防具をしっかりかぶるんだよ。」と言われていた。

理由は、こいつが上空から突っ込んでくるからだ。当たり所が悪ければ、頭を強打されて危険なのだそうだ。

しかし、空を飛んでくる鳥は、自分で鳴いていない限り無音だ。よって、正面からの突撃であろうと正々堂々によってきっちり弾かれるので、全くの無問題だった。

それから、「横断する場合の要注意モンスター」と呼ばれるヤツにも出会った。

シーフラット:

レベル: 6

種別: モンスター・獣

HP: 100%

状態: 敵対、捕縛

説明: 横から忍び寄り、食料や薬草を盗もうとする。盗みに成功すると逃げ出すぞ。

こいつは、ネズミとしては鈍足、且つ、攻撃能力を持たない。しかし、瞬間移動としか言えないような隠密能力で真横に現れ、ランダムに薬草、または食料カテゴリーのアイテムを盗んでくるのだ。

盗まれたアイテムは、撃退すれば返ってくる。ただ、追いかけた先で別のモンスターに絡まれたり、そもそも他のモンスターとの戦闘中に横入されたりすると、取り逃がすこともあるそうだ。

ただ、まだ第2マップなので対処は簡単だ。鈍足なので、遠距離攻撃や、足の速いメンバーが回り込むなどが可能だからだ。ついでに言えばプレイヤーの場合、盗まれた通知が出るので、通知を見てから動いても間に合う。

それと、一般人5人のパーティが一日で消費する携帯食の数は40個前後だ。これを5日分も用意すると、携帯食だけで200個になるので、よほど意識していなければ1個減っても誤差に見えてしまう。

え、俺か?確かに遠距離攻撃は無いし、敏捷も低い。だが、隠密で盗むことが仇になるので問題無い。

正々堂々は、被ダメージではなく干渉を減退する効果だ。なので、盗もうとしてできなくて、「チュー?」と呆けたネズミとこんにちわ、そこから掴んで倒したぞ。

なお、シーフラットは視界外から侵入し、隠密で近寄ってくる。なので、盲人でなくても「正々堂々」を持っていれば盗みを防ぐことは可能だろう。尤も、ラッシュバードやスライム等の問題があるので、自身またはパーティメンバーが張っている索敵に引っかかるのが先だろうけれど…

こうしたモンスターが散発的に襲ってきた。

通常、パーティで抜ける時には、前方と後方を警戒する要因を配置するか、直感などで索敵できる要因を配置することが望ましいとされている。同じことはまとめウィキでも書いてあった。

なお、グリーンスライムとは出会わなかった。あれは、草むら内に生息しているのだが、交通路は踏み固められた土だからだろう。

「ナビー。今夜はこの辺りで休息としよう。」

「わかりました。」

2日目の夜、俺はスモークテントを用意した上で、ナビーと会話する。

「明日には平原の南端に到達できるだろうか?」

「はい。予定通りです。明日の午前中には南端へ到達できるでしょう。」

「そうか。ナビーは、次の港町については、どのくらい知っているんだ?」

「S3 港町ソルットは、この大陸の南端であり、南の大陸との交易船が行きかっている街です。また近くには浜辺もあったり、海の地下を通り抜ける洞窟もあったりします。しかし、洞窟には危険なモンスターが住み着いているため、現在は通行できないとのことです。」

「街の名産とか、そっちはどうだ?」

「ソルットの名産物は塩です。またそれを他大陸へ輸出し、代わりに各種香辛料を輸入しています。また漁も積極的に行われているため、香辛料で調理された魚などが広く食されています。」

S3にある街は、港町ソルット。名産品が塩であり、公益を通して香辛料のやり取りをしているそうだ。このため、料理系プレイヤーにとって聖地のひとつと言われている。

「美味しい携帯食があるとも聞いたぞ。ナビーは知っているか?」

「冒険者間では、特殊な香辛料によって、保存が効くように味付けされた肉や魚が注目されています。効能は、始まりの街で流通している携帯食よりも優れているそうです。」

「屋台なんかも多いと聞いたぞ。ナビーは、屋台には先導してくれるか?」

「屋台とは、人が街中に設置している露店でしょうか?そうであれば、誘導することは可能です。ただし、提供されている商品の情報が得られない場合があります。」

「ナビーは、匂いはわからないんだよな。」

「ごめんなさい。私は匂いに干渉することができません。」

とりあえず、露店への誘導は可能なようだ。ナビーが認識できる露店というのは、システム的に「露店」と認識されるものだろう。つまり、商人による正式な露店かどうかの発見もできそうだな。

「あとはそうだな。海で泳いだり、素潜りして貝などを取ったりする人はいるのか?」

「ソルットの一部の海は観光地として解放されています。海で泳ぐために必要な服の販売も行われています。また、海中の素材を収集するために潜水する者もいるようです。ただし、モンスターと遭遇する場合があります。」

「モンスターが出るというのは、きっと漁のための海だろうな。まぁモンスターが処理できるなら自由に取って良い、といった所か…」

ソルットの海水浴場であれば、モンスターはいないそうだ。それはいいな。

海水浴を行なうことで、潜水や水泳など、有意義な技能をいろいろ得ることができる。まとめウィキでは、「技能習得までの手間が少ないわりに効能が優秀、且つ、冒険する限り腐ることが無いので、水が嫌いでないなら挑むべし」と記されていた。

「ナビーは、ソルットの先については知っているか?」

「ソルットからは隣接する大陸までの連絡船が出ています。またソルットの近くには別の大陸へ渡るための洞窟も伸びているそうです。」

ソルットからは3つのルートで、次のマップへ移動することができる。ただし、選べるのではない。特定の手順で進まなければ、マップが解放されないのだ。

まずは、ソルットから交易船で移動した先の島、これがS4だ。この中にあるダンジョンをクリアする必要がある。なお、S3のフィールドボスは船上での戦いとなる。

次に、ソルットから延びる「水晶の洞窟」を抜けた先に、S5マップがある。「水晶の洞窟」は「海底洞窟」とも呼ばれている。

続いて、S4の島から、さらに南の大陸へと交易船が伸びることで、S6、新たな港街へ到達できる。そのままS7の街にも繋がっているぞ。S6フィールドボスは、S6の街でイベントを経て戦うので、先に街までは行くことが可能であったりする。

最後のソルットからのルートは、南西にある「漁師の浜」からのルートだ。S7の街まで到達しているとイベントが起こり、S8への移動ルートが開かれるのである。

ただし、現時点では、S8に到達したプレイヤーがまだいないらしい。両氏の浜から進んだ先のフィールドボスが特殊戦闘系であり、未だ勝てていないのだと言う。

まぁいずれにしても、今の俺には関係の無い話だな。まだS3にも到達していないし、ずっと海辺で過ごすよりも、他3方のマップを巡りたいからだ。