04-07 プライベートビーチで技能集め

改定:

本文

「ユー様、おはようございます。」

「おはよう、ナビー。さっそくだが、観光用の浜辺へ行きたい。先導を頼む。」

「了解しました。観光用浜辺はこっちです。」

今朝はちょっと遅めに 8:21 にログインした。別に朝なら何時でも良いわけだが…

今日から海で各種技能習得を進める。そのための準備はばっちりだ。

「浜辺に到着しました。」

というわけで、ナビーの先導に従い街内を横断し、浜辺までやってきた。

今の所、まだ距離が離れていることもあり、聞こえる音としては、野道で浜に近づいた時と変わらない。当然、鳥もスライムも猪もいないけれど。

「浜辺に入りました。プライベートモードに変更しますか?」

(プライベートにしてくれ。)

そのまま進んでいくと、システム通知が表示され、音声ガイダンスされた。

この浜辺は、プレイヤーが水着になるという性質のため、希望すればプライベートエリアに入ることができる。プライベートエリアは、パーティメンバー以外には干渉されなくなるのだ。

今回はプライベートエリアに入る。水着が恥ずかしいのではない。水泳目的で利用しているプレイヤーもいるかもしれないので、そんな人とぶつかると面倒だからだ。

切り替えた後は、水着へパージ。そして、海へ向けて一気に駆け降りる。

まとめウィキによると、観光用ビーチには岩や穴など、走るのに障害となる物が無いらしい。普通ならありそうな貝殻や木の枝等も無いそうだ。「安全のため」とのことだが、これは非常に助かる。踏んだら痛いからな。

海に近づいてきたことで、地面が濡れて固まった砂になった。では、まずは存分に走るとしよう。

俺は向きをだいたい90度に変更し、海を横目にするようにした。そして、砂上を疾走し始めた。

このプライベートビーチは、ループ構造のマップになっているため、海を横目にすれば永遠と走ることができるのだ。しかも、海の音を聞きながら濡れた砂の上を意識していれば、それほどずれる心配もない。ずれても少々濡れたり砂が付いたりするだけだ。

「技能 疾走 を獲得しました。」

「技能 安定移動 を獲得しました。」

そうして、時より水を含みつつ、昼まで走り続けた結果、2つの技能を獲得できた。

疾走:

説明: 効率的に走る技術。レベルに応じて、走る時のスタミナ消費を軽減。

安定移動:

説明: 身体感覚を安定させる技術。レベルに応じて、移動中にバランスを崩しにくくなる。

この2つは、長時間砂場を走っていれば誰でも獲得できる技能だ。効果はピンポイント気味なので、普段の俺に利点は無いだろうが、今はこれでいい。

なお、俺は3時間ほど走り続けたのに、ほとんど疲労を感じていなかった。たぶん、敏捷が低く体力が高いため、スタミナ消費が少なかったのだろう。ゲームならではだな。

では、いよいよ海に足を踏み入れる。体は十分に温まっているので、準備運動は良いだろう。一気に飛び込むわけではないけどな。

海に近づいていく。現在聞こえる音は、穏やかな波が、粉状の砂を引っ掻いているような感じの音だ。粒っぽい音があまり聞こえないが、波音も小さいし、勢いが弱そうだ。

そのまま水に足を浸す。僅かにヌルっとした感触と、日光で温められた表面、そして冷たい水の感触だ。ヌルっとした感触は、塩などが溶け込んだ影響だろう。浅い所にはなぜか海藻も無いみたいだからな。

足首… 脹脛… 腿… 腰… 少しずつ深くなっていく海へと進んでいく。最初に感じるのは、だいたい足を海に浸した時と同じ感覚だった。

そして、ついに肩まで海に浸かった。ここより先に進むには泳ぐか潜る必要があるだろう。

俺は息を吸い込むと、その場でしゃがんで、海中に潜った状態にした。

プレイヤーは息を止めたり、海中に潜ったりすると、酸素ゲージが出現する。これが0になると強制死に戻りとなる。

「酸素 95%」

残りの酸素の通知は音声で確認できるように設定してある。5%刻みだ。なお、システム通知なので海中でもしっかり聞こえるぞ。

「酸素 80%」

潜水を始めてから20秒でこの値。どうやら、今の俺では100秒が限界らしい。

「酸素 40%」

酸素が減ってきたので、しゃがむのを止め、頭を出す。

「酸素が回復しました。」

うん。ちゃんと通知が出るな。では、引き続き、もぐったり出たりを繰り返そう。

「技能 潜水 を獲得しました。」

そんなことを繰り返して、無事に潜水技能が得られた。

潜水:

説明: 水中に潜り活動する技術。レベルに応じて、潜水可能時間が増加。

この技能を得たことで、潜水できる時間が3倍になった。3~4分くらいは平然と潜っていられることになる。

では次、いよいよ水泳だ。

「ナビー。浜を右側にしてまっすぐに泳ぐから、俺を先導してくれ。」

「わかりました。こっちです。」

ナビーの誘導に従い、俺は泳ぎ始めた。

ナビーの声は、水に潜っていてもちゃんと聞こえる。さっき潜水中に確認した。

なお、泳ぎ方については、学生だった時に習ったクロールや平泳ぎだ。ただし、キレイに泳ぐ必要は無いし、途中で休んだりしても良いので気楽だ。

何よりうれしいのは、ナビーが水中でも先導してくれるので、進む方向がずれても修正ができることだ。そして、ループマップだし、浅井所を泳いでいるので、不測の事態があっても死なない。

「技能 水泳 を獲得しました。」

「技能 潜水 と 水泳 が統合されました。」

予定通り水泳技能も習得できた。そして、この2つを習得したことで、生えたのが本命だ。

水泳:

説明: 水をかき分けて移動する技術。レベルに応じて、水の抵抗を軽減。

遊泳:

説明: 水泳技術と潜水技術の複合技能。レベルに応じて、水中での水の抵抗を軽減、潜水時間が増加。

遊泳技能があると、水中で技や魔法を使うことが可能になる。ただし、まだ低位の技能であるため、攻撃も防御も3割程度しか発揮されない。これを改善したければ、もっと泳げということになる。

とりあえず、持ってきた飲み水の残りが怪しくなってきたので、今日の海水浴はおしまいにしよう。

「ナビー。洗い場まで先導してくれ。」

「はい。洗い場はこっちです。」

この浜は観光場なので、ちゃんと水洗いのできるスポットが用意されている。ただし、飲用には適さないとのこと。

全身の海水を洗い流した後は、武具屋でもらったタオルでふき取る。水が弾かれるように体から離れていく感じがする。そのくせに、タオルはあまり濡れていなかった。

装備を戻して浜を登っていく。システム通知に従い、通常マップに戻った。

時刻は16:33 だった。とりあえず飯と飲み水の補充だな。

俺はそのままギルドへ戻り、夕食を取った。食べたのは、「豚肉ゴロゴロシチュー(800p)」だった。シーボアのシチューだろうか?

そして、飲用水を樽で購入した。1200pしたが、これは必要だろう。

「S3 港町へ続く野道に入りました。」

時刻は19:21。もう夜だ。

俺は街から出て、野道にやってきた。少し残金が厳しかったからだ。

そのまま交通路を歩いていると、夜でもおかまいなし!と言った具合にヤツが飛んできた。ラッシュバードである。

当然、無音で飛んでくるラッシュバードが俺にダメージを与えることは無く、勝手に落ちて勝手に鳴いている所を、炎の鉄拳で殴る… という形で狩っていった。

そうして、交通路を往復していると、もう一匹のモンスターが釣れた。

「フォーッ!」

正面から声がした。初日も先日も高い所で鳴いているだけの風景だった。それが、今、手の届く所にいるのだ。

しかし、何も起こらなかった。俺は右手でヤツを掴み、伸ばした左腕を上から振り下ろした!

ヌーンアウル:

種別: モンスター・鳥

レベル: 12

HP: 17%

状態: 敵対・捕縛

説明: 体毛が奇妙な模様を描く梟。見た者に幻を見せ、惑わせる。昼間は惑わした者を同士討ちさせ、夜は自らが狩に赴く。

「フォッ!フォーッ!」

驚いている所悪いが、まずは俺から離れるべきだった。改めて掴み、パンチをたたき込んだ。

「ヌーンアウルを倒した。経験値を20獲得しました。」

昼間は、プレイヤーに幻覚や混乱の状態を与えてくるだけなのだが、夜になると行動が変わる。見た者に眠りや暗闇を与えて動きを封じた後、正面から啄んでくるのだ。

特にヤバいのは、灯を点ける時だ。ここでヌーンアウルが映ってしまうとアウトである。場合によっては、パーティ全員の視界内にいて、そのまま集団全滅するということもあるらしい。

しかし、残念ながら相手を視認しなければ効果が及ばない以上、俺にはただ鳴いているだけの鳥だ。なので、今こうして狩れちゃったわけである。

こいつが出てくる条件の一つは、夜の野道にて灯になるものを点けることだ。そして俺は炎の鉄拳に魔力を込めることで、それに近いことができる。

というわけで、その後俺は、炎の鉄拳の効果を利用してラッシュバードやヌーンアウルを釣り狩したのだった。ラッシュバードも、灯を見つけて寄ってきてくれるみたいで、狩がとても捗ったぞ。

「ほ~い。あ、ラッシュバード素材の人だね。」

「いや、俺はラッシュバードの専門家じゃないぞ。それはともかく、ちょっと外で狩ってきたから卸に来たぞ。」

「お仕事熱心だね。あれ?いやいや!ちょっと待って!何、この鳥素材の山!」

「昨日、売れると言っていただろう?」

「それはわかるよ。なんで、ヌーンアウルまで入っているのかな?しかもこんなにいっぱい!」

「夜に釣ったからだな。」

「げ、それ、炎の鉄拳!まさか、それをピカピカしちゃった?」

「これ使えば交通路で鳥が釣れるからな。スライムやボア、蛇なんかに煩わされないぞ。」

「いや、それ、やっちゃいけないやつだからね!特にヌーンアウルとか、ボンヤリと映ってもアウトだから!」

「まぁそうだな。だが残念ながら、見ることが前提の技能は俺には関係ないんだ。」

「あ…」

2時間ほど狩をした後、素材換金で10000pほど稼げた。そして、不運にも再開した素材担当の人に突っ込みを頂いたのだった。