04-13 S3D 最下層攻略と報酬

「ダンジョン 魔生の荒野 最下層 に入りました。」

扉を開け、俺は最下層に入った。

とりあえず入った印象としては、これまでと特に違わない荒野だった。空気も、音も、地面も、荒野のままだ。

実況動画では、少し進むとボスが現れるらしい。ちゃんと出現する演出や音もあるようなので、深く考えずに進もうか。

「ナビー。部屋の奥へ進む。先導できるか？」

「了解しました。奥はこっちです。」

ボス演出が始まったが斜めにずれていた… とかだと微妙なことになりそうなので、ちゃんとナビーに先導してもらって進んだ。

5メートル程度進んだ時、地面が軽く揺れた。そして、正面から何かがゆがむような音がした。

そのまま待っていると、ゆがんでいる音の辺りから、鈍重そうな足音が近づいてきた。ゴーレムよりはスリムそうだが、はっきり足音とわかる程度には音がしている。

そして、ゆがみのような音は小さくなっていった。ボスの登場が完了したようだ。

動画によると、ボスの出現方法は、魔法陣からの召喚だったり、自ら異空間を通って出てきた理、空から飛来したり、周囲から何か収束してきた理など、いくつかのパターンがあるらしい。音と出現パターンの対応は知らないが、今回はたぶん、異空間から出て来ているのだろう。

それよりもボスだ。俺は、このボスの足音、出現パターンに心当たりがある。確かこいつは…

そう思っていると、ボスがドンドンと足音を立てて突っ込んできた。

俺が技を準備していると、肩の辺りに食い込むような感触。俺は返しとして、ヤツを正面から掴み、伝衝を打ち込んだ。

ドシーンという衝撃音がして、ボスは仰け反った。同時に、触鑑定発動。

これは死もありえるか…

俺はそう思った。

このボス、レベルこそ第3マップだし、打撃にも弱い。ボスの癖にHPもけっこう減っている。

ただ、持っている鎌が大問題。なんと、確率による即死効果持ちなのだ。

それと、鎌を特定の部位に狙ってくる性質があるため、命中部位がはっきりしていたりもする。故に、いつも通りにぽふってなるようなことが無かった。

次に来たのは、ガラガラとした鳴き声が、だんだん大きくなっていくものだった。音波だ。

俺は横に転がるようにして避けた。とりあえず至近距離で音波を受けてはいけない。

結局、音波なのでそれなりに受けてしまったが、ダメージ自体は問題になる量ではなかったし、追加効果とされる混乱も受けていない。これでも精神異常耐性高いからな。

そう思っていると、後ろ側の頭の辺りに何かがぽふった。いつの間にか、後ろ側に回り込まれていたようだが、今回は完全無効だ。

俺は再びヤツを掴み、爆拳で攻撃。HPを13%ほど削って吹き飛ばした。打撃耐性が低いようで、かなり効いた。

とりあえず離れたので癒気で回復しつつ様子を伺っていると…

ドシーン！という音がして、地面が揺れ始めた。地面を踏みしめて揺らしたらしい。

俺は揺れに備えようとしたが、揺れは長くは続かなかった。どうやら、最初の衝撃が本命であり、そこを乗り切ればたいした問題は無いようだった。そして、最初のドシーンは突然だったので不意打ち判定されたのだろう。

次に、ヤツがまた突っ込んで来た。再び鎌だろう。即死効果付きの鎌が相手なら、長期戦をするべきでないな。

俺は強化、そして熱縛を使用、筋力をできるだけ強化した。

ドン、ドン、ドン、と足音が迫ってくる。そして、正面までやってきた。俺はヤツの体を掴んだと同時に、肩の辺りに何かが刺さった。

予想通り、肩に食い込んだのはヤツの鎌だったようだ。直受けに近かったのでHPも5割近く溶けたが、死んでいない。そして、はっきりわかった。こいつ、投げられると。

俺はヤツを掴んで抱え上げた。そして、投落！

ドッシーン！

「ギャーーーーーッ！」

地面にたたきつけられた音、そして悲鳴…

もちろん、そこで終わらない。体制を整えて、強撃！そして、緑槍ドリルパンチだ！

「ダンジョンボス ガーゴイルリーパーの討伐に成功しました。」

「称号 ダンジョン踏破者 を獲得しました。」

「経験値を360獲得しました。」

「技能 即死抵抗 を獲得しました。」

「ダンジョン 魔生の荒野 の攻略に成功しました。報酬を選択して下さい。」

どうやら、二重バフと打撃弱点、高威力の投落、そこからの攻めにより7、8割近いHPを消し飛ばしたようだ。鎌を突き刺した影響で受け身が取れず、クリティカルヒットも出たのかもしれない。

そして、称号に技能も手に入った。どうやら、即死攻撃も打ち込まれており、俺が生きていたのは偶然だったようだ。

即死抵抗は、同レベルまでは25%、そこからレベル差1毎に15%ずつ確率が増えていき、レベル差5以上になれば100%無効にできる、という技能だ。今回の場合、俺のレベルは18だったので、抵抗確率は70%になるだろう。

ただ、今回のような確率での即死攻撃に対しては、「レベル差が5以上開かないと意味の無い技能」と言われている。確率操作ができるのでない限り、100%でないなら、出る時には出てしまうものだからだ。

俺も、その意見には同感である。とあるゲーム内にある塔の中で、発動確率10%くらいの先制攻撃アイテムと、成功率30%の即死攻撃を3連続で同時発動されたからな。

話を戻して、報酬を受け取ろう。今回は選択式のようなので、内容を音声で問い合わせて確認する。

ほぼ、魔生系のダンジョンということで予想していたものが出て来た。今回はゴーレムコアを受け取ることにしよう。

「知性の種」は、使用すると「知性」のベースが1増える効果がある。自身を強くするために有効なことは確かだが、猛烈に欲しいか？というと、そうでもない。

「魔生物の技能署」は、人類が使用した場合、魔力の循環効率が増したり、食事でMPが回復したりする。その代わり、常時MPが減るようになり、MPが尽きた場合に虚弱状態に陥る。火力特化系の魔法使いなどが使うなら良いが、そうでないなら避けるべき技能だ。もちろん、俺にも不要だ。

最後の「解放の証(魔力)」は、ナビーを魔法触媒として使えるようにするテクニック系のアイテムだ。ナビーが移動できる範囲であれば、壁も生物も投下して魔法の遠隔発動ができる。ただし、魔法使用時にナビーが実態化し、その時に生物が接触すると発動キャンセル、且つ、接触したのが攻撃だった場合、主人に効果倍増して伝わるというデメリットもある。

この効果は俺には使用不可能だ。なぜなら、俺は「魔力拳」技能を取得しているため、触媒を用いても魔法の発動地点を変更できないからだ。それと、仮にナビーの手から魔法が発動できるとしても、「発動時にナビーが対象に触れている」状態になる可能性が高いだろう。

「ゴーレムコアで宜しいですか？」

「それでいい。」

「ゴーレムコアを入手しました。自動的に、ダンジョンの入り口へ移動します。」

そのメッセージの後、浮遊感のようなものを感じたと思ったが、すぐに落ち着いた。

「S3 港町へ続く野道 に入りました。」

どうやら、ダンジョンから転移させられたようだ。

俺は持ち物を確認した後、街へと戻っていった。

今回、できれば欲しいと思っていたゴーレムコアを、何の迷いもなく選ぶことができた。これで、今後の自己強化を助けてもらえるだろう。

なお、ダンジョンの攻略報酬は毎回入手できるのだが、今回のような特殊な報酬が得られるのは1マップ1つだけだ。

例えば、今から、魔生の荒野に入りなおして攻略しても、もらえる報酬は、ボスドロップの素材が1個増える程度であったりする。なお、今回のボスドロップは以下の通りだった。

「呪われた銀板」については危険物なので、側溝で浄化した。汚染されたというガーゴイルというのはわかるが、さらっと危険物をドロップしないでいただきたい。

ただ、そうやって入手できた聖銀は、薄くて小さかった。使うなら防具やアクセサリーになるだろうか？後で、ドンゴラのおっちゃんに聞いてみよう。