05-01 さらばソルット

改定:

本文

おくたんの試運転で効果を確かめた翌日…

「ゴオーーーーッ!」

俺の前には、懐かしのボス亀がいた。

S3に続く道を塞いでいたフィールドボス「ストロングハードタートル」だ。

俺はヤツの攻撃を受け止めつつ接近する。そして、弦縛!

「ゴ ゴゴ ゴ ゴゴゴ」

弦縛は、今まで使いどころが無かったのだが、弦で物理的に拘束状態にする魔法だ。詳しくは知らないが、無抵抗だと最終的に簀巻きになるらしい。

ということで、木属性特効のストロングハードタートルを巻いてみた。これで、存分に胴体を調べられるだろう。

まずは外周をぐるりと周ってみた。じたばたしていたから、音に注意すれば安全だった。

正確に測ったわけではないが、ゴーレムよりも二回りくらい大きかった。全長7メートルくらいはあるかもしれない…

続いて、重さの確認。筋力強化のバフを盛ってから押したり持ち上げたりできるかを試した。

だが、ボス亀はびくともしなかったし、持ち上げることもできなかった。ゴーレムで試した時もそんな感じだったので予想はできていたが、とりあえず能力も技能も足りないようだ。

最後に、腕以外の部位…

これは触れることができなかった。簀巻きから抜け出そうとじたばたしているので、重さのことも考えると、触るのは無理そうだ。

ただ、立てている音や、外周を周った時に動かしていた手足の風圧を考えると、しっかりした腕と足はあるが、鋭い爪が伸びている感じではないようだった。つまり、以前戦った時に、正面に前足と思われる部位が下りて来たのは、たたきつけようとして弾かれた感じだろうか?

ひとまず、動画で知ることのできなかったボス亀に対する理解を深めることができた。

満足した俺は、筋力強化+熱縛+纏緑からの連撃を打ち込んで沈めた。レベルアップの成果や強化された武器などの条件が合わさり、100%のHPが溶けていったぞ。

これで、やり残したことは終わった。明日こそ、転移ゲートにて始まりの街へ移動し、まだ行っていない地域へ向かおう。

そういえば、先日、掲示板に書き込んでおいたストロングハードタートルの木属性特効について、検証が行われたらしい。結果、俺が出した結論と同じ、木属性弱点+特効ということがわかった。

この結果に対し、「木属性の攻撃アイテムを作れる生産職による狩や、木属性を扱える戦闘職によるソロ狩が容易になる。また、S5攻略に役立つ貫通耐性素材が少し集めやすくなる。」と考察されていた。後者の件は、ボス亀はパーティだと1日1匹しか狩れないため、第4マップで安定して狩れるように準備して、対応するザコを乱獲した方が早いからだろう。

そして翌日…

「ユー様、おはようございます。」

「おはよう、ナビー。ようやく旅立ちだぞ。転移ゲートへ向かおう。」

「了解しました。転移ゲートのある中央広場はこっちです。」

港町ソルットはいったんお別れだ。今日は転移ゲートにて始まりの街へ移動する。

魔生の荒野での戦いを通して、俺はいろいろと成長できた。だが、残念ながら俺一人ではS4に進むことができない。

S3フィールドボスは海のモンスターであり、通常は船の上から海上への攻撃、つまり、遠距離攻撃が必須なのだ。まとめウィキによると、海に飛び込んでも即死判定になるため、相手に接触してもらうことが前提の俺は詰んでいるのである。

ただ、討伐する手段はある。まとめウィキで紹介されていたのは以下の3つだ。

  1. ギルドでボス討伐の協力者を募り、一時的なパーティを結成する。特に遠距離砲台になってくれる人がベストだ。
  2. 海でも有効、且つ、広範囲にダメージを与えられる爆弾を大量購入して投下する。中級錬金術師の称号持ちであるセラさんなら、金と素材提供で解決してくれるだろう。
  3. 釣りか遊泳技能のある非戦闘NPCにボスを船上へ誘い込んでもらう。なぜか戦闘参加しないNPCは海に入れるし、ボスも普通に無視してくれる。動画で紹介されていた、近接戦闘特価パーティが行なっていた手法だ。

それでも始まりの街に向かうのは、俺の目的がボス攻略じゃなく旅行だからだ。それに、どうしても行きたいか?というと、そんな気分でもないので、先に行きたい方に行こう、といった判断なのである。

ということで、俺はナビーの先導に従い、ソルットの中央に向かっていた。

「中央広場に到着しました。転移ゲートへのアクセスが可能です。」

そうして、潮の匂いを感じながら歩いていると、中央広場とやらに到着した。いや、地面に変化なし、噴水のような目立った音を放つ物体もなし… となると、「推定 広場」としか言えないのだ。

ただ、ナビーが転移ゲートへのアクセスを可能と言っているので、さっそくアクセスしてみよう。そう思った時だった。

「ほ~い、そこのユーさん、ちょっと待ってね~。」

後ろから何かやってきた。いや、この声は一人しかいないだろう…

「あ、ようやく捕まえたよ。用事があったんだから、街を離れる前に言って欲しかったな。」

なぜか、こんな所にリーネさんがやってきていた。あと、転移に関して、ギルドへの報告義務は無かったはずだが…

「えぇと… 用事?」

「そうそう。渡す物だよ。はいこれ、ちゃんと鑑定してね。」

そう言って、手に何かを触れさせてきた。鑑定してねと言われたので鑑定もさせてもらう。

銀編の魔布帽子

種別: 防具・帽子

説明: 魔力で強化された布と、下降された銀を編み込んで作成された帽子。物理、魔法防御に優れると共に、着用者の毒、マヒ耐性を向上させる。

「これは… いきなりなんだ?」

「先日のクエストの報酬だよ。ほら、セラさんと私の連盟での依頼になっていたから。」

「そういえばそうだったが、いいのか?これ?」

「この街ならともかく、他の地域に出向くなら、頭の装備はどうにかするべきだよ。でも、並みの防具じゃ劣化にしかならないでしょう?」

「あぁ… 甲羅ヘルムか!」

言われてみれば、すっかり忘れていた。

甲羅ヘルム、第3マップ装備としては破格の性能だったし、セラさんが言うには、船で戦う冒険者に愛用者が多いらしい。水耐性が優秀だもんな。

ただ、この街から離れるなら、水耐性はやや影が薄くなるので、他に優秀な装備、あるいは、特化した装備があれば置き換えても良いだろう、とは考えていた。そこへ来たのが、まさかの第5マップ産装備だ。

「実の所、この帽子、水晶の洞窟には向かないんだよね?異界の旅人の間では有名みたいだけど、あそこに出るゴーレムは、防具を貫通する光線を連射してくるんだ。」

「あぁ、知っている。俺も挑む時までには、対策装備を揃えようと考えていた所だな。」

「そんなわけだから、当面はこれ活用してよ。デザインについては、ドンゴラさんのお墨付きをもらってあるから問題無いと思うよ。」

不良在庫を押し付けるみたいな乗りで渡してきたが、この街では買えないことを俺は知っている。しかもドンゴラさんチェックということは、他のマップから俺のために買ってきた可能性が高い。ギルド的にいいのかそれ?

まぁ、優秀な装備である以上、俺にことわる理由は無い。俺は、甲羅ヘルムを外してインベントリーへしまうと、受け取った帽子を装備した。

「うん。まぁ正直、ユーさんの体格だと、甲羅ヘルムも様にはなっていたと思うけど、頭が変わると二味くらい変わるね。」

「二味?それは、外見がよほど悪かったということか?」

「あぁ、悪いわけじゃないよ。でも甲羅ヘルムの乗用は、頭がすごく目立つから、ギルドの職員同士で話に出るんだよ。でも、優秀な装備だし、安いわけでもないから、この街でならいいんじゃないかな?という結論になってね。」

「そうか。まぁ、外すのを忘れていた俺の落ち度だな。そういう意味では、この帽子はとても助かる。」

リーネさんに礼をする。

「それじゃ、他の街でもがんばってね。まぁ、あんなゴーレム作っちゃう人がどうにかなるとは思ってないけどさ。」

「ゴーレムは、役割を決めて活用しましょう、とギルドの書庫にあったからな。俺はそれに従っただけだぞ。」

「いやいや、魔力関係を切り捨てた魔道人形も、索敵も隠密も無いのにモンスターに無視されて採集できているなんて非常識だからね。」

「なら、型に捕らわれ過ぎか、ゴーレムを人格化し過ぎ、というやつだな。それに、目立つ人がモンスターを釣って、その隙に仕掛けを進める、という話はあるだろう?」

「う~ん。なんでだろう?納得できるけれど、納得したくない。」

「さて。俺は行くぞ。とはいえ、ここには今後も食材の買い出しなどで来ると思うけどな。」

そんな話をしつつ、俺は旅人の鍵を使用。転移先として始まりの街、ミーミの村が挙げられたので、始まりの街を選択した。

名前: ユー

種族: ヒューマン

職業: 武僧

性別: 男

称号: [下級武僧], 異界の旅人, 夢見る者, 第2マップ突破者, ダンジョン踏破者

HP: 100%

MP: 100%

状態: なし

所持金: 112030p

満腹度: 100%

レベル: 20

経験値: 0/3377

体力: 51

魔力: 33

筋力: 36

防御: 51

精神: 27

知性: 51

敏捷: 9

器用: 12

技能:

適性: 体術16, 魔力拳14, 気留術11, 魔法(土12, 水12, 木12, 炎12)

技術: 触鑑定9, 精神集中10, 受身12, 疾駆11, 安定動作2, 遊泳11

支援: 捕獲握力強化, 逆境を超える心, 不動の守り, 海の心

耐性: 空腹耐性, 柔軟, 即死抵抗

特質: 盲人, 鈍感, 効果変化 欠損, 正々堂々, 真理

体術: 強撃, 足払, 投落, 連撃, 反撃, 掴撃, 飛蹴, 突撃

気留術: 癒気, 瞑想, 強化, 帰療, 浄気, 陣気

魔力拳: 魔拳, 魔盾, 爆拳, 腕刃, 伝衝, 破魔

土: 纏土, 集土, 土槍, 石縛, 石波

水: 纏水, 集水, 水槍, 水縛, 水波

木: 纏緑, 育緑, 緑槍, 弦縛, 緑波

炎: 纏炎, 着火, 炎槍, 熱縛, 炎波

装備:

牙鱗のナックル, 中級武道着, 銀編の魔布帽子, 聖銀の小手, 青銅編の鱗膝当て, 地蛇の鱗靴, 水中花の靴下, 守り石の首飾り, 緑石の指輪, 盗難防止の指輪

ゴーレム:

おくたん(採集特価ゴーレム)

インベントリー (通常アイテム):

ポーション X 10

MPポーション X 20

解毒ポーション X 5

安定ポーション X 5

魔払ポーション X 5

高級携帯食 X 10

串焼き X 5

ドライフルーツ X 5

テント X 5

煙玉 X 5

虫避け薬 X 10

脱出の札 X 1

布マスク X 3

浄水筒(小) X 1

インベントリー (素材):

なし (冒険者ギルドの倉庫に移動)

インベントリー (貴重品):

冒険者証 X 1

旅人の鍵 X 1

ゴーレムコントローラー (おくたん) X 1

インベントリー (装備品):

柔木の杖 X 1

樫の杖 X 1

炎の鉄拳 X 1

耐海武術着 X 1

甲羅ヘルム X 1