05-02 E1 東への道中

改定:

本文

俺は、始まりの鍵を使用した。

すると、何かがゆがむような音がした。と思ったら、すぐに収まった。

「始まりの街に入りました。」

アナウンスが聞こえて来た。どうやら、転移の演出は体感時間で3秒も無いようだ。ワープパネルで手軽に移動できるみたいな感じだろうか?

まぁ、移動演出がすぐに終わるのは楽だ。さっそく出発しよう。

「ナビー。ヒッツの村を目指す。東だ。先導を頼む。」

「了解しました。東出口へ向かいます。こっちです。」

必要なアイテム類は、ソルットで買い集めてある。ほとんどが、餃子饅さんの店で買った携帯食や串焼きだがな。

「E1 始まりの草原に入りました。」

「おくたん召喚。おくたん、いつも通り採取してくれ。」

草原に出たのでおくたんも活用だ。おくたんは指示を受けると、さっそく採取へと動き出した。

そうそう。昨日、採取用スコップと、つるはしの持ち手に鈴を埋め込んでもらったので、おくたんが近くにいれば、動いていることが俺にもわかるようになった。埋め込んだのは「鎮静の鈴」。鈴から音はするが、モンスターをほとんど刺激しないため、鈴の音を楽しみたい人向けのアイテムだ。

一方の俺は、交通路をナビーの先導に従って直進していた。ここに出るモンスターとは初期に戦っているから、もう相手する必要は無い。そもそも第1マップの交通路にモンスターは出ない。

「間もなく、E1 始まりの草原 東端です。」

「よし。おくたん送還。というわけで、ボスをぶっ飛ばそうか。」

戦闘をしていないので回復も不要。俺はボスフィールドへ突入した。

右側の草むらががさごそと揺れた。そして、…

腹の辺りに何かがぽふった。俺はそいつを掴むと、強撃で吹っ飛ばした。

「プッ!」

空気を噴き出すような音を立てて、そいつは吹っ飛んだ。そして触鑑定発動。

スマッシュラビット:

種別: モンスター・獣

レベル: 5

HP: 43%

状態: 敵対、真理の枷+1

説明: 森の近くに生息。発達した脚力で木の実を落とし、肉食動物を撃退する。また、風の力を纏うことで加速を得ることができる。

というわけでE1フィールドボス スマッシュラビットとの対面なのだが、能力差が開き過ぎて勝負にならない。

そもそもこいつは攻撃を受け止めてからの反撃に弱い。本来は、小さく素早いため、追撃や魔法での撃退が厳しいのだが、攻撃が飛び蹴りに依存しているため、受け止められると脆いのだ。

あと、兎であるが故に鳴き声は鼻息の類しかなく、まず聞こえない。草の中にいる時は音がするが、フィールド内は踏み固められた土なので、音が出る要素も無い。つまり俺にとってはカモだ。

というわけで、改めて待っていたら、横からぽふってなったので捕まえてからの投落!これでおしまいだ。

「E1 フィールドボス スマッシュラビットの討伐に成功しました。 E2 のマップが解放されます。」

「ナビー。ヒッツの村へ向かうから、先導してくれ。」

「了解しました。ヒッツの森を経由して、ヒッツの村へ向かいます。ヒッツの森はこっちです。」

俺はナビーの先導に従い、進んでいった。

そうそう。ダンジョンでの狩のおかげで、いろいろな技や魔法が増えた。ただ、使い勝手が微妙なものが多い。

「飛蹴」は、字の通りの飛び蹴りだ。相手が地上の場合は跳躍してからのドロップキック、空中の場合は跳躍しながら蹴り上げる動作だった。対空攻撃を兼ねていて、少し離れた位置から蹴りに行けるのだが、空振りするとバランスを崩すため隙ができる。そもそも俺の場合、ただの木に試しても、届かなかったり木の横を通り過ぎたりと散々だった。

「突撃」も、似たような技だが、ちゃんと衝突した時に特殊な力が働いて、吹き飛ばし効果が増す特徴がある。俺の場合「疾駆」を持っているため、至近距離で使っても十分な威力が出る… のだが、加速するということは止まるのも大変だった。よって、堅実に挑むなら素直に殴るか投げるかして、その後こっちから後退するべきだろう。

「陣気」は、前進を気の幕で包み込むことで、触れようとした敵にダメージを与える技だ。いわゆるオートカウンターであり、ラッシュバードのような突撃してくるくせにノックバックしやすいモンスターに有効だったりする。ただし、触れる前にモンスターを弾いてしまうと触鑑定の条件を満たせないし、モンスターが勝手にどっかへ飛んでいくので、俺が見つけられなくなることがある。

「破魔」は、相手のMPにダメージを与える効果と、妖精や精霊など、魔力が実体化した生物に弱点効果のある技だ。ただし基本が物理攻撃なため、ゴーストやスライムには通らない。どちらかと言うと、敵に使われてMPを削られるという嫌がらせ系の技だと思う。

魔法については、低威力だが扇形に広がる範囲攻撃魔法を習得した。しかし魔力拳の場合、触れた位置を起点にエネルギーが拡散していく単体多段ヒット、あるいは、伝衝の魔法バージョンになる。

なお、事前に纏土や土槍などを使っていないと、触れる過程で出したパンチには属性が乗らない。逆に言うと、水槍と炎波を同時発動して、水属性で突き刺した先から炎が出るという怪奇現象が可能だったりする。それと、パンチでなく触れることが条件なので、投げ技に重ねることが可能だ。

そんな感じで、技能レベルも着々と上がってきている。中にはレベル20や30、40などになると上位技能に進化するものもある。「安定移動」も、「安定動作」に進化して、移動以外でもバランスを崩しにくくなったからな。

次に進化する可能性が高いのは、「体術」だろう。ちなみに体術の上位ルートには、例えば以下のような分岐があり、まとめウィキで紹介されていた。

汎用 → 中級体術 → 上級体術 → 特級体術 →

拳特価 → 拳巧術 → 拳聖術 → 拳王術 → …

脚特価 → 戦脚巧術 → 戦脚聖術 → 戦脚王術 → …

投げ、全身技特価 → 投身巧術 → 投身聖術 → 投身王術 → …

近接特価 → 近接体術 → 上位近接体術 → 極致近接体術 → …

踊り子派生 → 武踊術 → 聖武踊術 → 神武踊術 → …

斥候派生 → 斥候体術 → 密閉体術 → 潜戦体術 → …

ヨガ派生 → 柔体術 → 上位柔体術 → 極致柔体術 → …

なお、全ての技能がレベル20で進化するわけではない。「鑑定」などはレベルがどこまでも上がるタイプだし、レベルが存在しない技能も多い。

基本的に「耐性」や「支援」、「特質」などの技能はパッシブ系の技能なので、レベルが表記されていない。開発者インタビューによると、内部値でレベルのある技能もあるが、レベルで測れない部分も影響してくるため、表示するとかえって混乱させる、という理由で非表示にしているらしい。

おまけだが、物理ダメージを減らす技能として「物理耐性」があるが、その上位互換に当たる「物理無効」は、物理攻撃を透過したり、膜で吸着したりする技能なので、根本的な性質が異なっている。

このため、他のゲームで用いられる「物理無効を得るために、微ダメージを受け続ける」を繰り返しても「物理無効」は生えない。代わりに「痛覚鈍化」や「苦痛を求める者」が生えるぞ。まぁ環境設定で痛覚をいじれば踏み倒せるし、後者は確率でHP1残る効果があるので、あえて習得するプレイヤーもいるらしいが。

「E2 ヒッツの森に入りました。」

今後の成長ルートなどを考えながら歩いていると、草原ではほとんど聞こえなかった小鳥の声が聞こえて来た。ピーピー言っているので、雀とは違うだろう。

確か、ヒッツの森では普通の鳥しか出なかったはずだ。いや、モンスターの鳥もいたと思うが、空は飛んでいなかったか、コウモリ系だったような…

さらに歩いていくと、おでこの辺りに何か引っかかった。手を伸ばしてみたら、それは葉っぱだった。硬くしなやかなので、枯れ葉ではなさそうだ。

葉っぱの先を探ってみると、細めの枝も見つけた。そして、枝に沿って手を動かすと、幹に到達した。どうやら、背の低い木があって、伸びていた葉に引っかかっただけなようだ。

そんな木が、今触れている場所、その前後、そして、ずっと先まで生えている… といった感じなのだろう。まとめウィキの情報では、基本的には木に挟まれた道だったはずだ。

ヒッツの若木の葉:

種別: 雑物・葉

説明: ヒッツの森で見られる木に付いているただの葉っぱ。森の魔力と栄養を吸収してすくすく育っている最中である。なお、葉っぱに特別な利用用途は無い。

ヒッツの若木:

種別: オブジェクト・木

説明: ヒッツの森で見られる木の一つ。森の魔力と栄養を吸収してすくすく育っている最中である。

この世界での木は、ゲーム内で10日程度あれば、普通の木に成長する。もし、植物の育成に成れた者が世話をすれば、3~4倍くらいになるらしい。

それと、伐採を行なっても、根っこまでこんがり焼いても、同じ所から同じように再生してくる。このため、動画内では「超再生の森」と呼ばれていた。

なお伐採について、まとめウィキでは以下のように紹介されていた。

「おくたん召喚だ。おくたん、採集を頼む。もし、伐採した木が根元から消えたら、そこでスコップを振っていてくれ。モンスターに襲われたら逃げろ。」

まずは村に向かうが、道中の採集はやっておく。なお、スコップに鈴が付いているので、おくたんがスコップを振っていれば、何かあるという印にはなるだろう。