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「ヒッツの村 武具屋に到着しました。入り口はこっちです。」
ルーカスと、ナビーに先導された俺は、武具屋に到着した。
「ここが武具屋だぜ。」
「ルーカス。武具を買う前に、今後の目標を決めるが良いか?」
「あぁ、いいぜ。どうすりゃ強くなれるかってことだよな?」
「まぁそんな感じだ。とりあえず、俺からお薦めを説明するな。」
道中で考えた、クエスト官僚に向けた育成プランを説明した。
- 戦闘に必要な武具を手に入れる
- 始まりの草原に行き、モンスター相手に訓練しつつ、金になる素材を集める。また、土魔法の技能を習得する。
- 集めた素材を売って資金を作り、足りない装備や道具を整える
- ギルドの依頼をこなして、ランクアップを目指す。
- ヒッツの森にて戦闘訓練と資金稼ぎをする。
- 稼いだ資金で、森のダンジョンに挑むのに必要な道具類を整える。
- 森のダンジョンに挑み、踏破する。
- 森を横断し、イスタールへ入る。
「う~ん、いろいろやることあるんだな。」
「項目にするとこんな所だ。実際には体で覚えたりこなしていったりすることだから、そんなに時間はかからないと思うぞ。」
「わかったぜ。だが、魔法は必要なのか?」
「主にゴースト対策だな。やつらには普通の武器が効かないんだ。特別な武器が手に入れば話は別だが、金がかかるし、そもそもこの辺だと手に入らない可能性が高い。だから、魔法で代用するんだ。」
「ゴーストか。森じゃ見てねぇが、必要なのか?あぁ、ダンジョンか?」
「ダンジョンだな。あと、イスタールの森だと昼間でも出るらしいぞ。」
「マジか。それならわかったが、どうせなら他の魔法も欲しいぜ。畑なんかに使えるって聞いてるしよ。」
「水や木の魔法は相性良いと思うぞ。あと炎も使えれば、細工の役に立つかもな。」
「炎って、燃えちまうんじゃねぇか?」
「高度な魔法ならそうだな。だが、こんな感じに、小さな火種を起こすものもある。」
俺は言いながら、着火を使い、地面に小さな火を出した。
「おぉ。想像していたより地味だが、確かに細工に使えそうだな。」
「魔法使いが使う本格的な炎が欲しいなら鍛錬だ。俺も専門じゃないからまだ行きついてないけどな。」
「わかったぜ。それで、これからやるのは戦うための武器だな。」
俺はルーカスの後を追って、武具屋に入った。ルーカスの動きから、店の入り口は木製の扉のようだった。
「いらっしゃい。おや?ルーカスじゃないか?」
「おぅ、アル。俺も冒険者することになったからよ、武器を買いに来たぜ。」
「ついに冒険する勇気に目覚めたかい。いいねぇ。」
ルーカスは、店員と思われる男と話し始めた。アルというのが、相手の名前だろうか?
いずれにしても、住民同士で仲が良いのは手続きがスムーズになるので助かる。
「で、後ろのお客さんは… お連れさんかな?」
「こいつはユーさんだ。冒険者の手ほどきを受けることにしたんだぜ。」
「Dランクのユーだ。ルーカスが戦えるよう、助けることになった。」
「なるほどねぇ。Dランクなら、問題無さそうだね。僕はアルローネだよ。よろしく頼むよ。」
アルというのは略称だったようだ。
「あぁ。それで用件だが、ルーカス向けに武具を探しに来た。欲しいのは、鎌と槌、鎧、頭、小手だな。あとアルローネさんから見て、他にあった方が良いと思うものはあるだろうか?」
「ん?おいおいユーさん。そんなに一度に買えないんじゃないか?」
「今すぐには買えないが、欲しい物は見ておくべきだぞ。強くなった自分の姿になるからな。それに実物を知れば、作れるかどうかも考えられるだろう?」
「ほぉ、さすが先輩冒険者。ルーカスの特技も知っているのかな?」
「ルーカスに話も聞いたし、鑑定もした。推定だが、木材系の装備ならルーカスが作ることもあり得ると思っているぞ。」
「ということだアル。すまないが、装備いろいろ見させてもらうぜ。」
「ハハハ、ご自由にどうぞ。でも、ちゃんと体に合うかどうかも見るんだよ。」
ということで、ルーカスは各種装備を見始めた。俺はその間に、アルローネと話をする。
「アルローネさん。ところで、魔法のアクセサリーか、属性の付いた装備はあるだろうか?」
「ん?そうだねぇ。魔力の指輪と、微かな光の指輪なら入荷しているよ。」
「おぉ。それはいいな、特に微かな光の指輪は探していたんだ。ぜひ2つとも買うぞ。」
「ありがとう。でも、もしかしてルーカスのためかい?」
「魔力の指輪は貸してやってもいいかもな。だが、基本的には俺用だ。」
「わかったよ。はい、これ。」
魔力の指輪:
種別: 防具・アクセサリー
説明: 緩やかにうごめく魔力が見える指輪。魔法の制御を僅かに助ける。
価格: 6000p
微かな光の指輪:
種別: 防具・アクセサリー
説明: 聖なる力で清められた魔法の指輪だが、その大部分はすでに失われている。再び聖なる力に晒されることで、力が戻る… かもしれない。
価格: 20000p
「確かにいいな。これ代金な。」
「まいど。それにしても、いきなり20000p出すなんて、どこかで稼いできたのかな?」
「3日ほど前までソルットにいてな。ダンジョンで稼いでいた。」
「ソルット… 港町ソルットかな?そうか。あそこは大きな街だもんね~。」
俺は代金を支払うとさっそく装備した。そして、手を握り、「浄気」を使用した。
「ん?あぁ、ユーさん、手が急に白くなっているね。それは?」
「これか?浄化の光だな。」
「え?浄化?しかも、ずっと手に残っているんだけど…」
「そうだな。そういう技能を持っているからな。」
そんな話をして30秒後… 光の指輪は砕け散った。
「技能 魔法(光) を獲得しました。」
「アイテム 光の指輪 が消滅しました。」
「え、えぇ?いったい何が!」
「あぁ。微かな光の指輪は、魔法を習得するための触媒として知られているんだ。習得すると砕けてしまうけどな。」
「そ そうなのかい?でも、いくら何でも砕けるの早くない?」
購入した指輪が1分も経たずに壊れて、光魔法習得… そんなバナナ? といった所だろうか?
実は「微かな光の指輪」は、けっこう欲しかったアイテムだ。それは、俺が今したように、聖職者になる以外のルートで、光属性魔法を安全に習得するために使える手段の一つだと考えていたからだ。
この指輪、説明の通り、身に着けた状態で聖なる力、あるいは浄化に触れていると回復していく。そして、完全回復すると、指輪の破壊と引き換えに光属性魔法が生えるのだ。
なお、他の習得方法は、危険な方法であったり、とても気の遠くなるものであったりする。例えば、妖精や精霊系のモンスターから光属性の魔法を打ち込まれ続ける(なお、その過程で無対策だと普通に死ぬようなこともいろいろされる)とか、強過ぎる光の力で他の魔法がかき消されるような指輪を装備し続けるとか、一日1回のお祈りを100回続けるとか、教会に50万p寄付するとか、出現率が週1回以下の教会系クエストを見つけて10回こなす… などだ。
なお、「微かな光の指輪」の条件も、簡単なものではない。まず、浄化系の技を使えるプレイヤーでないと、能動的に稼ぐことができない。そして、一般的な浄化魔法などだとすぐに霧散してしまうため、500回くらいは打ち込む必要があるのだ。
しかし、「魔力拳」下での「気留術」の「浄気」になると、事情が変わってくる。
この技の効果は、「手に浄化の気を纏わせて、触れている物を浄化する」である。つまり、浄化の力が魔力拳で圧縮され、気留術により指輪の近くで滞留するようになってしまうのだ。
その結果、指輪は恐ろしい速さで浄化され、習得条件を満たしてしまったわけだ。なお本件は、まとめウィキにて、過去に同じ方法で習得したプレイヤーから報告されていたし、先日の呪われた物品の浄化で体験している。本来、低レベルの浄化だと呪われた銀なんて御せないのだ。
何はともあれ、俺は無事に光属性魔法が習得できた。ルーカスの訓練と一緒に俺も伸ばすとしよう。
その後ルーカスは、鉄の鎌と革の鎧を購入した。
「ルーカス。木工などで作れそうな物はあったか?」
「う~ん。そうだな。帽子や小手、膝当てを木で補強することはできそうだったぜ。布よりは強くなるだろう?」
「そうだな。その辺りは銅板や銅編より重量を軽くできるから、良いと思うぞ。」
「だが、すぐ壊れることも心配だな。木材をそんなに薄くしたら強度が落ちるぜ。」
「まぁそうだな。俺の場合は、網状にした金属で包むことで、耐久を補強しているな。」
「なるほど。ユーさんの装備がほとんど金属性じゃないのは、そういうからくりか?」
「ダンジョンに潜るなら、耐久力も欲しいからな。とりあえず、始まりの草原で狩と素材採取しよう。」
「おぅ。俺も初戦闘だな。」