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「E1 始まりの草原に入りました。」
俺たちは始まりの草原にやってきた。そして現在は、交通路から外れた草の上だ。
「ルーカス。近くにモンスターが見えるか?」
「あぁ、見えてるな。」
「じゃ、狩ってみてくれ。俺も俺で動くが、お互い離れて狩った方が都合良さそうだからな。」
「わかったぜ。だが、その後ろにいるのは何だ?いつの間に出てきているようだが…」
俺は草原に入ってから、すぐにおくたんを召喚していた。そのことだろう。
「こいつは俺のゴーレムだな。ダンジョンの奥で手に入れた。」
「ダンジョンってそんなのも手に入るのかよ?それで、さっきから採取をしているようだが、何ができるんだ?」
「こいつは採集専門だな。モンスターに見つかりにくいのと、襲われても壊れないタフさが売りだ。」
「採集か?そんなの俺がやってもいいんだぜ?」
「戦闘に集中すればわかるが、意外と捗らないぞ。あと、それはそれとして、金が欲しい時には手が多い方がいいだろう?」
「それもそうか。だが、ゴーレムか。ダンジョンで手に入ったら俺も作ってみても良いかもな。」
「そのために、しっかり強くなろうな。」
「おぅ。じゃ、行ってくるぜ。だが、もし、モンスターが群れてきたらどうすればいい?」
「そうだな。ヤバいと思ったら交通路まで逃げろ。この草原の交通路なら、モンスターは途中で引き返すからな。」
「そうなのか?不思議なもんだが、わかったぜ。」
ルーカスはモンスターの方へと駆けて行った。
では、俺の方はおくたんに採取を任せつつ、光魔法の訓練をしよう。
2時間後…
「ルーカス。ずいぶん狩ったようだな。」
「あぁ。草原のモンスターって、想像より弱かったな。」
「確かにモンスターは強くはない。が、ルーカス自身が強いというのもあるぞ。」
「そうなのか?俺、モンスターを狩りに出たのは初めてだったんだが…」
「あんたは農耕や木工で培ってきた体力と力がある。そこに、ちゃんとした武器を持たせたんだ。その結果さ。」
「そうか。なら、群れも行けそうだな。」
「HPと鎌の耐久値に注意しろよ。壊れたら逃げて来い。」
「そうだな。だが、逃げるのはちょっとな…」
「気持ちはわかるが、素手で殴るのはお薦めしないぞ。この辺りならちょっと汚いとか、手が痛いだけで済むが、ヒッツの森には触ったら手が溶けるスライムや、トゲだらけのネズミもいるからな。」
「見たことはないが、素手だとヤバそうなのはわかったぜ。気をつけよう。」
こうして、ルーカスは5時間ほどかけて、草原のモンスターを200匹ほど狩ってきた。途中で慣れたのか、群れをトレインして切り刻んでいったそうだ…
「はぁ、疲れたぜ。だが、楽しかった。」
「そりゃ良かったな。楽しめるなら、あんたには冒険者は向いているかもな。」
「だが、最後の兎は驚いたぜ。あんなヤバいのが草原にいたのかよ?」
「あぁ、スマッシュラビットな。だが、装備を整えれば、ルーカスでも狩れると思うぞ。森のモンスターより少し強い程度だからな。」
「あの兎と、森のモンスターが同じくらいなのか?まだまだ強くならないとな。」
「そうだな。で、ここからだが、俺が使う魔法をじっくり観察していてくれ。そうすれば魔法が生えるだろう。」
「魔法を覚えるには、他人の魔法を見ていれば良いんだったな。」
「そうだ。魔法と、あと俺の手だな。」
では、スタミナ回復を兼ねて、ルーカスには土魔法の習得を目指してもらおう。
俺はまず、魔力拳や腕刃を使用。実際に魔力を纏うということがどういうことかを観察してもらった。
次に、纏土や集土、土槍、石縛などを使うことで、土属性の魔力が起こる作用を観察してもらった。
「土魔法ってそんな感じなんだな。土や石を扱うのか。あと、周りから集まってくるように見えるぜ。」
「その通りだ。魔法は、周辺の土や水、空気なんかを少しずつ集めて、戦いなんかに使えるように変化させる技能だな。砂や土、石なんかはどこにでもあるから、簡単に集まってくるぞ。」
「なるほどな。」
「あと、魔法を使うためには、集めた土や水なんかを変形する力、いわゆる魔力操作という技能が必要だ。試しに、俺の手に手を近づけてみると良いぞ。集まってくる感覚がわかるからな。」
「どれどれ?おぉ。なんだか不思議な空気だな。うねうねしているというべきか?あと、俺の手に砂がくっつくんだが、あんたの影響か?」
そんなことを休憩しながら繰り返していた所、無事に土魔法が生えたようだ。魔力操作も得たようだ。
「おしっ!魔法だ。土球と… 集土か?」
「そうだな。土球は、土の球を飛ばす魔法だ。集土は、手元に砂を集めて固める魔法だな。」
「砂を集めて固める?何に使えるんだ?」
「よく知られている使い方は、盛り土を作ったり、畑の土を混ぜたり、床の砂をかき集めて掃除したりする時だそうだ。戦闘で浸かったことは今の所無いな。」
「なるほど。だが、畑で使えるのはいいな。試してみよう。」
「とりあえず、魔力が切れるまで土魔法を使ってみてくれ。限界を知っておくことは大事だからな。」
ルーカスはさっそく土魔法を連発した。戦闘を全て通常攻撃で処理していたらしく、有り余るMPを解き放っていた。
「あぁ、魔力が尽きるってこんな感じか。こっちも疲れるというか、変な感覚だな。」
「そうだな。とりあえず、今日はこの辺で帰ろうか。ギルドで換金と、素材納品すれば、ランクが上がるぞ。」
「OKだ。正直、こんなに素材が取れるとは思ってなかったな。そのゴーレムのおかげか?薬草の数がびっくりだぜ。」
俺たちはヒッツの村に帰還。素材を換金して、一人17000pほどの稼ぎになった。おくたんも、草原が剥げるんじゃないか?というほど大量に採取してくれたからな。
その日は、飯を食って解散した。夜は自宅に戻るということだったし、俺もログイン制限時間があるからな。
翌日…
今日は、水と木の魔法習得訓練だ。それと、昨日買えなかった装備を揃えての慣らしを行なった。
「いや、こっちも爽快だな。槌って、モンスター吹っ飛ばせるんだな!」
「戦闘用の槌だからな。そのくらいのパワーは出るぞ。」
「だが、槌だと殴られることがあるな。ポーション助かってるぜ。」
「上からの振り下ろしにこだわらなくていいんだぞ。横降りにして吹っ飛ばすようにすればどうだ?」
「おぉ、そうか!そうだったな。」
槌術についても、特に問題無く使えているようだ。ただ、ルーカスが使う槌は木工などで使うトンカチサイズなため、被弾が増えているとのこと。
一般的な対策は、柄の長い大槌で中距離から打ち据える、盾と併用する、あるいは、命中部位の広いメイスだ。敏捷と器用と筋力を育てて練習すれば、攻撃の軌道に合わせて打ち返す「打返」が生えるのだが、今のルーカスには難しいようだ。
それでも狩は順調だった。結局、その次の日には、水、木、ついでに炎属性魔法も習得でき、スマッシュラビットも単独で狩れるようになった。
装備についても、購入した革装備に杉を編み込んで、少し性能を増していたようだ。
「おぉ、俺、強くなったんだな。」
「そうだぞ。明日は、雑貨屋でアイテム補充してから、森に行ってみよう。」
「アイテム補充?あぁ、ポーションか?」
「それもあるが、毒対策なんかも大事だな。」
「そんなのいんのかよ?」
「いるぞ。あと、森は道が狭いから逃げるのも限度がある。基本的に遭遇した敵は撃退必須だな。」
森の中には、毒持ちのモンスターも出てくる。ルーカスは前に出て攻撃するだろうし、盾は持たないスタイルなので、ある程度の被弾は避けられないだろう。
「始まりの草原と比べると厳しいんだな。」
「そうだ。だが、狩れるなら、もっと強くなれるぞ。そうやってステップアップしていくものだ。」
「そいつは楽しみだぜ!」
そんな話をして、俺たちは分かれた。
名前: ルーカス
種族: ヒューマン
職業: 農家
性別: 男
称号: [農業主], 木工主
レベル: 8
体力: 30
魔力: 10
筋力: 23
防御: 16
精神: 9
知性: 16
敏捷: 18
器用: 28
技能:
適性: 農耕12, 木工12, 鎌術8, 槌術8, 採集6, 細工12, 魔法(土2, 水1, 炎1, 木1)
技術: 解体8, 運搬12, 危険感知6, 魔力操作3, 疾走3
支援: 握力強化, 大地の心
耐性: 空腹耐性, 頑強, 暑気耐性
農耕: 収穫増加, 植物知識, 品質安定
木工: 刻細工, 木材鑑定, 品質安定
鎌術: 伐鎌, 受鎌, 連鎌, 俊鎌
槌術: 直打, 強撃, 頭打
採集: 採取量増加, 採取品質向上
細工: 素材縫合, 素材加工, 素材分解
土: 土球, 集土
水: 水球, 集水
木: 緑球, 育緑
炎: 炎球, 着火
装備:
鉄の鎌, 獣革の鎧, 杉編の綿帽子, 杉編の獣革膝当て, 木綿の靴下, 獣革の具足, 獣革の小手