05-09 雑貨屋で掘り出し物探し

改定:

本文

「おはようございます、ユー様。」

「おはよう、ナビー。今日も育成クエストだが、雑貨屋へ向かうぞ。」

「了解しました。雑貨屋はこっちです。」

ゲーム内 8時少し前にログイン。雑貨屋前で待ち合わせしているので、ナビーの先導に従って向かった。

「ユーさん、おはようだ。今日もよろしく頼むぜ!」

ルーカスはもう来ていたようだ。

そのまま雑貨屋へ入る。ここは、ルーカスが扉を開けている様子がしなかったので、扉が付いていないのだろう。

「いらっしゃい。おや、ルーカスじゃないか?」

「おうよ。冒険者始めることにしてよ。今日は買い物に来たぜ。」

「は~ん、あんたが冒険者ねぇ。装備が様になっているじゃないか?」

「そうだろ?昨日までは始まりの草原で慣らしていたんだぜ。今日はヒッツの森に行くんだ。」

「おやおや、ずいぶん自信あるね。だが、森は油断しちゃいけないよ~。」

「わかってるぜ。だから、ここにポーションなんかを買いに来たんだ。」

お店の店員だろうか?ルーカスはおばちゃんと話をしていた。

「ん?そっちの客は… 盲人かい?」

「あぁ、この人はユーさんだ。俺の師匠なんだぜ。」

「Dランク冒険者のユーだ。旅の途中で出会ってな。」

「ふ~ん。あんたも難儀な子に捕まったもんだね。」

「おいおい、ばあさん。俺は子供じゃねぇぞ?」

「何かの縁というやつだな。今日はヒッツの森で鍛えつつ散策の予定だ。まぁ、スマッシュラビットを倒せるようになったから、ちゃんとした準備をすれば大丈夫だと思っている。」

とりあえず、この人が店員で良いようだ。

「おや、スマッシュラビットを。それでヒッツの森ねぇ。で、ルーカス、何が欲しいのかい?」

「え?俺?」

「そうさ。あんたが使うんだろう?必要な物は自分で考えるものじゃないのかい?」

「えぇと… それは…」

「わからないなら自分で探して決めるんだね。」

「な なぁ、ユーさん。何を持っていけば良いと思う?教えてくれ?」

読書が苦手と言っていたし、調べる体質ではないだろう。別にかまわないので、俺は必要な物を挙げた。

「ポーション、MPポーション、携帯食、毒消し系、安定系の回復手段を5個ずつ。それと、テントと煙玉を1個ずつ。採集具が無いなら伐採と採取が1個、あとは好みで虫除け薬、それと携帯食に飽きた時のための甘味だな。」

「あれ?テントと煙玉、携帯食はなぜ必要なんだ?日帰りすれば問題無いだろう?」

「夜の森を徘徊するのは危険だからな。何かの手違いで、森から出られずに夜になった場合、そこで夜を明かした方が安全だ。」

「そうか。それと、毒消しと安定系って、薬草とポーションがあるが、どっちがいいんだ?」

「好みだな。ただ全体的にはポーションの方が良いぞ。飲むのが難しい状態になっても、体に振りかけられるからな。」

「それじゃポーションか。あと、最後の甘味ってなんだ?いるのか?」

「携帯食に飽きた時には役立つな。俺は食べやすいドライフルーツにしているぞ。」

「飽きる?あぁ、同じ物ばかり食ったら、というやつか。」

とりあえず日帰り前提で森に入るなら、この辺を準備しておけば、よほどのことが無い限り生還できるだろう。

「そういうことだ、ばあさん。一通りあるか?」

「は~、先生に聞くのも間違っちゃいないが、せめて店の商品を見るのと、一度くらい考えてから言いなよ。」

「そうだぞ。せっかくの掘り出し物が見つけられないと損するからな。」

「え?掘り出し物?そんなのあるのか?」

「あるかどうかはわからないぞ。だが、万人には不要でも、ルーカスにとっては価値ある物もあるということだな。だから、店の中は散策してみるべきなんだ。」

「あぁ、なるほど。とりあえず、さっき言った物は絶対必要だから買うぜ。それ以外は、ちょっと見てから考える。」

「おや、物分かりが良くなってるじゃないか。これも師匠のおかげなのかね?」

「さぁな。だが、ちゃんと何を買えば良いかの答えは拾ってきたみたいだから、いいんじゃないか?」

「わからないなら自分で調べろ」とは、「ギルドの図書室で本を読め」ということではない。わかる人に聞いて、それで答えてくれれば良い場合もある。

ただし、「ヒッツの森探索に必要なアイテム」という問題に正解は無い。従って、可能なら複数の答えや、これまでの経験と照らし合わせて、自身が満足できる回答を導き出すべきだ。

なお、「まとめウィキを使用しない」且つ「ゾンビアタックはしない」場合の最良と考えられる回答は、「店で購入可能な一通りのアイテムを、必要量の倍程度(例えば回復系なら日数の10倍個)になるまで補充」だろう。インベントリーがあるので、準備過剰でも困らないのだ。そして、2倍も準備してダメなら、根本的に戦略を変えるべきだ。

「ところで、氷を作る魔道具、水を沸騰させる魔道具、あと、体に付いた水を乾かす魔道具はあるか?」

「氷とお湯は残念ながら無いね。冷たくする魔道具と、風を出す魔道具ならあるよ。」

「ほぉ、それは興味があるな。どんなものだ?」

「あぁ、こいつさ。確かめてごらん。」

ふと思い出した、温泉宿で使いたい魔道具のリクエストを出してみたら、おばちゃんが俺に触らせてくれた。

冷却コップ:

種別: 雑貨・食器

説明: 魔法のコップ。中に入れた液体の温度を下げることができる。

価格: 1000p

乾燥扇:

種別: 雑貨・インテリア

説明: 設置すると回転し、湿度を下げる乾いた風を前方に送り出す。風の温度は周囲の気温に依存する。

価格: 1000p

俺は悟った。この雑貨屋、温泉宿とグルであると。

試す許可ももらえたので、浄水筒から出した水を冷却コップに注いでみた所、確かに冷たくなった。正確な温度はわからないが、冷蔵庫でよく冷えた飲料くらいにはなっているので、10℃くらいだろうか?

乾燥扇の方も動かしたが、「除湿する扇風機」と言って良い内容だった。手に垂らした水が、風を浴びると乾いていったのだ。しかもコレ、風の魔力を感じるぞ…

俺は迷わず2000pを支払い、2つのアイテムを購入した。

これで、入浴がより有意義になるだろう。それと、風魔法の習得もできそうだ。

「ん?なんだ、そりゃ?魔道具みたいだが…」

「あぁ、まさに掘り出し物というやつだな。ルーカスが温泉宿に通っているなら、価値が理解できると思うぞ。」

俺は、ルーカスにも冷却コップで水を注いでやった。そして、前方から乾燥扇の風もプレゼントした。

「おぉ、冷たい水だな。それに、これは乾くのが早くなるのか?不思議な魔道具だな。」

「そうだな。だがルーカス。これ、ある場所で使うと幸せになれると思わないか?」

「ある場所?ん、おぉ、そういうことか!確かにこいつは掘り出し物だな!」

こうして、ルーカスもしっかり魔道具を購入したのだった。これは文句なしに掘り出し物でいいだろう。

「今度、共同浴場で一杯やるか?もちろん、お泊りで予約してだ。」

「お泊りか。あぁ、そうか。つぶれてもいいってやつだな。だが、共同浴場かよ?」

「二人だけで飲むのは寂しいからな。」

「確かになぁ。だが、こんなモノで混ざってくれるだろうか?」

「ルーカスは、露天風呂で飲める冷たい飲み物に抗えるか?」

「うん… 無理だな。あんたの言う通りか。」

「ということなんだが、おばちゃんはどう思う?やるなら、準備がいろいろ必要なんだ。」

「おやおや。これじゃ大量注文が入りそうだね~。いいじゃないか。」

おばちゃんに振ってみたら、ニヤニヤしながら返してくれた。金の匂いを嗅ぎつけたのか、それとも、この手の悪だくみが好きなのか…

「だそうだ。俺たちは村で買える物を使っているだけ、何も悪いことはしていないさ。まぁのぼせるやつが増えるかもしれないけどな。」

「そいつは災難だね~。でも、のぼせるのは自業自得、あんたらが心配することじゃないよ。」

「おぉ怖い怖い。だが、面白いし実利もありそうなら、俺に否は無いぜ。」

「あとは、ルーカスの成長と稼ぎしだいだな。ダンジョンにも挑むわけだし。」

「おや?ダンジョンにも連れていくのかい?それはハードだね。」

「ルーカスの希望だそうだ。まぁ、ハズレしかなかったら止めるけどな。」

「ハズレ?ダンジョンにそんなのあるのか?」

「残念ながらあるぞ。俺だって入ったら死ぬような場所もあるから、こればっかりは我慢してくれとしか言えない。」

「ダンジョンって、どこに出るか、何が出るか、入ってみるまでわからないんだったよな?」

「そうだ。正確には、近づいてみるまでわからない、だな。」

「ルーカス。長生きしたけりゃ、ユーさんの言うことは聞いておくことだね。」

「あ、そうだ。冷却コップをあと4個くらい仕入れておいてくれ。1個だとろくなことにならないからな。4000p先に出しておくぞ。」

「わかったよ。仕入れとくから、ちゃんと取に来なよ。」

こうして、俺たちは掘り出し物散策と必要品の購入を終えた。

では、今日の本命… ヒッツの森へ挑むと使用。