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俺とルーカスはダンジョンへと進んで行った。と言っても、ルーカスは着火しながらなので、あちこち走り回っているが、俺は前進あるのみだ。
「なぁ、ユーさん。着火はできるだけした方がいいのか?」
「坑道は迷宮のような構造になっている。通った道がわかるようにするように着火した方が良いぞ。」
「あぁ、目印だな。それは大事だよな。」
そんな話をしながら歩いていると、
「うぉ!何かいるな。」
「明るい所まで戻れ。松明をいったんしまって迎撃だ。」
「だな。おぉ、茸が歩いてやがる!」
「たぶん、さまよう茸だな。」
「よし、先手必勝だ!」
その後、ざっくりとした音がした。このゲームでは、茸も植物系に分類されているため、ばっちり特効が乗るだろう。
「おや?一撃じゃねぇか。なんだ、これだったら、無理に誘い出す必要なかったぜ。」
「まぁ、植物系は倒しやすいと思うぞ。ちなみに、くっつかれると毒を巻かれるから解毒な。」
「わかったぜ。まぁ、俺も初めて見るモンスターいるだろうから、そういうのはちゃんと観察してから戦うようにするぜ。」
「そうだな。植物だけじゃなくてトカゲや蛇も出るぞ。」
このダンジョンでの出現が予想されるモンスターは、以下の9種類だ。第1マップ~第3マップまでのモンスターとも言える。
さまよう茸: 小さな足が付いていて歩き回る茸。ぶつかると毒の胞子を受ける。
地を這う茂み: 森にもいたモンスター。近づいてきて体をこすりつけてくる。葉っぱによる斬撃。
フィッププランター: シダ植物のようなモンスター。シダをムチのようにたたきつけたり、巻き付けたりしてくる。
寄生花: 動く花型のモンスター。茎を絡みつかせて吸血攻撃をしてくる。
モンスターセポリー: 花型のモンスター。風魔法を使う。
スネーク: モンスター、というか蛇そのまんま。毒は無い。
ポイズンスネーク: 毒持ちになった蛇。通常はキトル山に生息。
地蛇: 地中を移動し、足元から襲ってくる蛇。港町に続く野道の、夜の浜辺エリア限定。
いたずらトカゲ: すばしっこいトカゲ。噛みついてくる。HPが減ると逃げ出す。
「なんだ?分かれ道か?どっち行くべきだろうか?」
「そうだな。どうせ正解はわからないのだから、左から行ってみるでどうだ?右とか左とか考えるのは面倒だろう?」
「あぁ、確かにあっちこっちだと見落としそうだな。」
そんな感じで分かれ道も探しつつ、進んでいった。
戦闘に関しては、ルーカスが見つけしだい狩っていったので、俺はただついていくだけになっていた。
「あっと、行き止まりだ。引き返すしかないようだぜ。」
「そうか。さっきの分かれ道まで戻るか。」
「ん?ちょっと待ってユーさん。花っぽい何かが見えるぜ。あれもモンスターか?」
「モンスターだろうな。もしかすると、セポリーかもしれないな。」
「セポリー?あぁ、ユーさんが言っていた魔法を使う花か?もうちょっと近づいてみるか。」
「セポリーなら、風の魔法を使うから注意な。風魔法は見えにくいぞ。」
ルーカスは、モンスターセポリーに向かってかけて行った。そして、
「ぐへっ!これが魔法か。こんにゃろ!」
正面から風球を受けつつも接近して切り裂いたようだ。
「いてて。魔法って正面から受けたの初めてだが、けっこういてぇな。」
「だな。今回は風球だったが、アレが槍になると刺さるから注意だぞ。」
「あぁ、そうか。俺が浸かっている槍を、モンスターも浸かってくるのか。今後、防具も考えないといけないのか?」
「このダンジョンは、あくまでもヒッツの森と同程度に加減されているからな。イスタールに行くなら、武具のグレードアップは必要だ。そのための金を、今稼いでいるとも言うぞ。」
ゲームの王道だが、武具のアップグレードは大事だ。俺だって、それは厳かにできないからな。
「そうだな。それで、槍なんか、どうやって受けるんだ?やはり鎧か?」
「それもあるが、軽装でも良いものはあるぞ。例えば合革や鱗だな。けっこう硬いし、燃えにくいようになっているぞ。あとは、布装備でも、魔法が込められているものなら、ダメージ自体を減らすことができる。」
「へぇ~。つまり軽装でもそれなりには硬くなれるってことか?」
「そうだ。ただ、防具だって万能じゃないから、攻撃を交わしたり、受け流したりする技術を磨くことも大事だ。冒険者ギルドの訓練場で他の相手に挑むのも良いぞ。」
「ん?あぁ、なんかやり合っているやつらがいたのは、そういうことだったのか?」
そんな話をしつつ進んでいくと、2層への階段を見つけたようだ。なお、モンスターについては、全部ルーカスが狩っていたので、俺は何もやることがなかった。
「階段だ!こいつを下りればいいのか?」
「階段だったか。そうだな。次の層へ行けると思うぞ。」
「そういえばユーさん。蛇が2種類いたんだ。色が違ったが、あれは別種のモンスターでいいんだよな?」
「たぶんな。俺も実物を見たわけじゃないからわからんが、このダンジョンだと3種類ほど違う蛇が出るそうだ。」
「そうか。茸もそうだったが、森じゃ見ないモンスターも多いんだな。」
「ダンジョンのモンスターは、他の地域のモンスターと出会うチャンスでもあるな。場合によっては、ダンジョンでしか出会えないモンスターもいるぞ。」
「そっか。じゃ、降りて次に行こうぜ。」
そして、2層に入ったのだが…
ドシーンという地面が揺れる音が聞こえた。
「な なんだ!」
「これは、来たか。モンスターハウスだな。」
モンスターハウス。それは、フロア1つがだだっ広い部屋になっており、モンスターで溢れている空間だ。まとめウィキによると出現率は32回に1回程度らしい。なお、階段を見つければ全てを撃退する必要は無い。
「モンスター… マジか。あちこちいるぜ。こっちに来ているな。」
「だな。二人で分かれて撃退しよう。」
「だ だが、囲まれたら厳しいぜ。」
「なら俺が前に出よう。このダンジョンの群れなら、問題無く狩れるだろうからな。ルーカスは後ろに抜けて来たやつを頼む。あとは、溢れている植物をてきとうに処理してくれ。鎌なら一撃だろうからな。」
「お おぅ。わかったぜ。」
こうして、俺が前線でモンスターに群れられる戦いが始まった。
まだ距離があるらしいので、筋力、防御を強化して構える。あと、出しっぱなしにしていたおくたんは送還しておく。
最初に来たのは正面からだった。ぽふってなったので、掴んだらさまよう茸、強撃で処理!
次に横から牙っぽい何かで噛まれそうになったが食い込まず… 掴んでからの爆拳で粉砕!ポイズンスネークだったようだ。
さらに横から何か体に触れたので掴んだら弦だった。フィッププランターか!至近距離にはいないと思われるので腕刃で切り落とす!近づいてくるまで無視でいいな。
ん?今度は膝の辺り?あぁ、いたずらトカゲか。こんにちわ、パンチをプレゼントだ!
モンスターはまだまだたくさんいるな。細々したものが多いから少々面倒ではあるが、触れようとしたものをてきとうに払いのけていれば良いだろう。そろそろルーカスも植物処理してくれないかな?フィッププランターの本体が寄ってきてくれないんだ。
一方のルーカス…
「あ ありゃどうなってんだ?レベルの差ってやつなのか?」
ユーを前線に配置したことで、囲まれることなくモンスターを処理で来ている。大半のモンスターはユーにくぎ付けなのだ。しかも、現在進行形でモンスターが集まってきている。
そしてユーだが、攻撃を受けているようだが、傷付いている様子が見られないし、毒も負っていないように見える。
近くに寄ってきた蛇もトカゲも茸も、掴んでからのパンチで処理している。反撃系の技を使っているようにも見える。
それと、時より遠くから弦や、風の球が飛んできているのだが、ユーさんは全く臆していない。防具を揃えて鍛えれば、あんなに体は硬くなるのだろうか?
そうして観察していると、俺もがんばらないとと思えた。何かが沸き上がる感覚もする。
いや、気のせいじゃない。風の魔法が使えるようになったようだ。あの花の魔法を見ていたからだろうか?
俺は鎌を持ち、モンスター狩に加わった。
そうして加わってみると、モンスターは群れているように見えて、あんがい統制が取れていないことがわかってきた。後ろから花を切り倒しても、他のモンスターが反応することがあまりない。さすがに近づいたり、でっかい音を立てると違うのだろうが、暗くて見えにくいのはあっちも同じなのかもしれない。
そこから10分ほどで、モンスターの群れはいなくなった。