本文
「モンスターハウスのモンスターが全滅しました。」
モンスターハウスの場合、モンスターを殲滅すると通知が出る。どうやら終わったようだ。
ルーカスも途中から駆け回って狩りをしていたようだ。近づいてこない弦も、時々感じるそよ風もなくなったからだ。
「おーい、ユーさん。大丈夫だったか?」
「あぁ、問題無い。ルーカスもお疲れさんだ。」
「おぅよ。だが、ユーさん、すげぇな。あの群れに囲まれて無傷なのかよ?」
俺が無傷に近いのは、正々堂々の効果、第4マップ以降の装備、それと高めの防御のおかげだ。
あとダメージ自体は受けていたが、手が空いた時に癒気で回復していた。
「俺の場合は、敏捷や回避を切り捨てて、耐える方に特化しているんでな。」
「そういえば、ユーさんが走り回っている所を見ないな。いつも歩いていたようだが、それが素だったりするのか?」
「まぁそんなものだ。その分の頑丈さだな。」
「そっか。戦い方っていろいろあるんだな。」
俺たちは話しながら次の層へ向かった。なお、モンスターハウスの場合、フロア進入地点でマップコンプ状態になるので、ナビーが階段を見つけられる。
その後、3層、4層と問題無く進んで行き、5層に続く階段の手前で俺たちは休むことにした。
この時、ステータスの確認をしたのだが、ルーカスは更なる成長を遂げていた。
名前: ルーカス
称号: [戦う農家], 農業主, 木工主
レベル: 13
体力: 39
魔力: 13
筋力: 29
防御: 20
精神: 11
知性: 20
敏捷: 25
器用: 41
技能:
適性: 農耕12, 木工12, 鎌術13, 槌術11, 採集8, 細工12, 魔法(土5, 水6, 炎6, 木2, 風1)
技術: 解体11, 運搬12, 危険感知11, 魔力操作7, 疾走6, 観察13, 直感3
支援: 握力強化, 大地の心, 視力強化(暗), 反応強化
耐性: 空腹耐性, 頑強, 暑気耐性
農耕: 収穫増加, 植物知識, 品質安定
木工: 刻細工, 木材鑑定, 品質安定
鎌術: 伐鎌, 受鎌, 連鎌, 俊鎌, 急所看破
槌術: 直打, 強撃, 頭打, 回転, 震打
採集: 採取量増加, 採取品質向上, 安全採取
細工: 素材縫合, 素材加工, 素材分解
土: 土球, 集土, 土槍
水: 水球, 集水, 水槍
木: 緑球, 育緑, 緑槍
炎: 炎球, 着火, 炎槍
風: 風球, 操風
新たに風属性魔法、直観、視力強化(暗)、反応強化が生えていた。
これにより、戦闘への移行が素早くなったり、危険に対する備えがよりスムーズになったりした。あと関連して、弱点を探る鎌技「急所看破」が生えた。
風属性魔法については、俺も習得は目指している。現在、乾燥扇が稼働中だ。
翌日…
「ルーカス、おはよう。」
「おはよう、ユーさん。今日もよろしくな。」
「おぅ。それでさっそくなんだが、この次の階層では特別なことがある。」
とりあえず、この後に転移ゲート関連イベントがあるので、ルーカスにも心の準備をしてもらう。どちらかと言うと、急に体が動けなくなったりするので慌てないように… といった意味合いだが。
「ん?特別なこと?まさか、モンスターハウス再びか?」
「いや、違う。ダンジョンの挑戦者に対するご褒美がもらえるようだぞ。俺も以前もらってな。」
「マジか?ご褒美って、誰からだよ?」
「俺にも詳しくはわからないんだ。ただ、悪いことにはならないし、一度しか見られないものだ。だから、じっくり目に焼き付けておくと良いぞ。」
「珍しい物だからよく見ておけ、ってことか?それならわかったぜ。」
そこまで話ができたので、俺たちは5層の入り口へ入った。
そして、ルーカスに対しての転移ゲート解放イベントが始まった。
「な なんだ?体が… 動かねぇ!」
さっそく、以前も聞いたことのある、何やらピキピキという音が出始めた。そして、やはりルーカスは身動きが取れないらしい。
「あぁ、落ち着け、ルーカス。大丈夫だから。」
「そ そうか。わかったぜ。って、ユーさん?何やってるんだ?」
とりあえずルーカスを落ち着かせておく。そして、俺自身は、音のしている場所へと近づいてみることにした。
動画を聴取して知ったことなのだが、実はこのイベント、対象者以外は動くことが可能らしいのだ。
それで、動けなくなったキャラを無理やり動かそうとしたり、ポーズを取って撮影して楽しんだりしていたようだった。なお検証によると、イベント中に対象者を外から動かすことは不可能、座標転移系の魔法を含め、あらゆる手段が無効になるらしい。それを使って、「光の本流から現れる勇者」みたいなネタ動画も作られていた。
「ダンジョン。それは、この世界に存在する不思議の一つ。それは泡沫のように、現れては消えていく。昨日見た姿は形を変える。」
俺は、その声の聞こえる位置へ歩いて行った。さっきの音がしていたのもこの辺りだったな。
「しかし、そこに人々は踏み入り、そして持ち帰ることができる。あなたも、そんな不思議に挑む者。この場に立つことが、その証明。」
うん。近くで聞いてみると、やはり頭に流れたのではなく、妖精と思われる物体から出ているようだった。手を伸ばしてみてもすり抜けたけどな。
「世界の未知に挑む者よ。新たな道を切り開く者よ。未開の大地へ赴きなさい。そして、あなたの答えを摘み取りなさい。」
ふむ。妖精はたぶんこの辺りだな。高い所にいると思っていたのだが、あんがい低い所にいるんだな。
「そのための鍵の一つを授けましょう。さぁ、鍵を手にしなさい…」
そして、ここで消えて鍵が現れると… うんん、うん??
「う 動けるようになった。今のはいったい何だったんだ?」
「ん?あぁ、さっきの声が聞こえただろう?とりあえず、鍵があるはずだから、手に掴むんだ。」
「鍵?あぁ、そこに浮いてるな。」
そうして、ルーカスは鍵の元へ駆けて行き、それを手にした。
その鍵は、俺が聞こえていた音とは違う所にあった。
そして俺が触れていた謎の物体は手から溶け落ちるように消えた…
「ルーカスが、旅人の印を手に入れました。」
「技能 真理 が成長しました。」
流れからして、このイベント、いろいろな偽装工作が仕込まれているのかもしれない。それはそうと、真理が成長?
真理2:
説明: 真実を看破し、虚偽を滅する資格を得た。自身に対して偽りを与える干渉を無効化する。知性、精神上昇(微)。
デメリット: 自身も偽装に関わる能力を発揮できなくなる。
文面から、いくつかの精神干渉や幻影の類が無効になったらしい。いや、ちょっと待て。これ、もしかして眠り歌などにも有効か?確かアレ、精神耐性装備で防げるとウィキにあったような…
あと、知性、精神のベースが+1された。こちらは、まぁうれしい、といった所だ。
それと、消えてしまった謎の物体の触鑑定結果は以下の通りだった。
旅人の導き手:
種別: その他
説明: 詳細不明。
真理: この物体に触れることができるのは、真理を見抜く力を有するものだけである。そして、実際に触れることのできた者は、偽りの姿に惑わされることなく、その存在に行きついた者である。この世界の創造主は、この者によってもたらされる、新たな未知の発見を祝福するだろう。
こちらについては、結局の所どうなるのかがよくわからない。祝福というからには、悪いことではないと思う。いや、俺自体には影響は無くて、周囲に影響を与える感じか?う~ん…
「なぁ、ユーさん。旅人の印って物が手に入ったんだが、これは何なんだ?」
とりあえず、真理の謎はもういいだろう。俺は旅人の印、そして転移ゲートについて説明した。
「マジか?転移って、あの村の中央にあるヤツか。たまに冒険者が行き来しているのは知っていたが、こいつが必要だったんだな。」
「正確に言うと、イスタールにあるだろう錬金店で加工してもらうためのアイテムだな。だが、そこまで行けば、ルーカスでも行ったことのある街へ簡単に移動できるようになるぞ。」
「つまり、畑を維持したまま遠くへ行けるんだな?そいつは最高だ!」
「そういうことだ。とりあえず、今日はダンジョンを踏破して、準備ができたらイスタールへ行こう。」
「あぁ、そうだな。最下層にボスってのがいるんだろ?楽しみだぜ!」
というわけで出発。これまでと同様に進んで行き、程なくして最下層に続く階段までやってきた。
で、最下層に突撃したんだが…
「な なんだありゃ?フィッププランターの亜種か?」
「それは俺もわからないな。ルーカス、行けそうか?」
「鎌が効くなら行けると思うぜ。つたを一つずつ切ってみるか!」
ということでルーカスが突撃。俺も近づいて行ったが、すぐにばっさばっさとやっていたようで…
「ダンジョンボス ジャイアントシダクラゲの討伐に成功しました。」
「ダンジョン 植物と爬虫類の坑道 の攻略に成功しました。報酬を選択して下さい。」
俺が触る前に滅んでしまった。「伐鎌」で即死はしなかったようだが、低レベルダンジョンだし、鎌が特効だったのなら、あのばっさばっさで逝かれることも当然だろう。
そして報酬だが、
俺が選択できたのは、「木属性魔法の技能書」、「巨大な種」、「ゴーレムコア」だった。
ルーカスが選択できたのは、「力の種」、「巨大な種」、「復活薬」だった。
そこで、ゴーレムコアと力の種を交換することにした。ルーカスは念願のゴーレムを入手できるし、俺も自己強化できるので相互利益というやつだ。
なお「巨大な種」は生産系の素材だ。栽培で育てると「膨らみ草」という満腹度回復アイテムに、錬金では「巨大化」に関連するアイテムが作れる。ただ、第4マップで手に入るため、ダンジョンで狙う価値があるか?というと微妙な所だ。たぶん、始まりの街でも生産系プレイヤーが植えているだろう。
あと、技能書で習得できる技能を既に所有していた場合だが、関連する技能への経験値に還元される。今回のケースでは、「魔法(木)」と「魔力拳」の経験値が増えることになる。魔力拳が増えるのは、魔力の制御技能を兼ねているからだ。