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さて、このダンジョンに出現するモンスターは、以下の系統になるだろう。
ゴブリン系: S2で狩った職業系ゴブリンたち。レベルが上がっているが、所詮ゴブリン。ただし、ゴブリンエルダーなど、少し上位のモンスターも出るだろう。
コボルト系: ゴブリン種の上位扱いになっているが、この状況だとゴブリン系との区別が付かないかもしれない。
武装スケルトン系: 不死系その1。基本的に軽装で物理攻撃してくる。
動物スケルトン系: スケルトンバードやスケルトンウルフなど。牙やクチバシによる物理攻撃。武装スケルトンより動きは速い。
ゾンビ系: ゾンビ、グール辺りが出てくる。武器が無く、素でによる強打のため、打撃が特効でないゴーレムといった所。なお毒攻撃あり。
ゴースト: 森でも遭遇したゴースト。
レイス: 人のような外見のゴースト。氷や闇属性の魔法を使う。近接時にドレインタッチを使用するらしい。
俺は、さっそく歩き始めた。なお、ルーカスとアヤには、俺に寄ってくるモンスターは無視するか、あぶれたヤツを処理するように言ってある。
歩いていくと、遠くから骨のなる音が聞こえてきた。普通、歩くだけで骨の音が鳴るはずはないので、ゲームのお約束というヤツだろう。確かゾンビも、奇妙な足音だったはずだ。
そして、スケルトンとの距離が近づいてきたと思ったら、何かが肩にぽふってなった。振り下ろした刀だろう。位置が割れたので、掴んで強撃!骨は打撃弱点なので、これで一発焦点だ!
さらに進んでいくと、ゴブリンの「ギャッギャッ」という鳴き声がしてきた。あと、何かがぽふってなった。ゴブリンメイジか?
そのまま進んで行くと、懐かしいゴブリンの鳴き声も迫ってきた。槍のようなものも出てきたが問題無し、位置を捕捉したので、掴撃!ノックダウンした所に振討で止めを刺した。
今倒したのはゴブリンランサーだった。となると、魔法を使っていたモンスターは違う所にいるのか?ん、ゴブリンメイジ撃破の通知が来たな。後ろの二人が処理してくれたようだ。
一方、こちらはアヤ。
ユーは相変わらずだった。正面からの向かってくるゴブリンやスケルトンが全く相手になっていない。あ、今、ゾンビとスケルトンバードも捕まった。
先日、鑑定した際に、各種技能のレベルがとても上がっていることに驚いた。レベルに至っては20もあった。
話によると、S3のダンジョンを一人で踏破したそうだ。それも、正面から向かってくるゴーレムや人形系を全て倒したという。
防御力に至っては、確かに私の3~4倍もあるし、装備も何やら凄いものらしい。だから、今、ゾンビやスケルトンに襲われているのに、ダメージらしいダメージを負っていない。
あ、アレが噂のレイスだろうか?輪郭がぼやけているが、人っぽく見える。ユーは気づいていないようだ。
と思ったら危険感知が反応。
「ルーカスさん、こっちにも来ているよ!」
「あぁ、後ろだ。骨っぽい犬が2匹だぜ!他には見えてない。」
「ルーカスさんとスパイクで行く?」
「そうしようか。確か、スケルトンは打撃が良いんだったな。スパイク、盾で突撃だ!俺も行くぜ!」
ルーカスに活力をかけ、見送る。で、私はユーさんの方に視線を戻した。
すると、レイスがユーさんに近づいていた。手から、氷っぽいものが出ている。
しかし、やっぱりユーさんに効果なし。そして、ユーさんは気づいたようだ。レイスを掴んで、パンチ?え、爆散した?
アレ?ゴーストって、物理攻撃効かないんじゃなかったっけ?それとも、あの手に魔法をかけていたのかな?いや、パンチはわかるけど、なんで掴めたの?
戻って、こちらはユー。
ついに、ゴーストに手で触ることができた。普通のゴーストは、遠くから魔法しか撃ってこないし、アヤやルーカスが処理してしまうので、俺が触れる機会が無かった。
だがレイスの場合は、ドレインタッチを持っているため、近づいてくることもある。ドレインタッチは、触れた部分に魔力的な実態が発生するので、使われれば位置が特定できるのだ。
さらに、先ほど、氷っぽい涼しいものが体に触れたため、レイスが近づいていることはわかった。何しろ、このダンジョンで氷属性の魔法を使うモンスターはコイツしかいないのだ。
俺は霊掴を有効にして移動を再開。程なくして、レイスからドレインタッチが使用され位置判明。掴んでからの振討で撃破に至った。
そのまま進んで行き、無事に2層に続く入り口をナビーが見つけてくれた。
「2層に行けるみたいだぞ。」
「え?魔法陣しか見えないけれど?」
「あぁ、ここは魔法陣タイプか。階層間の移動手段は、階段だったり扉だったり、転移だったり、いろいろあるようだ。」
「へぇ。そうか。てっきり、会談で地下へ降りていくものだと思っていたぜ。」
「そういう遺跡型ダンジョンもあるぞ。ただし、階段で降りたはずなのに、次の階層でも空があるけどな。」
「それって、空のように見える天井画あるのではなくて、本当に空なの?」
「鳥を飛ばして試した人の話では、そうらしいぞ。ただ、100メートルくらいまでしか飛べなくて、それより上に行こうとしても押し戻されるらしい。」
なお、ダンジョンによっては、もっと高く飛べるケースもある。例えば「崖」や「塔」系のダンジョンだ。階層全体が縦に伸びているため、足場を上るか、クライミングするか、あるいは飛ぶ必要があるのだ。
「ところで、ユーさん。2階からは、俺が前で戦っていいか?護衛も悪くないが、ちょっと前で暴れたくなっちまった。」
「かまわないぞ。なら、後ろのモンスターは俺に回してくれ。」
そして、2層へ突入。
その後、ルーカスは、スパイクとの突撃狩を楽しんでいた。
「スパイク、ゴーストに突撃だ!」
「待て、ルーカス。ゴーストに物理は効かないぞ!」
「あ、そうか!スパイク、狙いを変えろ!確か炎が効くって言っていたよな!行くぜ!」
そんな一幕もあれば…
「え?檻と、モンスター!」
「って、おい!ユーさん、アヤさん!」
「あぁ、閉じ込め罠か。こいつらを全部倒せば開くから、掃討だ!ルーカスは、自分の身を守れ!」
「わ わかった!」
閉じ込め罠で分断されたりもした。なお、モンスターの大半は俺に向かってきたが、コボルトやゾンビなどが7匹程度だったので、特に問題も無く殲滅できた。
そして、20時が近づく頃… 俺たちは5層に続く魔法陣の前にいた。
「この次の階層入り口で、転移に必要なキーアイテムがもらえるようになるぞ。」
「本当?やった!」
「だな。一度しか体験できないと思うから、じっくり目に焼き付けると良いぞ。」
「そっか。じゃ、観察より描こうかな?」
「あぁ、良いとは思うが、確か身体が動かせなかったぞ。」
「そうなの?とりあえずやってみるよ。ダメだったら、過去に見た者を描く技があるから、それで何とかするよ。」
この人、ダンジョンの入り口や、階層の魔法陣、場合によっては道中でも何か描いている。「ダンジョンは一期一会なんだから」だそうだ。
なお、動画や写真は撮影しないのか聞いたら、もうやっているとのこと。それでもなお描くのは、後から見比べて楽しむためなのだそうで。
俺たちは5層に突入した。
そして、予定通りアヤに対して転移ゲート解放イベントが始まった。
俺は、もちろん、音のする所へ向かうことにした。アヤは… たぶん、描くためにあれこれしているのだろう。
ダンジョン。それは、この世界に存在する不思議の一つ。
それは泡沫のように、現れては消えていく。昨日見た姿は形を変える。
しかし、そこに人々は踏み入り、そして持ち帰ることができる。
あなたも、そんな不思議に挑む者。この場に立つことが、その証明。
世界の未知に挑む者よ。新たな道を切り開く者よ。
未開の大地へ赴きなさい。そして、あなたの答えを摘み取りなさい。
そのための鍵の一つを授けましょう。さぁ、鍵を手にしなさい…
言葉が終わったと同時に、さっきまで影も形も無かった物体に触れることができるようになった。触鑑定の結果も、以前確認した時と同じだ。
形状は… とりあえず人形でも、鍵でも、円形でもないし、石板でもない。ゴツゴツしているようだが、棍棒… サイダー瓶… でもないか。ただ、密度がありそうなので、これで殴ったら痛そうだ…
「ユーさん。そこに、何かあるの?」
アヤが近づいてきた。
「あれ?もう描き終わったのか?」
「うん。良い感じに描けたよ。模写と映写を組み合わせたからリアルタイムじゃなかったけどね。」
「そうか。ところで、アヤさんにコレは見えるか?手の上にあるんだが…」
「うん?見えないよ。ユーさんの手の平だけだね。」
「どれどれ、俺も… 見えないな。手だけだ。」
やはり、例の物体は透明だったようだ。
「そうか。不思議なものだな。」
「ねぇ、ユーさん、手、触ってみていいかな?」
「あぁ、触れるか気になるんだな。かまわないぞ。」
そして、アヤは俺の手に触ってきたのだが、不思議なことになった。
アヤの手は、物体を投下して、俺の手に触れてきたのだ。結果、俺はアヤの手と、謎の物体の両方に触れている状態になった。
「本当にここにあるの?私には、触れないみたいだよ。鑑定… も、ダメだ。ユーさんの結果になっちゃう。」
「俺に鑑定の通知が来たな。一応触鑑定もしてみるか… 変化なしだな。」
触鑑定の結果は、例の謎物体と、アヤのステータスだった。どちらも、特に変わった変化は無かった。
「アヤが、旅人の印を手に入れました。」
「え?称号?観察者?何だろう?」
どうやら、今回はアヤがやらかしたらしい。
観察者:
説明: 物事を観察し、理解を深めることを生業とする者の証。観察や記録に関する行為に補正(小)
まとめウィキに似た名前はあったと思うが… という感想はともかく、内容としては、アヤらしい称号だろう。観察や記録への補正であれば、描画や彫刻系の技能も範囲に含まれる。ただ、称号はセットしないと効果が及ばないので、使われないかもしれない。