06-05 E3D 魔法習得と報酬選択

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翌日、俺たちは順調に進み、昼前には最下層の手前まで到着した。そこで、ある提案をした。

「この先にボスがいるわけだが、倒すとダンジョンから出ることになる。そこで、時間があるなら、夕方までここで技能の訓練と狩をするのはどうだろう?」

「あぁ、せっかくだから狩して帰るということだな?良いと思うぜ。」

「訓練というのは私も良いと思うよ。でも、ダンジョンから出た後、夜の森になるんだよね?そこはどうする?」

「そこは、ダンジョンの入り口だった場所でもう一泊だな。だから、今日中に街まで帰りたいなら、今すぐボスを倒して帰るのが良いとは思うぞ。」

「あぁ、そうか。それなら狩だ。こっちの方が絶対稼げるからな。」

「う~ん、私も夕方までダンジョンでいいよ。それに、ボスがいるなら、その備えということにもなるしね。」

ということで、夕方まで訓練や狩に勤しむことにした。

実の所、このダンジョンのボスについて、予想ができている。おそらく、「ゴブリンジェネラルスケルトン」と、その取り巻きである「ゴブリンスケルトン」なのだ。

もし予想通りであれば、二人にはレベル、または、技能の育成に取り組んでもらうべきだ。「ジェネラル」と着くモンスターは、配下のモンスターの格を一つ上げる技能を持っているため、実際のレベル以上に強敵になるからだ。

なお、他にもモンスターの候補は存在している。その中には、ガーゴイルリーパーのような即死攻撃持ちもいる。もし、そいつらが出てくるようなら、事故を防ぐため俺が相手をしよう。最奥まで来て即死というのは悲しいことになるからな。

「ということで、光属性魔法が覚えたいなら見せるぞ。」

「光属性か。覚えて損が無いなら覚えておくか。」

「私も。今一番必要な魔法だよね?」

以前、光属性魔法は習得に苦労するという点に触れたが、あれは盲人であるが故のことだ。なぜなら、「魔法は使い手を見て観察すれば習得できる」からだ。ただし、光属性の魔法を使うモンスターは第3マップだと「精霊」系のダンジョンを引き当てるしかないので、習得難易度は高い。

ということで、「集光」や、「纏光」などを見たり触れたりさせることで無事に魔法が生えた。件の「冒険者指導」が仕事をしているようで、二人とも20分ほどで達成できてしまった。

その後ルーカスは狩に出向き、アヤは他の属性魔法も覚えた。風と炎属性がまだだったのである。

魔法習得の後は使い込んでの訓練だ。アヤは同時に印術のレベル上げも進めていたようだった。

一方の俺だが、レイス相手に訓練をしていた。

「ユーさん、正面からダークボール来るよ!」

「おぅ。ちゃんと球の形しているな!」

「あ、今度はアイスランスだよ~」

「おっと。これは刺さったか。確かに冷たいな!」

あえて、魔法の存在を教えてもらうことで俺に魔法が有効になる状態を作り、魔法を受けることにしたのである。

現在の知性と装備、そして活力に癒気があれば、レイスの魔法攻撃なんかじゃ崩れない。

「おや?もう来たのか?なら撃退だ!」

なお、ドレインタッチを受けた場合は即撃破している。一度隣接されると、敏捷的に逃げられないからだ。

そんな地道な苦労が実り、俺も夕方には闇と氷属性魔法が生えた。なお、その過程でアヤも両属性魔法を生やしていたぞ。

あと、途中でルーカスからヘルプ要請を受けたりもした。隠し小部屋を見つけたが危険感知が反応したとのこと。入ったら、室内型のモンスターハウスとなっており、3人で、30匹ほどの集団を殲滅したぞ。

そんな強化を重ねて、夕方… 俺たちは最下層へと進んだ。そこにいたのは…

「な 何あれ?ギロチンみたいなの持ったスケルトンだよ!」

「あぁ、骨の処刑人来ちゃったか。悪いが、俺が相手しよう。あの鎌は即死効果付きだし、投げてくることもあるぞ。もちろん、それに触れてもアウトだ。」

「げ、そんなヤバいスケルトンなのか?」

「ヤバいのはその鎌だけなんだがな。ただ、こんな所で即死したら、討伐報酬が出なくてもったいないだろう?俺は耐性があるから正面から挑めばすぐ終わると思うぞ。」

「あぁ、死ぬと報酬もらえなくなるのか。それなら、ユーさんに任せるのが賢明だな。」

「うん。私もそう思う。」

ということで、残念ながら楽しいジェネラル戦はお預けになってしまったようだ。これ以上強くなりたければ、さっさと第4マップに行け!ということでもあるのだろう。

俺はそのまま骨の処刑人の元へ接近。すると、途中で何かがぽふってなった。例の鎌を投げてきたようだ。

さらに接近すると、上からまたぽふってなった。そして、骨が揺れる音が正面から聞こえた。振り下ろしたのだろう。

俺は、骨を掴み、纏光からの振討、さらに爆拳と光波のセットをたたき込んだ。そして、骨がボロボロと崩れるような音がした。

「ダンジョンボス 骨の処刑人の討伐に成功しました。」

「ダンジョン ア人と不死の遺跡 の攻略に成功しました。報酬を選択して下さい。」

「すげぇ。ボスがあんなにあっさり砕けるのかよ!」

「打撃と光属性が弱点だからだよね?あと、ユーさんの近接体術って、上位技能だっけ?」

「だな。だから、できれば皆で戦えるジェネラルの方が良かったんだがな。」

「ジェネラルって何だ?」

「言い忘れていたな。このダンジョンだと、ゴブリンジェネラルのスケルトンが出てくる可能性があったんだ。それなら、取り巻きも出てくるから、皆でしっかり戦えると思ってな。」

「心配する所そこなんだ?」

その後、俺たちは報酬を手に入れた。

俺に提示された報酬は、「体力の種」、「急所看破の技能書」、「解放の証(視覚)」、「骨のギロチン」だった。今回は「解放の証(視覚)」を選択した。

解放の証(視覚):

種別: その他

説明: 人工知能ナビーによる視覚鑑賞制限を解除する。ナビーの視点から視認できる範囲に限り、生物や人物の検索、情報の取得を可能にする。ただし、使用者とナビーとの距離、並びに、ナビーと対象との距離の総和が規定値を超える場合、超えた距離に応じたコストが発生する。

これは、簡単に言えばナビーが融通の利く存在になるものだ。「近くにモンスターはいるか?」といった問い合わせが可能になるのである。

なお、通常の使い方としては、後方警戒や、茂みや木の裏側に潜伏した状態からの観測などに有効とされている。ナビー自体が索敵や看破系技能の対象にならないからだ。

ただし、遠くの物や、壁を透過した先などを見ようとするとコストとしてMPが消費される。まとめウィキに掲載されていた消費のルールは以下の通りだ。

消費MP = (使用者からナビーの位置まで、使用者が取れる移動手段でアクセスした場合の最短距離(m) + ナビーから対象までの直線距離(m) - 10(m)) * 10 (結果が 0 以下なら 0 になる)

なお、MPは、「魔力」の10倍に相当するため、現在の俺だと総和が33メートルを超えた時点で全MPが溶ける。上級の魔法使いなら100メートル先でも観測できるが、その距離なら、遠視系技能を持つモンスターや召喚獣と視界を共有した方が安上がりだ。

あと、使用者からナビーまでの距離計算についても注意が必要だ。例えば、垂直な壁はぐるりと回り込むためほぼコスト不足になるし、ナビーを空に飛ばして地上を見下ろすことも、人側の式が成立しないためNGだ。

そんな制限の多い効果ではあるが、盲人である俺が使うと、その価値は変じるだろう。何しろ、俺の代わりに視界を担当してくれるわけだからな。徒歩で移動するなら10メートルも視界があれば十分だ。

あと、「骨のギロチン」は、片手斧に分類される武器だ。攻撃力は低めだが軽く、わりと高い確率での即死効果も付いている。一般的な使い方は、戦闘開始時に投擲して確率即死を狙う用途であるらしい。いずれにしても、俺には不要だ。

続いてアヤだが、「体力の種」、「即死抵抗の技能書」、「ゴーレムコア」、「鎮静の印」が出た。

アヤが選択したのはゴーレムコアだった。「鎮静の印」は印術系のアイテムなのだが、マップを進めれば街で手に入るものだからだ。

最後にルーカスだが、「力の種」、「急所看破の技能書」、「呪われた骨の腕輪」、「闇属性魔法の技能書」が出た。

俺にも出たが「急所看破」は、相手の防御が低い部位がわかるようになる技術技能だ。育てると、「特効看破」になり、攻撃が特効を持ち始める。さらに育てると「特効伝衝」となり、他部位を攻撃したのに弱点部位に伝わるという強技能になるぞ。

なお、俺はこの技能を取得する予定はない。急所部位が視覚で表示されるので、俺には使用不能だからだ。似た技能に「急所予知」もあるが、「直感」からの派生なので、このルートもなしである。

最後に「呪われた骨の腕輪」は、そのまま装備すると、全能力が上昇する代わりに、デスペナルティの増加とアイテムドロップ率の低下が起こるアイテムだ。また、浄化した場合には「眠る骨の腕輪」に変化し、不死系モンスターからの被ダメージを減らす効果になる。

ということで、ルーカスが選択したのは、「力の種」だった。「急所看破」は、訓練すれば生えるもの、というか、既に道中で生えていた。その他の報酬は、引かれるか?というと微妙とのこと。

こうして、俺たちは報酬を受け取りダンジョンを脱出。翌日にはイスタールまで帰り着いたのだった。