06-06 今更だがイスタール観光

改定:

本文

「ユー様、おはようございます。」

「おはよう、ナビー。」

E3のダンジョン攻略を成し遂げた翌日、俺はナビーと街中を観光することにした。

アヤとルーカスとは、夕方、錬金術店の前で合流することになっている。二人とも用事があるのだそうだ。

「ナビー。ギルドの図書室にあった、この街の施設は何だ?」

「イスタールの主要施設は、冒険者ギルド、武具屋、雑貨屋、錬金術店、図書館です。また、昨晩の時点で、料理や雑貨を販売する露店が見られました。」

「おぉ、露店は見ていたのか。売ってあるものもわかるんだな?」

「食材やアイテム類が販売されていたようです。しかし、名称、効果等はわかりません。」

「外から見た感じ… といった所か。わかった。」

視覚制限を解除したことで、外から見える範囲での情報も収集できるようになった。これなら、露店の商品カテゴリーが絞れるので、俺でも立ち寄るべきかどうかがわかるぞ。

それはそれとして、ここでやるべきことも整理しておこう。整理する前に、だいぶやっちゃった節はあるのだが…

  1. 街中を観光する。
  2. E3フィールドボスの対策、具体的には「眠り胞子」の対抗手段を探す。
  3. 冒険者ギルドでいくつか依頼をこなす。いつもの素材納品と仕分けを予定。
  4. ダンジョンの攻略。達成済み。
  5. 迷いの森の散策。ほぼ達成しているので、残りはフィールドボスのついでで良い。
  6. E3フィールドボスを倒して第4マップへ。

E3フィールドボスだが、「マッシブマッシュ」と「茸ゴースト」2匹だ。通称「格闘茸と亡霊トリオ」と呼ばれている。

マッシブマッシュは、植物系だが、手足が生えていて格闘戦を仕掛けてくる。普通に投げ技も使うので、俺でも注意が必要だ。また傘から眠り効果のある胞子を振り撒いてくることもある。

一方の茸ゴーストは、ゴーストなので物理攻撃が通らない以外はただのザコである。攻撃手段は毒ガスと木属性魔法だ。ただし、マッシブマッシュが生きている限り、定期的にボスフィールドに乱入してくる上、育緑で回復させてくる。従って、出てきたゴーストの処理が必須だ。

俺の場合、マッシブマッシュを速攻で倒すプランを考えている。というより、ゴーストが積極的に近づいて来ないようなので、追いかけて処理するのが厳しそうなのだ。ナビーの視覚強化があるから探せそうではあるけれど。

そうなると、対策するべきは眠り胞子だ。それさえ対処できれば、格闘で負ける通りは無いと考えている。

眠り対策だが、アクセサリーか、耐性付与系のポーションがあれば… と考えている。

「眠り耐性」技能を得る方法もあるにはあるが、前提条件として、「眠り」を受けたり抵抗したりする必要がある。該当するモンスターと1対1になれれば良いが、先日の妖精の狩場のように、たいていは厄介なお供がいるので難しいだろう。

一応、E3の森には夜限定のモンスターとして「シングバード」が出現し、眠り歌を使ってくる。ただ、精神干渉計なので無効化してしまうだろうし、そもそもこいつの前で寝ると、仲間を呼んでどっか行ってしまうのだ。だから、数を稼ぐのが難しい。

「ナビー。武具屋に向かう。いつもの通り先導してくれ。」

「了解しました。武具屋はこっちです。」

ということで行動開始。まずは武具屋で掘り出し物チェックと行こう。

「武具屋に到着しました。入り口は開いています。こっちです。」

入り口が開いているかどうかもわかるみたいだ。まぁ扉だもんな。

そのまま中へ入っていった。

「いらっしゃい。あぁ、先日の若い兄ちゃんを連れてきた人だね?」

「あぁ。対マッシブマッシュに向けて準備中でな。できれば眠りか防塵系の装備が欲しいんだ。」

「あぁ、マッシブマッシュか。でも一人で挑む気かね?」

「まだ決まってはいないな。ただ、場合によっては一人で挑まなければと考えている。」

「防塵のクローズヘルムならあるよ。あいつの胞子なら、吸い込まなければOKだろうから、どうかな?」

「なるほどな。クローズヘルムか。他にはどうだ?」

「それ以外だと無いかな。眠り耐性の指輪も入荷はしていないんだよ。」

防塵の鉄製クローズヘルム:

種別: 防具・兜

説明: 顔を覆うことの可能な兜。呼吸器を保護するための機構が取り付けられているため、花粉や胞子を防ぐことができる。打撃にも強いが、やや重い。

価格: 7000p

装着も試したが、まぁ問題は無い、という評価だ。打撃耐性もあるようなので、格闘茸ピンポイントと考えるなら最良だろう。

「うん。良いな。これを買おう。それと、武具の修復確認を頼めるか?」

「はいよ。森超え、がんばってね。」

というわけで買い物&武具修復を済ませた。そこまで消耗はしていなかったけれど、メンテナンスはできる時にやっておくものだ。

「助かった。あと、そうだ。こいつを加工できるか?」

「ん?これかぁ。できるけれど、武器だと投げない不とか串にしかならないよ。」

「俺が作って欲しいのはコレだな。」

「この金属でそんなもの作るのかい?」

「そうだ。できるだけ強度を増しつつ、素材の個性が残るようにして欲しい。」

最後に、不良在庫になっていた素材の活用方法を思い出した。なので、その処理をお願いしておいた。

続いて、雑貨屋に向かうことにした。目的は、森超えに必要な消耗品の確保だ。

「ナビー。雑貨屋に向かう。先導をしてくれ。」

「わかりました。雑貨屋はこっちです。」

そうやって歩いていると、何かを焼いている匂いがしてきた。

「ナビー。近くで何か焼いているのか?」

「露天にて、肉を焼いているようです。ギルド公認の店舗になります。」

「なるほど。立ち寄るから先導してくれ。」

「はい。露店はこっちです。」

こうした寄り道も良いな。そう思いながら露店に向かって行った。

「ん?いらっしゃい。」

「あぁ。何を焼いているんだ?」

「隣街から仕入れてきた牛肉や兎肉の焼き肉さ。1皿300pだよ。どうだい?」

「頂こう。それと、この近くで座れる所はあるだろうか?」

「あいよ。椅子は無いが、この辺の人は石段に腰かけて食べてるよ。」

焼き肉を手に入れた。ただ、肉とは違う匂いもする。味付けの類だろうか?

とりあえずインベントリーへ収納する。

「ナビー。座ることのできそうな石段へ先導できるか?」

「はい。石段はこっちです。」

ナビーが石段でさえ誘導できるようになったぞ。優秀だ。

先導に従って進むと、杖が石に引っかかった。しゃがみつつ触れてみると、確かに座れそうな石段だった。

俺は石段に腰を下ろし、先ほど収納した焼き肉を取り出した。皿には、肉を刺すための串が1本付いていたので、刺して食べようとした。

が、うまく刺さらなかった。刺さりはするのだが、途中で肉がこぼれる。まぁ盲人だと、都合の良い場所に刺さる保証が無いので当然ではあるが…

仕方が無いので、ソルットで強いれた割り箸を取り出して食べることにした。こちらなら問題無く掴めるぞ。

味は… 甘味はあるが、タレというより果汁っぽい甘さだ。とはいえ、肉汁との相性は良いと感じる程度には美味かった。

触鑑定で調べた満腹度の回復量は、20%らしい。これなら、常備用に8皿くらいあると良いだろう。

「お、食ったみたいだね。どうだったよ?」

「美味かった。できれば、まとめ買いしたいぞ。」

「どのくらい欲しい?」

「できれば8皿だな。どうだ?」

「あぁっと、量は問題無いが、皿の準備があってね。1皿3倍にするから、3皿でどうだい?」

「なるほどな。かまわないぞ。」

そんな感じで、露店で買い物をしながら歩いて行った。

他にも、以下のような掘り出し物が手に入った。

魔除けの葉:

種別: スポットアイテム

説明: 地面に置いて燃やすことで、モンスターの接近を妨げる煙の出る葉。効果時間6時間。

ゴーレム用メモリー FIG1:

種別: 強化パーツ

説明: ゴーレムに装着することで、「体力」のベースが1上昇する。

ゴーレム用メモリー AGI1:

種別: 強化パーツ

説明: ゴーレムに装着することで、「敏捷」のベースが1上昇する。

ゴーレム用メモリー DEX1:

種別: 強化パーツ

説明: ゴーレムに装着することで、「器用」のベースが1上昇する。

基本的にフィールドやダンジョン内で休む時には、煙玉からのテントが鉄板と言われている。では「魔除けの葉」の役割は何か?というと、分かれ道に設置することで、モンスターの侵入経路を制限できることだ。俺が想定している用途は、狩場でモンスターの通行を制限する用途だけどな。

そして、ゴーレム用のメモリーがここで手に入るとは思っていなかった。隣、第4マップから出始めるものだからだ。売られていたのは最低性能だったが、最大8つまで装着でき、ゴーレムの能力を底上げしてくれる。

今回、体力、器用、敏捷が上昇するメモリーを1個ずつ購入することができた。おくたんが少し強化できるだろう。

「雑貨屋に到着しました。入り口は閉まっています。こっちです。」

ようやく雑貨屋に着いた。杖で触れた入り口は、引き戸だった。右側に付いていた取っ手を引っ張って中へ…

「いらっしゃい。おや?盲人か?」

「あぁ。迷いの森の東へ向かうのに必要な物を買い揃えたくてな。」

「ふむ。それで、何がどのくらい必要かな?」

俺は、ポーション、煙玉、テントなど必要な物を買い揃えることとした。

「ほいさ。これが注文のやつだな。代金はもらったから確認してくれよ。」

「わかった。それと、盲人用の杖は扱っているか?」

「あぁ、その杖の替えか?ボロボロだもんなぁ。」

実は、がんばってくれていた柔木の杖だが、さすがに下手ってきている。現実の白杖は、事故が無ければ3年くらい保つのだが、こちらではそうもいかないようだ。まぁ現実のそれよりも過酷な環境で使っている影響もあるだろう。

「白木で作られた杖があるよ。戦闘杖の失敗作だが、頑丈だと評判さ。」

「ん?悪いが、少し試させてもらって良いか?」

「あぁ、もちろんだとも。」

白木の杖:

種別: 武器・杖

説明: 木製の戦闘杖。熱や冷気に強く、魔法使いが攻撃の受けに利用できるよう、頑丈に作られてもいる。ただし、魔力触媒としての効能に欠陥がある。

価格: 5900p

「なるほど。丈夫なのは良いな。長さもちょうど良い。」

「良かったよ。存分に確認したら持ってきてくんな。生産するからさ。」

ということで、本当に白杖持ちになるようだ。まぁ、この世界だと杖の色に意味は無いようだが…