06-09 完成、マジカルエングレイバー

改定:

本文

「いらっしゃい。おや?先日作成したゴーレムの調子はどうかな?」

中から聞こえた声は、先日、ルーカスと訪れた時と同じ男性の声だった。店長で良いだろう。

「あぁ、覚えていたか。活躍しているぞ。」

「それは良かったよ。それで、今日は何用かな?」

「内容としては先日と同じだな。こっちの人の旅人の証と、ゴーレムコアを頼みたい。」

「ふむ。そちらのお嬢さんでいいのかな?」

「あ、はい。これ、旅人の証です。あと、こっちがゴーレムコアと、レシピです。」

これで、アヤも無事に転移ができるようになるだろう。

「おっと。ゴーレム作成の素材、というか、憑依先として、こいつを使って欲しい。」

そして、俺は武具屋で作成依頼したアイテムを取り出した。

聖銀の彫刻刀:

種別: 武器・小刀

説明: ダンジョン産の聖銀の板を用いて製作された彫刻刀。強い魔力を帯びると共に頑強さを備えている。武器としての性能は貧弱だが、描画や彫刻において力を発揮する工夫がされている。

真理: かつては、所有者との一体化を望む混沌化した呪いを帯びていた。しかし、現在は浄化されたことで、所有者を害する力は失われている。

「な 何!これ?聖銀ってどういうこと?」

「聖銀は、いわゆるミスリルだな。強い魔力に晒された銀が変化したものだが、特に一度呪われて浄化されると、こうなる傾向があるぞ。」

「おやおや、詳しいね。まさか聖銀なんかが持ち込まれるとは思っていなかったよ。」

「説明はわかったよ。でも、いいの?こんなの浸かって。」

「昔、手に入ってしまった不良在庫だからかまわないぞ。薄くて小さかったから、武具屋でもまともに使えないと言われた。売り払うにはもったいないしで困っていたんだ。」

「不良在庫ねぇ。でもこれ、とんでもないものできるんじゃないかな?僕はそう思うよ。」

「レシピは見たんだよな?相性ばっちりだと思うんだ。」

「あぁ、まだ見ていなかったよ。どれどれ… ってこれは!」

「どうしたの?」

「うん。確かに相性だけ言えばばっちりな気はするんだ。でも、ゴーレムらしくないね。」

「ゴーレムという名のリビングソードだっけか?そんな風に聞いているぜ。」

「あぁ、なるほどね。それなら理解できるかな?正直、こんな発想をしたことは無いけれど、作るのは大丈夫だと思うよ。」

ということで、作成を依頼することになった。

「あと、そうだ、アヤさん。一つやって欲しいことがあったな。」

「え?何?」

「テーマは自由で良いから、この彫刻刀に、思うがままに描いて欲しい。要は、主人の意思を刻み付けるというものだな。」

「ん?わかった。でも、小さいから複雑なのは難しいかな。それと、描くのに使う技は?」

「失敗しない自信のあるものが良いな。それと技については、複製じゃなく直接描くタイプが良い。硬刻辺りか?」

「そうだね。その2つでやってみるよ。」

そして、アヤは彫刻刀に印を刻み込んだ。

それは、アヤがこのゲームを始めようと思ったきっかけになった動画で、空に映っていた模様の一つだった。雲の動きや魔法のエフェクトから生まれた偶然の産物だったが、とても記憶に残っているシーンだったという。

そして、ゴーレムは無事に出来上がった。

ゴーレム マジカルエングレイバー:

形状: 霊体

職業: 複製師

レベル: 18

状態: 正常

HP: 100%

MP: 100%

体力: 2

魔力: 56

筋力: 2

防御: 2

精神: 44

知性: 2

敏捷: 56

器用: 56

技能:

適性: 複製11

技術: 分身11

支援: 魔力極回復, 感覚共有(触)

特質: 魔道人形, 霊体, 憑依, 主従

憑依: 聖銀の体, 魔力伝導, 一体性向上

装備:

なし

「召喚、マジカルエングレイバー!」

さっそく、アヤはゴーレムを呼び出していた。なお、名前についてはまだ考え中とのこと。

「あ、出てきた。でも、なんだか頼りなさそう。えっと、どうしたらいいかな?」

「動きをイメージしてみると良いぞ。ちなみに、アヤさんがハテナっているとゴーレムも同じくハテナになるから注意な。」

「あぁ、そういうことね。本当だ。動く動く!」

「マジか!彫刻刀がクルクル回ってるぜ!って何だ?空に何か模様が!」

「うん。空刻で描いているんだよ。ちゃんと技能も使えるんだね。」

「これが複製師と、アヤの制御を忠実に再現しようとする力だな。ただ、技能の方は、レベルが複製のレベルに依存するから、まだ水には描けないと思うぞ。」

「あぁ、確かにそんな感覚するね。できるかどうかはっきりわかるよ。」

「えっと、これはいったい何をしているんだい?錬金した僕が言うのもおかしな話なんだけどね。」

「浮いている彫刻刀が回っているヤツか?アヤさんが持つ描画や彫刻系の技能を再現しているんだ。彫刻刀が飛んでいける範囲ならどこにでも描けるぞ。もちろん、触媒だから、魔法も使えるはずだな。」

「そ そうなんだ。確かにリビングソードだねこれは。僕も、こんなゴーレムを目にしたのは初めてだよ。」

「とにかく助かった。俺たちは、試運転もあるから行くな。」

「あ、うん。利用ありがとうございました。」

その後俺たちは、E3フィールドボス ボアレックスの出てきた広場にやってきていた。もちろん、ボアレックスは処理済みだ。

「うん。広さも十分かな?いろいろ試してみるね。」

「そうか。悪いが、俺も魔法の訓練をするから、ぶつかったらごめんな。」

「うん。そういえば、注意することって何があるのかな?」

「そのゴーレムについてか?」

アヤが扱うゴーレムの運用においては、いくつか注意事項もある。

  1. モンスターへの突撃や受けに使うことはNG。戦闘武器としての性能が貧弱な上、浮遊特性のため踏ん張りが効かない。
  2. 魔法の受けに関しては、ミスリル由来の耐性で、炎や光、闇などには強い。だが、土や水など実態を伴う魔法は、 1. と同じ理由で吹っ飛ぶ。
  3. 「武器」に憑依している扱いなので破損に注意。消費した耐久値は武具屋等で回復してもらうこと。
  4. まんがいち破損した場合は、別のアイテムに憑依させる必要あり。憑依させないと、デメリット都合で最大HP1の霊体が露出する。
  5. 破損した際の憑依先は、魔力や属性のこ込められた、または呪いに関わった武器が良い。魔力を帯びていない武器に憑依させると操作性が著しく低下する可能性あり。
  6. 飛ばす先は、視認できる範囲に限ること。アヤが見失うとゴーレムも同じ反応をしてしまう。

「けっこういっぱいあるんだね。まぁ、確かにダメっていうのはわかるけれど。」

「それは同意だな。まぁ、今の内に慣らしておけば良いぞ。」

その後、ボアレックスのいた広場には、描画を楽しむアヤ、そして、魔法の訓練に明け暮れる俺たちがいた。

ルーカスの話によると、分身を用いて3対になったゴーレムを繋ぎ合わせた模様を描いたり、色を使い分けてカラフルな印を作ったり、同じ地点に3つの描画を重ねたりしていたようだ。最後の方は、空中に窓枠を描き、その中に森の木々を描いていたらしい。

なお、アヤ自身は集中しているようで、描画中は一切の反応を示さなかった。ルーカス経由で話を聞くことになったのはこのためだ。

「そろそろ昼になるな。街に戻るか?」

「あ、もうそんな時間なの?確かに満腹度がピンチだ!」

「俺たちはMPが空っぽだぜ。帰ろう。」

そんなわけで、お昼になり帰還。昼飯をギルドで食すことになった。まぁ俺やルーカスは、空腹耐性の影響で、それほど減っていないのだが…

「今日はありがとう。あとは実戦でがんばってみるよ。」

「おぅ。ところで、ユーさんたちはこの後どうするんだ?俺は、南か北に行ってみるぜ。」

「えぇと… そうか。アヤさんに依頼があったな。」

「ん?私何か約束したっけ?」

「図書館だな。」

「あ、忘れてた。いいよ、お昼から行こうよ。」

なんだかんだ言っていろいろやったが、当初、アヤに依頼したことは、図書館での読書だ。実の所、ナビーの視覚を解放したので、本は読めるようになったのだが…

「じゃ、お別れだ。今度こそ巣立ちだぜ。俺もがんばらねぇとな!」

「ルーカス、巻き込んで悪かったな。」

「ダンジョン探索で強くなれたし、たっぷり稼げたから問題無いぜ。じゃぁな!」

今度こそルーカスの巣立ちだ。とはいえ、転移であちこち移動できるようになったので、また会うこともあるだろう。

「あっと、そうだ、ルーカス。こいつを持っていくと良いぞ。」

「ん?あぁ、魔力の指輪じゃねぇか!いいのかよ?」

「鑑定が生えたお祝いだな。あと、魔法を育てたいなら、こういうアクセサリーもチェックだ。指輪を見て、思い出すといい。」

「なんじゃそりゃ。だが感謝するぜ。」

そして、ルーカスは、今度こそ旅立っていった。なお、彼は、今回の旅でさらに一段成長したから、キトルやミーミ辺りのモンスターじゃ相手にもならないだろう。

名前: ルーカス

称号: [戦う農家], 農業主, 木工主, ダンジョン踏破者, 第2マップ突破者

レベル: 16

体力: 44

魔力: 15

筋力: 36

防御: 23

精神: 13

知性: 26

敏捷: 28

器用: 46

技能:

適性: 農耕14, 木工14, 鎌術16, 槌術16, 採集12, 細工14, 魔法(土9, 水9, 炎9, 木9, 風6, 光3)

技術: 解体15, 運搬12, 危険感知16, 魔力操作11, 疾走12, 鑑定2, 直感10, 急所看破8

支援: 握力強化, 大地の心, 視力強化(暗), 反応強化

耐性: 空腹耐性, 頑強, 暑気耐性

農耕: 収穫増加, 植物知識, 品質安定

木工: 刻細工, 木材鑑定, 品質安定

鎌術: 伐鎌, 受鎌, 連鎌, 俊鎌, 投鎌

槌術: 直打, 強撃, 頭打, 回転, 震打, 爆槌, 連打

採集: 採取量増加, 採取品質向上, 安全採取

細工: 素材縫合, 素材加工, 素材分解

土: 土球, 集土, 土槍, 石縛

水: 水球, 集水, 水槍, 水縛

木: 緑球, 育緑, 緑槍, 弦縛

炎: 炎球, 着火, 炎槍, 炎縛

風: 風球, 操風, 風槍

光: 光球, 集光

装備:

鉄の鎌, 青銅編の合革鎧, 青銅編の合革帽子, 合布の膝当て, 合布の靴下, 合革の具足, 合革の小手, 魔力の指輪

ゴーレム:

スパイク(突撃系支援ゴーレム)

ゴーレム スパイク:

形状: 人型

職業: 騎士

レベル: 16

体力: 28

魔力: 26

筋力: 31

防御: 33

精神: 2

知性: 28

敏捷: 33

器用: 23

技能:

適性: 槍術10, 盾術10, 魔法(治療10)

技術: 安定移動10, 魔力操作10, 疾走10

支援: 反応強化, 突撃強化

特質: 魔道人形, 魔道吸収, 看護

装備:

鉄の大槍, 鉄の大盾, 合革の鎧, 合革の兜, 合革の膝当て, 合革の小手