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「ユー様、おはようございます。」
「おはよう、ナビー。今日は森の東端を目指すぞ。3日くらいかかるだろうけれど、先導を頼むな。」
「了解しました。イスタール 東出口へ向かいます。こっちです。」
さて、この街でやるべきことも一通り終わった。だから、今日は、迷いの森を抜けて、第4マップへ挑むとしよう。
「あ、ユーさ~ん!」
そう考えていたら、遠くから、昨日ギルドで別れたアヤの声が聞こえてきた気がした。いや、でも、「今日はインできないんだ。さよならだね!」と別れたはずなので、気のせいか?
「ふ~、まだ街にいたんだね。」
「えぇと、アヤさん?でいいんだよな?」
「そうだよ。あ、昨日のことだよね。リアルの都合でインできることになっちゃって。」
「そうか。それで、俺に何か用か?」
「冷たいな~。私もフィールドボス倒したいから、一緒に行こうよ。」
どうやら、せっかくインできるなら、この機会にE4へ進んでしまいたいらしい。
そういうことなら、基本的に否は無い。「迷いの森」と言われているが 、「ナビーの先導で商人が往来に使う道を進む」予定の俺にとっては「モンスターが違うヒッツの森」でしかないからだ。
「かまわないぞ。ただ、森超えの準備はまだだよな?片道2日程度かかるらしいから、失敗した時の備えも込みで4日分の準備が必要だと思う。」
「あ、うん。そうだよね。買ってくるから、出口で待っててよ。」
「あっと、睡眠か胞子を防ぐ手段は絶対に入手してくれ。お供が無限に沸いてくるから、ボスの胞子で寝たら詰むぞ。」
「あぁ、そんなこと言ってたね。わかった。」
そして、俺が東出口に到着して少しした所で、アヤが追い付いてきた。まぁ俺自身の歩みは遅い自覚があるからな。アヤは走っていたようなので、納得の結果ではある。
「ナビー。交通路を通って、森の東端へ向かうから先導してくれ。」
「了解しました。こっちです。」
俺たちは、迷いの森の横断を始めた。
「ん?何か襲ってくるみたい。あの緑のかな?」
「ミドリガラスか?保護色だと聞いたが…」
「うん、確かに緑だね。でも、よく見たら違うよ。あのカラス、少し色が薄いみたい。」
「色の違いに敏感だと保護色を貫通するのか。生産系の技能だと思っていたが、認識を改めたが良さそうだな。」
そんな話をしつつ、正面に来たモンスターだけ倒して進んでいった。たまに、後ろからも襲われたりしたが、キーキーと騒ぐライドモンキーたちなので、対処に送れるということは無かった。
「分身からの役霊3対だよ!あの猿をあっちへ!」
「ウキ?ウきぇー!」
「ん?あっちってこっちか!」
アヤのあっちとは、俺の方だったようだ。まぁ、アヤに近づけさせないようにするという意味では正しい対処か…
そして印術をちゃんと使っているようで何よりだ。まだ、火力のある印を持っていないので、支援攻撃が主なのがおしい所。
途中で野営を挟み、2日目も16時に差し掛かる頃、俺たちは森の東端に到着していた。
「いよいよか。」
「えっと、まず、守りと活力をかけて、その後はゴーストを殲滅、でいいんだっけ?」
「だな。茸は押しとどめるよ。」
「ユーさん、気をつけてね。」
プランも確認したので、俺たちはボスフィールドへ入った。
「あ、待って、ユーさん。地面から何か出てくるよ!」
「出てくる?茸か?」
「わかんないけど、大きいよ。あ、茸の傘っぽい。」
今までのボスのように外からやってくるものと思っていたが、茸らしく生えてくるタイプだったようだ。
俺は、自分の筋力、防御を強化。さらに、アヤから活力と守りの印術がかかった。これなら物理に強く出られるぞ。
近づいていくと、前方から何か出てきてぽふってなった。掴むと、まさしくマッシブマッシュだった。反撃開始だ!
マッシブマッシュ:
種別: モンスター、フィールドボス、植物
レベル: 18
HP: 100%
状態: 敵対、真理の枷+1
説明: 柔軟に動く手足が生えた巨大な茸型のモンスター。その特性を生かした格闘戦を得意としているだけでなく、近づく者に脱力をもたらす胞子を纏っている。
識別:
体力: 630
魔力:180
筋力: 45
防御: 36
精神: 9
知性: 45
敏捷: 27
器用: 27
属性: 木
先日「識別」を得たことで、希望すればモンスターの基礎ステータスも閲覧できるようになった。ただし、音声ガイダンスで全てを聞いていたら大変なので、どうしても知りたい場合に使おう。まとめウィキの方が詳しく載っているからな。
とりあえず掴んだ部分は離す。おそらく腕と思われたので、攻撃してもたいした威力にならないからだ。
その後、前方から数回、ポフポフとパンチが入った。徐々に手ごたえがあることから、連撃だろう。
纏炎、炎波を用意して本体に振討!しっかりした手ごたえだ。でもダメージは2%程度だった。さすが、パーティ戦が前提のボス、硬い。
すると、下からぽふってなった。キックも持っているようだが、それは握手だな。
弾かれたので、捕まえて投落!どうやら、1.7mに足りない俺より少し大きい低なようで、しっかり投げることができた。ダメージは3%くらいか?
とりあえず、横倒しになった茸に、炎槍ドリルパンチを打ち込んでおく… と、いつの間にか上に傘が来ていた。起きるの早いな!
すると、横から掴もうとする感覚。正々堂々が干渉を防いでいる間に押撃ではじき出して回避。
すると、前から何かがポフポフとぶつかってきた。拳の衝撃波を飛ばす近距離技の連打か?あ、認識したせいでダメージ入り始めた。2%くらいだし、弾き返せそうな印象ではあるが。
おっと、前からぺちゃっとした音がして、俺にぶつかってきた。体当たりかな?だが効かないぞ!伝衝を打ち込んでみると、なんだかすごく効いた気がした。HP4%減ったぞ?もしかして、お前はスライムの亜種か?
一方のアヤは、ユーたちから距離を置き、沸いてくる茸ゴーストの対応を行なっていた。
実は、茸ゴーストもユーにグリーンボールなどで攻撃しているのだが、全く効いていなかったし、ユー自身も気づいている様子が無い。
マジカルエングレイバーを後方から接近させ、ファイアランスやソイルランスを打ち込んで離脱するという戦法を用いている。敏捷差の関係から不意打ちになっており、この一撃で茸ゴーストが処理できている。
普通、後方から高速に突っ込んできた物体は、静止できずにぶつかるだろう。しかし、マジカルエングレイバーはゴーレムであり彫刻刀。アヤの器用さで運用すれば、突き出したと思ったら離脱するようなプレイングもお手の物だったりする。尤も、相手も霊体なので、失敗しても突き抜けるだけではある…
そうやっていると、マッシブマッシュがユーにラッシュを仕掛け始めたらしく、激しい拳音がこちらまで聞こえてきた。ユーは、時より応戦しているが、大部分はそのまま受けている。一撃当たりのダメージは少ないが、活力をかけてなお、HPは70%近くまで減っている。
ただ、アヤにできることは、ユーにかけている魔法を切らさないことだ。マッシブマッシュは、横からの攻撃に対して反撃として衝撃波を放ってくることがあると聞いているからだ。ユーの防御力でダメージを受けている衝撃波を自分が受けたら大ピンチだ。
戻って、ユーは、マッシブマッシュのラッシュ攻撃に晒されていた。HP50%まで減らしたからだろう。
たまに受けることには成功しているが、連撃系なので、大部分はそのまま受けている。なお、マッシブマッシュの攻撃位置が予測不能(不意打ち)であるため、「真理の枷」が +10 というスタック限界まで積もっている。
ただ、一方的にやられているわけでもない。今回はしっかりと陣気を展開し、マッシブマッシュにスリップダメージを与えているのだ。なお、陣気には弱いノックバック効果もあったのだが、マッシブマッシュの体表がやや柔らかいためか、そちらは効果がなく、お互いにダメージを積み上げるだけの状態になっていた。
「収まったか。なら俺のラッシュも受けてもらおうか!」
やられたらやり返す… わけではないが、ラッシュが止まったようなので、クールタイム明けの各種体術を打ち込んでいくとしよう。
まずは纏う炎からの振討で動きを止め、腕刃で切り、伝衝… 続いて、掴んでからの投落、そして纏土からの連撃だ!
真理の枷や反撃の効果も合わさり、マッシブマッシュのHPはついに7%を下回った!
「行くよ!分身からのファイアランス!そして、ストーンピラー!」
そして止めは、ゴースト処理をしていたアヤによる魔法の斉射だった。マジカルエングレイバーと多段発動を組み合わせたようだ。
ユーは見ていないが、四方から放たれた炎の槍、そして、上空からの石柱が同時に着弾した。マッシブマッシュは縫い留められたように動きを止め、全身を焼かれ、そして溶けていった。
「E3 フィールドボス マッシブマッシュの討伐に成功しました。 E4 のマップが解放されます。」
「称号 第3マップ突破者 を獲得しました。」
「称号 中級拳士 を獲得しました。」
「経験値を810獲得しました。」
中級拳士:
説明: 基礎を身に着けた拳士を意味する称号。体術や、気を用いる技能が向上(小)。