本文
「やった!」
「そうだな。」
俺たちは、E3のフィールドボス マッシブマッシュの討伐に成功した。なお、マッシブマッシュを倒した時、お供の茸ゴーストが残っていると逃げていくらしい。
それと、条件を満たしたことで、「下級拳士」が「中級拳士」に進化した。実の所、これが欲しかったのでマッシブマッシュに挑んだ、という事情もある。
「中級拳士」の条件には、「レベル18以上の拳士系統の相手と勝負し、体術で70%以上ダメージを与えて勝利する」という条件がある。通常は、第4マップのダンジョンでボクサー系を倒すのが王道だが、マッシブマッシュ戦なら、少し早く習得できるのである。
では、森を抜けて、次の村へ向かうとしよう。出口はすぐそこなんだけどな。
「E4 古き塔の都 トマ に入りました。」
そして、やってきたのは第4マップだ。なお、「都」と表記されているが、規模としては村に近く、各種店舗やギルドといった最低限の施設しかない。その代わり、中心部に巨大な塔、そしてダンジョンである「トマの塔」が立っている。
「わぁ、あの塔大きいね。はっきり見えるよ!」
「トマの塔というそうだ。ただ、中はダンジョンになっていて、見た目以上に広いらしいぞ。」
「そうなんだ。じゃ、塔なんだけど下に下っていくのかな?」
「いや、ちゃんと登るみたいだぞ。とりあえず、もう夜になるし、ギルドに行こうか。」
「あ、うん。それもそうだね。」
俺たちは、ナビーの先導に従い冒険者ギルドへ向かった。
都内は、塔がダンジョンということもあり、ヒッツやミーミと比べて、人々が行きかっているような賑やかさが感じられた。
「冒険者が多いね。塔に向かっているのかな?」
「そうかもしれないな。あとは、迷いの森や、東の草原に向かう者もいるんだろう。」
「えぇと、東って、ヒマラン大草原だっけ?地平線の向こうまで草しか見えないって本に書いてあったよ。」
「大草原と言われるくらいだから、広くて大きいんだろうな。大型のモンスターも闊歩しているらしいぞ。」
「冒険者ギルドに到着しました。入り口は閉まっています。こっちです。」
「おっと。着いたか。」
話をしていたらすぐに着いたので、二人で入った。なお、入り口の扉は木製で、中央から両開きになるタイプだった。
ギルドの中は… イスタールより小さそうだった。奥行きが無い感じがする。もしかして、食堂や図書室は無いのだろうか?
そのまま受付に向かった。
「いらっしゃいませ。こちら、トマの冒険者ギルドです。」
「冒険者のユー、後ろはアヤだ。迷いの森を超えてきた所だ。」
「あぁ、なるほど。隣の森からですね。それで、ご用件は?」
淡々と返してくる職員だ。話がスムーズで助かる。
「素材の買取り、あと食堂を利用したいのだが、ここにあるのだろうか?」
「こちらは初めてですね。では、ギルド内について説明します。」
説明をしてもらった結果、このギルドは小さいのではなく、縦方向に拡張されていたことがわかった。
B1F: 訓練所兼素材買取り場
1F: 依頼、クエスト関係の受付
2F: 食堂
3F: 図書室兼休憩所
その後、俺たちは食堂に入り、夕食を取ることにした。ログイン制限時間もあるからな。
「はい、お水と、ユーさんの分だよ。」
「助かる。」
「それにしても、このチキン凄く大きいよ。気をつけて。」
「大きい?そんなに大きい… うわ、確かに想像以上だな。」
俺が頼んだのは、じゃがいもと野菜を煮込んだスープと、鳥の塩焼きだった。なのだが、鳥の方が、人の顔くらいありそうなビッグサイズだった。
「ごめん。私も大きさはわからなかったんだよ。」
「まぁ問題は無い。食べられることになっているはずだし、最悪、インベントリーに入れて分けて食べる。」
「食べられることになっている?」
「料理表記だし、満腹度回復するということな。」
「あぁ、そういうこと。理論上は食べられるってやつね。」
「実際には美味そうな匂いだし、食べている冒険者が多いと聞いているぞ。」
ちなみにアヤが食べているのは、パンの盛り合わせと、じゃが芋と野菜のスープ、そして果物だそうだ。
彼女の方が、明らかに俺より多く食べているだろう。ただ、これに関しては満腹度の問題だから仕方ない。アバターは太らないし、嫌なら空腹耐性を育てろという話なのだ。
「うむ。スープは予想していた通りポトフっぽい味だな。」
「あぁ、そんな気がするね。お肉は入ってないけど、だしが使われているのかな?」
「そうかもな。俺はリアルでも凝った料理をしないからわからないが。」
「料理しないのは、見えないから?」
「見えないとできない料理もあるが、それ以上に、料理に時間をかけたくない。」
「あ、わかるかも。料理の飾りつけを考えるのは楽しいけれど、料理自体に時間を取られるのは、ちょっと嫌だな、って思うことはあるよ。」
料理自体に抵抗はなくても、毎日繰り返すものになると、かかる時間がネックになることはある。その工程すら楽しめるなら良かったのだが…
「おぉ、チキンとの食べ合わせも悪くないぞ。飽きさえしなければいくらでも食べられる感覚はある。」
「あぁ、それ私も感じたことあるよ。もちろん、食べている感覚も、おなかが満足していく感覚もある。でも、現実だとこんなに食べられないって思う時でも食べられるんだよね。」
「そうだな。ちなみにこのチキン、回復値は40%なんだよな。絶対、見た目詐欺だと思う。」
「嘘!あ、本当だ!2個食べても満腹にならないの?うわぁ~!」
なお、料理で動く満腹度について、まとめウィキでは「食材や調味料に 満腹中枢 なる内部値があり、調理の過程で増減した結果が採用されているのでは?」と考察されている。
というのは、同じ分量の肉と野菜と塩を用いた焼き料理を、さまざまな調理方法で作り分けた結果、回復する満腹値が同値だったためであるらしい。なお試した調理方法は、フライパン、オーブン、グリルだそうだ。
「ところで、アヤさんはこの後どうするんだ?」
「う~ん。ソルットだっけ?私、あっちに行ってみようかな?って思っているんだ。海で遊んでみたいし、船にも乗ってみたい。」
「そうか。俺は、装備更新などをして、ダンジョンに挑んでみる予定だぞ。」
「え?もうダンジョン行くの?」
「正確には、浅い階層でレベル上げだな。あそこには、けっこうレベル高いモンスターがいるからな。」
第4マップでは、最大レベル27までレベルを上げることが可能だ。この性質のため、ダンジョンの1層でもレベル20前後のモンスターが襲ってくる。
また、装備品のランクも上がり、鋼や銀系の装備が出始める。俺の場合、青銅編シリーズを銀編シリーズに変える時期かもしれない。
「そっか。ダンジョン、がんばってね。」
「なら、ここでお別れだな。またどこかで会うこともあるだろうが。」
「うん。あ、でも、明日はお店巡りをしたいんだ。ここで買える装備なら強いと思うから。だから、いろいろ教えてよ。」
「俺に教えることなんてあるか?」
「え?あるよ。だって、野道のモンスターがすごく厄介って噂も聞いたし、船に乗るとたまにモンスターに襲撃されるって聞いたよ。」
少し考えてみると、アヤの場合、確かに野道のモンスター、特に鳥への対策が必要だろう。マジカルエングレイバーは防衛機能を持たないので、ラッシュバードやヌーンアウルなどに対しては、自営する必要があるからだ。
それから、「船に乗ると襲われる」のは「たまに」ではなく「確定事項」だ。だって、S3のフィールドボスが海洋で待ち構えているのだから。
「なるほどな。なら、一緒に行くか?」
「うん。よろしくね。」
なお、俺がアヤに同行してソルット方面に向かうという選択肢は考えていない。船の方は、フィールドボスの件があるので一考の余地はあるのだが、野道については、相手が上空である限り、俺がいてもどうにもならないからだ。
その後、待ち合わせ時間を決めた上でログアウトした。
名前: ユー
種族: ヒューマン
職業: 武僧
性別: 男
称号: [中級拳士], 下級武僧, 異界の旅人, 夢見る者, 第3マップ突破者, ダンジョン踏破者
HP: 100%
MP: 100%
状態: なし
所持金: 152040p
満腹度: 100%
レベル: 20
経験値: 810/3377
体力: 51
魔力: 36
筋力: 42
防御: 54
精神: 30
知性: 54
敏捷: 9
器用: 12
技能:
適性: 近接体術1, 魔力拳19, 気留術19, 魔法(土14, 水14, 木14, 炎14, 光15, 風10, 闇1, 氷1)
技術: 触鑑定14, 精神集中16, 受身20, 疾駆11, 安定動作5, 遊泳11, 空手5, 冒険者指導6
支援: 捕獲握力強化, 逆境を超える心, 不動の守り, 海の心, 薬草知識, 世界知識, 識別
耐性: 空腹耐性, 柔軟, 即死抵抗, 物理抵抗
特質: 盲人, 鈍感, 効果変化 欠損, 正々堂々, 真理2
近接体術:
下級: 強撃, 足払, 投落, 連撃, 反撃, 掴撃, 回脚, 押撃
中級: 霊掴, 振討
気留術: 癒気, 瞑想, 強化, 帰療, 浄気, 陣気, 活気
魔力拳: 魔拳, 魔盾, 爆拳, 腕刃, 伝衝, 破魔
土: 纏土, 集土, 土槍, 石縛, 石波
水: 纏水, 集水, 水槍, 水縛, 水波
木: 纏緑, 育緑, 緑槍, 弦縛, 緑波
炎: 纏炎, 着火, 炎槍, 熱縛, 炎波
光: 纏光, 集光, 光槍, 光波
風: 纏風, 操風, 風槍, 風縛
闇: 纏闇, 集闇
氷: 纏氷, 冷却
装備:
牙鱗のナックル, 中級武道着, 防塵の鉄製クローズヘルム, 聖銀の小手, 青銅編の鱗膝当て, 地蛇の鱗靴, 水中花の靴下, 守り石の首飾り, 緑石の指輪, 盗難防止の指輪
ゴーレム:
おくたん(採集特価ゴーレム)
ゴーレム おくたん:
形状: 蛸型
職業: 採集家
レベル: 20
状態: 正常
HP: 100%
MP: 100%
体力: 33
魔力: 3
筋力: 30
防御: 42
精神: 3
知性: 42
敏捷: 33
器用: 63
技能:
適性: 採集12
技術: 水泳12, 素材探知12
支援: 自動転送, 戦意隠蔽
特質: 魔道人形, 魔道吸収, 多客, 戦闘回避, 再生, 蛸の体
装備:
鈴入り鉄のスコップ, 鈴入り鉄の草刈り窯, 鈴入り鉄の伐採斧, 鈴入り鉄のつるはし
メモリー:
FIG1, AGI1, DEX1
名前: アヤ
種族: ヒューマン
職業: 印術師
性別: 女
称号: [下級印術師], 中級画家, 観察者, 異界の旅人, 第3マップ突破者, ダンジョン踏破者
レベル: 18
体力: 16
魔力: 39
筋力: 16
防御: 14
精神: 42
知性: 28
敏捷: 28
器用: 72
技能:
適性: 小刀15, 印術14, 中級描画3, 中級彫刻2, 魔法(土19, 水18, 木17, 風11, 炎8, 光8, 闇8, 氷8), 採集13
技術: 鑑定17, 魔力操作19, 危険感知16, 潜伏11, 精神集中17, 直感8, 並列思考8
支援: 世界知識, 視力強化(色), 繊細, 絵心
小刀: 疾突, 刀払, 連切, 投剣
印術: 魔印(役霊, 炎鎖, 水霧, 運鳥), 魔陣(活力, 守り), 遠隔発動, 多段発動, 連続発動
描画: 模写, 速記, 産色, 縮画, 修復, 拡描
彫刻: 刻刀, 硬刻, 空刻, 水刻, 修復, 細刻
土: 土球, 集土, 土槍, 画土, 石縛, 石波, 石柱
水: 水球, 集水, 水槍, 画水, 水縛, 水波, 水柱
木: 緑球, 育緑, 緑槍, 画葉, 弦縛, 緑波, 緑柱
風: 風球, 送風, 風槍, 風画
炎: 炎球, 着火, 炎槍, 炎画
光: 光球, 集光, 光槍, 光画
闇: 闇球, 集闇, 闇槍, 闇画
氷: 氷球, 冷却, 氷槍, 画氷
採集: 採取量増加, 採取品質向上, 安全採取
装備:
鉄の小刀, 魔布のローブ, 合布の頭飾り, 合革のブーツ, 合革の小手, 魔払いの護符
ゴーレム:
マジカルエングレイバー (自在描画触媒)