06-ex 自由に描けるなら(アヤ視点)

改定:

本文

私はアヤ。4月からアドベントファンタジアを始めたプレイヤーだ。

あ、ちゃんとお仕事はしているよ。派遣のお仕事だから毎日じゃないだけだからね。

3月、友達に紹介してもらった動画でこのゲームを知って、風景に凄く感動した。動画は10回くらい見返したし、その後もいろいろな動画を見て、気づいたら連休が全部終わっちゃっていた。

そして、そんな世界を自由に冒険してみたい!自由に描いてみたい!ということで、人生初めてのゲームに飛び込んでみた。幸い、こういうゲームを遊んだことのある友達から、いろいろ教えてもらうことができたし、わからないこともAIに聞けば何とかなった。

最初の職業は、動画で見た「印術師」を選んだ。魔法陣とか印とかを描く、それがいろいろ増えていくというのは面白そうだったからだ。それに、モンスターがいる世界なのだから、戦える職業にしないといけないだろう。

「ギャギャー!」

「ギャヒヒ!」

「え?いっぱい!いっぱいだよ!ひゃぁぁ~!」

でも、冒険は簡単ではなかった。「始まりの草原」という所は大丈夫だったんだけれど、「ミーミ平原」は、ゴブリンがいっぱいいた。

狼に噛まれたり、」ゴブリンに切られたりした。幸い、現実だと痛み止めを使うほどの痛みは感じなかった。でも、痛かったし、何度も死んじゃった。

でも、冒険して良かったと思えることも、たくさんあった。

まず、グラフィックがとても繊細だったことだ。空や地面の色はファンタジーっぽかったけれど、そういう世界だと割り切れば違和感は無かった。そして、自然もモンスターも本物のように生き生きしていたし、葉っぱの色素が薄い所とか、雲の透けている所とかも見えていた。

次に、いろんな人が親切にしてくれた。街や村の人は、いろいろなことを教えてくれたし、冒険者の人も、聞けば助けてくれた。観光ガイドみたいな本もあって、現実の旅行先で助けてもらうのに近いのかな?と思えた。

最初、ゲームだから、図書館なんかでも、ほとんどの本は読めないのかな?と思っていた。が、実際には現実の図書館と同じだった。童話もたくさんあったし、ちゃんと挿絵なんかもあって楽しむことができた。

「森の安息地 イスタールに入りました。」

「ふぅ、やっと着いた~!」

先日、ようやくイスタールまで来ることができた。

東に行く前、北の山登りも試したんだけれど、大きな猿に勝てなかった。私の魔法がぜんぜん効かなくて、何度やってもダメだったよ。

だから、東に来てみたんだけれど、こっちも大変だった。

猪が凄い速さで突っ込んできて、一度でもぶつかったら死んじゃうのだ。猪だけで6回くらい死んじゃったと思う。

でも、猿と違って魔法がちゃんと効いた。だから、私はがんばった!温泉でのぼせちゃうまで話をしてくれた人には感謝だよ!

そして、ついにイスタールに来た。

ヒッツの村で冒険者に聞いた話なんだけれど、この街には「錬金術のお店」があるらしい。私がいつも使っている魔法紙は、そこで作られているそうだ。だから、最初にそこへ行ってみた。

「いらっしゃい。ここは錬金術店だよ。」

「あ!こんにちわ。えっと、初めて来ました。いろいろ商品見たいです!」

「あぁ、ちょっと待って。君、冒険者ランクは?」

「え?ランクはEです。」

「なるほど。申し訳ないんだけれど、冒険者ランクをDランク以上にしてから来てくれないかな。錬金術店での買い物は、Dランク以上でないとできないんだ。」

「え?なんで?」

「言ってしまえば、そういう規則だからだよ。錬金具の中には危険な物もあって、ある程度の旅ができる実力のある冒険者になら提供して良い、ということになっているんだ。」

残念ながら、今の私にはまだ買えないらしい。でも、ランクを上げれば良いのなら、冒険者ギルドで聞けばいいかな?この後行ってみよう。

それはそうと、「せっかく来てくれたから」ということで、商品を見せてもらうことはできた。

「え?何、これ?スケッチブック?」

「ん?それに興味があるなんて珍しいね。それはマジックスケッチという錬金具だよ。」

「えっと… 魔法紙と画材に限り大量に収納?」

「あぁ、鑑定できるんだね。これは、魔法紙や画材、描いた絵なんかを大量に持ち歩くための道具さ。主に画」

「描いた絵は途中で出して確認できますか?」

「え?そりゃ、できるよ。」

「買います!それ、欲しいです!あ、でもお金足りない…」

「凄い反応だね。ただ、さっきも言ったけど、Dランクにならないと販売できないよ。それに、君魔法使いっぽ」

「わかりました!ランクを上げて、お金を集めてまた来ます!だから、残しておいてください!」

マジックスケッチ… それが、私にとって、間違いなく運命的な出会いだった。

道中、絵を描くのに不便を感じることがあった。それは、描いた絵が、「素材」のインベントリーに送られてしまうことだ。このインベントリーに入った絵は外で取り出すことができなくなるので、見比べたりする時に凄く不便だった。しかも、ギルドで素材を売る時、一緒に出てきちゃって大変だった。

その後、私はがんばって、マジックスケッチを手に入れた。

Dランクは、レベルを上げれば良かったので、すぐになることができた。そして、お金については、冒険者ギルドで依頼をこなして集めた。

Dランクになる時に教えてもらったのだけれど、ランクを上げると、よりグレードの高いアイテムが購入できるようになるらしい。もしかしたら、刷毛とかトリオとか彫刻刀とか、もっと良くなるかもしれない。

私は現実でも絵を描くのが好きで、デザインの仕事をしている。職業病かもしれないけれど、絵を描くことには妥協をしない主義だ。だから、絵を描くための道具を揃えて、より良い物に変えていくのは当たり前のことなのだ!

そして、何日もかかったけれど、欲しい物を買い揃えることができた。お金、なくなっちゃったけれど。

欲しい物が買えて満足した後、次に目に入ったのは、冒険者ギルドに掲示されていたダンジョンの情報だった。

これも温泉で聞いた話なのだけれど、ダンジョンの奥まで行くと、街間を転移で移動できるようになるアイテムがもらえるらしい。それがあれば、始まりの街とかに行くのが楽になるし、森なんかで不意に襲われて死んじゃうこともなくなるかな?

そう思ったので、私はダンジョンに挑み始めた。なのだけれど…

「え?え!モンスター、いっぱいいっぱいだよ!」

物凄い数のモンスターが集まってきて、私はすぐに死んじゃった。

もしかして、幻覚だったのかな?そう思って、何度も入ったけれど、結果は変わらなかった。

しかも、別のダンジョンに行っても同じだった。これはおかしいよ。なんで私だけ死んじゃうの?

そんな時、以前、ミーミの村で一緒に冒険した人を見つけた。親切だったし、凄く頑丈だったから覚えている。

その人、ユーはやっぱり親切だった。私の間違いを正してくれたし、一緒にダンジョンにも連れて行ってくれた。

一緒に入ったダンジョンは、「遺跡」というには奇妙だったけれど、少なくとも、前みたいにモンスターがわぁって押し寄せて来ることは無かった。そして、聞いていた通り、転移に必要なアイテムと、ゴーレムを作るためのアイテムを手に入れることができた。

さらに、ゴーレムを手に入れることができた。その日の夜、私は、自分だけのゴーレムについて、いっぱい考えた。

最初は、私を守ってくれるゴーレムが欲しいと思った。ルーカスさんのゴーレムのように、こっちに来るモンスターをポーンと吹っ飛ばすゴーレムだ。

でも、ユーさんは、もっと凄かった。私の手になって、空でさえキャンバスにできるゴーレムを提案し、実現してしまったのだ。

確かに、私はこのゲーム内で、水の上や空中に絵や印を描くことができるようになった。でも、私は空を飛んだり泳いだりできるわけじゃない。泳ぐのは練習すればできるかもしれないけれど、空を飛ぶ方法はわからない。お店にも、空が飛べるアイテムは売っていなかったし。

ゴーレムの使い方を覚えた後、私は大空に絵を描いた。アドベントファンタジアと初めて出会った時に見た空と雲を…

あの時見た空が、この世界のどこにあるのかは知らない。もう見られない景色なのかもしれないけれど、でも、冒険していけば、どこかで見つけられる気がする。

もちろん、それだけが冒険の目的じゃない。今までも、たくさんの絵を描いてきた。これからも、いろいろな冒険をして、どんどん描いて行こう。