07-02 武具屋で装備更新

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本文

ギルドを出た後は、本来の目的である買い出しをすることにした。

ナビーに確認した所、この都にあるのは、武具屋、雑貨屋、錬金術店、宿屋だけのようだ。なので、まずは武具屋に向かうことにした。

「呪われていたアイテム、その小手も?」

「そうだ。これはダンジョン産じゃなくて、ゴブリンの巣から出てきたけどな。」

「そっか。私も気をつけないと。手に取る前に鑑定すればいいんだよね?」

「そうだ。もし、事故で呪われたら教会で浄化してもらうといい。なお浄化の規模によるが、最低でも10000pは取られるから注意な。」

「うん。気を付けるよ。」

そんな話をしながら、二人で都の中を歩いていると…

「武具屋に到着しました。入り口は開いています。こっちです。」

「入り口って言わないと思うよ。前面オープンで棚が出ているし。」

ナビーを可視化していたため、アヤに突っ込みをもらってしまった。

ともかく、俺たちは武具屋に到着。棚が外に露出しているとは、ずいぶん大胆な売り方だ。

「いらっしゃい。」

中から聞こえて来たのは女性の声だった。

「え?えぇと…」

「おや?お嬢ちゃん、どうしたんだい?」

「あ、はい。えっと、あなたが、この店の店主でいいのかな?」

「そうだよ。もしかしてお嬢ちゃん、女だから驚いたかい?」

「あ、えぇと。今まで見てきたのが男の鍛冶師ばかりだったので。」

「アハハ、まぁ鍛冶の知り合いは野郎が多いよ。でも、腕は任せてよ。鍛冶、木工、細工系の装備を扱っているよ。」

なかなかできる鍛冶師なようだ。いや、このゲーム、利便性の観点から、同じお店で金属も布も扱っているんだったな。

「ところで、そっちの男は、お父さんかな?見た所、盲人みたいだが?」

「え?お父さん?違うよ。」

「あ、違うんだ。それで、あんたは?」

「迷いの森を抜ける時に方向が同じだったので野良パーティを組んだ冒険者だ。」

アヤは、声や言動から、年下であろう、とは考えていた。だが、父と子くらいの差があるのか…

「あぁ、納得。じゃ、用件も別々かな?」

「装備の身長を考えているという意味では同じだが、行先は違うな。」

「ふ~ん。じゃ、先にあんたから聞こうか。見た所、けっこう良い装備しているようだから、換えが必要な装備は少なそうだね。」

ちゃんと目利きもできる人なようだ。「少ない」というのが良い。無暗に装備を勧めるでも無ければ、更新が不要とも言わない。それは正しい。

「必要なのは膝当てだな。それと、靴、靴下、ナックルは更新が必要か知りたい。あとは、塔に上るので、状態異常対策関係で扱っているものが知りたい。最後に耐久の回復だな。」

「了解。やっぱり塔に挑む冒険者だったね。用意するからちょっと待っててよ。」

「頼む。あとアヤさんは、今の内に商品を眺めてみると良いぞ。」

「あ、うん。そうする。」

その後、いろいろな装備を見繕ってくれた。

魔弾鋼のナックル:

種別: 武器・ナックル

説明: 加工された鉄鋼が装着されたナックル。魔力を阻害する力が強い代わりに、高い物理攻撃力を有する。

識別: 精霊、魔生物など、魔力を糧とするモンスターに対する特効効果を有する。また、硬い表皮を有するモンスターにも高い衝撃を与えられる。ただし、装着中は、魔法の性能が著しく損なわれる。

デメリット: 魔法による攻撃力が低下(大)

価格: 19000p

銀編と合革の膝当て:

種別: 防具・膝

説明: 編状に加工された銀を合革で包んだ膝当て。斬撃、打撃に対する抵抗力に優れる。

価格: 12000p

毒避けの指輪:

種別: 防具・アクセサリー

説明: 魔法のアクセサリーの一つ。毒を中心とした異常に対する抵抗性を有する。

識別: 毒に対して中確率で無効化し、中程度の軽減効果を有する。その他の身体状態異常に対しても僅かな軽減効果を有する。

価格: 15000p

雷避けのベルト:

種別: 防具・アクセサリー

説明: 雷を逃がす力を有するベルト。強い雷耐性を有する。

価格: 14000p

「なるほど。ダンジョンピンポイント気味ではあるが、良いのが揃っているな。」

「お?ちゃんと塔について調べて来たかな?まぁナックルはデメリットもきついと思うけどね。」

「あそこはスライムもゴーストも沸かないから、問題無いな。それに、よく考えたら雷対策は必須か。」

膝当てとネックレスについては想定通りだったが、ナックルとベルトは有意義だろう。

トマの塔に出現するモンスターは、主に鳥、魔生物、精霊、妖精、あとネズミ系だ。この内、魔生物、精霊、妖精に特効が効く「魔弾鋼のナックル」は、デメリットも相応だが活躍は見込める。特効武器というのはそれだけのポテンシャルがあるのだ。

さらに、塔の最上階に出現するフィールドボスは、雷を扱う。あの雷は全体攻撃な上、落下タイミングが明確に決まっている。さすがに被ダメージは低いが、耐えるしか無いので耐性装備は必要なのだ。

俺は、一通りの装備を購入することにした。60000pほど要したが問題ない。

「じゃ、続いてそっちのお嬢さんだね。彼と行先が違うということは、汎用の装備かな?」

「あ、はい。えっと…」

「あぁ、買う物が決まっていないなら、見て考えてみなよ。急ぎじゃないんでしょ?」

「そうします。」

そして、しばらく装備を見るためにウロウロしていたようで、違う所からアヤの声がした。

「ねぇ、ユーさん。ソルットの野道で注意するモンスターって何だっけ?」

「そうだな。ラッシュバード、あとはヌーンアウル辺りか。その他は、距離を取って魔法で処理できると思うぞ。そもそも、街に行くだけなら他は寄って来ないしな。」

「ラッシュバードって、遠くから突っ込んでくる鳥だよね?」

「そうだ。後ろや真横から突進の直撃を受けて死に戻る冒険者が多いらしい。」

「物理か~。じゃ、全身をガチガチに固めないとダメかな?」

「物理防御力は高い方が良いが、近づかれる前に何とかするべきじゃないのか?」

「まぁ、そうなんだけどね。でも、近くで見てみたいんだよ。映えるかな?」

そっちだったか。いや、彼女らしいとも言えるが…

「ま まぁ、描くのは好きにすれば良いと思うぞ。ただ、命も大事にしような。」

「わかってるよ。だから、近づかれた時の防御もしっかり固めるんだよ。」

「防御するのは良い。だが、その後はどうするんだ?全力で逃げるのか?」

「あ、そっか、ラッシュバードって早いから、逃げても追いかけてくるんだよね。」

「疾走系の技能が無いと、逃げきるのは厳しいと聞いているぞ。」

さて… 近接戦闘能力が乏しいアヤが近接戦闘をご所望だ。どうするのが適切だろうか…

ただ、ラッシュバードに限るなら、そんなに難しくは無い。彼女の器用さなら、受け流しつつ地面に落とせば良いのだ。

「じゃ、倒す必要があるのか。小刀、練習しているんだけど、モンスターって硬いんだよね~。」

「ラッシュバードに限れば、反らすように受け止めれば、地面に突っ込むと聞いたことがあるな。」

「え?あ、そっか。空から突っ込んでくるんだもんね?まぁ、やってみるよ。」

「それはそうと、索敵技能は育てた方が良いと思うぞ。視界に入らないモンスターを知っておくことは大事だからな。」

「う~ん、そうだよね。でも、本で読んだのだと、何というか、野生の感覚を身につけないといけないみたいな難しさだったんだよ。」

このゲームで索敵を行なう方法は2通りある。1つは、感覚を含めた身体能力を強化して、相手の位置を感じ取る方法。もう一つは、魔力に働きかけて、モンスターの位置を探る方法だ。

習得難易度で言えば、魔力に適性の無いビルドでなければ、後者の方法を用いる方が簡単だ。アヤの場合、「魔力操作」が育っているので、手順を知ればすぐに生えるだろう。

ただし、この方法で索敵すると、魔力操作能力の高い相手に逆探知されることになるし、妨害も受けやすい。このため、より優秀な索敵が必要な場合には、前者の技術が必要になってくる。

どうも、アヤは前者の方法しか知らなかったようなので、一通り教えておくことにした。

「へ~、そんな方法があったんだね。魔力の方なら、できる気がする。」

「魔力を操作して、そこに何かいる、というのを感じる訓練だからな。魔力を後ろ側に回して、人や物体に触れてみる感じだ。」

「あ、索敵魔法習得できたよ。」

「早いな。」

たぶん、魔力操作と精神、器用が高い影響だろう。マジカルエングレイバーの制御で、魔力の扱い方も直観的に理解できているのだろうし…

その後、アヤが購入したのは、以下の通りだった。

鉄の小刀 → 銀の小刀 (単純強化)

魔布のローブ → 魔獣革の軽鎧 (感知系技能強化の恩恵と物理防御増加)

合布の頭飾り → 魔獣の革帽子 (防御力増加)

合革のブーツ → 水耐性の合革ブーツ (水耐性追加)

合革の小手 → 木耐性の合革小手 (木耐性追加)

光石の指輪 (幻影への抵抗力上昇)

水耐性の装備なら、スライムを踏んづけても被害は少なくできるだろう。また、海洋戦を考えると水耐性のチョイスは悪くない。

あと、「光石の指輪」はピンポイント気味だが、ヌーンアウル対策にはなるだろう。マジカルエングレイバーは、アヤが視界に収めた範囲でしか操れないから、ヤツの直視は避けられないのだ。

「う~ん。下取りしても70000p… あれだけ貯めたのに…」

「この辺の相場としては妥当だろう。この先の街だと単価が20000超えるぞ。」

「それ、本当?」

「さすが異人の旅人、詳しいね。隣街だと、もっと危険なモンスター素材が出回っているからね。」

「いろいろ助かった。俺はダンジョン通いの予定だから、しばらくは修復のため世話になると思う。」

「わかったよ。ここにいるのだから相応の実力者だとは思うけれど、油断しないようにね。」

ということで一通りの買い物を終えたので、続いて、錬金術店に向かったのだが…

「錬金術店に到着しました。扉は閉まっています。こっちです。」

「まさかお隣だったか。」

「はい。なお、雑貨屋も隣にあります。」

ダンジョンの定番アイテムを取り揃えています!といった所だろう。

なお一般的な街では、武具屋や錬金術店は街の入り口付近か、ギルドの近くに配置されている。一方、雑貨屋は住民向けのアイテムも扱っているため、民家外付近なことが多い。