07-04 E4D 虫の闘技場

改定:

本文

「ユーさま、こんばんわ。」

「おぅ、ナビー。待たせたな。冒険者ギルド経由でランダムダンジョンへ向かう。先導してくれ。」

「了解しました。冒険者ギルドはこっちです。」

アヤと別れた後、俺は一度ログアウトし、都に発生するランダムダンジョンに関する情報収集を行なった。結果として、以下の4点がわかった。

  1. 都のランダムダンジョンは、他のフィールド内に現れるランダムダンジョンと同じ仕様。踏破報酬、転移ゲート解放イベント、デスペナルティ等も普通にある。
  2. 都のランダムダンジョンの最奥部には、普通にダンジョンのボスが出現する。フィールドボスは出ない。
  3. 都のランダムダンジョン踏破後、トマの塔を踏破した場合、トマの塔の初回踏破報酬がもらえない。
  4. トマの塔踏破後、都のランダムダンジョンを踏破した場合、ランダムダンジョンの初回踏破報酬がもらえない。

ということで、特別な準備も懸念も無いことがわかった。

なお、上の情報はちゃんとまとめウィキにあったので、すぐに見つけることができた。が、その後、E4の闘技場ダンジョンで遭遇し得るモンスターの情報を集めていたため、ログインしたら夜になってしまったのだ。

そして、調べた結果、「運絡みだが、ここは死に戻り前提でも挑むべし!」という判断をした。なので、失うと困る物を預けておくために、冒険者ギルドに向かったのである。

その後、ギルドで少々の浄化依頼を受けることになったが、目的は果たせた。なお、現在のインベントリーは以下の通りだ。

インベントリー (通常アイテム):

ポーション X 3

ハイポーション X 1

MPポーション X 10

毒消しポーション X 20

安定ポーション X 20

魔払いポーション X 20

高級携帯食 X 2

ドライフルーツ X 2

テント X 1

煙玉 X 3

脱出の札 X 1

インベントリー (貴重品):

冒険者証 X 1

旅人の鍵 X 1

ゴーレムコントローラー (おくたん) X 1

解放の証 (視覚) X 1

インベントリー (装備品):

白木の杖 X 1

樫の杖 X 1

「ダンジョンに到着しました。入り口はこっちです。」

その後、ナビーの先導に従い、目的のダンジョンへやってきた。そして、触鑑定した結果は以下の通りだった。

虫の闘技場:

種別: ランダムダンジョン

階層数: 5

残り時間: 08:11:23

虫か。まぁ理想的な相手が引ける所か。

俺は、ダンジョンに突入した。

「虫の闘技場に入りました。現在、ラウンド1です。」

土の地面だった都から、石の床に変わった。闘技場は、円形のホールであると聞いている。

そして、今の所、モンスターが動いている気配が無い。大型の虫の足音や、羽音の類は聞こえない。となると…

さらに進んでいくと、足元に何かぶつかって、それが止まった。やはり小型モンスターか?

そう思った所、僅かにカサコソとした音が聞こえ、それは小さくなっていった。

とりあえず、また迫ってくるだろうから、構えて待つ。すると、横から何かが触れた。そして掴んだ。

砂漠サソリ:

種別: モンスター・虫

レベル: 20:

HP: 100%

状態: 敵対、真理の枷+2

説明: 砂漠に生息するサソリ。地中に潜み、獲物にマヒ毒を打ち込む。攻撃力は低いが、砂の上で毒を受けると危険だ。

俺は、その体を掴んだまま手元に引き寄せた。当然、砂漠サソリは俺に針を突き立て、直撃した。

すると、体にしびれを感じた。どうやら、マヒと毒が来たようだ。まだ軽度なので、帰療を使用して回復を進める。

だが、依然として掴んだままのサソリから、さらに数回、毒針を打ち込まれた。さすがに厳しくなってきたのでサソリを放り投げ、毒消しポーションを一杯。

落ち着いてきたら、HP回復の癒気も使いつつ、サソリを待ち構えた。そして、また飛び込んできたサソリを捕まえ、毒針を打ち込まれる…

そんなことを数回繰り返した後、俺は氷属性を纏った拳技で撃退した。氷が弱点なのは知っていたからな。

「砂漠サソリを倒した。経験値を300獲得しました。」

「技能 毒抵抗, マヒ抵抗 を獲得しました。」

毒抵抗:

説明: 状態異常耐性の一種。毒を受けた時の回復が早まる。毒によって受けるダメージを軽減する。

マヒ抵抗:

説明: 状態異常耐性の一種。マヒを受けた時の回復が早まる。マヒによって生じる行動阻害の影響を軽減する。

希望通りの技能が生えてくれた。できれば「耐性」まで行きたかったが、現状はこれで十分だろう。

「ナビー。次の階層へ向かう。先導してくれ。」

「了解しました。次の階層はこっちです。」

そうして歩いて行くと、扉があった。今回は両開きの扉のようだ。開いて奥へ。

「虫の闘技場 ラウンド2 に入りました。」

入ってすぐに感じたのは羽音だった。しかも、明らかに複数いるし、近づいてくる。

俺は、強化で防御を高めて構えた。そして、羽音はすぐに俺に群がってきた。

まずは手をてきとうに振り払った。これにより、ちょうど手の近くにいた数匹に手が触れた。触鑑定だ!

腐り蜂:

種別: モンスター・虫

レベル: 17

HP: 100%

状態: 敵対、真理の枷+1

説明: 獲物に群がり、腐食させた後襲い掛かる。仕留めた獲物を解体し、嬢王バチの巣に持ち帰る。

「腐蝕系か。だが、巣が来たか!こっちはハズレだな。陣気転回だ!」

俺は陣気を発動。気による防御膜と、触れた物を弾き飛ばす技だ。

すると、近づいた鎖蜂が弾かれていき、羽音が少なくなってきた。ちゃんと撃墜できているようだ。

しばらくすると、音が聞こえなくなった。たぶん撃退できたのだろう。

なので、音の現況への接近を始めようとした。だが、またすぐに羽音が聞こえ始めた。陣気は、発動すると身動きが取れなくなるので、音が聞こえたら速やかに発動だ。

そして、再び蜂に群がられる。だが、撃退… また近づくと、羽音がする。陣気転回… 蜂が群がられる… 全て撃退… 近づく…

そんなことを繰り返していると、すっかり蜂の音がしなくなった。どうやら種切れらしい。だが、ここで油断はできないぞ。

俺はHP、MPの回復を図り、そして、巣に近づいた。

すると、徐々に甘い匂いがしてきた。蜂の巣だから、🍯なのだろう。まぁ、この匂い、精神干渉してくる危険物なんだけどな。

さらに近づいていくと、羽音がして、何かが飛んできた。が、ボイ~ンとなって弾かれ、手の上に落ちた。俺は爆拳をたたき込んだ。なお、その際に触鑑定した結果は以下の通りだった。

停滞の嬢王蜂:

種別: モンスター・虫

レベル: 22

HP: 1%

状態: 敵対、真理の枷+1

説明: 腐り蜂の巣を従える上位存在。獲物をしとめるため、無限にも近い鎖蜂を派遣する。また、腐り蜂を殲滅してもなお危険だ。密に惑わされ近づいた者から生気を奪い取り、再び軍勢を呼び出すのだから。

「腐り蜂の群れ、停滞の嬢王蜂を倒した。経験値を1100獲得しました。」

なかなかの経験値だ。嬢王蜂が660、腐り蜂が220匹×2だろう。

あと通常ドロップである蜂蜜、毒腺、毒針、羽が大量に手に入った。なお、まとめウィキにあったテーブルと同じように、8割が蜂蜜だった。

停滞の蜂蜜:

種別: 素材・食料

説明: 甘く心地よい風味を漂わせる食材。食用すると満腹度とHPが回復するが、身体を蝕む毒も含まれているため、安易に食べてはいけない。

識別: 食用時、HP、満腹度を回復すると共に、未了、眠り、腐蝕の状態異常が付与される。この効果は対象が虫系統であったり、嗅覚に優れていたりすると増幅される。

これは錬金や調理で適切に処理すると有益な素材になるだろう。

なお、俺は食べるつもりは無い。戦闘中にモンスターに振りかけられるのを受けるのはOKだが、自ら使用して取り込んでいくと、ろくでもないことになる。それ、どう違うの?と突っ込まれそうだが、リスクも努力もなく技能習得は許さない、ということらしい。

ところで、既に合点が行っている人も多いだろうが、開設すると、この闘技場ダンジョンの別名は「道場」、その中で出会える特定の美味しいモンスターは「先生」と呼ばれている。

今回挑んでいるのは「虫の闘技場」。ここには、「虫」系統のモンスターが出現するのだが、その出現テーブルは、なんと全マップである。レベルは相応に抑えられるのだが、本来なら上位マップで戦うモンスターと、早期に戦えるのである。

「砂漠サソリ」は、西の第5マップ「命眠る砂漠」に出現するモンスターだ。本来は、砂漠という環境で奇襲からの毒とマヒをばら撒く迷惑なモンスターなのだが、闘技場なら、重症化だけ何とかすれば怖くないのである。

で、今回こいつを、マヒと毒の耐性獲得のために使わせてもらった。おかげで、両方とも技能を生やすことができた。

そして、今戦ったモンスターは、東の第6マップ「イールの樹海」に出現する強敵の一匹だ。腐り蜂の群れによるデバフ付き包囲攻撃は、無対策だとタンクでもあっという間に溶けるからだ。

また、蜂がいなくなってからも油断はできない。不用意に近づくと、蜂蜜の匂いで未了がかかり、無防備になった所を嬢王蜂が生気吸収で養分にしてくるのだ。そして、吸ったHPを使って、また腐り蜂の大群を生成… というループを仕掛けてくる。

この生気吸収、無対策だと即死するくらい吸われるとのことだったので、俺も注意をしていた。が、羽音からの接近が早過ぎて不意打ちになってしまったらしい。もっと大々的に音を立てていたら危なかった。

さて… これで次の層が開いたわけだが… 今日は引くとしよう。ドロップが美味しいのと、期待するモンスターに出会える可能性よりも、危険なモンスターにやられるリスクの方が高くなってきたからだ。

俺は脱出の札を使用した。すると、転移ゲートを使用した時と同じ浮遊感を感じた。

「E4 古き塔の都 トマ に入りました。」

ちゃんと戻ってこれたようだ。

なお、俺の知らぬ所だが、次の層に用意されていたのは俺が探していた大本命「スリプルバタフライ」だった。眠り粉と吸血を持つモンスターだ。だが、HP満タンの時には粉しか撒いてこないため、睡眠耐性を安全に育てるのに最適と言われていた。なお、通常の出現場所では、ポイズンバタフライや食人草などのお供がいるため、寝ている間に溶解液や毒のコンボで溶かされる危険がある。