09-05 鍛錬は続く、拳士たちとのスパ

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砂の上での技能の育成は進んだので、次は海へ入るとしよう。

できれば、「安定動作」も進化させたかったが、遊泳の方が先に上がりそうだ。

だが、その前に、ブレイオの世話をしよう。

「ブレイオ。海に入れるか?」

「海、入って見る。」

「よし。少しずつ入るぞ。」

俺とブレイオは海へと入っていった。なお、俺は水着へとパージ済だ。ブレイオは、水着はとりあえず無しにしている。

「主人。水、冷たい!」

「そうだな。だが、泳いでいると慣れるぞ。それより、水はどうだ?嫌だったりしないか?」

「水は嫌じゃない。前は、怖かった。でも、今は怖くない。」

「そうか。肩が浸かるくらいまで行くぞ。」

どうやら、進化に伴って、ブレイオが海に入れない制限は緩和されたのかもしれない。

「ブレイオ。どうだ?」

「水、冷たい。でも、慣れて来た。今は平気。」

「そうか。まずは、泳ぐのと、潜る練習な。俺がやるから見ていてくれ。あと、息が苦しくなったら浅い所まで戻るんだ。」

「わかった。息できないと死ぬ。」

俺は、まずは「潜水」を何度か行なった。俺がソルットの海へ初めて来た時と同じだ。

その後、ブレイオにも潜水を試してもらった。そして、15分ほどで技能習得アナウンスが出た。「冒険者指導」などの技能がしっかり生きているようだ。

「次は、水泳行くぞ。潜って、どんどん泳ぐんだ。」

「わかった。でも、この海、不思議。海の中、生き物いない。」

「ここは、そういうビーチだからな。ちなみに、海の中は、電磁感応で探っているのか?」

「そう。でも、感じるまでに時間かかる。海、広い。」

「それは水の中だからな。まぁ、ここには何もいないし、リーネさんも修行中だ。俺たちは俺たちのことをやろう。」

そして、同じく15分ほどかけて、ブレイオは「水泳」技能も習得した。当然、条件達成によって、「遊泳」が生えたぞ。

「遊泳、できるようになった。たくさん泳げる。」

「良かったな。存分に泳いでくれ。俺もこれから存分に泳ぐからな。」

「わかった。」

その後は、各自で自由に泳ぎまくった。

なお、おくたんは採集をさせ続けている。海中にいるなら、ぶつかる可能性も低いだろうからだ。

「技能 遊泳 が上限レベルに達しました。」

「技能 遊泳 が 水中活動 に進化しました。」

3時間ほど泳ぎ続けた結果、こちらも進化した。

この技能も、疾駆と同じく分岐がある。速度や突進力を伸ばす「高速遊泳」と、水中での行動制限を緩和する「水中活動」に分かれている。当然、俺が選んだのは「水中活動」だ。

なお、魚系の種族だと、「遊泳」からの分岐として「由泳」という技能がある。これは、「水中」という枷を解き放つ技能であり、地上や空中でも泳ぐように移動することが可能になるものだ。ただし、空を泳ぐためには、「浮遊」や「飛行」技能が必要であり、それが無い場合は、地面を這うような移動になる。

「ブレイオ。夕方になっているが、どうする?夜まで泳ぐか?」

「いや。出る。疲れた。」

さすがにブレイオも疲れたようだ。まぁ、合計7時間ほど運動していたのだから当然だ。もちろん、途中休憩は挟んでいたけどな。

それにしても、「安定動作」が19になっているのがおしい所だ。まぁ、この技能は「不安定な足場で活動すれば育つ」ものだから、キトル山を下る過程で勝手に上がるだろう。

「やった~!海の心だ~!」

どうやら、あっちの目的も達成できたようだ。それにしても、一日、海で修行しただけで覚えるとは、さすがだな。まぁ、失敗していただけで、それなりに海で過ごしていたんだろうから、習得できて当然ではあるか。

それにしてもリーネさん、アレからさらに強くなるのか。いや、カイムさんの方がもっと強かったな。そして、まだまだ上もいるか。最前線プレイヤーは、さらに次元が違う強さだろう。

「ユーさん!今日は助かったよ。ブレイオちゃんの育ちっぷりも見られたし。」

「こちらこそ助かった。技能が2つも進化したのは、リーネさんの 冒険者指導 のおかげだと思っているぞ。」

「あぁ、それか~。そういえば、ユーさんもなぜか持っているよね?指導した人って、あの二人かな?」

「そういうことになるな。ちなみに俺に指導したのはリーネさんということになっているはずだぞ。」

「え?私、指導したっけ?」

無自覚だったのか?この人…

検証班案件かもしれないだろうか。「入手条件が厳しい」と言われた冒険者指導のネックは「指導してくれる人との関係構築」だからな。

だが、1年もすれば、このくらいは判明してもおかしくないと思うんだ。もしかして「鳥の乱獲」みたいな特殊フラグがあるのだろうか?

その後はギルドへ戻り夕食。そして、ログアウトした。なお、俺のステータスは、技能の進化に伴い、以下の通りとなった。

名前: ユー

レベル: 28

体力: 91

魔力: 53

筋力: 64

防御: 76

精神: 53

知性: 76

敏捷: 15

器用: 15

技能:

適性: 近接体術8, 中級魔力拳6, 中級気留術6, 魔法(土21, 水19, 木20, 炎19, 光21, 風15, 闇11, 氷11, 雷8)

技術: 触鑑定19, 精神統一6, 受身25, 定駆1, 安定動作19, 水中活動1, 冒険者指導13, 空手15, 跳躍6

支援: 捕獲握力強化, 逆境を超える心, 不動の守り, 海の心, 薬草知識, 世界知識, 識別, 剛体, 滝の心

耐性: 空腹耐性, 柔軟, 即死抵抗, 物理抵抗, 毒抵抗, マヒ抵抗, 睡眠耐性, 脱力耐性

特質: 盲人, 鈍感, 効果変化 欠損, 正々堂々, 真理3

「よぅ、ユーさん!4日ぶりだな。」

「俺たち、この4日でさらに強くなったぜ!楽しみにするといい!」

「それは楽しみだ。俺も昨日から鍛え始めたぞ。」

「それだけ強いのに、まだまだ鍛えるのかい?やるね~。」

「まだまだ上はいるからな。」

「じゃ、さっそく行くぜ!」

浜辺での鍛練をこなした翌日は、約束の日である。そして、ここはノンノリアのギルドの地下にある訓練場だ。

正面にいるのは、鳥の狩場で共闘したスピリットフォースの面々だ。今日はたっぷりと鍛えるとしよう。

「主人。なんだか強そう。」

「そうか。4日も経っているからな。ブレイオは、攻撃より受けに集中した方が良いぞ。」

今回はブレイオもスパに参加している。ただ、能力的には彼らの方が格上だろうから、正面から撃ち合うべきではないだろう。

「俺のパワーアップした拳だ!」

「おぉ、これは重いな!」

「マジか。さすがの防御力だぜ。なら、こいつはどうだ!」

パワーアップと聞いて、もしや?と思っていたが、少なくとも正面にいるディーンは、中級技能に到達しているようだ。

先ほど打ち込まれたのは、「拳巧術」の初期技「圧拳」だろう。拳付近にも力場が発生するため命中範囲が広いのと、受け系の技で捌くのが難しい技だったはずだ。

そして、次に来たのは「連撃」だった。初撃はぽふったが、2発目以降は直撃して吹き飛びそうになった。ただ先ほどに比べると衝撃は軽かったので、4発目から「反撃」を挟んで相殺することができた。

「反撃を合わせてくるか!なだが、ってうぉ!な、うぐぅっ」

「掴み系の技は耐性崩しに弱いからな!」

連撃をカウンターされたディーンは、掴みに来た。が、例によってうまく掴めなかったようだ。そこへ押撃で耐性を崩す。やや前傾姿勢だったようで、バランスを崩すことに成功した。

その後は、耐性を戻す前に、出の早い振討をたたき込んだ。結果、耐性が崩れていたこともあり、バッターンと倒れてしまったようだ。

「マジか!ディーンがあっさりと倒されちまった。」

「次は俺だ!行くぜ!」

そして、間も置かずに2回戦開始…

挑んできたのは、犬獣人のリンクだった。疾駆辺りを持っているような速さで突っ込んできた。

「アチョー!」

そして、空中から飛び蹴りで来た。おそらく飛び蹴りだろうから、「戦脚巧術」だろうか?なら、こうしよう。

俺は、「複合」で作った魔力拳を振り抜いた。結果、 ボン! という爆発音がして、リンクは墜落した。炎と風を複合したため、爆発が起こり、空中で耐性を崩したのだ。

「いてて!まさか撃ち落とされるとは思わなかったぜ!」

「高く飛びすぎだな。その方が威力が出るのは知っているけれど。」

なお、後で聞いた話だが、彼はまだ中級には至っていなかった。「跳躍」技能を育てており、その力で高く飛んだだけだった。爆発であっさり吹き飛んだのも、それ故だったようだ。

その後、朝から始めたスピリットフォースの面々との鍛練は、昼まで続いた。

ディーン以外で、技能が中級に至っていたのは、ゾウ獣人のパニだった。「柔体術」を習得しており、体を一時的に柔らかくできる技を持っていたため、打撃を軽減されたりした。とはいえ、ダメージ0にはならないので、長期戦の末、投落でバターンしちゃったわけだが。

1バトルした後は、普通に攻撃や受けの訓練をこなした。結果、残る3人にも中級技能が生えた。

犬獣人のリンクが選んだのは「斥候体術」だった。「脚技は楽しいが、速さを活かしたい」とのことだ。

ヒューマンのイシュターは、「中級体術」を選んだ。戦闘ではバランスよく技を使っていたので、その長所を伸ばす方向にしたようだ。

山ドワーフのポロロは、「山巧武術(体術)」というドワーフの種族ルートを選んでいた。彼は、体術以外にも斧や槍なども使うため、総合力を求めた形だ。

「おっしゃ!これで、猿を駆逐してやるぜ!」

「それだけ育っていれば行けるだろうな。がんばれよ。」

「おぅよ。って、ユーさんはどうするんだ?一緒にボス狩るか?」

「すまないが、もう少し街を観光したり、ギルドで依頼をこなしたりしたいんだ。それが終わったら、俺もボス狩の予定だな。」

「そうかい。じゃ、俺たちは一足先に山を下るぜ。あんたも追いついてくるだろうけどな。」

こうして、スピリットフォースとのスパタイムは終わった。

なお、ブレイオは、今回は生還することができていた。HP10%代までやられたが、あの低いHPでよく耐えたものだと思う。