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「続いて、調薬所へ向かいます。しかし、近くに露店があります。果実が見えます。」
「果実か… 行ってみようか。」
武具屋を出た次は、調薬所だ。ナビーは「近い順に」と言っていたので、きっと、錬金術店より近いのだろう。
そして、それとは別に露店も発見。露店めぐりは続ける予定でもあったので、当然立ち寄ることにした。
そこで売っていたのは、バナナや柿、葡萄などの果物だったので、必要量を補充した。なお、「キトル山産」なのだが、転移を用いて他の街へも輸出されているため、俺自身は何度も食べたことがある。「購入」ではなく「補充」なのはこのためだ。
「調薬所に到着しました。入口は閉まっています。こっちです。」
その後、調薬所にも到着した。お薬を扱っているだけあり、ちゃんと入口を塞いでいるようだ。大半のお薬はインベントリーの中だろうから、汚れようが無いだろうけれど。
入口に近づくと、武具屋と同じような石の階段があった。階段を置いている建物が多い印象だが、何かこだわりがあるのだろうか?
その階段を上ると、杖が木ではない何か触れた。手も伸ばしてみると、木枠にガラスがはめられたような扉だった。杖は、ガラス部分にぶつかったらしい。
そして、取っ手を発見したので押してみたら、普通に動いたので、そのまま中へ…
店の中は、広がりを感じたと共に、人の声もけっこう聞こえている。まるで、冒険者ギルドの受付のようだ。お薬は住民も買うだろうから、もしかしたらギルド以上か?
「ナビー。受付に行きたい。」
「現在、全ての受付に人が並んでいます。」
「全てということは、受付は複数あるのか?」
「はい。受付は4つあります。」
「なるほど。尤も列が少ない所には何人いるんだ?」
「3人です。」
「わかった。なら、そこへ先導してくれ。」
「列の最後尾へ移動します。こっちです。」
店の中は、大混雑ということはなかったが、列がいっぱいになる程度に人は集まっているようだ。一番空いている所で3人なのだから、少なくとも15人以上が受付で何かをしていることになる。
そのまま、ナビーに「ここです」と言われた場所へ移動し待機する。そして、漏れ聞こえる声を拾ってみた。
結果としては、定番のお薬やポーション類を購入する人が多いようだった。風邪薬や解熱剤といった話も出ているので、NPCもやはりお世話になっているのだろう。
なお、「風邪薬」などのアイテムには、「自然治癒の促進」や、「一時的な耐性向上」、あるいは「体力の一時的な上昇」といったバフ効果があるものが多く、対応するポーションよりも安価でもある。ただし、得られる効果が微量、且つ、連続の服用に制限があるため、常用するのは難しい。
「受付が利用可能になりました。こっちです。」
5分ほど待っていたら、無事に受付が開いた。
なお、漏れ聞こえた声の印象から、受付の人は中年くらいの男性のようだ。長く勤めているのか、あるいは自分で調薬しているのか、手続きが慣れている印象だった。
「いらっしゃいませ。こちらは、ノンノリア調薬所の受付になります。」
「いくつか探しているお薬がある。それから、ポーションを補充したい。」
「了解しました。では、先にポーションからよろしいですか?準備の間に、お薬の方を伺いましょう。」
「わかった。ポーションだが…」
俺は、N3攻略に向けて必要なポーションを買いそろえていった。と言っても、いつもの回復、治療系のポーションだが…
この調薬所最大の売りは、第3マップにして初の「復活薬」が入手できることだ。だが、俺たちには以下の理由から不要である。
- 俺が死んだ場合、おくたん、ブレイオは強制送還されてしまうので、俺を復活させるには、パーティメンバーが必要になる。
- おくたんやブレイオは、復活薬で復活させられない。それぞれ、違うアイテムが必要で、いずれも「調薬」の領分ではない。
「承りました。準備させますね。それで、お薬ですが、どういったものをお求めでしょうか?」
続いてお薬の購入だ。俺は、まとめウィキに掲載されていた情報に従って、微量なバフの得られるお薬を買い集めていった。
「調薬所」だが、まとめウィキ上では「付与魔法の入門店」とか「身体強化の師匠」などと解説されている。つまり、技能の習得や育成のために有用なのだ。
「付与魔法」などの技能を習得、育成するためには、「さまざまなバフに対する理解」が必要だ。具体的には、「該当するバフだけをかけた状態で一定時間活動する、且つ、バフが切れた後に一定時間活動する」という複合条件があり、これに各種お薬の効果が、連続使用の制限も含めて適合するのだ。
「それなら、魔法でバフをかければ良いじゃないか?」という考え方もできる。もちろん、その考えは正しいのだが、実際には難しい。例えば「水縛」のバフ効果は「熱耐性、知性上昇」という複合バフなので、条件が満たせないのだ。
なお、俺の場合は「気留術」の「強化」で身体能力系のバフは条件を満たしているはずだ。だが、耐性上昇系のバフについては適合する技を持っていなかった。
「お お買い上げありがとうございました。でも、飲みすぎには気を付けてくださいね。」
「わかっている。一気に飲むわけでも、制限に反して飲むわけでも無い。」
「はい。それと、お薬を飲むと脱力したり、眠くなったりするものもありますので、ご注意くださいね。」
お薬だけで60個ほど購入したからだろう。心配されてしまった。
なお、制限を無視して服薬すると、中毒症状を受ける。具体的には、自然治癒でしか治らない毒を負ったり、半日ほど飲食ができなくなったりする。なお、その行為を繰り返すと、「薬物中毒者」という凶器称号が生えるぞ。
それとは別に、一部のお薬には副作用として、軽度の睡眠や脱力効果が付いているものもある。ただ、これらについては耐性があるので踏み倒せるだろう。
「助かった。お薬は、数が間違っていなければ要らないと思うが、ポーションは補充するかもしれない。」
「承知しました。またのお越しをお待ちしております。」
必要な物も買いそろえたので、ひとまず調薬所は終わりで良い。では、本日の最後、錬金術店に向かおう。
「錬金術店に向かいます。こっちです。」
「いや、待ってくれ。ナビー。今日はやめておく。」
当初は、錬金術店にも行くことを考えていたのだが、今日は止めることにした。いろいろイベントがあって疲れたこともあるのだが、それ以上に、実の所、錬金術店で欲しい物が無かったのである。
ということで、今日の観光はおしまい。その後俺は、ギルドへ戻った。
「主人。このティー、不思議な味。甘い。」
「そうだな。確かにこれは紅茶に近い味わいだな。」
ギルドでやったことは、ブレイオと共に購入した茶葉の飲み比べだった。
今日は、ひとまず前半5種類について飲み比べてみることにした。ティーで回復する満腹度は少ないので、5杯くらい一気に飲んでも問題無いのだ。
「ブレイオは、好みの味はあったか?俺はスイート濃厚ブルーセージだな。抹茶みたいな味だった。」
「全部美味かった。でも、イエローハニーはまた飲みたい。」
「イエローハニーか。はちみつレモン風味だったな。他のも味見するが、今度見つけたらまとめ買いするとしよう。」
残念ながら、「大好物」は見つけられなかったが、ヒントみたいなものは見つけられたのかもしれない。言われてみると、はちみつやレモンを使った料理を食べていないな。
「主人、茶葉、味が豊富。いろいろな葉っぱからできている。」
「そうだな。どうすればこんな味になるのかわからないものもあるが、ブレンドの具合は良いように感じる。」
茶葉の味は、いろいろあった。ハーブティーなはずなのに、はちみつレモンな風味もあった。葉っぱ以外にも何か混ぜているのだろうか?
とりあえず、美味しかったという茶葉については、ゲーム内のメモ機能に鑑定データを張り付けておこう。また、一致する茶葉が見つかった場合に通知するようにしよう。大量生産で同じ茶葉を作っているのなら、これでうまくいくだろう。
その後、残りの満腹度に対応した軽食を取り、俺はログアウトした。
明日は、ランダムダンジョンでも探してみよう。できれば、N3の階層型ダンジョンで、ブレイオのレベルを上げ切手しまいたい所だ。
なお、ダンジョンが見つからない時は、トマの塔へ向かう予定だ。正直、雷の通りが悪いので、そうならないで欲しい所だが…
最後に、インベントリーの整理をした。直近で不要そうな物は倉庫へ移動したり、売り払ったりした。
インベントリー (通常アイテム):
ポーション X 30
MPポーション X 30
ハイポーション X 5
毒消しポーション X 15
安定ポーション X 15
魔払いポーション X 15
フレイバー薬 X 60
テント X 5
煙玉 X 5
松明 X 5
魔除けの葉 X 100
脱出の札 X 2
布マスク X 3
採取用手袋 X 4
高級携帯食 X 10
茸焼き X 30
フルーツ X 30
ブレンド茶葉 X 30
浄水筒(小) X 1
冷却コップ X 2
発熱コップ X 2
ダンジョン発見機 X 1
木製テーブル&チェアセット (3人用) X 1
インベントリー (貴重品):
冒険者証 X 1
旅人の鍵 X 1
ゴーレムコントローラー (おくたん) X 1
解放の証 (視覚) X 1
契約の証 (ブレイオ) X 1
インベントリー (装備品):
炎の鉄拳 X 1
魔弾鋼のナックル X 1
白木の杖 X 1
樫の杖 X 1
鉄の短メイス X 1
耐海武術着 X 2