09-10 N3D 獣と水生の回廊

改定:

本文

さて。名前の通りなら、ここで出現する可能性のあるモンスターは、以下の内容になるはずだ。

獣系 (遭遇済):

シーフラット, シーボア, 狼, トゲトゲネズミ, シーフキャット, ライドモンキー, フラッシュラット, ライドマウス, 山狼, マッドフォッグ, キトルベア, アースモンキー,

獣系 (新種):

アルマジロン: W4 西のダンジョンに出現するアルマジロなモンスター。球体上に丸まって体当たりしてくる。

メージラビット: N3 キトル山の中層から出現するウサギ。ただし、付与魔法で身体を強化して接近戦を仕掛けてくる特殊なタイプ。

赤狼: W3 西の第3マップに出現する狼。熱に強い体毛だが、魔法などは使わないため、狼の純粋強化。

水生系 (遭遇済):

アシッドフロッグ

水生系 (新種):

アーマータートル: S3 野道から海に入ると遭遇。爪や噛み付きでしか攻撃できないが、「遠距離攻撃」を大幅に軽減する特殊体質がある。なお、陸上でも歩いて移動する。

フライングフィッシュ: S4 のダンジョンに出現する宙を浮かぶ魚。水鉄砲や体当たりを仕掛けてくる。

飛びヒトデ: S4 のダンジョンに出現するヒトデ。フライングフィッシュのように空中は浮かばないが、跳躍の勢いで体当たりをしてくる。攻撃力が高め。

爆弾シェル: S4 のダンジョンに出現する貝型モンスター。地面を這って、ゆっくり動く。通常攻撃はしてこないが、物理、魔法への耐性が高く、且つ、最初にダメージを与えてから30秒が経過すると自爆してくる。またお決まりというべきか、自爆の範囲内に別の個体がいると誘爆する。

カエル戦士, カエル僧侶, カエル術師: S4 のダンジョンに出現する、職業に覚醒したカエル。ちゃんと剣や盾、杖なども装備している。

カエル勇者: 戦士、僧侶、術師の3カエルが揃っている時に低確率でポップして合流してくる。攻撃も回復もできるが、器用貧乏でもあるので先に倒してしまうのが望ましい、とされている。

けっこう種類が多い。序盤のマップだと何かしら出てくる獣系と、ナザ島が水生系モンスターに偏っている影響だ。第3マップダンジョンだから仕方のないことだ。

ただ、ここまで混在していると、本来の出現地域で発揮される性能には至らないと思う。特にカエル勇者は、出てくればキセキだろう。爆弾シェルも、ここで出現すると盛大に味方を巻き込む原因になりそうだ。

「主人。ネズミとネズミ、熊と魚!」

「熊と魚が共闘って不思議だな。ブレイオは、魚から頼む。」

「魚?例の、浮いている魚かい?」

「たぶんな。俺たちは残りだな。」

そして、最初の部屋で戦闘。キトルベア、トゲトゲネズミ、フラッシュラット、それからフライングフィッシュを倒した。

「やはり問題無く倒せるな。」

「だが、魚はわからなかった。」

「たぶん、浮いているからだろうな。マウンテンモスなどと同じだと思うぞ。」

「それもそうか。オイラもまだまだ修行中だ。」

「確か、熟練すると、低空を浮いているくらいなら、わかるようになるんだったか。」

「そう。オイラも、村の族長ができると聞いてるさ。それにしてもユーさん、ヒューマンなのに詳しいな。」

「先人の知識というやつだ。俺は異人の旅人だからな。」

続いて、10匹のモンスターが群れているという部屋に差し掛かったわけだが…

「ブレイオ。広雷行けるか?」

「行ける。」

「なら、一発打ち込んでから戻って来い。部屋の中に爆弾シェルがいたら危ないから、通路で撃退するぞ。」

せっかく、モンスターが部屋に溜まっているのだ。ならば、開幕は範囲攻撃で一掃、または釣り出して、囲まれないように通路で迎撃… というのが鉄板だろう。尤も、このダンジョンの通路は、5メートルくらいはあるので、横から抜けてくるのだが…

「大きな貝、あった。」

「そうか。どちらにしても、ここで迎撃だな。」

広雷のゴロゴロ、ドッカーンという音の後、戻ってきたブレイオの話で、爆弾シェルの存在を確認。相手は格下なので、問題のモンスターがいないなら部屋に突撃した方が殲滅は早い。だが、万全を期すなら待ち狩一択だろう。

俺が前で構えていると、魔法がぽふってなったり、狼の声が近づいてきたりした。当然、待ち構えて迎撃していく。

そして、広雷の使用から30秒後… 奥の方で ドーン という音がした。その音は動画で聞いたことがある、爆弾シェルの爆発音だった。

なお、このゲームでの爆発は、ダメージ判定の後に爆風の判定がある。このため、自爆ダメージでHPの尽きたモンスターは、吹き飛ばずに消滅する。昔は処理が逆だったが、問題があったため現在の処理に改定されたらしい。

「お前さん、頑丈だな。正面で全部受け止めるとは。」

「俺は、そういうスタイルだからな。それに、格下のモンスターにやられるほど軟じゃない。」

「ハハハ、そうだったな。」

「でだ、俺としては、この調子で、狩りながら最下層まで行きたいと思っている。どうだ?」

「その方が効率的か。オイラもかまわないさ。」

その後、俺たちは、モンスターを狩りながらダンジョンを進んでいった。

進み方は、最初にやった時と同じだ。土探知で索敵、広雷で攻撃と釣り出し、そして通路で迎撃だ。

そんな戦いをしながらダンジョンを突き進み、夜には5層に通じる扉の前までやってきた。

今日はここで休憩とし、明日は最奥部を目指すことになった。

「こんな奥まで来たのは初めてだ~。だが、景色は変わらないのか。」

「俺も全てを知っているわけではないが、今まで潜ったランダムダンジョンは、階層によって違っているようには感じなかったな。」

「そうなのか~。モンスターは変わっているような気はするさ。だが、正直、オイラにもよくわからないや。」

「まぁ、モンスターはそうかもな。このダンジョン、出てくるモンスターの種類が多いみたいだから。」

「確かに多い。会ったことのないモンスターがいっぱいだ。」

ザッポさんは、戦闘能力はある方だが、本職は生産職だ。こんなダンジョンの奥まで潜る必要が無いとも言えるし、そもそも鍛冶屋で修行中。今は遠出もしずらいだろう。

「そういえば、ザッポさん、素材はどうだ?集まったか?」

「たっぷりさ。魚の鱗みたいな、こっちでは珍しい素材も取れた。帰ってから素材にするのが楽しみだ。」

「皮革や裁縫もできるんだったな。活用できるのは良いことだと思うぞ。」

「おぅさ。師匠への土産もできたしな。あとは生きて持ち帰る… って所だが。」

「正直、ザッポさんほどの使い手なら、よほど変なのが出ない限り問題無いと思うけどな。まぁ、危ない時は俺を盾にしてくれ。」

「お前さん、硬いもんな。頼らせてもらうさ。」

そんな話をした後は買いだめの食事を取って就寝。もちろん、俺はログアウトした。

なお、ザッポさんは携帯食しか持っていなかったようなので、茸焼きとドライフルーツを少し提供した。明日に向けて勢を付ける、そして、心を落ち着かせるためには、こうした食べ物は役立つからな。

そして翌日、5層に入ったわけだが…

「主人、モンスターいっぱい!こっち来てる!」

「大部屋か!これって、例のモンスターハウスってやつかい?」

「そうらしい。ブレイオ、爆弾シェルは見えるか?」

「いる。でも、近くにはいない。」

「わかった。俺が前に出て戦う。ブレイオとザッポさんは、モンスターに囲まれないように気をつけてくれ。」

ということで、いきなりモンスターハウスから始まった。やはり、転移ゲートイベントは起こらなかったようだ。

なお、まとめウィキには、「転移ゲートイベントとモンスターハウスが同時発生した報告は無い」という仮検証結果が掲載されている。「旅人の印」入手イベントの間にモンスターが湧いていたら問題があったのだと思われる。

ただ、素材と経験値を集めたい俺たちとしては、好都合でもある。

ここで問題なのが、誘爆特性のある爆弾シェルが群れていることだろう。このゲームは、8方向を囲まれたら身動きが取れなくなるとか、ターン制で必ず相手に動かれるとか、爆発に巻き込まれたら防御力などを無視してHPが1になるとかの心配はしなくて良い。だが、連続で大量に爆発されると、俺はともかく、ブレイオやザッポさんは死に戻る可能性があるだろう。

本来は、爆弾シェルを刺激しないよう、その他のモンスターを殲滅することがセオリーだ。爆弾シェルは足が遅いから、近づかれる前に距離を取る、隙間を縫って脱出するなどの戦術が取れる冒険者なら、十分に可能なことだ。

だが、残念なことに、俺たちには無理だ。戦闘メンバー3人の中で一番敏捷が高いブレイオでも、その値は 30 を下回っている。結局の所、俺が前に出て盾になり迎撃、ブレイオとザッポさんは後ろから魔法で処理… といったいつもの布陣で挑むしかないのだ。

だが、問題無い。俺の正面には獣や魚が集まり、時々何かがぽふぽふもしているが、それはいつものこと。むしろ、後ろが詰まっているためにモンスターが正面に立ってくれるので助かっている。

そうやって、殴り倒していると、硬い手触りの表面に触れた。

爆弾シェル:

種別: モンスター・水生

レベル: 15

HP: 100%

状態: 敵対

説明: 硬い二枚貝に身を包んでいる。外部からの刺激を受けると爆発する。

例の爆弾シェルが、目の前までやってきたようだ。確かに、表面は殻だったが、石のようにザラザラもしている。これが爆発すると思うと、確かに強そうだ。

でも、正面に来るなら好都合だ。要は、貝殻の中に衝撃を伝える手段があれば良いので、伝衝のような属性の攻撃を打ち込むと、あっさり倒せるのである。

そんなことをしながら、モンスターを狩り続けて20分後…

「ブレイオがレベル20になりました。」

「条件を満たしたため、ブレイオの技能 若体 が消滅しました。」

「 ブレイオが、技能 逆境を超える心 を獲得しました。」

モンスターハウスのモンスターは問題なく駆逐できた。

そして、ブレイオも目標だったレベル20に至った。ついでに、俺が昔取得した「逆境を超える心」も生えたが、まぁ、有害ではないのだし良いだろう。