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「主人。いた。こっち来てる。」
「やぁ、ユーさん。それにブレイオ君… でいいのかな。大きくなっているね。」
ここは、古き塔の都トマ。今日から俺とブレイオはトマの塔に登るわけだが、その相方としてアステリアを待っていた。
「アステリアさんも久しぶりだな。」
「久しぶりね~。確かにゲーム内で20日だったか。チャットで報告はしてもらっていたから、そんな感じはしないけどね。」
「そうだな。ところで、特別ゲストとやらは?」
「あぁ、そうだね。紹介… は、してもらおうか。」
今回、アステリアの側にはお付きの者がいる。彼の護衛をしてもらう必要があるからだ。
「タンク担当のルーウェンです。よろしくお願いします。」
「調査担当のカナミーだよ。初めましてだね。よろしく。」
「ご丁寧にどうもだ。俺はユー。こいつはブレイオ。」
「こっちこそ、今日は貴重な検証案件をありがとうね。それに、ヒューマンの盲人というのも珍しいから、今後も仲良くしてくれたらいいな。」
「雷の若鬼霊ですか。イベントのライトニングオーガとは戦いましたが、大きく違うように見えますね。もちろん、レベルが違うということも含まれるのでしょうけれど。」
アステリアが連れてきたのは二人の男女… だと思う。
かしこまった感じの男性はルーウェン。検証班の護衛を担当しているらしい。普段から敬語で話しているため、すっかり型に付いているとのこと。
そして、活発そうな女性がカナミー。検証班の調査担当で、主にマッピングや鑑定、測定を専門にしているらしい。なお、普通に戦闘もこなせるとのことだ。
今回は、「トマの塔の調査」ということで、アステリアからカナミーを紹介してもらった。そして、二人を護衛できる戦力として、ルーウェンが加わった形だ。
「それじゃ、パーティを組んで、塔へ向かおうか。ユーさんも、それでいいんだよね?」
「かまわないぞ。塔を攻略する準備をして集合、ということだったからな。」
ということで、パーティを結成したので、お互いのステータスを確認することから始まった。
ルーウェン:
種族: ヒューマン
職業: 結界師, 騎士
性別: 男
称号: [特級結界師], [特級騎士]
レベル: 73
体力: 273
魔力: 232
筋力: 273
防御: 332
精神: 265
知性: 315
敏捷: 190
器用: 182
技能:
適性: 主結界王術10, 聖騎士王術10, 戦杖術3, 護衛盾王術7, 剣聖術18, 中級体術18, 魔法(土50, 水50, 風40, 炎40, 光40, 闇40, 治療45, 付与45), 中級採集10
技術: 帯域索敵8, 上級並列思考15, 魔力一体12, 受け身66, 直観58, 危険感知51, 心身安定12, 縮地18, 水中活動12, 多段跳躍18, 鑑定48, 鋼切
支援: 大地の祝福, 山の祝福, 海の心, 滝の心, 森の心, 炎の心, 光の心, 視覚強化(暗, 魔, 霊), 聴覚強化, 握力強化, 超反応, 身体強化, 上剛体, 上剛耐, 上剛護, 薬草知識, 世界知識, 看破, 識別
耐性: 身体異常耐性, 精神異常耐性, 魔法抵抗, 石化耐性, 凍結耐性, 魔耐性, 即死耐性, 物理耐性, 魔法耐性, 柔軟, 不動の守り, 逆境を超える心
特質: 効果変換(欠損), 騎士道, 守護者
ルーウェンだが、総じて「タンクのトップ層」と言える能力だった。タンクに必要な技能は一通り揃っている上、「上級」の上「特級」の技能まで習得している。雷霊鬼の大技でも、正面から弾き返すだろう。
また、体力、防御、知性に特化しているという点では、俺と成長タイプが似ている。つまり、俺も同レベル帯になる頃には、これくらいの能力に至るのだろう。半年くらいかかりそうだけどな。
その他には、「騎士道」と「守護者」という技能を持っていた。騎士道は味方を守ったり救助したりする時にボーナスが乗る。「守護者」は、守る対象が多い時にボーナスが乗る。
「ルーウェンさん、硬いな。」
「はい。騎士プレイにあこがれがありましてね。ただ、盾を振るうだけでは守れないこともわかったので、結界と併用しているんですよ。」
「そうか。だが、最前線は大丈夫なのか?」
「アハハ、大丈夫ですよ。むしろ、今は未開放マップの解放に向けた情報収集や、今月末の公式イベントの準備が優先されているんですよ。むしろ、今回のお誘いには、私にも理のあることだと考えています。」
イベント… 言われてみれば、そんな告知があった。
4月末~5月の連休にかけて、公式イベントが開催されるそうだ。内容は「イベント専用ダンジョンの解放、難易度やクリアタイムなどでボーナス」だったはずだ。「出現するエリアが面白ければ散策はしてみよう」といった印象だった。
カナミー:
種族: 獣人(栗鼠)
職業: 測量士, 採集家
性別: 女
称号: [上級測量士], [中級採集家]
レベル: 55
体力: 136
魔力: 143
筋力: 78
防御: 84
精神: 188
知性: 149
敏捷: 221
器用: 266
技能:
適性: 上級地図16, 上級測定15, 狩人聖術13, 上級採集13, 魔法(土43, 風52, 木53, 光49)
技術: 縮地18, 立体起動15, 登攀47, 高速遊泳10, 心身安定15, 上級並列思考5, 特効看破18, 魔力一体11, 精神統一17, 危険感知58, 直観56, 広域感応18, 上位隠蔽3, 鑑定57, 鋼切, 高速投擲15
支援: 森の祝福, 山の心, 大地の心, 海の心, 滝の心, 視力強化(暗, 細, 色, 魔), 嗅覚強化, 触覚強化, 味覚強化, 超反応, 剛体, 剛魔, 剛精, 俊足, 上繊細, 世界知識, 薬草学, 看破, 識別
耐性: 柔軟, 毒耐性, マヒ耐性, 睡眠抵抗, 暗闇耐性, 混乱耐性, 逆境抵抗, 未了抵抗, 恐怖抵抗, 石化抵抗, 凍結抵抗, 沈黙抵抗, 魔抵抗, 即死抵抗, 柔軟, 魔法抵抗
特質: 森の狩人
続いてはカナミー。ルーウェンが突き抜けているだけで、こちらも異様な強さだ。上級に至っている技能がかなり多い。
ユニークな技能は、「狩人聖術」だろう。森に精通した者が習得可能な特殊ルートであり、弓、短剣、体術の複合技能だ。習得条件が厳しいが、遠近で立ち回れる使い勝手の良い技能になる。あと、ベースからも予想の付くことだが、攻撃力の一部に「器用」を参照するため、かなりの火力を誇っていると言える。
「あれれ?どうしたの、ユーさん。」
「ん?あぁ、カナミーさんのステータスを確認させてもらってな。」
「あぁ、なるほどね。ごめんね、ルーウェン君みたいに強くなくて。」
「いや、十分過ぎるほど強いぞ。検証って、ハードワークなのか?」
「あたしは測定と調査が専門だから、あちこち走り回るんだよ。あと、検証班だから、取れる技能は取りまくったね~。」
「魔法をちょうど4属性に絞っているが、何か意味があるのか?」
「あえて4属性のままだと何か生えないかな?っていう検証だよ。どうせ、種族的に炎が無理だから、絞ってみているんだ。」
なるほど、検証班だ。確かに、あえて技能数を減らして特化させた場合に生える技能や称号はある。それに魔法は、4属性とか8属性とかの条件で魔力が増えるボーナスがあるので、4属性に絞ることに意味があるのかもしれない。
いずれにしても、アステリアの護衛も、彼女の言う検証も問題無くできるだろう。俺たちはさっそく、トマの塔に突入した。
「ダンジョン、トマの塔 に入りました。現在1層です。」
「主人。塔、大きい。」
「そうだな。上層はもっと広いし、いろいろあるぞ。」
「今の所は変化なしだね。それじゃ、上層へ向けて進んで行こう。」
「オッケー。モンスターはユーさんとブレイオ君が戦う、で、あたしたちはそれを観測でいいんだよね?」
「そうだね。ルーウェンも、そのつもりで、護衛をお願いするよ。」
「わかりました。ユーさん、ブレイオさん。戦闘が厳しければ助けに入りますので、安心して挑んで下さいね。」
打ち合わせも完了したので、さっそく移動開始。俺は、ナビー先導の元、最短距離で移動を始めた。
「主人。人形と、ネズミがこっち来てる。」
「あの足音はゴーレムだな。ブレイオ、挑むか?」
「行く。ゴーレムのパンチ、注意する。」
「そうだな。アレは避けた方が良いぞ。だが、棍でぶん殴れば倒せるはずだ。」
程なくして第1モンスターと遭遇。まずはブレイオに先行させ、俺も向かっていった。
そして、ブレイオはゴーレムをぶったたいている所に到着。ゴーレムは打撃に弱いので、問題なく倒せるだろう。で、ネズミは…
「チュー!」
近くにいたので捕まえた。その後、振討でたたき落とし、土槍ドリルパンチを打ち込んで倒した。
「ゴーレム、フラッシュラットを倒した。ブレイオは経験値115を獲得しました。」
あっちも終わったようだ。
なお、今回は俺、アステリア、ルーウェン、カナミーの4人パーティであるため、獲得経験値は32%に減少する。こればっかりは仕方のないことだ。
「ん、あぁ、そっか。ユーさん、ちょっと待って。」
そのまま先へ進もうとしたら、カナミーに呼び止められた。
「ユーさん、これ貸すから付けてよ。経験値がもったいないから。」
そう言って渡されたのは、腕輪だった。
経験の腕輪:
種別: 防具・アクセサリー
説明: 魔法のアクセサリー。着用者が戦闘に貢献できていた場合に、パーティ内で多くの経験値を獲得できるようになる。
この腕輪は確か、獲得経験値の50%が着用者に配分された上で、パーティ内での分配が行われる効果だったはずだ。確かに、今の状況なら、経験値が得られるのはブレイオだけなので、着用させるべきアイテムだろう。
なお、いわゆるパワーレベリングの用途で使うことはできない。これは、着用者自信が戦闘に貢献しなければならないからだ。このため、今回のように、着用者が適正レベルのモンスターと戦えることを前提に、護衛その他の理由で高レベルのメンバーが同行する場合に用いられるアイテムだ。
その後は、ブレイオを育てつつ、奥へと進んでいった。