09-14 E4Ex VS雷霊鬼レベル73

改定:

本文

「トマの塔 3層に入りました。」

「条件を満たしたため、フィールドが変化します。」

ここに来るのは4度目だ。そして、当然のようにフィールドが変化していくようだ。

「わ~!霧が消えていくよ。すごいすごい!」

「そうですね。私もこの塔は攻略しましたが、その時には、そういうフィールドだと決めつけていました。実際、この一年は、それが常識だったのでしょう。」

「あ、奥の方に靄が見えるよ。もしかしてアレが…」

3人がそう言っているが、俺には先ほどからゴロゴロという音が聞こえていた。どうやら、出現演出よりも音の方が早いのだろう。

「カナミーさん。手筈通り、避雷針を。」

「あ、そうだね。これだけあれば、耐えられるといいな~。」

「では、ユーさん。お願いします。私もお供しますよ。それと、防御、知性のバフ行きますよ!」

前に出るのは、俺、そして、ルーウェンだ。

ルーウェンの能力は、同行者を近くで守っている時に効果が高まる性質がある。故に、一人で前に出るよりも、一緒に前に出る者と組んだ方が良いのだ。

俺は、ゴロゴロと言う音の方へと近づいていく。すると、前方からぽふっとした感触がした。もう攻撃してきたらしい。

その後も近づいていくと、例によってバチバチとした音がした。やはり「纏雷衝撃」は使うようだ。

俺は急いで避けようとした。が、その前にぼふっという音がして、俺は後ろに押された。同時に、前方から「ガーー!」という声がした。

きっと、レベルが上がった影響で、俺の知らない技を使ってきたのだろう。だが、なぜ、声を挙げながら遠ざかっているのだろう?

ふと、横から何かが飛び出して、雷霊鬼に切りかかっていた。ルーウェンが隙を突いて一当てしたのだろう。

また、地面からも音がして、雷霊鬼が、さらに叫んでいる。後方からの攻撃も始まったか?

「おっと、させませんよ!」

その後、前方でルーウェンと雷霊鬼の打ち合いが始まった。金棒が、ルーウェンの盾にぶつかっているのだろう。ガッキンガッキンという音がかなりの速さで鳴り響いていて、正直、ちょっとうるさい。

「ユーさん。攻撃できますか?こちらは私に任せてください!」

そんな通知がチャットで飛んできた。声を出すと聞こえないという配慮だろう。

俺はガッキンガッキンという音を頼りに、雷霊鬼の位置へ近づいていった。

すると、突然前方からズドーンという音がした。どうやら、どちらかの技らしい。

そして、その後、何かがぽふっとなった。まさか…

一方、こちらはカナミー。

あのルーウェンが吹っ飛んだ。特級の棍技「超爆殺棍」だろう。上級程度の技でルーウェンが押し負けるはずが無いからだ。

そして、雷霊鬼が振る棍の速度が尋常じゃない。ルーウェンもしっかり受け止めていたが、受け止めるのが限界、と言っても良い印象だった。アレの直撃は厳しいだろう。

雷霊鬼:

種別: モンスター・エクストラボス・霊体

レベル: 73

HP: 99%

状態: 敵対・真理の枷+3

説明: その昔、東地域を荒らしたモンスターの霊体。当時の記録では、雷を振りまきながら、その手に持つ金棒で人々を蹂躙していたことが記されている。

識別:

体力: 21900

魔力: 2190

筋力: 401

防御: 219

精神: 365

知性: 219

敏捷: 182

器用: 182

属性: 雷,闇

弱点: 土,光

特効: 雷

能力値は、第4マップのモンスターを無理やり強化しているためか、第9マップのフィールドボスと同程度に収まっている。だが、攻撃力は異常なほど高い。

そして、そんな棍を直受けしたはずのユーは、HPが5%も減っていない。無効化エフェクトが出ているのだが、チートを疑われても仕方ない硬さだ。

そんな戦闘を横目に、魔引板を配置していった。正直、レベル73のエクストラボスのマップ攻撃だと、こんなアイテムで軽減できるのか疑問ではある。だが、置かないよりもマシなのは事実だ。

こちらは、アステリア…

ついに、トマの塔に隠されたエクストラボスとの対面だ。動画で探しても見つけられなかった新鮮なボスというのは、生産職である自分でも高揚を感じる。

ただ、のんびり眺めていられるわけではない。攻撃力が高過ぎて、自分が被弾したら死ぬからだ。きっと、カナミーも同じだろう。

そのために、僕にはやるべきことがある。隣で観察に徹しているユーさんのモンスター、ブレイオ。彼をうまく活用することも、その一つだ。

「ブレイオ君。どうだい?アレは、たぶん君の進化先の一つだよ。」

「すごい、強い。でも、飲まれてる。」

「そうだね。怨念… なんだろうね。」

「戦う。主人も戦ってる。」

「良い心がけだ。だが、あの棍に飛び込むのは危険だ。なぜか、雷がよく効くみたいだから、落雷で攻めるんだ。できるかい?」

「わかった。」

最後に、ルーウェン…

出現した雷霊鬼は、聞いていた話通りのアタッカーだった。

だが、バフと技を切らさなければ、受けることは可能だ。器用と敏捷が低いため、攻撃が単調なのも幸いしている。

そう考えていたことが油断を生んだようだ。爆発によって吹き飛ばされてしまった。受け身を取ったので、被ダメージは3割にも届かなかったが、気を引き締めなければならないだろう。

一方で、うれしい誤算もあった。それが、ユーだ。塔の入口で発揮していた防御効果が、雷霊鬼にもしっかり届いているらしい。おかげで、後方の仲間を守る時や、こうして不意に吹き飛ばされた時のフォローが効く。

この戦いは負けられない。皆は理解を示してくれたが、「接戦の宝玉」を使用して、危険に晒しているのは事実だ。もちろん、貴重なイベント報酬を使用しているのだ、負けるつもりも無い。

戦闘開始から約3時間…

俺とルーウェンが雷霊鬼に張り付いた上で、全員で攻撃を続けていた。

HPはようやく50%まで減らせた。ほとんどは、ルーウェンとカナミーの働きだろう。

俺の戦い方は前回と同じだ。ただ、レベル70超のボスは硬かった。5%近く削れていたコンボでも、今回は1%も削れた感じがしない。幸い、HPが自然回復する様子が無いようなので、火力役が死ななければいつかは倒せるだろう。

なお、その過程で俺も雷霊鬼を触鑑定した。単純にレベルアップとステータスの増加だけがあり、「真理」の項目などは前回と同じだった。「レベルアップするとサイドストーリーが増える」みたいな仕様ではないようだ。

そして、広雷の音が聞こえてきた。50%から使い始めることも変わらないらしい。

「ブレイオ!アステリアさんの近くへ!」

「主人、もういる!雷壁!」

「行きますよ。主語結界!広域防御!」

そんな声がけから間もなく、ドッカーンという音が鳴り響いた。

受けたダメージは… 約31%だった。避雷針を16個も置いて、軽減装備もして、真理の枷が限界まで積もって、ジャイアントキリングも付けて、さらにルーウェンの技を重ね掛けして、なおもこの威力。やはりレベル70超の火力はでたらめだ。

「ユーさん。私は回復を。ここは任せました」

「かまわないが、広雷は定期的に来るぞ。」

「心得ています。」

と思ったら、回復必要らしい。たぶん、アステリアだろう。

ブレイオの近くなら、「雷吸収」でうまく軽減してくれるか?と思ったが、むしろ逆効果だったかもしれない。

いや、それなら、敏捷的にカナミーが回復に動くだろう。ということは… まさか二人とも死に戻り?

とりあえず、今は目の前のボスだ。声を挙げているが、その技はちゃんと交わさないと死ぬかもしれないので交わす。

使ってきたのは、ブレイオも習得していた「裁撃」だ。最初、ぽふっと受けたのだが、「即死に抵抗しました」という通知が来たので認識を改めた。レベル70超の雷霊鬼が相手では、俺の抵抗確率は 25% だからだ。むしろ、初撃で即死しなかったのがミラクルだろう。

そして、戦闘開始から約8時間…

「雷と土の複合、纏って、聖拳!」

「せっかくだから中二で行くよ!ホーリーレイ!」

「行きますよ!聖雷斬!」

「ギャーオォォォォー!」

俺、カナミー、そして、ルーウェンによる攻撃により、ついに雷霊鬼のHPが0になった。

なお、残りHPが1%になったから打ち込んでみたのだが、俺とカナミーの攻撃では1%を削れなかった様子。まぁ、「2%以下」という定義なので、納得ではあるが…

「雷霊鬼を倒した。経験値を6300獲得しました。」

「レベルが29に上がりました。」

「技能 魔法抵抗, 剛力, 剛護 を獲得しました。」

「技能 安定動作 が、 心身安定 に進化しました。」

「技能 マヒ抵抗 が、 マヒ耐性 に進化しました。」

「ブレイオはレベル25に上がりました。」

「ブレイオの進化が可能です。進化先を選択して下さい。」

そして、戦闘ログがいろいろ流れた。特に、圧倒的な格上と長時間戦闘した影響で、技能の成長が凄いことになっている。

「魔法抵抗」は、「物理抵抗」の魔法版だ。必中の「広雷」を何度も浴びた影響で、ようやく生えたようだ。

「剛力」と、「剛護」は、ベースを底上げする技能で、その内生える予定のものだった。防御が増える「剛耐」が生えなかったのは、物理攻撃の大半を「正々堂々」がブロックした影響だろう。

「おぉ!幽鬼の召喚石だ!これがブレイオちゃんのかな?記録記録…」

「雷の宝玉に、隕石… どちらも欲しいな!」

「ふむ。エクストラ報酬は、宝玉の影響なしですか。聞いていた通りですが、そちらはボスドロップに反映なんでしょうね。」

「え?本当?二人とも報酬のSS取っておいてよ。あとでまとめるのに必要だから。」

後方では、3人が集まってエクストラドロップの確認をしているようだ。俺の方は、以前にもらったためか、報酬の通知は無かったな。

ドロップの方は… 数が増えたり種類が増えたり、品質が上がったりしているようだ。高レベルボス限定ドロップと思われる名称のアイテムもあった。

ボス限定の素材を除くと、全てのアイテムはまとめウィキに情報がある。きっと、他の3人も同じ程度には入手しているだろう。

幽鬼の玉 X 12

幽鬼の呪粉 X 12

霊布 X 6

霊革 X 4

霊鱗 X 5

幻獣の革 X 3

幻獣の鱗 X 3

呪銀 X 5

精霊銀 X 3

闇の魔石 X 6

闇の結晶 X 2

雷の魔石 X 12

雷の結晶 X 5

雷霊鬼の金粉 X 12

雷霊鬼の霊角 X 10

雷霊鬼の霊珠 X 2

巨人の金棒(呪) X 1

魂宿の指輪(呪) X 1

うん。なんか第9マップのレア素材とか混ざっている。これで武具を作れば、しばらく更新は要らなくなりそうだ。ただ、加工できる人に伝手が無いから、それこそ相談案件になるだろう。

あと、武器と防具も出ているが、呪われている。今の俺の浄化技能では手に負えない可能性がある。これも伝手便りか… いや、気留術が上級に育ったら自分で浄化した方が美味しいか…