09-15 E4 ブレイオの進化と塔観光

改定:

本文

「あ、ユーさん。ユーさんのログも見せてよ~。というか、なんでこっち来ないの?」

ブレイオの進化を確認しようとしたら、カナミーに呼ばれた。

「ん?報酬の選択は終わったのか?そんな話をしていたようだから、俺も確認をしていた所だ。」

「あぁ、ごめん。ほったらかしてたのあたしたちか。」

その後、3人の輪の中に連れてこられて、ログのすり合わせを行なった。

その過程で、3人に提示されたエクストラ討伐報酬を聞くことができた。以前、リーネさんやカイムさんと組んで攻略した時と同様、報酬は2つに減らされており、しかも、立ち会った俺が知っているアイテムだった。

アステリア: 雷隕石, 雷の宝玉

ルーウェン: 纏雷の鉢巻, 雷鬼の怨念

カナミー: 幽鬼の召喚石, 幻幽の帯

とりあえず、この世で3匹目のブレイオが召喚… されるのだろうか?いや、ブレイオというのは俺が付けた名前だし、同じ個体なのか怪しいけれど。

「うん。記録完了。接戦の宝玉を使っても、ここは変わらない、というのは貴重なデータだね。この調子だと、後半マップのエクストラが見つかった場合にソロ狩りを狙う人が増えそうだよ。」

「そうですね。今思えば、いったんパーティを解散してからソロ狩り、その後合流して、宝玉使用からの再戦がベストだったのでしょうね。私もまだまだ考えが浅いです。」

「いや~、ソロ狩りなんて僕は無理だからね。それに、きっとここの運営のことだから、何か仕込んでいるんじゃないかな?」

「その辺はあたしたちで検証しとくよ。あ、でも、ここを出すにはユーさんが必要だっけ?」

「高レベルの幻ということだから、それに見合う看破持ちであれば行けると思うけどな。ん?」

そこまで言った所で、両手に何か触れてきた。ブレイオだろうか?

「ん、ブレイオか?すまんな。」

「違うよ!あたしだよ!」

カナミーだった。なぜ、両手をホールドしているんだろう?

「それで、なぜ両手を掴んでいるんだ?」

「ユーさん。検証、手伝ってよ?」

「ん?」

「高レベルの幻看破持ちでしょ?検証、手伝ってよ?」

「つまり、宝玉持ちでソロ狩りできそうな人と、もう一度ここに来るから、動向しろと?」

「そう。それで、幻解除したら脱出の玉で逃げてよ。」

「そうすれば、扱いとしてはソロになると?」

「そうそう。ね、あたしからのお願い?」

「断る。」

「えぇ~、なんで?あたしがこんなに頼んでいるのに?ちょっとくらい靡くもんでしょ?」

「カナミーさんがどうとかの問題じゃない。たぶん、幻解除でボスフィールドになる。そこから一人で離脱すると、俺にMPKが生える可能性がある。」

「あ…」

「ユーさん、凄いね。正面から論破しちゃった。」

「でも、正しい対応ですね。MPK称号にはそれだけの重さがありますから。ちなみにカナミーさん、彼のアバターには精神異常が無効ですよ。」

「え?なんでそういう話になるの?ただ誠心誠意お願いしているだけじゃん。」

「いや、さっきのは微妙にアウトだと思うんだけどな~。」

「とりあえず、カナミーさん。両手は離してくれるか?俺にはまだやることがあるんだ。」

「あ、ごめんなさい。」

なお、「MPK称号」とは、犯罪者称号の一つだ。 MPK(Monster Player Kill) と断定できる行為を行なうと生えてしまう。生えている間は、好感度が下がるなどのデメリットがある。

それはともかく、俺にはもう一つ、やるべきことがある。それは、ブレイオの進化だ。

霊宿る雷鬼:

種別: モンスター・鬼・精霊

説明: 雷の精霊を宿した鬼。小さな肉体ながら、剛力を振るう。

雷の成鬼霊:

種別: モンスター・鬼・精霊

説明: 鬼と精霊との性質を併せ持つ雷の化身。大気に働きかけ、雷を操る。

進化先として提示されたのは2つだった。説明文から、前者を選ぶと物理寄りのルートになると思うので、選ぶなら後者だろう。俺が求めているのは遠距離から来るモンスターの殲滅だからな。

「なるほど~。これが雷の若鬼霊からの進化ルートか~。あ、ブレイオちゃんのステータスも記録し特ね。」

「確かに、物理ルートと魔法ルートのように見えますね。 霊宿る雷鬼 が特殊ルートでしょうか。」

「たぶんな。ブレイオ。俺は、 雷の成鬼霊 に進化させたいと思っているが、良いか?」

「主人に従う。 雷の成鬼霊 なる。」

では、ブレイオの了解も得られたので、さっそく進化だ。

前回と同様、ブレイオのいた辺りから何かエネルギーが噴き出すような音がしてきた。そして、噴き出したエネルギーは、足元から頭へ巡り、それから取り込まれていくようだった。

「ブレイオは、雷の若鬼霊 から 雷の成鬼霊 に進化しました。能力値の再計算、並びに、技能が変化します。」

名前: ブレイオ

種族: 雷の成鬼霊

レベル: 25

体力: 38

魔力: 80

筋力: 66

防御: 38

精神: 80

知性: 38

敏捷: 38

器用: 52

技能:

適性: 棍巧術3, 体術16, 魔法(雷31, 付与1)

技術: 念話10, 魔力制御15, 中級魔棍生成2, 浮遊18, 投擲5, 受け身19, 危険感知23, 疾駆4, 多段跳躍1, 安定動作4, 遊泳2, 観察19, 電磁感応10, 纏雷

支援: 言語(人類), 世界知識, 視力強化(魔), 逆境を超える心, 反応強化

耐性: 吸収(雷), 睡眠抵抗, 恐怖抵抗, 混乱抵抗

特質: 精霊(雷), 半実半霊, 執着者

棍巧術:

下級: 強撃, 受槌, 振払, 連撃, 回転, 粉砕

中級: 裁撃

上級: 纏雷衝撃

体術:

下級: 強撃, 足払, 投落, 連撃, 反撃, 掴撃, 飛蹴

雷:

下級: 雷球, 通電, 雷槍, 電縛, 雷波, 雷柱

中級: 雷刃, 雷壁, 落雷

上級: 広雷3

付与:

属性付与1

「主人!我、進化した!」

「声は、変わったか。」

「見た目は強そうだよ。筋肉と光沢が増している感じかな?あと、ちょっと大きくなってるよ。」

「ブレイオ君から、魔力の循環を感じるね。たぶん、纏っている力が増したんだと思うよ。」

「雷属性を祝しているようですが、帯電はしていないのですね。」

進化したブレイオは、少し大きくなったようだ。実態はまだ触ってないからわからないが、3人の話通りなら、見た目も相応に変わっているのだろう。

「なるほど。ブレイオ、雷というか、電気を纏わないのは、俺たちのためか?」

「その通り。いつでも纏える。」

そういった直後、ブレイオの辺りからバチバチとした音がし始めた。聞こえた音はバクチクに近い印象だったが、たぶん電気なのだろう。

「おぉ、帯電してるね。雷系の注意妖精なんかと同じだ。触ると危ないヤツ。」

「ブレイオさん。あなたは、それをどれくらい持続させられるのですか?また、魔力の消費はあるのですか?」

「必要とあらば望む時に纏える。だが、攻撃や防御に使うと失われるだろう。」

「なるほど。それは 纏雷 技能ですね。攻撃に雷属性を付与したり、電気の幕で、ダメージを軽減したりできるはずです。」

「纏雷… ということは、これに近いか?」

「違う。主人の雷は、魔力を集めて作ったもの。我の雷は、体に巡っているものだ。」

「なるほどな。ブレイオ。俺が特に何も言わない時は、その雷は、好きなように出して良いぞ。ただ、食事時と、水に濡れそうな時はひっこめてくれ。」

「心得た。」

どうやら、任意で帯電ができるらしい。なお、レベル表記が無いので、特に訓練をする必要は無いようだ。

それがキーになっているからなのか、「付与」属性の魔法も習得していた。雷の化身である自身に使う必要は無いと思われるし、俺も今はノンノリア道場で修行中なので、あまり活躍はしないかもしれないが…

それにしても、ブレイオは、レベル相応に強くなったと思う。進化ボーナスもけっこう大きかった。

あと、「広雷」が1つ格上げされた。現在はトマの塔だから効果は薄いのだが、これなら、近づいてこないモンスターをドッカーンと吹っ飛ばしてくれるだろう。

3層で一泊した上で、俺たちは塔を上って行った。

「主人。外が見えるぞ。広い!大きい!」

「そうか。下の方には何が見えるんだ?」

「森だ。木が多い。遠くには山も見える。」

「となると、北西の辺りか?迷いの森やヒッツの森があるのかもな。」

「それはどうかな?ダンジョンの風景は現実とはちょっと違うからね。実際、近くに見えている山は、キトル山だとしたら縮尺がおかしいんだ。」

4層では、ブレイオが風景を楽しんでいだ。アステリアが言う通り、山が見えているのだとしたら、それは何者なのかが気になる所だ。

「わ~、あの空中迷路がまっさら!穴も無いし、モンスター丸見え!」

「モンスターがこちらに来ないのは、やはり、安全地帯が生きているのでしょうね。」

「ムム。あっちからも見えているはずなのに襲ってこない不思議か。これは検証しないとだね!」

「ふむ。では、私がゾーンから出てみましょう。」

「お、反応ありだよ。でも、あまりこっち来ないね。」

「後ろが安全地帯だからでしょうか。もっと前に出ると…」

「来てる来てる!50はいるから殲滅行くよ!」

6層では、幻解除後の変化と、安全地帯の検証を行なった。結果、モンスターは普通に残っていることや、本来は落下地点に指定されていた場所が通行可能になっていることなどが確認できた。

そして最上層…

一度クリアしているため、ボス戦が発生しないことを利用して、塔の外周を散策していた。

「主人、塔の外周が見えているぞ。塔は、草原に立っている。」

「今度は一面が草原なのか。やはりダンジョンなんだな。」

塔の頂上は、相変わらず風の音だけが聞こえる空間だった。ブレイオは走り回って、あちこちを見ている。

そして、外から見える風景がなぜか草原になっているゆようだ。5層から見える景色と違うって、どういうことだよ?と思う所だが、それも含めてのダンジョンなのだろう。

「あぁ、よく考えたら、塔の頂上でのんびりするなんて、経験したこと無かったなぁ。」

「通常ならボス戦になり、倒したら送還されますからね。それに、景色を見るために訪れるには、ダンジョンの塔という環境は過酷でしょう。」

「塔のある街もあるけれど、観光する住民が多いから、解放感って感じはしないよね。」

そして、一通り観光をした後は、ボスをさっくりと倒して帰還した。

ボス戦については、前回と違い、「真理の枷 +15」までしか貯まらないようになっていた。だが、「もう見るものは見た」という理由でルーウェンとカナミーの二人が解き放たれたため、あっという間に終わった。