09-16 検証の終了、甲羅の次は鋏

改定:

本文

「今日は助かった。」

「こちらこそ、情報提供感謝だよ。まとめに時間かかるから、掲載はもう少し先になりそうだけどね。」

無事に、トマの塔での検証、そして、ブレイオのレベル上げが終わった。

今回、カナミーには、検証班として以下の4種の情報を公開してもらう予定だ。

  1. トマの塔の隠し要素、幻影関連
  2. エクストラボス「雷霊鬼」の性能、並びに、ドロップ、初回討伐報酬
  3. 「幽鬼の召喚石」と、「古式召喚」及び、そのレシピ。そこから導かれるモンスター「雷の鬼霊」系統の情報。
  4. 技能「真理」の習得時の話と、その効果、注意点

「雷の鬼霊関連の情報は、話題になりそうですね。場合によっては、ドロップロックやリドロップダイスの価値が大幅に上がるでしょう。」

「俺もそう思う。オーガ種を雷方向に派生させるルートは研究されていたと思うが、精霊になると事情が変わってくるからな。」

「テイマーやサモナーががんばれば作れるかもしれないね。とはいえ、こういう種族がいるという確信を持っていることは大事だから、ちゃんと意味はあると思う。」

「それもそうですが、 エクストラボスの初回討伐報酬に含まれている召喚石 ということが価値を引き上げる要因になると思います。実態がどうであれ、期待は膨らむものですよ。」

ルーウェンの言うことは正しいだろう。

実際、ブレイオが習得している「纏雷衝撃」や「広雷3」は、一段上の性能を持っている。また、「雷吸収」と「広雷」のシナジーも頭一つ抜けていると言えるだろう。

なお、さっきルーウェンが言った「ドロップロック」は、ランダムドロップ枠の内1つを固定するアイテム、「リドロップダイス」は、ランダムドロップの抽選をやり直しさせるアイテムだ。前者はダンジョンクリア報酬か公式イベントの報酬、後者は特定のレアモンスターのドロップで入手できる。どうやら、俺以外の3人は、きっちり使っていたようだ。

「うん。できるだけ早く公開するように努めるよ。でも、公開されて、鬼霊が増えるまではすごく目立つと思うから、気を付けてね。」

「わかってる。だからこそ、情報提供の対価として求めた部分もある。」

「エクストラの対価としては安いかもだけどね。まぁでも、幻影への対抗手段が未解決だから、まぁ妥当なのかな。」

今回、検証班に情報提供をしたので、その対価を受け取ることになっていた。そこで、俺は以下に挙げる2つを依頼した。

  1. カナミー、ルーウェンとのフレンド登録、必要に応じて相談などを受けられること。
  2. いずれ、雷霊鬼のドロップを用いて、できるだけ強力な武具を作成すること。

せっかく高レベルの素材が手に入ったので、しっかり強い装備に変えていきたいと考えている。装備が強ければ旅が楽になるからだ。

しかし、実際に装備の作成を依頼できるのは、もっと先のことになるだろう。素材の格が高過ぎて、現在のレベルや能力値では満足に装着できないからだ。

「そういえば、ブレイオ君は進化したんだよね。属性の適性って、どうなっているんだろう?」

「ん?そういえば、幼体の時に測定したっきりだったな。変わっている可能性はあるか。」

「おぉ、それは検証しなきゃだね!」

ここで、アステリアから重要な発言が飛び出した。以前、浜辺で実験した「属性適合性測定」だ。

あの時は、「闇が僅か、その他は無に近い」ということで、ここまで雷一本でやってきた。ただ、説明文には「大気に働きかけ」とあるので、関連する属性くらいは持てるかもしれない。

「E5 ヒマラン大草原に入りました。」

ということで、検証するため、隣のマップへ侵入。初めての第5マップに入る目的としては乱暴だが、今回は入口付近での検証のみなので勘弁してもらうとしよう。

そして、前回と同様の手順で検証を実施した。その結果…

「風と水が伸びているね。あとは光が増えたかな?でも、微妙なラインだね。」

「風と水は人並みにあるよ。相性保管にもなるし、下級くらいはあっても良いんじゃないかな?」

どうやら、フレイバーに従い、水と風の適性が生えたようだ。

ということで、さっそく魔法観察会を開始。10分後には、ブレイオは両方の技能が生えていた。

「今日は助かった。」

「こちらこそ、有意義な時間でしたよ。」

「そうそう。ところで、ユーさんはこの後どうするの?」

「キトル山が頂上で止まっているから、魔法のレベル上げついでに降りてしまう予定だな。」

「あぁ、ホムクね。てっきりヒマランに行くのかと思ってたよ。」

「そうだな。言われてみれば、レベル的には挑むべきか。」

今回の検証で、ブレイオは一気にレベル27まで上がった。「経験の腕輪」による経験値ブーストが効いた形だ。

そうなると、今後の成長のために、次のマップへ挑むべきだろう。できれば、次の街で、装備の更新もしていきたい所。

「ユーさん。良ければ、お譲り死体武器があります。いかがでしょう?」

「譲りたい武器か。いったいどんなものだ?」

「はい。シザーグローブになります。拳に斬撃属性が追加されるので、きっと役に立つと思いますよ。」

シザーグローブ:

種別: 武器・ナックル・爪

説明: 鋏のような刃が取り付けられた重金属性のナックル。パンチ力を増幅すると共に、斬撃属性を付与する性質を有する。

識別: 拳、及び、投げ技に、斬撃属性を付与する。

ルーウェンさんから説明された武器は、甲羅ヘルムと同じ「ネタ寄りのガチ装備」の一つだったはずだ。見た目は相応に奇抜になるが、性能は第6マップで通じるレベルである。

「ルーウェンさん。なぜ、それを持っているんだ?ダンジョン産の特性でも付いているのか?」

「はい。通常品より1ランク上の性能をしています。なので、合成の強化素材に使えるかと保管していました。ただ、今となっては力不足、かと言って、ただ売却する気にもなれずでして。」

どうやら、ルーウェンさんは、貴重品を売らずにため込む人なようだ。尤も、「甲羅ヘルム」を残している俺には否定する資格は無いか。

「わかった。買い取れる金額なら買い取ろう。」

「ありがとうございます。料金は、店売り品の3倍でいかがでしょう?」

「元値は16,000pだったはずだね。3倍なら48,000pって所かな?」

「OKだ。ただ、料金の支払いは、現物を受け取ってからにしたい。」

「かまいませんよ。ギルドで保管してありますので、後ほど受け取りに行きましょう。」

その後、俺たちは冒険者ギルドへ戻り、武器の引き渡しや、獲得素材の預け入れなどを進めた。そして、実際に受け取ったシザーグローブは以下の通りだ。

シザーグローブ+1:

種別: 武器・ナックル・爪

説明: 鋏のような刃が取り付けられた重金属性のナックル。パンチ力を増幅すると共に、斬撃属性を付与する性質を有する。また表面を覆っている魔力は、損耗を軽減し、着用者の近接戦闘能力を向上させる。

識別: 拳、及び、投げ技に、斬撃属性を付与する。直接攻撃の威力が上昇(微)、直接攻撃に対するダメージを軽減(微)。

第7マップ産のレア素材を注ぎ込んだくらいのガチ装備だった。

だが、確かに、てきとうに売り払うのを躊躇したくなる性能だ。それを売ってもらえるなら文句は無いだろう。

「ユーさん。僕もそろそろ帰るよ。ブレイオ君の育成、また変化があれば教えてね。」

「そうだな。とはいえ、進化するとしたらレベル45だから、第8マップ辺りだろう。俺も本腰を入れてレベル上げしないと。」

「ハハ、そうだね。まぁ君の実力なら、相手を選べばすぐじゃないかな?」

そして、今回の検証パーティと解散したのだった。

「ブレイオ。山と草原の先、どっちに行きたいか?俺はどちらでも良いと思っているぞ。」

「我は山を望む。新たな魔法を育てたい。」

「そうか。あっちは土属性のモンスターが増えるぞ。被弾注意な。」

「土の球か。アレは魔法か?」

「猿が投げてくるのは、丸めた土だな。霊体になれば避けられるぞ。」

「理解した。」

結局は、ブレイオの希望もあり、 N3 キトル山を越えてしまうことにした。魔法のレベル上げがしたいという気持ちもわかるからな。

その後はノンノリアへ移動。ギルドで、いつもの依頼をこなしてからログアウトしたのだった。

そうそう。塔での戦闘を通して、俺もいくつか技を習得したぞ。ただ、微妙なものばかりだったけれど。

裏拳: 手の甲の方で押さえつけるようなパンチ。威力は控えめだが、たまに混乱やノックバックを与える。また、後ろに向かって使用できる。ただし、探知系技能と組み合わせないと微妙。

連踏: 脚技、相手に連続したストンピング攻撃を与える。跳躍と組み合わせるのが本来の使い方だが、俺の場合、地面に横倒しにした後の追撃用途で使えるか否か…

高速拳: 超高速のジャブによる攻撃。攻撃に敏捷値を参照するため、出番なし。

気膜: 体表に膜のように気を張り、鎧とする。物理、魔法のダメージを肩代わりする。威力が低ければ無効化もする。「陣気」と違い、技使用後も攻撃や移動が可能。

抉拳: パンチ後の拳から魔力の槍が伸びて食い込む。強い貫通力がある。

魔充填: 有効にすると、MP消費が増える代わりに、魔力拳系統の技、及び、魔法の効能を増加させる。

土壁: 土を盛り上げて壁を生成する。魔力拳のため正面にしか出すことができない。壁で受けると土をかぶることになるので、バリケードを置く用途でしか使えないと思われる。

光壁: 光の壁を正面に出す。熱や光、闇属性の攻撃を軽減する。来ることがわかっている攻撃の受けには使えるかもしれないが…