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やることも決まったので、さっそく行動に移そう。
ということで、まずは依頼の確認。結果、いつもの薬草の仕分け依頼があった。
「ユー様ですね。どうしましたか?」
「薬草の仕分け依頼を受けたいのだが、可能だろうか?薬草の鑑定、識別技能は持っているぞ。」
「仕分け依頼ですね。担当に確認して来ますので、少しお待ちください。」
受付に戻り、仕分け依頼の申し込みをした。やっぱりこの人、ちゃんと捌いてくるようだ。
「確認してきました。浄化技能をお持ちのユー様であれば問題無いかと思いますが、呪われた薬草が混ざっているようです。気をつけてください。案内しますね。」
程なくして、作業場へ連れて行ってもらい、仕分け作業を進めた。
その途中で、ブレイオの「観察」が「鑑定」に進化したことで、分担して仕分けができるようになった。なお、当然ながら、この世界、モンスターでも鑑定技能を使うことができるぞ。
「うわ!これ呪われてる!」
「浄化ならできるぞ。」
「あぁ、頼む。手にくっついちまった!」
そんなやり取りもしつつ、2時間もかからずに依頼は終了した。なお報酬については、現金と薬草の選択が可能だったので現金でもらった。
続いては、ギルド内の出店を確認することにした。しっかり観光するなら、Cランクに上がってからの方が良いと考えている。ただ、ダンジョン産アイテムや食料品なら、今チェックしておいても良いだろう。
「携帯食の出店があります。パンが販売されています。」
ナビーの先導に従い、最初に行きついたのは携帯食の店だった。
「いらっしゃい。ウチはパンを売ってるよ。ダンジョン探索に役立つパンもあるが、どうだい?」
「味と効能が気になる所だな。鑑定させてもらっても良いか?」
「あぁ、鑑定持ちかい。あと、試食があるから、試してから決めとくれ。」
ということで、パンの試食をしつつ確認。その後、良さげなパンを20個ほど購入した。
なお、以下のように、現地の特性を反映したパンが売られていた。今回は草原超えが目的なので見送りしたが、本格的に洞窟に潜る時には役に立つ?かな?どうだろう?
発光パン:
種別: 食材
説明: 変種の麦粉が練りこまれたパン。食用することで満腹度を回復できる。暗い所で発行する性質があると共に、湿気に強い。
価格: 500p
暖かパン:
種別: 食材
説明: 薬草が練りこまれたパン。食用することで満腹度を回復できる。また、一定時間、身体が寒さに強くなる。
価格: 800p
カイロパン:
種別: 食材
説明: 変種の麦粉を練り、硬く焼き上げたパン。食用することで満腹度を回復できる。また、外気に触れると発熱する性質があるため、暖を取るためにも用いることができる。持続時間3時間。
価格: 1000p
食べられるホッカイロとは、不思議な物体である。なお、発熱効果がなくなると、ただの「硬焼きパン」になるとのこと。よって、「使い切ってから食べる」という運用はOKのようだ。
ただ、それを加味しても、売られているパンは、「特産物」や「フレイバーアイテム」の域は超えないと思う。理由は以下の通りだ。
- 発光パン:
- 洞窟の中は暗いので、松明などの光源を身に着けるのが一般的であり、わざわざパンが発光しなくても良い。むしろ、パンを光源にしていると、食べ物として使えなくなってしまう。
- 暖かパン、カイロパン:
- 雪原やホムクの固定ダンジョンなど「耐寒効果が必要な地域」では、氷属性の攻撃を受ける頻度が高いため、「冷気体制」の付いた装備を着用して挑むことが推奨されている。そして、「冷気体制」の装備には耐寒効果が付いているので、パンの効果があまり活きない。
なお、試食もさせてもらったのだが、味については、一緒に売られていた硬焼きパンや薬草パンなどとの違いがよくわからなかった。よって、俺自身があえて常備する必要は無いと考えている。
「いらっしゃい。ここでは、ダンジョンで出てきたアイテムの売り買いをしているよ。と言っても、今は入荷待ちで、ほとんど物は無いけどね。」
では次。ダンジョン産のアイテムのお店にやってきた。というか、隣だった。
ただ、店の商品が充実するのは、朝と夕方なのだそうだ。ダンジョン通いする冒険者が集まる時間帯ということだろう。
とりあえず、素材やアクセサリーなどを指定して、商品を鑑定させてもらった。
ナイトクリスタルの欠片:
種別: 素材・鉱物
説明: 闇の力を帯びた水晶の断片。小さいながら、強い闇の力を秘めている。
価格: 4000p
凍った種 1:
種別: 素材
説明: 凍り付いた種。何の種なのかは、抽出してみるまでわからない。このまま素材として用いることも可能。
真理: 「魔力の種」が封入されている。この種を安全に抽出するには、「彫刻」の技能が必要である。
価格: 4000p
凍った種 2:
種別: 素材
説明: 凍り付いた種。何の種なのかは、抽出してみるまでわからない。このまま素材として用いることも可能。
真理: 「滅び草の種」が封入されている。この種を安全に抽出するには、「魔法(炎)」の「着火」が必要である。
価格: 4000p
「凍った種」と言えば、ガチャアイテムだったはずだ。中身と抽出方法を知るには、「識別」と「氷の加護」が必要だったのだが「説明偽装なんて真理は許しません!」ということらしい。今に始まったことではないか。
とりあえず、上に挙げた3点は、購入しておこうと思う。どれも相応に役立つものだ。幸い、「彫刻」持ちのフレンドもいるしな。
なお、まとめウィキ上での「滅び草の種」の効果は以下の通りだ。「着火」で行けるようなので、後で溶かしておくとしよう。
滅び草の種:
種別: 素材・スポットアイテム
説明: 地面に植えると、範囲内の植物を弱体化させる。
まとめウィキより:
半径50メートル以内の草、木、および植物種族に以下の効果を与える。持続時間は10分。
- 採集、伐採時の品質が2段階低下
- 「光合成」、「自然回復」など、植物由来の技能によるプラス効果を4分の1にする。コストやデメリットはそのまま。
- レベルや格に応じて、全能力値にデバフ (ボスでも10%くらいは下がる)
- レベルに応じて、HP、MP、耐久力にスリップダメージが入る (低レベルの植物は1分保たずに死滅する)
- 木材製の武具は、手に持っていれば影響を受けない。これは、植物種族が手に持っている場合も同様。
- 味方に植物系の種族がいる場合にも同じ効果が適応される。普通に死に戻る場合もある。
- 雑草刈りクエストで使うと、雑草を枯らすことができる。なお、徐々に縮んでいき、最終的に土に帰っていくようなエフェクトらしい。
そんな買い物をしていると、ギルド内が賑やかになってきた。どうやら、冒険者たちがダンジョンなどから戻ってきたようだ。
となると、例の浄化依頼も受け時になりそうだ。俺は受付に戻った。
「こちら、受付になります。素材納品でしたら、お隣へ…」
「あぁ、卸じゃなくて依頼を受けたいんだ。呪われたアイテムの浄化なんだが…」
「あ、そういうことでしたら是非。連れて行きますので、一緒に対応して下さい。」
その後、俺は、アイテムの洗浄と浄化を始めた。
「主人。我に手伝えることはあるか?」
「ブレイオは浄化には興味があるのか?なら、浄化の様子を観察してみると良いぞ。そうでなくて、単純に手伝いたいなら、水で洗ったり乾かしたりしてくれ。ただし、最初に鑑定するんだ。」
「心得た。」
途中から、ブレイオも水洗に参加した。
さすがに、浄化についてはよくわからないということだったが、アイテムについては普段の戦闘でも使わせているし、鑑定技能も生えたので、けっこう理解しているようだった。
なお、今回の浄化依頼で出会った面白エピソードはこれだと思う。
「こいつを頼む。宝箱産だが、呪われた杖だ。」
「わかった。浄化はするが、壊れたり変化したりしても責任は取らないぞ。」
「かまわない。あっても危険だからな。」
「では…」
「ん?いや、ちょっと待て、そんな手で触れたらヤバいんじゃないか?」
「浄化の気を纏っているから問題ないぞ。いや、ちょっと待て… こいつは、リビングロッドだ!」
リビングロッド:
種別: モンスター・魔法生物
レベル: 20
HP: 100%
状態: 敵対、真理の枷+1
説明: 自在に動き回る杖型のゴーレム。魔法の杖として生み出されたが、その後暴走したことで、動くものに襲い掛かるようになったとされている。
真理: 杖に憑依した霊体は、自らをアイテムに偽装することで、手に取った者を破滅に導かんとしていた。
呪われた武器に偽装したモンスターだった。モンスターがアイテムに偽装して襲ってくるケースはあるが、偽装のレベルが高かったことと、呪われたアイテムであった故、インベントリーへ直行し、お持ち帰りされてしまったようだ。これ、場合によっては、ギルドの倉庫で永眠していたかもな。
当然、俺の看破により起動、反撃してきたので、その場で撃退。残ったのは、「銀の杖」と「憑依霊の粉」という素材アイテムだった。正直、持ってきた冒険者も、俺も不要なアイテムだったので、換金額を分け合うことになった。
そんな依頼をこなしていたら夜になったので、その日はログアウトしたのだった。明日からは、ヒマラン大草原に繰り出そう。