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「ユー様、おはようございます。」
「おはよう、ナビー。」
さて、二次職取得でいろいろあったのだが、俺にはヒマランでもう一つやりたいことがある。それは、装備のアップグレードだ。
防衛戦イベントに参加するかどうかは、正直未定だ。参加すれば、技能の育成やレベル上げには有益だと思うのだが、集団にもみくちゃにされそうでもある。あと、相応にプレイヤーも集まるだろうから、悪目立ちすることも懸念される。
ということで、逃避というわけではないが、最初に想定していた予定をこなす方針で行こうと考えている。具体的には、以下の通り。
- ヒマランで装備のアップグレードをする。何をするにしても、これは絶対に必要
- ホムクのダンジョンへ向かい、「裁定」を含めた技能の育成を進める。あと、あっちのギルドで浄化依頼などもこなす
- それらを終えて、ヒマランに戻ってきた時、参加できる状態であれば防衛戦イベントに参加する。既に終わっているなら、それは縁が無かったと割り切る。
「ナビー。この街の主要な施設を教えてくれ。」
「草原の守都ヒマランには、冒険者ギルド、武具屋、雑貨屋、錬金術店、魔生具店があります。なお、現在は露店の出店が制限されています。」
第5マップからは、新しいお店として「魔生具店」が出てくる。ここは、ゴーレムに関連するアイテムを扱っているお店だ。採集でがんばってくれているおくたんのアップグレードができるだろう。
「ナビー。まずは武具屋へ向かいたい。先導してくれ。」
「了解しました。武具屋はこっちです。」
冒険者ギルドでの確認と素材換金は済ませてあるので、俺はブレイオとおくたんを伴って、武具屋へ向かった。今回はゴーレムの強化も想定しているので、おくたんも出している。
「主人は、武具屋では何を探すのだ?」
「頭と、足の装備だな。あとはアクセサリーの更新だろうか。」
「心得た。店には武具が多い。我も目となろう。」
「ブレイオが選ぶか。良いぞ。あと、お前のためになる装備もあれば探そう?」
「我に武具は不要だ。霊体の時に使えない。」
「普通のはそうだな。だが、霊布などの特殊な装備や、魔力に従って形状の変わる装備はある。試すことはしても良いと思うぞ。」
「心得た。我が着用し得る装備があれば、考慮したい。」
実際の所、ブレイオが装備可能なのは、アクセサリーや、魔力による実体化の可能な装備類だろう。今のブレイオにも、手触りが布にしか感じない腰巻や鉢巻はあるからな。
ブレイオは、耐久力と敏捷が低いため、前に出て戦うとけっこうダメージを受ける。また、魔法攻撃に対する耐性も盤石というわけではない。よって弱点をカバーできる防具は考えても良い。
「武具屋に到着しました。入口は閉じています。こっちです。」
ブレイオと話をしながら歩いていたら、お店に到着した。そのまま近づくと、木製の引き戸になっていたようなので、引いて中へ入る。
「いらっしゃいませ~。」
お店の中は広そうだ。武器も防具も扱っているからだろう。
そして、店員は若い女性のようだ。
「あんたが店員で良いか?」
「はい。本日はどのような用件ですか?」
「主に防具の更新を考えている。頭と腕、足装備だな。」
「あ、はい。わかりました。少々お待ちください。」
用件を伝えたら、その人はどこかへ行ってしまった。奥の方に取りに行ったのだろうか?
「あの人かい?」
「そうです。頭と足防具の更新を確認したいそうで。」
そして、おばあさんっぽい人の声がした。そして、用件を伝えているようだ。
「お待たせ。あんたは、拳士かな?」
「そうだ。正確には武僧だな。」
「それと、杖を持っているようだけれど、盲人かい?」
「そうだな。」
「なるほどね。じゃ、あたしが見繕うよ。こっちの子はアルバイトで、細かい仕込みはまだなんだよ。」
アルバイトを雇っているお店か。まぁ、いるだろうとは思っていたけれど、今まで会ってきた人は、職人兼店主という印象だったので新鮮だ。
その後、おばあさんからいくつかの防具を提示してもらい、試着の上で購入した。購入した防具の触鑑定結果は、それぞれ以下の通りだった。
魔樹綿の帽子:
種別: 防具・頭
説明: 魔力を多く含む樹木から抽出した繊維を編み込んで制作された帽子。東部への衝撃をカットする膜が形成され、たとえ破られても修復が始まる。また、光を吸収する性質を有する。
識別: 東部ダメージ軽減(小)、貫通攻撃耐性(中)、光線耐性(中)
価格: 27500p
黒猫の膝当て:
種別: 防具・膝
説明: シャドーキャットの毛皮を主素材として制作された膝当て。打撃に強く、着用者の足さばきを助ける。
識別: 打撃、投げ技耐性(小)、束縛耐性(微)、脚部強化(中)
価格 :20800p
魔鉄の戦闘靴:
種別: 防具・靴
説明: 魔鉄の板を要所に用いて防御力と踏み込み性能を強化した戦闘靴。重量に見合うだけの耐久性と、運動能力の向上が期待できる。
識別: 打撃耐性(中)、斬撃耐性(中)、熱耐性(微)、冷気体制(微)、踏み込み強化、筋力強化(微)
価格: 18500p
結晶花の靴下:
種別: 防具・靴下
説明: 結晶花と呼ばれる植物から抽出した繊維を用いて編まれた靴下。防御力は低いが、足を守ると共に、着用者の疲れを癒す。
識別: 熱耐性(微)、毒・酸耐性(小)、水耐性(微)、自然回復促進(微)
価格: 12000p
闘気の腕輪:
種別: 防具・アクセサリー
説明: 魔法のアクセサリーの一つ。装着した腕を使って与えた衝撃を魔力として蓄え、持ち主に還元する力を有する。
価格: 40000p
致命の指輪:
種別: 常備・アクセサリー
説明: 魔法のアクセサリーの一つ。所有者が致死性の攻撃を受けた時、身代わりとなって砕ける。
注意: 同一の効果を有するアイテムを複数所持していた場合、全てのアイテムが同時に消費される。
価格: 30000p
まず、「黒猫の膝当て」、「魔鉄の戦闘靴」、「結晶花の靴下」は、単純なアップグレードになった。脚力強化系のボーナスはあまり恩恵が無い気もするが、防御力が増して動きやすくなったのは確かだ。なお、「魔鉄の戦闘靴」は、「重たい」とのことだったが、普通に着用できた。
次に「魔樹綿の帽子」は、防御力だけ見ると、今着用している「銀編の魔布帽子」に劣る。しかし、 S5 の改定洞窟を抜ける際に必要な要件を満たしているため、今の内に抑えた形だ。
続いて「闘気の腕輪」は、「武器を振った時にMPが微回復する」というありがたい効果だ。当然、回復量は少ないが、これ1個で持久力が増すので、「枠があれば買っておけ」とまとめウィキでも書かれている。
なお、検証によって、MPが実際に回復するタイミングは、腕の筋肉を使った時であることが判明している。このため、「この世界のMPは = マッスルパワー または 万歩計」というネタが生まれた原因にもなっている。魔法と技の両方に「MP」が使えるので、完全に否定ができないんだ。
最後に購入したのは保険アイテム「致命の指輪」だ。死亡が確定した際に、その原因となった攻撃を無かったことにできる。なお、装備品でないためインベントリーにあっても効果が発動する不思議アイテムなのだが、2個以上持っていると一気に壊れるため、絶対に1個しか持ち歩いてはいけない。使いたくない時には、ギルドの倉庫に送っておくと良い。
それと、ブレスのように、継続的にダメージを受ける攻撃に晒された場合、ブレスが終わるまでの間は無効化が続くので、「ドラゴンのブレスから生還」みたいな演出は可能らしい。ただし、その後に再度ブレスを受けたりすれば普通に死ぬ。あと、毒などの環境要因で死んだ場合には発動しないので、「猛毒ブレス」のように、ダメージと毒が混在した攻撃を受けると、指輪で生還しても毒で死ぬ。
「合わせて、148800pだね。」
「わかった。それと、足装備3つについては下取りできるか?」
「そうだね。正直、使い手がいないから鋳つぶしかな。状態は良いから、13800p、つまり、代金は135000pでどうかい?」
「それでかまわない。」
靴と靴下はS3の装備だったから、下取り価格が安いのは仕方ないだろう。E4で買った膝当ても、12000pだったので、似たような状況だ。
「それと、こっちの従魔向けの装備や、採集具もあれば更新したい。」
「採集具は雑貨屋に任せているから、そっちで買っておくれ。従魔というのは、そっちの鬼かな?」
「正確には鬼霊だな。霊体になることもあるから、特殊な装備やアクセサリーになると思う。」
その後、ブレイオ向けに使えそうな装備も購入した。以下の通りだった。
妖精の帯:
種別: 防具・軽装
説明: 妖精の素材から制作された帯。含まれている魔力はいかなる装着者にもフィットする。装着者の防御力を向上させると共に、魔法の制御を助ける。
識別: 魔法ダメージ軽減(微)、魔力制御向上(小)
価格: 22000p
嵐の玉輪:
種別: 防具・アクセサリー
説明: 魔法のアクセサリーの一種。装着車の水、風、雷属性の力を増幅する。
識別: 水・風・雷属性増幅(微)、湿度が一定値以上の時、魔法防御上昇(微)
デメリット: 炎・光・木属性の出力が低下(小)
価格: 18000p
両方とも、霊体でも使用可能な魔法の装備だった。「嵐の玉輪」は、体内に取り込まれるような感じらしい。
それにしても、「嵐の玉輪」とはピンポイントな装備があったものだ。水と風が少し強化できれば… くらいに思っていたのだ。デメリットが強烈だが、ブレイオなら問題も無い。
では、続いて、魔生具店へ向かおう。ただ、175000pも使ったので、手軽に使える残りは50000pほどだ。とりあえず価格を確認してから考えるとしよう。