本文
「魔生具店に到着しました。入口は閉まっています。こっちです。」
武具屋でのアップグレードを済ませた後は、まっすぐに魔生具店へ向かった。現在は露店が無いため、誘惑の類が無くて助かったとも言える。
そのまま、ナビーの先導に従い店へ近づくと、正面から音がして、店内の音が聞き取れるようになった。どうやら、自動ドアらしい。
「おやおや?ゴーレム連れのお客さん、いらっしゃいいらっしゃい!」
そして、中から活発そうな男性の声がした。
「えぇと、あんたが、ここの店員で良いか?」
「そうとも言うね。わしは、ゴーレムの研究と開発をしている者じゃよ。異人たちからは所長なんて呼ばれとるね。」
なるほど。確かに、まとめウィキでは「魔生具店はゴーレム研究所でもあるが、研究員は店員一人しかいないため、所長なのだろう」という考察がされていた。
とりあえず、店員なら、用件を伝え…
「ムムム。蛸型のゴーレムか!それも、魔力を動力だけに回して、採集特化!なんと珍妙な…」
「鑑定… できるんだな。とりあえず、用件はコイツのアップグレードだ。」
「アップグレードの項目は壁に貼ってあるから勝手に見てくれ。それより、わしはこのゴーレムを分析したい。例はするから少し貸しとくれ!」
「ま まぁ、内容を確認している間なら良いか。ただ、ばらすなら元には戻してくれよ。」
「もちろん!魔生物の扱いはよく心得ているぞい!」
そう言いながら、所長さんは、離れていった。たぶん、おくたんも連れて行かれただろう。
なお、おくたんには、とりあえず自由行動を命じておいた。おくたん、待機させると床にぺちゃっとなる。それだけなら良いのだが、蛸の吸盤のような気候まで再現されているらしく、場合によっては貼り付いて取れなくなるんだ。
で、壁に貼ってあるメニューとやらだが、当然、ナビー経由で確認する。雑に放置されたわけだが、ここは正式店だから、入った時点で情報は得ているはずだ。
インスタントキット:
種別: 回復・薬品
説明: 魔生物の素体を修復するために開発された薬品。振りかけることで、ゴーレムのHP、MPを回復する。
価格: 300p
リペアーキット:
種別: 回復・薬品
説明: 魔生物の素体を修復するために開発された薬品。ゴーレムコントローラーに振りかけることで、全損下ゴーレムを即復活させる。
価格: 3000p
ベース増加メモリー:
種別: 強化パーツ
説明: 指定した能力のベースが増えるメモリー。イスタールなどでも購入していたもの。
- +1: 2000p
- +2: 6000p
- +3: 12000p
- +4: 20000p
- +5: 30000p
- +6: 42000p
- +7: 56000p
- +8: 72000p
全ベース増加メモリー:
種別: 強化パーツ
説明: 全ての能力のベースが増えるメモリー。
- +1: 30000p
- +2: 90000p
技能レベル解放メモリー:
種別: 強化パーツ
説明: セットされた技能のレベルを引き上げるメモリー。
- +2%: 10000p
- +5%: 50000p
メモリーボード:
種別: 強化パーツ
説明: 装着すると、記録された技能が追加で使用可能になる。
価格: 50000p
- オートファーマー: 農耕、鎌術、運搬
- オートプロセッサー: 料理、解体、運搬
- コミュニケーショナー: 念話, 世界知識, 言語(人類)
- ベーシックエレメンタル: 魔力制御, 魔法(土, 水, 風, 炎)
- ベーシックアタッカー: 刀剣術, 斧術, 槌術, 槍術
盛りだくさんである。そして、相応にお金もかかる。
おくたんに関して言えば、キット系もメモリーボードも不要だ。おくたんは採集特化なので、戦闘も生産も要らないし、モンスター増量中のヒマラン大草原でさえ、HP50%の通知が来なかったからな。
とりあえず、最終的に目指したい姿は以下の通りだろうか。価格にすると50万くらい必要なので、ぜんぜん足りない。
- 技能レベル解放 +5% 4個 合計 +20%
- 敏捷増加 +8 2個 合計 +16
- 筋力増加 +8 1個
- 器用増加 +8 1個
「技能レベル解放」は、ゴーレムの技能レベル「主のレベルの60%」の制限を緩和するものだ。上述のメモリーを4つ装着すれば、レベルが「主のレベルの80%」となる。まとめウィキでも、 80% 程度までは伸ばすことが推奨されている。
そして、おくたんの運用目的は「採集」なので、敏捷上昇に対する優先度は高い。ただし、器用や筋力なども高いことが望ましいため、併用する。
なお、「全能力値上昇」を選ばないのは、魔力の上昇を避けるためだ。どうも、魔力値が低いことも、モンスターに襲撃されにくい要因となっているようなのだ。
「いやぁ、満足満足。採集の分野は見逃していたが、目から鱗じゃった!」
「ん?もう確認は終わったのか?」
「あぁ、良いアイディアをくれたお前さんには報いなければな。ところで、欲しい物は決まったかの?」
どうやら、所長さんは何かおくたんに感じることがあったようだ。
もしかして、日を改めてきたら、影響を受けた新パーツができているかもしれない。例えば、「採集」系を伸ばすメモリーボードがあるなら、一考の余地はあるだろう。
それはそれとして、今欲しいと考えているものと、お金が無いことは伝えてみることにした。 敏捷+8 なんかが割引されたらいいな。
「う~む、それじゃ、こいつを進呈しよう。性能調整に失敗したせいで、誰にも引き取ってもらえなくての。じゃが、お前さんのゴーレムなら問題無いぞい。」
そして、渡されたのは、2枚のメモリーだった。
ゴーレム用メモリー ALL1-M:
種別: 強化パーツ
説明: ゴーレムに装着することで、全てのベースが1上昇する。しかし、「魔力」のベースが5低下する。
うん。確かに、普通のゴーレムに装備したらダメなやつだ。「魔道人形」の特性上、魔力の低下は絶対NGである。しかも、低下量が看過できないほど高い。
だが、おくたんなら全く問題無い。このゲーム、ベースの最低値は 1 と決まっているからだ。
「確かに、おくたんなら大丈夫そうだ。できれば、これをあと1つ欲しいくらいだな。」
「そうじゃろうな。じゃが、こればっかりはどうにもならんわい。失敗作を量産するのは難しいし、魔力が下がるケースは稀じゃからの。」
「そうだろうな。それはそれとして、 SKL5 も一つ購入したい。」
「技能レベルじゃな。受け取れ。」
ということで、おくたんのメモリーを更新して、以下のようになった。
ゴーレム おくたん:
形状: 蛸型
職業: 採集家
レベル: 30
体力: 52
魔力: 4
筋力: 52
防御: 64
精神: 12
知性: 68
敏捷: 68
器用: 100
技能:
適性: 中級採集0
技術: 遊泳0, 広域素材探知0
支援: 自動転送, 戦意隠蔽
特質: 魔道人形, 魔道吸収, 多客, 戦闘回避, 再生, 蛸の体
メモリー:
ALL1-M, ALL1-M, AGI1, AGI1, AGI1, AGI1, DEX1, SKL5
装備:
鈴入り鉄のスコップ, 鈴入り鉄の草刈り窯, 鈴入り鉄の伐採斧, 鈴入り鉄のつるはし
メモリーで技能レベルを上げたことで、セット技能が中級に変化している。なお、分岐が存在するものは、そのゴーレムの能力値に基づいて自動で選択されるらしいが、汎用ルートが選ばれる傾向があるようだ。こうなっていないと、メモリーの付け替えをした際におかしくなるからだろう。
とりあえず、資金を稼いだら、おくたんはさらに強化して行くとしよう。ただ、次に優先すべきこととして、採集具の更新をしたい。採集具を新調すると、採集にかかる時間や取得時の品質、レア素材の入手確立などが増えるからだ。
「所長さん、助かった。また資金ができたら強化パーツに注ぎ込む予定だ。」
「わかったわい。わしも研究で忙しいから、急がんで良いぞ。」
そう話をして、魔生具店を出た。
さて。残金は2320p!欲しい物はまだまだたくさん!ということで、やることは一つだ。
「ブレイオ。ホムクに移動して、依頼をこなしたり、ダンジョンに潜ったりするぞ。」
「心得た。」
俺たちは、さっそくホムクへと転移したのだった。
なお、諸々を整理したインベントリーは以下の通りだ。
インベントリー (通常アイテム):
ポーション X 10
MPポーション X 10
ハイポーション X 5 (緊急用)
ハイMPポーション X 5 (緊急用)
毒消しポーション X 10
安定ポーション X 10
魔払いポーション X 10
テント X 3
煙玉 X 3
松明 X 10
魔除けの葉 X 100
脱出の札 X 1
高級携帯食 X 10
串焼き X 10
ドライフルーツ X 10
ブレンド茶ば X 20
浄水筒(小) X 1
冷却コップ X 2
発熱コップ X 2
木製テーブル&チェアセット (3人用) X 1
インベントリー (貴重品):
冒険者証 X 1
旅人の鍵 X 1
ゴーレムコントローラー (おくたん) X 1
解放の証 (視覚) X 1
契約の証 (ブレイオ) X 1
インベントリー (装備品):
魔弾鋼のナックル X 1
白木の杖 X 1
樫の杖 X 1
耐海武術着 X 2
魔樹綿の帽子 X 1
致命の指輪 X 1