10-10 N4 ホムクの試練洞窟

改定:

本文

「N4 試練の門村 ホムク に入りました。」

「ナビー。このまま試練洞窟へ向かう。先導してくれ。」

「了解しました。ホムクの試練洞窟はこっちです。」

資金不足により観光を中断することになった俺たちは、 N4 に戻ってきた。

一応、「ヒマラン大草原で狩って稼ぐ」案もあったのだが、現状だと物量と植物がネックなことに変わりないので、こっちで技能を育てることにした。

そして、時刻は10時を少し過ぎた頃だ。以前、ホムクのギルドで聞いた話では、朝と夕方に浄化系の依頼が入るようなので、今はダンジョンへ直行し、狩りに勤しむとしよう。

「ダンジョン ホムクの試練洞窟 に到着しました。入口の壁はこっちです。」

おや?ナビーが、入口ではなくその壁を教えてくれるようになった。俺がいつも壁を触鑑定しているからだろうか?

ナビーの先導に従い進んで行くと、確かに壁があったので触鑑定。

ホムクの試練洞窟:

種別: 固定ダンジョン

階層数: 5

説明: かつて、北の地へ赴くための通路として活用されていた洞窟がダンジョンと化した。用意された試練を乗り越えた者は、北の地へ向かうことが許される。

この洞窟の階層数は5だ。ただし、転移ゲート関連のイベントを未達成だった場合、5層のボス戦の後にそれが挿入されるそうだ。ボス倒さないと転移もお預けとは、なかなか手厳しい。まぁ、試練だから仕方ない。

「ダンジョン ホムクの試練洞窟 に入りました。現在1層です。」

というわけで突入したので、ナビーに聞いてみよう。

「ナビー。この洞窟の道はわかるか?」

「はい。この洞窟は、狭い通路と広い通路が混在していますが、分かれ道は存在しません。このため、前方に存在するモンスターから逃げることは困難です。」

「通路や部屋の幅、高さはどの程度だ?」

「狭い通路は、幅が3メートル、高さ3メートル前後です。広い通路では、幅が15メートル、高さが5メートル程度あります。」

もちろん、この情報はまとめウィキで調査済だ。この洞窟は一本道、出てくるモンスターを捌きながら進むしかない構造をしている。なお、幅と高さは、プレイヤーのサイズによっては変わるそうだ。

そして、この洞窟の浅層に出現するモンスターは以下の通りだ。

洞窟コウモリ: 鳥系に分類されているコウモリ。混乱効果のある音波を発したり、空中から体当たりしてきたりする。

プチデビル系: 職業覚醒系の小悪魔。槍や魔法などで攻撃してくる。プチデビルシーフもいるが、盗むというより回り込んでバックアタックしてくるタイプ。

リビング系: 剣や槌、鎧などに憑依したモンスター。基本的に体当たりしてくる。

デビルヘッド: 宙を浮かぶ悪魔の顔。冷たい息や火の息を吐いたり、噛み付いたりしてくる。

「ブレイオ。モンスターの気配は感じるか?」

「先の広い部屋に2匹いる。人のような体なのでプチデビルとやらだ。それと、少し奥を武器が浮いている。途中で合流してくるだろう。」

「なるほどな。部屋というのは、通路が広くなっている所だろうな。それで、プチデビルの違いはわかるか?」

「片方は活発に動いている。もう片方はあまり動いていないが、槍が鋭いように感じる。」

「そうか。たぶん、プチデビルシーフとプチデビルランサーだな。答え合わせを兼ねて、進むとしよう。」

「ところで主人。松明は使うか?」

松明のことを忘れていた。一応、残っていたものが20本はあるが、ブレイオが着火を使えないんだよな。「炎の鉄拳」は、スペック的に怪しいが、とりあえず装備してみるか。

この洞窟は、松明による着火を積極的に駆使した方が良い。松明に反応してモンスターを引き寄せやすくはなるのだが、光源のある場所では悪魔系が弱体化するからだ。そして、数を稼ぎたいこちらとしては、あっちから寄ってきてくれるのは望ましいことだ。

「ブレイオは、この松明を使って点火できるか?」

「霊体になる必要が無いなら問題ない。棍は片手で使える。だが、我に着火魔法は使えない。主人の武器から火をもらう。」

「それで良いぞ。あと、おくたんにも持たせるから、必要ならそっちから火をもらうといい。」

おくたんの装備を、スコップとつるはしにして召喚し、松明を持たせた。以前、ヒッツの森でやって以来だな。

では突撃だ!

「ケケケケ!」

進んで行くと、怪しげな子供の笑い声が聞こえてきた。動画で聞いたことのあるプチデビルの笑い声だ。

そして、俺の顔に何かがぽふった。手を出してみたが、触れられるものは無かったので、闇の魔法だろう。まぁいつものことだ。

とりあえず、調薬所先生のおかげで生えた「属性付与1」で「光」を付けておく。今までお世話になっていた魔力拳派生の光属性魔法「纏光」の方が威力は高いのだが、パンチ一発で効果が切れる。これに対し、「属性付与」は、効果が持続する特性と、パンチ以外の体術技にも適応される特性がある。

その上で、さらに、近づいていくと、後ろから何かがぽふった。この状況で後ろから来るヤツなんて一匹しかいない。

捕まえて触鑑定!案の定プチデビルシーフだったので、そのまま掴撃で膝蹴り!続いて、もう片方の手で振討!しっかり倒した。

プチデビルシーフ:

種別: モンスター・悪魔

レベル: 18

HP: 100%

状態: 敵対, 真理の枷+2

説明: 悪魔の眷属、または、悪魔からい生み出されたモンスターと言われている。素早い動きで敵の急所に飛び込み、刃物のような爪を振るう。

「プチデビルシーフ、プチデビルランサーを倒した。」

どうやら、ブレイオがランサーを倒したようだ。ボコっとした打撃音や、バチバチとした音がしていたので、伸縮棍でボコりつつ、雷で倒したんだろう。悪魔に雷の耐性は無いからな。

と思ったら、正面からぽふっという音がして、何かが地面に落ちた。触れたら懐かしのリビングソードだったので、伝衝!特効ということもあり、一撃で粉砕できた。

「主人。もう近くにモンスターはいない。が、剣とは違うモンスターが、もう少し行ったところをさまよってる。」

「そうか。ブレイオは、プチデビルランサーを倒したようだが、問題は無かったか?」

「問題無い。あの体なら、棍を太くして横から打てば転ばせられる。」

「なるほど。デビルは体が軽い、というのもありそうだ。相手が重そうな場合は受け流しつつ逃げた方が良いぞ。」

「ルーウェン氏にも助言を受けた。鎧を持つ敵には注意する。ただし、試すことはしたい。」

「試すのはかまわないぞ。同じ戦い方ばかりしていたら強くなれないし、何より飽きるからな。」

その後、俺たちはモンスターを狩りながら進んでいった。

変わった所では、盾に憑依した「リビングシールド」なんかも出てきた。浮遊しているのに、ブレイオの棍を正面から弾き返したため、ブレイオがひっくり返った。盾の反射技を受けたようなので、今後見つけたら後ろから殴るように言っておいた。リビングシールドは、単体で浮いている盾が盾技を使うので、後ろからの攻撃には無防備なんだ。

「主人。次の部屋に、新しいモンスターがいる。天井に3匹。」

「天井に張り付いているなら洞窟コウモリだな。地上には何かいるか?」

「地上ではないが、杖が1つ浮いている。あと、部屋にはいないが、奥から魔法使いの悪魔が来ている。」

「そうか。ちなみに、そろそろ帰り道にもモンスターが湧いている頃だぞ。後ろはどうだ?」

「わかる所にはいない。」

「わかった。じゃ、行くか。」

そして突撃…

羽音をバサバサさせながら突っ込んできた一匹を捕まえたので、そのまま振討でたたき落とし、連踏で倒す。使わないと思っていた技だが、空中から来る小さいモンスターには意外と活躍できそうだ。

次に、正面から何かがぽふってなった。手を伸ばして掴んだら棒… いや、リビングロッドだったので、伝衝!

「洞窟コウモリたちとリビングロッドを倒した。」

どうやら、残り2匹のコウモリはブレイオが処理してくれたようだ。雷が弱点だったし、さっき雷のドカンという音がしていたからな。ゲームなので、相応に音は響くけれど、洞窟の中でも雷は落とせるのである。

「主人。もうすぐ最奥だが、新しいモンスターがいる。プチデビルに近い。」

「レッサーデーモンだな。4種類のデーモンが、この洞窟の各層の最奥部にいるはずなんだ。」

「それは強いのか?」

「言ってしまえば、プチデビル3匹分くらいだな。1層だと、レッドレッサーデーモンだから、炎を吐いてくる。水縛で熱耐性しておくのが良さそうだ。」

ということで、熱と燃焼に耐性の付く「水縛」でバフった上で突撃。なお、俺の武器は「シザーグローブ+1」にパージしておく。あっちは炎に耐性あるからな。

「グオオォォ!」

鳴き声が聞こえてきた。いきなり火炎の息か!

俺は転がって、ブレイオは調薬で避けた。そして、ボーボーという音がし始めた。動画で聞いたことのある火炎の息だ。

俺が起き上がった頃、音は病んだので、再び接近。すると、前から何かが来てぽふった。

「グオ!」

位置がわかったので、捕まえて滝落!地面にたたきつけたら、ドッシーンという音がした。いや、これ技のエフェクト音だけどな。

そして、触鑑定の結果を確認しつつ、起き上がる前に、纏水からの聖拳!

レッドレッサーデーモン:

種別: モンスター・悪魔

レベル: 22

HP: 39%

状態: 敵対・ひるみ・真理の枷+2

説明: 試練に挑む者に立ちはだかるモンスターの一体にして、下級の守護者。炎のブレスを吐く。

識別:

体力: 110

魔力: 66

筋力: 55

防御: 33

精神: 44

知性: 22

敏捷: 33

器用: 22

属性: 闇・炎

「レッドレッサーデーモンを倒した。」

うん。まぁ、武器が第7マップのスペックだし、レベル差8だし、高威力技2本だし、弱点も突いたので、こんなものだ。一応「次階層の扉の前にいる」だけで、ボスではないのだから。

「主人。次に戦うデーモンは我が相手をしたい。」

「良いぞ。時間も余裕があるから、このまま2層へ突撃だな。」