10-14 試練洞窟おかわりのお知らせとホムク観光

改定:

本文

「え?いきなり人が!って、ユーさんだ!」

「ん?その声はアヤさんか。」

「そうだよ。びっくりしちゃった。私も、今出てきた所なんだ。」

どうやら、脱出タイミングが重なったようだ。

この世界の固定ダンジョンは、パーティ毎にサーバー分けが行われる。だから、ダンジョン内では出会うことはできなくても、脱出した時に時間が会えば合うことは可能だ。

この仕組みを利用して、「複数パーティが一斉にダンジョンへ突入し、タイムアタックをする」あるいは、「一定の時間が経つまでに稼いだ素材の数を競う」遊びが存在している。攻略や強化に燃えている最前線では、今でも続いている文化であるらしい。

「そうか。こっちは、無事に最奥のボスを討伐できた所だな。だから、これから素材を下ろしに行って、今後のことを考える予定だぞ。」

「そうなんだ。私は、ちょっと大変かな~。あのコウモリがいっぱい群れになるのが大変なんだよ~。あと、魔法が効かない杖が出てきちゃって。」

「リビングロッドの亜種か。取り付いている武器の特性かもな。」

「そうなのかな?魔法が弾かれるし、練習した印消もダメだったんだよ。びっくりしちゃった。」

まぁアヤに物理攻撃はほぼ無いから、魔法無効のモンスターが出たら詰むんだろうな、ということはわかる。小刀は攻撃ではなく受けや描画に浸かっているので、直接攻撃の用途ではないと聞いているし。

「あ、そうだ。ユーさん、浄化して欲しいんだよ~。その武器、なんかインベントリーに入っちゃったんだけど、呪い付いてるみたいで。」

「いつの間にか入ってた、みたいな理由でインベントリー行くとは思えないけどな。たぶん、浄化したら襲ってくるから、倒しちゃって良いよな?」

「え?そうなの?倒しちゃうのは大丈夫だよ。」

その後、件のリビングロッドはインベントリーから解放されて、しっかり浄化、伝衝で物理的に天に召されたのだった。そして、残ったのはこんな武器だった。

魔弾鋼の杖+1:

種別: 武器・杖

説明: 重金属製の戦闘杖。精霊や魔道生物など、魔力を核とする生物に対する特攻効果を有する。また、杖自身が魔法を強く弾く性質を有する。

性能: 攻撃力30(打), 耐久値: 600/600, 魔法生物特攻, 受杖時魔法無効化, 魔法使用不可

品質: 5/10

「魔弾鋼が呪いで強化された感じか。とんでもない武器だな。」

「でも、持つと魔法使えなくなるんだよね。私は要らないよ。」

「俺も要らないな。それに、強化素材にも使うのは難しそうだな。お店で売るのが良いと思うぞ。」

「あ、そうだ。ユーさん、良かったら、私と洞窟に入って欲しいんだ。私も、雪原には行ってみたいんだよ~。」

まぁ、ここに来ている以上、その先に進みたいということはわかる。

一方、俺たちは、半分以上が資金稼ぎと技能育成のためにここにいる。そして、この洞窟のリビング系は売却単価が高いので、もう少し狩っても良い、とも考えている。

「そうだな。俺はかまわないぞ。もう少し、この洞窟で稼ぎたいからな。」

「ありがとう。ユーさんとブレイオちゃんがいれば、百人力だね!って、ヒッ、クシュン!」

「やはりこの街は冷えるな。残りはギルドに戻って進めようか。」

「そ そうだね。」

こうして、明日から、試練洞窟のおかわりが決まったのだった。

「ユーさんの、持ってきたよ~。」

「助かる。」

ギルドについたら腹ごしらえだ。正直、時間はお昼なので、満腹度はそれほど減っていないのだが、ボス討伐後だし、温かい物を胃に入れて落ち着きたい、という気持ちもあった。

なお、現在食べているのは、コーンスープと小さなグラタンだ。ブレイオも同じ物を与えている。

「ユーさんって、あまり食べないんだね。空腹耐性って、便利そうだけど、ちょっと不便そうにも感じるよ。」

「そうだな。実利を取るなら、食費も減るし、遠出するにも便利ではあるが、ある意味で食事コントロールを求められる点は否定できないな。」

「食事コントロールか~。こっちで存分に食べて、リアルの方で減らすっていう人の話は聞くよ。」

「人によっては、ゲームで美味かったアレをリアルでも… っていうケースもあるみたいだけどな。まぁ、楽しいならどっちでも良いと思うぞ。」

このゲームは、ゲーム内でも「満腹度」というある種の食事コントロールを求めている。これが、ある意味で現実離れした生活に対するストッパーになっているのかもしれない。

いや、魔法が飛び交っていたり、カロリーや糖質、脂質などの話が無かったりなど、不思議要素もたっぷりあるので、深く考えずに、そういうゲームと割り切った方が幸せだと思う。

「あぁ、そういうのもあるのか~。そういえば、満腹度をいっぱい減らす手段を使えば、食べる量を増やせるんじゃないかな?」

「てっとり早いのは、薄着で砂漠や雪原に向かうことだな。倍くらいの速さで腹が減るぞ。」

「そうなの?あぁ、冷たい滝に当たっておなかが減ったみたいな!」

「あとは、満腹度を減らすアイテムを使うとか、コストとして満腹度を使う技だな。動画で知っているのは、身体のエネルギーを一気に燃やすバフの類だった。」

「あぁ、そういうのあるんだ。ユーさんは、取る予定あるの?」

「既に持っているぞ。気を使う技能に含まれているからな。」

検証によって、「気」を使う技能を使用するほど、満腹度の消耗が激しくなることがわかっている。体内に巡るエネルギーを活性化させたり表出させたりするわけだが、そのエネルギーには、やはり食べた物も含まれているようだ。なお、残りは「MP」で賄われていると思われる。

その後、俺たちはギルドを出て、街中のお店をめぐることにした。今更だが、ホムク観光の再開である。

「あ、雪だるまが描いてあるよ。雪原グッズのお店かも?」

「雪原グッズか。そういえば、雪原用の準備は何もしてなかったな。行かねば。」

アヤが見つけたお店へ突入。話を聞くと、以下のアイテムが売られていたので購入した。

防雪手袋:

種別: 武器・ナックル

説明: 柔皮制の手袋。手に装着することで、雪による冷却や水濡れを防ぐことができる。頑丈なため武器にも使えるが、攻撃力の増幅効果は低い。

性能: 攻撃力8(打), 耐久値: 180/180, 冷感耐性(大), 濡れ耐性(大)

品質: 4/10

価格: 7000p

防風のマント:

種別: 防具・マント

説明: 硬皮製のマント。防御力は低いが、冷気を含めた風による影響を防ぐことができる。

性能: 物理防御12, 魔法防御6(冷○), 耐久値: 270/270, 風属性耐性(中), 冷感耐性(中)

品質: 4/10

価格: 18000p

スパイクブーツ:

種別: 防具・具足

説明: 靴底にスパイク状の突起のある金属製の靴。雪上でもしっかり踏みしめることができる。また、雪に沈み込みにくくもなっている。

性能: 物理防御18, 魔法防御8(冷○), 耐久値: 360/360, 安定移動補助(中)

品質: 4/10

価格: 13000p

滑雪そり(小型):

種別: 運搬具

説明: 雪上で物を引いて運ぶための道具。どんな雪上でも沈み込まず、滑らかに移動させることができる。また、魔石を用いることで、載せた物の重さを軽減できる。耐荷重100kg。

品質: 4/10

価格: 20000p

雪固水:

種別: 薬品・建材

説明: 振りかけると、一定時間、雪を固めることができる薬品。固めた雪は、熱や衝撃でも崩れない強固な壁にもなる。効果は2時間持続する。

品質: 4/10

価格: 300p

冷感耐性薬:

種別: 薬品・飲料

説明: 飲用すると、体内の発熱を活性化させることで、冷たさに対する抵抗力を向上させる。

性能: 飲用(冷感耐性(小)、冷気耐性(小)、凍結体制(小)、持続時間60分)

注意: 効果発揮中、満腹度の消耗速度が上昇(中)。

品質: 4/10

価格: 300p

「ユーさん、そりなんて使うの?」

「使うぞ。ただし、雪遊びのためだけどな。」

「雪遊び?あぁ、雪原って、雪が凄くふんわりしていて楽しいって聞くよ。」

「そうらしいな。幸い、ブレイオもいるから、交代でそりを引くこともできるだろう。」

「そっか~。私も、遊びのために買っちゃおうかな。」

「ゲームは遊ぶものだからな。いわゆる、攻略を進めるのもその一つだが、それ以外にもやりたい遊びがあるなら、それに投じるのも悪くないぞ。」

「そうする。雪固水とかで固めれば、雪の彫刻だって作れるよね。」

そんな買い物をしながら、街を巡った。

雑貨屋でポーションなどの定番アイテムを補充したり、果物屋で新種を含めたドライフルーツを補充したり、料理屋でテイクアウトできる食べ物を補充したりした。「補充」としか言えない量をまとめて買うのだから仕方ない。

最終的に、10万pくらいのお金が飛んだわけだが、試練洞窟に行けば戻ってくるので問題無いだろう。