10-15 N4 試練洞窟で共闘、ボスもボッコボコ

改定:

本文

「アヤ殿、この先、レーダーバットと、プチデビルシーフがいる。」

「あ、そうなんだ。助かるよ。」

現在は午後14時頃… 場所はホムクの試練洞窟の3層。

昨日は、買い物などを済ませて解散した。そして、今朝から洞窟に潜り、狩りをしながら進んでいる。

で、アヤが詰む原因となったモンスター「レーダーバット」がブレイオの感知県内に入った所だ。お供もいるらしい。

「アヤさんは、索敵魔法だったな。それで、レーダーバットに逆探知されたのか。」

「そうなのかな?前に塔で聞いた、魔力で索敵をした場合のデメリットだっけ?」

「そうらしい。魔力を伸ばして探るようなものだから、魔力を見通す手段があると逆探知されるんだ。いわゆる魔力視や魔力感、あるいは、同じ魔力探知がそれだな。」

「ブレイオちゃんは、モンスターの静電気を感じ取っているんだよね。う~ん、私には無理かな~?」

電磁感応を人類が身に着けることは難しい。そういう魔道具を使うことはできるのだろうが、少なくとも、昨日の観光で訪れた錬金術店には無かった。

「まぁ、とりあえずアヤさん。索敵魔法を使ってくれ。ただし、レーダーバットと、プチデビルは何か違うものに感じられるはずだ。」

「うん。やってみる。ちょっとずつ、わかるようになってきた気がする。」

おまけにアヤは、索敵魔法でモンスターの数を数えたり、遠いか近いかをアバウトにしか測ったりしていなかった。結果、「索敵魔法」が中級技能にならずに停滞していたようだ。

ブレイオの電磁感応を育てていた時にも触れたが、索敵技能を成長させるためには、使い込んで慣れるだけでなく、探知した対象の特徴を識別する訓練も必要なのだ。そして、「索敵魔法」でも中級以降にすれば、少しは逆探知されにくくなるのである。

ということで、アヤの索敵技能を育てる目的も兼ねて、索敵魔法と、そこからわかった反応を識別する練習をしてもらっている。結果として、逆探知されたり、リビング系などのモンスターが近寄ってきたりしているのだが、最初から全部倒す予定だったので無問題である。

「キー!キー!」

レーダーバットが気づいたようだ。そして、あの鳴き声によって、すぐにミニバットの群れが集まるだろう。

しかし、こっちには広雷を使えるブレイオがいる。一発で撃墜できるミニバットの群れなんて、はっきり言えばカモだ。

「主人。全て我が落として良いな?」

「もちろんだ。まんがいち生き残りがいたら、アヤさんが落としてくれるだろう。」

「私が?」

「もちろん、俺も落とすぞ。ただ、不規則に飛んでいるから、範囲魔法で落とすのが鉄板だ。」

「あ、うん。わかった!」

結局、広雷のゴロゴロ、ドッカーン!の一発でミニバットは全滅した。しかも、レーダーバットも7割ほど削られた上に、マヒが入って落下してしまったのだった。

「ケケケケケ!」

「お?お前こっち来たのか?大外れだな!」

そして、プチデビルシーフは俺の背後にいた。アヤの背後だと大ピンチだったが、結果オーライ。もちろん、捕まえたので、投落からの聖拳でしっかり倒した。

「プチデビルシーフ、危ないよね。私も、最初後ろから刺されたんだよ~。」

「アヤさんは、どうやって対処してきたんだ?」

「影身だよ。私の影を前に出しておくと、けっこう引っかかるんだ。今もちゃんと出してるよ。」

どうやら、対策はしているらしい。実態こそ無いが、相手が見間違えを起こす程度にはリアルなんだろう。

「そういえば、こんな指輪があったな。高いけど、持っておくと保険にはなるぞ。」

「え?えっと、致命の指輪?え?そんなのあるんだ。」

「俺はE5で買ったぞ。たぶん、N5の街でも買えると思う。」

「あ、ちょっと待って。索敵魔法が進化できるって出たよ!」

「お、良かったな。」

そして、先ほどの戦闘を通して、索敵魔法が進化するようだ。なお、以下のルートに分岐するぞ。

  1. 広域索敵魔法: 索敵範囲の制御能力が向上する。範囲を広げて、より遠くから索敵したり、逆に範囲を狭めて、必要以上に索敵しないようにしたりできる。
  2. 特殊索敵魔法: 索敵時に発する魔力の成分を操作することで、相手に逆探知されにくくできる。逆に魔力を濃くして、探知を妨害することもできる。
  3. 魔力感応: 魔力を感じ取る技能。索敵能力は弱まるが、最も逆探知されにくくなる。

「う~ん。どれがいいんだろう?」

「逆探知されるのが厳しいなら魔力感応だな。それよりも、向かってくる危機をしっかり把握したいなら、広域索敵魔法だ。」

「そうなの?もしかして、広域っていうのは、魔力の動きがより細かく分る?」

「そうらしいぞ。ちなみに、特殊索敵魔法は、魔力でなでられた側の印象を操作する技能だな。」

「じゃ、ユーさんには悪いけれど、広域索敵魔法にするよ。動いているものがわかるって、とても面白そうなんだ。」

面白そう… か。まぁ彼女らしいと言えるだろう。それに、彼女の場合、逆探知されるよりもわからない所に潜んでいることの方が危険なのだから、理に適っているはずだ。

「取ったよ。さっそくやってみるね。」

「かまわないぞ。どうせ、モンスターが寄ってきても倒すだけだからな。」

「う~ん。あ、本当だ。まだ遠いのは難しいけれど、前からコウモリが飛んできてる。あと、2部屋くらい後ろにプチデビルが2匹いて、こっち来てるよ。どっちも動きが似てる!」

「そうか。じゃ、答え合わせしつつ狩るとしよう。」

「ふむ。我には後ろのモンスターが感じられない。まだまだ上があるということか。」

その後、近づいてきたモンスターを倒して、俺たちは先に進み始めた。

なお、ブレイオに関して言えば、「魔法(雷)」のレベルを上げていけば習得できる「雷探知」で同じことができる。電波を飛ばして広域を探知する魔法なので、逆探知されるリスクもあるが、広範囲をばっちり索敵できるぞ。

翌日の昼前…

「この地の試練に挑む者よ。名を名乗れ。」

「私はアヤです。」

「アヤよ。己が向かうのは冷たき大地。人が失い、捨て去られた大地。なぜ、その地へ赴く?」

「見たことのない氷の大地、そして、その先の風景を描いてみたいから。」

「良かろう。ならば、最後の試練を乗り越え、その覚悟を示すがよい。」

ということで、最下層到着。アヤの宣言を聞くというシーンを経て、フィールドボス戦が始まった。

「オォォォォー」

「ブレイオ。焼き直しで悪いが、またアレで行くぞ!」

「心得た!」

「分身展開!ファイアフォロー!戦いの印!」

俺とブレイオは突撃、ホムクを捕まえて、光属性付与からの滝落、連踏、纏炎の聖拳!その後、ブレイオの纏雷衝撃!

今回は、アヤにもバフを刻んでもらったことで、ダメージが70%まで跳ねていた。「戦いの印」は、与ダメージ上昇、「ファイアフォロー」は「熱縛」を味方に使う場合の洋名で、その効果は筋力、精神上昇だ。

「ホーリーピラー、ホーリーブレイド!」

さらに、アヤ本人の光柱、マジカルエングレイバー3本による光刃が入ったようだ。ただし、こいつ知性が高かったので、たぶん5%くらいしか入ってない。

「グオオォ!ヤルナ!チイサキモノヨ!」

「フカキヤミをシレ!」

ここで来たのは闇のブレスだった。

俺は、闇属性耐性を付与し、光壁を転回!前回と同様に防ぐ。

「ホーリーウォール!私も行くよ!雷針!雷針!雷針!雷針!雷針!雷針!雷針ってあ、逃げた!」

そして、ブレスを吐くために動きを止めてしまった。そうなると、彼女の行動はコレである。刻んだ端から消費していけるので、戦艦クラゲがずっとコレだったんだよな。

ただ、途中でホムクが動いてしまったようだ。あの短時間で6発も当てる時点で、そうとうヤバいわけだが…

「ユケ!ワガケンゾクタチヨ!」

あれ?なんか近くで眷属呼んでるが、俺が見えてないのだろうか?と思っている間に捕まえたぞ!

とりあえず、纏光の振討!投落!最後は新技、掌波だ!

掌波は、魔力拳からの技だ。手に魔力のエネルギー弾を出せるのだが、放ったり投げたりはできず、掌ごと押し付けて爆破させるものだ。チャージが必要な近接攻撃なので、使い勝手はあまりよくないが、威力は高かった。

その掌の爆発を受けて、先日も聞いたドシーン!という音が部屋中に響いたのだった。

「万人を下した者ヨ。見事なり!」

「ダンジョンボス 氷像の悪魔ホムク の討伐に成功しました。」

「ダンジョン ホムクの試練洞窟 の再攻略に成功しました。」

その後、アヤは「闇のローブ」という報酬を獲得していた。精神を上昇させる効果があり、闇属性にも強くなるそうだ。

「ユーさん、ありがとう!おかげで、試練が超えられたよ。」

「問題無い。こっちもたっぷり稼げたからな。」

俺たちは、ホムクの試練洞窟から脱出し、現在はギルドの食堂で昼食中だ。今回は、野菜と肉を煮込んだシチューにしている。

「でもいいの?おくたんちゃんの発掘品、私ももらっちゃって。」

「最初に分けるって決めていたからな。それに、第5マップの買い物は、安くても15万くらい軽く飛ぶぞ。」

結局、3度の試練洞窟探索で、合計60万pは稼いだ。その内25万pは使ったわけだが、手元資金は30万pを超えたので、おくたん強化が捗るだろう。

「うぅ、そっかぁ。どうしたらいいかな?私も、この洞窟で資金稼ぎしないとかな?」

「とりあえずは、街に行って、欲しい物を見繕ってから考えるべきだな。それと、アヤさんの技能なら、画家技能で作った物や、アクセを加工して売れば良いと思うぞ。そういうことができるのが生産技能の強みだ。」

「あ、うん。アクセサリーって、強化したら値段上がることがあるんだよね。私の実力だと、どうかなぁ?」

「有意義な効果にできるなら、5000pの指輪が10万pくらいに跳ねるかもな。」

「へぇ~。まぁでも、売る相手は選びたいな。」

「となると、ギルドに相談してみるのはありかもな。始まりの街の商人ギルドが確実だが、冒険者ギルドでも相談には乗ってくれるはずだぞ。」

「え?そういうのもやってくれるんだ。」

一瞬、面倒見の良いお姉さんがアヤと組んで何かやらかす想像をしたが、気にしないでおこう。少なくとも、彼女が嫌がるようなことはしないだろう。

「ところで、ユーさんはこの後どうするの?」

「そうだな。ヒマランに戻りたいが… あそこは今イベント中かもな。なら、隣のトマで確認か…」

「イベント中?」

「ゴブリン祭りみたいなヤツだな。ヒマラン大草原のモンスターが増量中で、中心にある都で防衛戦になるかもしれない、というものだ。」

「それ、大丈夫なの?」

「いつものこと、みたいな感じで扱われていたし、けっこうプレイヤーも集まっているらしい。とりあえず、今どうなっているかわからないから、隣街で確認だな。」

「そっか~。私も気になるな。トマの塔も登ってみたいと思っていたし、行ってみようかな?」

「それなら、飯が終わったら行くとしよう。まだ昼だしな。」

「うん。」

その後、俺たちはトマへと転移した。