10-17 E5 守都防衛戦、PKたちの悲劇ダイジェスト

改定:

本文

一方、こちらはとあるPK:

闇ギルドと呼ばれている場所で一つの告知が出されていた。

ヒマラン防衛戦に、上級の冒険者や各町ギルドの兵を集める。全力で狩れ!狩った数に応じて賞金を与えよう!

強いヤツらとの戦いに心が躍る。それに、文面からして、これは祭りの類に違いない。なら参加するしかないだろう!

今回は、悪名を轟かせてやろう。そこで俺は、空からの襲来を計画した。

告知から一週間。テイマーの能力を生かして、けっこうな数の飛行系モンスターを揃えることができた。キャパの問題もあり、レベル20前後ではあるが、総勢200は超えている。しかも、地上からの攻撃に強いモンスターをチョイスした。

戦争は物量が物を言う。そして、ヒマラン大草原は鳥系モンスターが駝鳥しかいないので、基本的に空に対する警戒が薄い。しかも、対空攻撃に強い個体だ。

出撃した所、案の定、空は俺の天下だった。誰も飛ばしていないのが不思議なくらいだ。尤も、今から飛ばしても遅い。対空攻撃で楽勝とか言ってるやつらに、存分に味合わせてやろうじゃないか!

おや?あそこにもテイマーがいるな。ゴブリン種を連れているように見える。まぁ地上で孤立しているやつなんてどうでもいい。もう少し先の集団を爆撃しようじゃないか!

そう思っていたら、ゴロゴロとした音が聞こえてきた。先日、雨の兆候があったな。そんなことを思っていたら… 目の前が真っ白になった!

一方のユー。

歩いていたら、上からぽふってなって、その後、正面にドターンという音がした。どうやら、俺の頭上に落下してきて、それをぼい~んと弾いたようだ。

先ほど、ブレイオが空の鳥を根こそぎ狩るべく、広雷を放った。けっこうな数の鳥が一撃で消えたようだが、たぶん正面に落ちてきた何かは、その生き残りだろう。

とりあえず、生き残っているなら倒さねばならない。ということで掴んでみたら、鳥じゃなくプレイヤーだった。犯罪者称号が付いていたので、鳥軍団の主かもしれない。

幸い、マヒと気絶が入っているし、 真理の枷+3 も入っている。落下ダメージでHPが20%を下回ってもいる。

識別したら、レベル50超だったが、このHPなら俺でも倒せそうだ。というわけで、持ち上げて滝落、伝衝、そして聖拳と繋げたら、ちゃんと倒すことができた。

一方、こちらはとあるPK:

今、私は目の前で印術師の女と対峙している。少なくとも鑑定はそう言っているのだ。

私は上級印術師。まさか後輩君に会うとは!と感動して対峙したわけではない。あの集団を連続発動型の印術で消し飛ばしてやろうとしたら、目の前の女に邪魔された。展開した魔法陣や印を、サラサラと消されたんだ。

正直言うと、わけがわからない。いや、印消を差し込まれたのはわかる。だが、あの女、彫刻刀を自在に操って、遠隔から消してくるのだ。しかも3本だ。並列思考や遠視で対処されたのは予想が付くが、印を小さく描くって難しいんだぞ!

とりあえず、あの消す早さだとこっちの術展開が間に合わない。だが、あっちが消すならこっちも消せば良い。そんなわけで、場が硬直してしまっているのだ。

だが、ここでじっとしているのは握手だ。さっきから、何かが狙っている。アレは前衛職の動きだ。硬直していたら狩られるだろう。となると、ここは…

「炎鎖!あぁ!」

フフフ、それは握手だよお嬢ちゃん!それは対人には使えないのだ!包槍!

「え?何何!」

今使用した印術「包槍」は、四方から対象を貫く印術。印術師は物理に弱い、それを突ける有効な攻撃手段なのだ!

とその時、私の体中から何かが輝いた!え、雷針!いつの間にこんなに!

ズドドドドドドド!ギヤァァァー!

「高速剣!三連閃!」

「ま、ギャー!」

なぜだ。なぜ、私は印術をあれだけ刻まれていた?

いや、それ以上に、包槍は女を捉えていた。まさか… 影身か…

こうして、透明にしていた包槍を普通に直視されていたアヤの影身に引っかかった男は、お付きのリーネに切り刻まれて死に戻ったのだった。

一方、こっちは別のPK:

俺は特級幻術師。精神異常耐性を持つ相手にも、耐性を貫通して未了などを与えることができる「耐性貫通」を持っている。

俺の目的は、偵察をしつつ、ヤバそうなやつを見つけたら、そいつを手ごまにすることだ。どうも、東西に挟撃部隊なるものができていて、他街のギルドも参加しているらしい。

で、まずは東を覗いてみたのだが、アレは部が悪い。特級結界師が出張っていやがった。となると、西で手ごまを増やすに限る。

そんな俺が見つけたのは、ついさっき、ワイドライトニングを放った鬼をテイムしていた男だ。あのおかげで、空からの襲撃が失敗に終わったのもそうだが、単純にけっこうな破壊力を持っている。

現在、そいつは、近づいてきたクリプトンなんかと戦っている。その様子だと防御力がかなり高いようだ。肉壁として優秀に違いない。

なら、話は早い。あいつらを洗脳してしまおう。俺は、気づかれないように近くへ潜伏、その上で幻術の施行を開始した。

だが、なぜか、効果が無い。いや、きっと耐性持ちなのだろう。さすがの貫通でも、耐性持ちだと一定確率で無効化することは知っている。だが、俺は気づかれていない。なら、当たるまで続ければ、いつか当たるのだ。フハハハハ!

一方のユー。

クリプトンボクサーなるモンスターと遭遇したので、ついついスパに興じてしまった。途中でお供が来たので終わってしまったわけだが。

「グヘッ!」

と、突然近くで何かがぶっ倒れる音がした。ケガをした冒険者か?と思い、近づいて触鑑定をしたら、犯罪者2号だった。

職業に「幻術師」と出ていたので、ここで隠れて俺に何かをしていたのだろう。真理の枷+10になっているので、たぶん、「枷の報い」で体がキュッとされたのだと思う。

「き 貴様!なぜ、効かない!」

「効かない?あんたの幻術か?とりあえず、PKみたいだから覚悟してもらうぞ!」

「従うわけねぇだろ!幻惑の檻だ!捕らわれるがいい!って、え?なんで?」

「悪いが、幻影無効なんでな。滝落!」

「ピギャー!」

「主人、我にやらせろ!」

「お、いいぞ!」

「な、それギャーーーー!」

どうやら、纏雷衝撃で吹っ飛んだようだ。まぁ幻術師は精神、魔力極振りビルドだろうから紙耐久になる。あんなのぶん回されたら溶けもするだろう。

それにしても、称号が特級幻術師だった。確か、あのレベルまで育っていると、耐性貫通能力が高かったはずだ。さっき、ブレイオに「真理の守り」を付けておいて良かった。ブレイオが未了されたら… どこか知らない所でドッカーンってやらかしていたかもしれないな。

一方、こちらはルーウェン…

「なんだ。ルーウェンか!あんたも暇人だぜ!」

「おや?祭りと聞いてそっちに加担しましたか。」

ルーウェンは、一人のプレイヤーと剣を交えていた。

現在、戦っている相手はソルティ。普段は同じく最前線で攻略に邁進している特級剣士だ。

「その通り。やっぱお前はそっちだったか。」

「もちろんですとも。私の主義に反しますからね。」

「はは。お前との対戦はいつ以来だったか。まぁ、お前のようなのと交えたいからこっちなんだけどな!」

「全く、酔狂なことをしてくれますね。」

「こっちも楽しいぜ。だが、もうすぐ仲間がやべぇのを連れてくる。西で洗脳工作に励んでたからな。」

戦況としては、ルーウェンが優勢だった。

これは、ソルティに対し、他の冒険者からの支援攻撃が殺到しているためだ。ソルティ自信も、どちらかと言うと、ルーウェンと剣を交えつつ、彼を足止めすることに注力していた。

「おや?洗脳ですか。それは大変ですね。」

「アレはやべぇからな。まぁあんたなら一人で殲滅できるかもしれないけどな。」

「さぁ、どうでしょう。ただ、一つ悲報がありますよ。」

「なんだ?そろそろHPもやべぇし、聞いてやるぜ。」

ソルティのHPは10%を切っている。

ルーウェンは敵ながら、これほどの攻撃に晒されていて、なお平然と切り結んでいる彼には頭が下がる思いだった。ソルティは、何度も飽和攻撃に晒されているのだ。

「私の知り合いが西にいましてね。おそらく、彼には洗脳が効かないでしょう。」

「効かないだと?魔生物系でも貫通するってでたらめな技能なのによ。」

「はい。どうやら、特質の無効化特性なようでしてね。」

「特質… だと… やべぇのが見つかった… もんだな。」

「えぇ。一年を過ぎても、まだまだ発見が多いようですね。励み買いがあります。」

「ははは。違いねぇ…」

そして、とうとうソルティは倒れた。

「ふむ。ソルティがわざわざ敵として参加しましたか。やはり、これは公式イベントの余興でしょうか。新しい一年… を飾るには相応しいのでしょうね。」

最後に、西にて…

あの男、幻惑の檻を突き抜けていた。突き抜けるエフェクトは、無効系技能だ。正直、初めて見たぞ。

使用している技から、拳士と見える。近接体術のようなので、納金系か?二次が召喚士か?なんで無効を持ってるかは知らんが、妖精にでも祝福されたんだろう。それなら魔法防御はあまり高いはずはないか。とりあえず、遠距離から様子を見て、その後近接で狩ってみよう。

一方のユー。

モンスターを狩りながら進んでいたら、魔法の連打に会った。主に、雷や風、水などがあちこちから飛んできている。全部ぽふんぽふんなってるけどな。

とりあえず、ヤバそうなので、ブレイオを帰還させた。土弾まで飛んで… 今来たな。やっぱり、ぽふったけど。

「ググ、な なんだ!」

そして、枷の報いが炸裂したことで位置判明。またぶっ倒れたので触鑑定したら、レベル50オーバーのプレイヤーだった。とりあえず、破魔と伝衝を打ち込んでおく。

「貴様!やりやがったな!」

「あんたか?魔法で攻撃していたのは。もう飛んでこなくなったみたいだから、そうだと思っているぞ。」

「ふん。貴様に語る必要は無いわ!」

そして、ぽふっとした音がした。どうやら、何かを投擲してきたようだ。

「おいおい、お前、魔法だけじゃなく物理も無効かよ?どうなってんだ!」

「どうと言われてもな。それこそ答える必要は無いな。」

「違いねぇな!」

その言葉の後、縮地で迫った俺に何かをしようとした彼は、盛大にぽふってぶっ倒れた。

当然、連踏からの爆拳を打ち込んだぞ。

「ぐ。なぜだ!なぜ、レベル30が倒せん!」

「そっちは50オーバーだったな。」

彼は、そう言いながら、俺に攻撃を続けているが、どれも不意打ちになっているため、ぽふりまくっている。

「この、ってあ!」

そして、またぽふってなったタイミングで捕まえて滝落!枷の報いを切っておいたので、今スタック値は+20。つまり、能力が40%近く下がっており、俺と同レベル程度になる。

識別を混ぜたら防御の方が低くて、鎧で守ってる感じだったので、伝衝、そして抉拳だ!

「ぐ… なぜだ!」

「そういうビルドだからとしか言えんな。滝落!」

そして、PKは消え去った。