本文
ミーミ平原のダンジョンをスピード攻略した日の夜… 俺たちは、ソルットの温泉宿で一夜を過ごした。もちろん、俺はログアウトしたから寝泊まりしてないけどな。
というのは、リーネさんが「ラフィちゃんとお風呂に入りたい」と言ってきたからだ。そして、ラフィとブレイオがそれに賛成してきた。まぁ、ダンジョン攻略の後にお風呂で寛ぐのは良いことだ。
結果、リーネさんと一緒に入る必要から、俺はパーティ湯に入った。もちろん、水着を着用してである。
パーティ湯の浴室は、空間が6倍くらいに広がっていたり、大浴槽の中心に立てる仕切りが付いていたりした。パーティで輪を作ることもあれば、グループに分けて語らうこともあるのだろう。
ということで、仕切りを活用して、俺とブレイオ、ラフィとリーネさんというグループを作り、湯を楽しんだ。一応「ラフィと一緒にお風呂に入りたい」という要望だったので、見た目上の男女を分けた形だ。
ただ、ちょっとしたトラブルもあった。ブレイオは露天の砂風呂に入れないので俺が一人で入っていたら、ラフィが飛び込んできて、二人で砂まみれになった。まぁ、海でやっていたことなので今更だろう。
ちなみに、まとめウィキ情報によると、共同浴場に入ると、ラフィのように容姿が人類主の異性に該当するモンスターの呼び出しができなくなるそうだ。周りが男だらけなのだ、妥当な所だ。もちろん、ブレイオやおくたんは呼べるぞ。
そんなイベントがあった翌日… 俺たちは、またまたソルットの浜辺にやってきていた。
今日からは、レベルアップに伴って増えたMPを使って、ラフィの魔法系技能の育成を進める。適性のある技能だし、特に「舞踊」は「舞剣術」に必要だから絶対に育てなければならない。
あと、俺たちも前からやっているが、引き続き魔法の育成だ。第6マップでは、レベル20代前半じゃ話にならないからな。
「ラフィ。鎮静の歌を俺たちに聞かせてくれ。」
「ん。歌う。」
そうして、ラフィによる歌唱が始まった。
「歌唱」で用いられる歌の多くは歌詞を持っていないため、ボーカリーズ、あるいはハミングによってメロディーが発声される。その代わりに、ちゃんと声主の声が反映されるので、しっかりラフィの声になっている。当然、プレイヤーが歌唱する場合は、譜面に沿って歌唱する必要がある。
今使用しているのは「氷歌」に含まれる「鎮静の歌」だ。効果は、使用者が対象と認識している敵味方の精神異常の抑制だ。基本的には、相手が逆上、暴走している場合に浸かったり、味方が混乱や未了を受けた場合に使うものだ。
なお、音を扱う技能ではあるが、「魔力のこもった歌」というのがポイント。つまり、使用者が対象を選ぶことができるので、味方まで攻撃に巻き込むような事故は防げる。もちろん、「無差別に音が聞こえた者全て」を対象にすることも可能だ。
その歌を聴いていると、確かに、心が落ち着くような気がしてくる。あとラフィの声質なのか、物悲しい声にも聞こえる。
「主人。この歌は、無心で修行する時に良いと思わないか?」
「そうかもな。まぁ、海のような場所だと、波音だけでも落ち着けるものではあるがな。」
「う~ん。でも、悲しい印象だね。氷歌だからかな?それとも、ラフィちゃんの声だからかな?」
「それは、他の歌を覚えてみないとわからないな。って、ラフィは、そろそろ止めても良いぞ。」
「ん。」
「歌唱」技能は、維持コストとしての魔力を支払いながら歌い続けることで、歌の効果を継続させることが可能だ。それと、歌っている長さに応じて、効果が増幅されるボーナスがある。その代わり、裁定でも10秒以上、歌を聞かなければ効果が出ない上、真っ当な効果に至るまでには30秒程度必要だそうだ。
「ラフィは、歌ってみて、どうだったか?まだまだ歌える気がするか?」
「歌える。魔力、残っている。」
「そうか。では、改めてになるが、歌ってくれるか?」
「ん。」
まとめウィキによると、「歌唱のレベル上げ」は、2~3分程度の刻みで歌を繰り返すのが、経験値効率が良いらしい。あと、空間が広く、対象が多く、且つ、制限もしているとボーナスが乗るらしい。故に、「属性範囲攻撃のできる歌を、モンスターの多く生息する山の頂上で歌い続ける」というのが有効とされていた。
そんな歌のレベル上げの次は、踊りのレベル上げだ。ただ、こっちは、踊りが見えない俺にはどうにもならないので、リーネさんとブレイオに任せることにした。その結果…
「わ、わ、わ、!体がたまに釣られる!」
「どういうことだ。踊りを見ていると、体が動くぞ。」
「確か、踊りを見せた相手のアクションを、一定確率でファンブルさせる技だったな。魔抵抗があれば防げるぞ。」
「あぁ、そういうの。わ!これ、突然来るからびっくりだよ!」
「誘踊」は、相手の行動パターンが決まっていて、それを崩すのに有効な技だ。ただし、効果が出るタイミングがランダムな上、踊りを見ている必要があるので、やることが無い時にサポートとして使っておくのが望ましいとされていた。
なお、こちらも「魔力の込められた踊り」なので、使用者が対象と認識した相手に有効だ。まぁ基本的に、バフ系は味方、デバフ系は敵に… といった使い分けになる。
「ユー。踊る?」
「ん?俺に踊れるか。」
「やってみる。」
そうしていたら、ラフィが、俺の体に抱き着いた状態で体を動かし始めた。件の「誘踊」を使っているのだろう。
「なかなか不思議な動きするんだな。正直、どう体を動かしたら良いかはわからないが。」
「ん。やっぱり、踊り、見えないと難しい?」
「だな。俺が一緒に踊るためには、やはり技能が必要なようだ。」
「ん。残念。」
体を動かそうとしているのはわかったのだが、踊れるような感じはしなかった。単純に、俺が踊りの内容を知らないこともあるし、ラフィが俺を動かすには力が足りないのだろう。
簡単な解決方法は、「舞踊」技能を得ることだ。技能を得ると、適切な踊りがわかるらしい。ただ、武装や裁定者との相性は良くなさそうなので、習得できるのかは未知数だ。
その後はいったん一休み… そして、次に魔法の育成を始めた。こっちは、冷却や送風などの魔法をいろいろ使っていった。
なお、ラフィは魔力拳を持っているわけではないが、初期攻撃魔法の系統が俺と同じ「纏」になっていた。剣や体術の攻撃部位に魔法を纏わせられるらしい。
それと、魔法(月)の「月光」だが、「暗視」のような効果をもたらす魔法だった。「灯」ではないため、ヌーンアウル等にも探知されず、むしろ見えちゃっても幻覚を受けないようだ。
そんな感じで訓練を2日ほど続けた結果、「そろそろ西でモンスターと戦ってみようか?」ということになった。
名前: ラフィ
種族: 剣舞の幼魂
レベル: 6
体力: 10
魔力: 13
筋力: 9
防御: 8
精神: 10
知性: 8
敏捷: 12
器用: 11
技能:
適性: 刀剣術14, 体術12, 舞踊12, 歌唱10, 霊術4, 魔法(氷12, 風6, 月6), 採集3
技術: 伝信18, 魔力操作12, 双剣12, 急所看破9, 危険感知12, 直観11, 索敵魔法2, 受け身12, 疾走15, 跳躍14, 遊泳8, 並列思考10, 観察8
支援: 言語(人類), 世界知識, 反応強化, 海の心
耐性: 冷気耐性, 凍結無効
特質: 幼魂態, 幼体, 樹木殺し
剣: 受払, 飛剣, 連撃, 回転
体術: 強撃, 足払, 投落, 反撃, 連撃
舞踊: 誘踊, 引踊, 身交, 注舞
歌唱: 氷歌(鎮静, 奪熱, 寒震)
霊術: 吸魔手, 痛撃
採集: 採取量上昇1
魔法: 纏, 集, 槍
氷: 氷縛, 氷波
誘踊: 誘う踊り。踊りを見ていると、体を不規則に動かされる。アクションを確率でファンブルさせるサポート技。
引踊: 不思議な踊り。踊りを見ているとMPが減少する。吸収効果は無い。
身交: 使用後から一定時間、攻撃に対する回避率、あるいは、攻撃の受け流し性能が上昇。
注舞: 挑発技。踊りを見ている対象へのヘイトを増加。長時間見ていると精神異常耐性も低下。
鎮静: 心を落ち着かせる歌。歌唱中、精神異常の回復を促進。
奪熱: 身体の熱を奪い、寒さを呼び起こす歌。歌唱中、冷気属性のダメージを与える。
寒震: 恐怖を呼び覚ます歌。歌唱中、恐怖付与。恐怖が重症化すると暴走する。
吸魔手: ドレインタッチ。触れたものに魔力を流し、生命力を吸収する。不死、ゴースト、物質などには効かない。
痛撃: 魔力の槍を突き刺す近接物理突属性攻撃。使用者の残HPの割合に応じて威力が上昇。HP75%で1倍、HP25%で3倍。
ブレイオもだが、「海の心」が生えていた。確かに、けっこう海で過ごしたからな。