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「ユー様、おはようございます。」
「おはよう、ナビー。今日は、ホムクを経由して、キースノーズ雪原の雪積もる広場に向かう。先導してくれ。」
「了解しました。まずは、キトル村 転移ゲートへ向かいます。こっちです。」
昨晩話をした通り、今日は雪遊びだ。
「N5 キースノーズ雪原」には、プレイヤーが雪遊びを楽しむためのプライベートエリアが複数個所存在している。今回行くのは、ホムク側から最も近くにある「雪積もる広場」だ。まとめウィキ情報だと、30cmくらい雪が積もっているだけの半径50メートルくらいの平地らしい。
俺は、転移ゲート前でリーネさんと合流、パーティを組んだ上で、ホムクへと転移した。今回はプライベートエリアに入るので、パーティを組む必要があるからだ。
「試練の門村 ホムク に入りました。」
「あ、ユーさん!それに、リーネさん!」
「久しぶりだな。」
「うん。今日は雪遊びへのお誘いありがとう。雪原、行ってみたんだけど、モンスターが厳しかったんだ。」
「そうか。今日行くのはただの広場だけど、安全な処の予定だ。アヤさんは、寒さ対策は大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。雪原の寒さは知っているから。それに、食べ物も持ってきているんだ。」
では、アヤもパーティに加えて、雪原へ向かうとしよう。
「キースノーズ雪原 雪積もる広場 へ向かいます。こっちです。」
俺は、ナビーの先導に従い、目的地へと進んでいった。
「アレ、ユーさん。北出口はこっちだよ?」
「あぁ、リーネさん。別の出口があってな。そっちから行くみたいだ。」
「そうなんだ。それも、異人たちの情報かな?」
「そうなるな。」
「N5 キースノーズ雪原 に入りました。」
ナビーの先導に従い進んで行くと、マップは雪原になったようだ。だが、地面は雪ではないし、周囲は壁に囲まれているように感じる。
「へぇ~。ここは抜け道って感じだね。でも、ホムクにこんな道あったっけかな?」
「俺も詳しくは知らないな。ただ、道は合っているらしい。ちなみに、既にキースノーズ雪原の中だ。」
「いやいや、それは無いと思うな。私には、壁に囲まれた通路にしか見えないし、雪なんて一欠片も無いよ。」
「雪積もる広場の入口に到着しました。石製の扉は閉まっています。こっちです。」
そんな話をしつつ歩いて行くと、程なくして目的地に着いた。扉で塞がっているようだ。
近づいて、扉に触れてみる。すると、横に押して開く扉があったので、押してみた。その結果…
「え?おぉぉ!雪だ!雪が見えるよ!」
「あ、本当だ!でも、寒い!」
先日、凍結抵抗を得るために訪れた時に感じた、凍てつくような空気が飛び込んできた。この先はきっと雪が積もっているのだろう。なお、俺は「冷感耐性薬」を使用済なので、身体が震えることは無かった。
「雪積もる広場 に入りました。プライベートモードに変更しますか?」
(プライベートにしてくれ。)
俺は、ここで装備を雪遊び用のものにパージして、「雪積もる広場」に踏み入った。「防雪手袋」や、「防風のマント」、「スパイクブーツ」を着用しただけだけどな。
地面は、雪だったが、ギューっとした音がしているので、ふんわりとした柔らかいものであるようだ。スパイクブーツのおかげで、しっかり踏み込むことができている。
雪を手でつまんでみる。やはり、柔らかいが、現実のそれと同じで、丸めたりすることも可能だった。
この状態で、「着火」を使ってみる。すると、雪が幾分か小さくなったが、火も消えてしまった。雪解け水で消えてしまったようだ。雪を溶かしつくすのが目的なら、「着火」よりも「纏炎」などを使うべきなのだろう。
「ユーさん。ここは、もしかして、ビーチと同じタイプかな?遠くは見えているのに、モンスターの気配が全くないんだよね。というか、走ってみたら、ここに戻ってきちゃった。」
「その通り。だからこそ、今回はパーティを組んだというのもある。一緒じゃないと入れないからな。」
「う~ん、これは凄いね。ちなみに、私一人で来たらどうなるのかな?」
「一人でも来れるぞ。ただし、同じ所に他の異人や住民が来ることはある。街で聞いた話だと、子供の遊び場になっているそうだ。」
「あぁ、なるほど。秘密の遊び場って感じもするけれど、安全なのは良いことだね。」
では、ブレイオとラフィも召喚しよう。おくたん… も、雪での動きとか知りたいので出しておくか。
「む、主人。これは、雪原か?」
「真っ白…」
「ここは、雪原の一角にある広場だ。モンスターが襲ってこないから安全だぞ。」
「ふむ。確かに、モンスターの気配が無い。」
「ユー。ここで、何をするの?」
「今日は、この広場で遊ぶぞ。」
「ん、アヤ殿か。」
「そうだ。ラフィ。この人はアヤさんな。時々、一緒に旅をしているんだ。」
「ラフィちゃんか~。私はアヤだよ。ユーさん、良い人だから助けてもらっているんだ。」
「ん。ユー、良い人。私も、楽しい。」
ということで、自己紹介タイムも終わったので、俺たちは雪遊びを始めたのだった。
え?ただ雪が積もっているだけの広場で何ができるんだ?できることはいっぱいあるぞ。
「ユー。雪、大きくなってる。」
「そうだ。転がすと、地面の雪がくっ付いて膨らんでいくんだ。ラフィも転がしてみるか?」
「ん。あ、重い。」
「これだけ大きくなるとな。よし、手伝うから、一緒に転がそう。」
「ん。」
まずは、雪玉転がしだ。雪だるまを作るための準備とも言える。
さすがに、今のラフィの筋力では大きいものは難しかったので、別途、小さめな雪玉を作って、そこから転がさせてみた。結果、ちゃんと転がすことができていた。
「よし。はじめ!」
「ほ~い、ブレイオちゃん、ラフィちゃん、アヤさん、行くよ!」
「わっ!雪玉、付いた!」
「ム、受けきれないか!」
「ほらほら、武器を使ってでも受け止めないとダメだよ!」
「あれ?当たらない!」
「アヤさんは、投擲は持ってないんだったね。そんなのじゃ当たらないよ~!」
「え、ヒャッ!」
続いて雪合戦だ。ただし、リーネさんが投げる雪玉を、3人が必至で受けるという転回になった。リーネさんが素早いし、「高速投擲」なんてヤバい技能まで持っているので、こういうことになるのは仕方ないことだ。
なお、俺は最初から参加していない。これは、俺に雪玉が当たると、投げた者に「真理の枷」が付いてしまうためだ。
「よし。なら、お姉さん、皆にハンディを与えちゃおう。」
「ん?」
そんなわいわいしている音声を聞きながら雪を掘ったり転がったりしていたら、何かが飛んできて、ぽふぽふと当たった。どうやらリーネさん、俺に雪玉を投げて、あえて「真理の枷」を負っているようだ。
おっと。「枷の報い」はOffにしておかねば。リーネさんがキュってなっちゃうからな。
「うん。これ重いね。でも、これくらいでいいかな?さぁ、行くよ!」
そして、再び雪合戦再開…
そうすると、ブレイオやラフィも、雪玉を弾くことはできるようになってきた。ただ、投げ返す余裕は無かったようだ。リーネさん、能力が4割ほど下がったが、それでも敏捷80くらいあるからな。
ただし、アヤはリーネさんに追いついて、ちゃんと雪玉を投げつけられるようになっていた。おかげで、リーネさんにとっても、ちゃんと避けないといけない程度には雪合戦の様相になったらしい。まぁそれでも、勝負になったか?というと微妙だったとのこと…
「ラフィ、乗ったか?」
「ん。」
「よし、走るぞ!」
続いて、ホムクで購入した「滑雪そり」搭乗。魔石も付けてあるので、重さを感じることなく、引いて走ることが可能だ。俺は、ナビーの先導に従って、外周を周るように走った。
「凄い!早い!滑る!楽しい!」
「それは良かった。座ったまま引っ張られるというのも新鮮だろう?」
「ん。背中に乗って走るのと、違う。」
「おぉ、ユーさん、それ面白そうだね。私にもやらせてよ?」
「お、良いぞ。ただ、いきなり縮地は止めてな。曲がった時に乗ってる物が吹っ飛ぶ。」
「あ、うん。そうだね。まずはゆっくりめに走るよ。」
「わ!わ!わ!速い!リーネ、速い!」
その後、ブレイオを乗せたり、俺が乗ったりなど、いろいろなパターンでそり滑り&運搬をした。
魔石を用意したおかげで、アヤやラフィでも、誰かが乗ったそりを引くことができていた。さすがに、走る速さはリーネさん一強だったけれど、引っ張ることも楽しかったようで何よりだ。
「よし。形はこんなものかな?」
「うん。キレイにできてるよ。」
「アヤさんのおかげで、凄い良い見た目だね。でも、すぐに崩れちゃうよ?」
「あぁ。だから、こいつを使うぞ。」
「なるほど。雪固水かぁ。でもそれ、防衛とかで使うアイテムじゃなかったっけ?」
「戦いとしての使い方はそうだな。だが、今回大事なのは、雪を固める効果だ」
雪を固めるアイテム「雪固水」。これを用いて、雪のベッドや、かまくらを作ってみた。雪だるまもあるぞ。なお、アヤによるデザイン付きだ。
「これがかまくらだな。しっかり固めてあるから、溶けないぞ。」
「雪の家。でも、温かい。不思議。」
かまくらの中で、果実酒を飲んだり、パンを食べたりした。地域によっては、おもちなどを焼いたりもするそうだが、特にこだわりなく、食べたい物を持ち込んだ結果だ。
「氷のベッド、やっぱり冷たいね。本で見たことあったから作ってみたんだけどな~。」
「冷気耐性付与と耐寒耐性薬を使えば、マシにはなるぞ。」
「あ、うん。それはわかるよ。でも、何か違う気がするんだよね。」
「まぁ、野暮ではあるな。」
「でも、ラフィちゃん、気持ちよさそう。」
「そうか。まぁラフィは耐性持ちだからな。」
「そっか。でも、かわいいな~。この子が生まれた召喚石って、私も手に入れられるかな?育ててみたくなったよ。」
「アヤさんが、 E5 を突破してきたら入手には協力できるぞ。」
「わかった。がんばるよ。」
その後、アヤには、20cmくらいにしたブレイオやラフィの氷像を作ってもらった。もちろん、雪固水で処理済だ。
「おぉ、これは凄い!アヤさん、よくこんな精密に描けるね。」
「うん。雪固水で固めているだけだから、時間が経つと溶けちゃうけど、かわいくできたと思う。」
「ぬ。我の姿は、こんなものだったのか?」
「これが、私…」
ブレイオとラフィも驚いていた。自分の姿なんて、確かめる機会が無いだろうからな。しかも、固めてあるから触れられるというのが凄い。
「ところで、なんでユーさんと私の氷像もあるのかな?というか、これ、私だよね?」
「うん。楽しかったから、全部作ってみたんだ。」
ついでに作った!みたいな乗りでやっちゃう辺り、さすがアヤだと思う。しかも、4人合わせも5分かかってないんだ。上級技能の力か… はたまた彼女の才能か…
なおアヤは、この広場の風景、作ったオブジェクト、遊んでいる俺たちの風景まで含め、魔法紙でも描きまくっていた。当然のように、「上級描画」等のレベルも上がったようだ。
それと、最初に出していたおくたんだが、動きはするが、万全ではなかった。滑るというか埋もれるというか、そんな感じであり、動きが遅くなっていたからだ。