11-14 N2 ラフィVS植物モンスター、そして進化

改定:

本文

キースノーズ雪原で遊んだ後は、ヒッツの温泉に移動した。 N5 の街まで行けば「雪の温泉宿」があるのだけれど、道中が長いので見送りとした。

なお、アヤも「ラフィちゃんと入ってみたいよ」とパーティ湯を希望してきたため、一緒に入ることになった。とはいえ、仕切りを使って半分に割れば済むことだし、プライベートビーチで修行に励んだ関係でもある。故に、わりと普通に進んだ。

「あ、ユーさん、こっちいたんだ。」

「あぁ、アヤさんか。炭酸ジュースはあるが、飲むか?」

「あ、うん。頂くよ。でも、お酒飲まないんだね。」

「露天風呂での炭酸ジュースのインパクトが凄くてな。あと、のぼせ対策でもある。」

露天風呂で炭酸ジュースを飲んでいたら、アヤがやってきた。

話を聞くと、アヤは、共同浴場でのぼせ&死に戻りを体験したらしい。居合わせた冒険者と談笑していて、そこで出されたお酒を飲んだら寝てしまったそうだ。なお、居合わせた全員が同様に死に戻りしたので、「やっちまった」で穏便に終わった、とのこと。

「本当。これ、美味しい。」

「雪遊びをしたのに、温泉に入ると冷たい物が欲しくなる不思議だな。」

「ここ、温かいよね。まるでサウナみたいだよ。」

「たぶん、それで合っているな。濡れたまま、こうして森林浴をしても冷えないようになっているんだろう。」

「あぁ、なるほど。言われてみたらそうだよね。風邪ひいちゃうし。」

その後は、近況を語り合った。

「アヤさんは、トマの塔の5層か。」

「うん。もうすぐ探索が終わるんだ。」

「ん?モンスターが四方から出てくる広い空間に探索する要素なんてあるのか?」

「いっぱいあるよ。いろいろな所に不思議な模様が描いてあるし、外も見えるんだよ。でも、モンスターに邪魔されて、描くのが難しいんだ。」

「あぁ、なるほど。そりゃ大変だな。ちなみに、いったん踏破して、強くなってから再訪する、という考えはあるのか?」

「え?なんで?」

「要は、戦うことと旅行を切り離して考えるものだな。例えば、最上階からはかなり特殊な風景が見られるんだが、初回だといきなりボス戦になるから、のんびり見て回るのが難しいみたいだぞ。」

「あぁ、そういうの、あるんだ。確かに、ボスに襲われながらだと描くの大変かも。でも、その時じゃないと描けないものもあるかもしれないな~。」

「それを言われると否定はできない。少なくとも、実態がどうなのかは俺にはわからないな。」

結局、どんなに大変であっても、「その時にしか描けない」ものがありそうなら、やるしかないようだ。

「おっと。アヤさんは、魔除けの葉は使わないのか?」

「ん?あぁ、たまに使うよ。でも、あそこ広いから、一か所だけ通れなくしてもダメだよね?」

「お金はかかるが、複数枚を一気に撒くという方法はあるな。円形に囲みたい時なんかに使われるぞ。」

「あぁ、なるほど。それは考えつかなかったよ。やってみようかな。」

「ちなみに、魔除けの葉が効果があるのは、第4マップまでだ。第5マップ以降も見据えて1000枚とか買うと悲しいことになるから注意な。」

「え?第5マップからは使えないの?」

「魔除けの葉、の格が足りなくて、モンスターへの効きが弱くなるそうだ。一つ上のグレードの葉っぱが必要になる。」

「あぁ、そういう感じか~。わかったよ。」

そんな話をしつつ、その日は解散とした。

「N2 キトル山に入りました。」

翌日… 俺たちはキトル山へ登ることにした。

今日の目標は、ラフィの進化と、植物系モンスターとの戦闘経験だ。この山には、「さまよう茸」と「トレント」が出るからな。

「キトル山か~、なつかしいな。」

「リーネさんは、あまりこっちには来ていなかったのか?」

「そうだよ。資格の都合で全方位を攻略したけれど、私の活動範囲は南や西が多かったんだ。」

「主人。近くにトレントがいるぞ。ただ、蛇や狼も近い。」

どうやら、さっそくトレントを発見したようだ。入り口の近くにいるなんて珍しいな。

「なるほどな。ラフィは、何か気配は感じるか?」

「ん。草原の狼みたいなのと、細くて長いの。あと、他と違う木。」

「変な木か。それがモンスターかもな。とりあえず、狼と蛇を釣って、トレントとは一対一にしよう。」

「ラフィちゃん。狼と蛇に向かって歌唱してみて。たぶん、それが早いよ。」

「ん。」

ということで戦闘開始…

ラフィの氷歌「奪熱」で「山狼」と「ポイズンスネーク」を攻撃。しばらくすると、山狼が襲ってきたので、それはリーネさんが処理。ポイズンスネークは爬虫類の定めか、身動きが取れなくなり、そのまま溶けていった。アイツ、冷気が特効だったから仕方ない。

そのまま、トレントの元へ接近することにした。

こちらは、ラフィ…

「木、でも、違う?」

「アレがモンスターだね。動かないけれど、こっちを襲う気はあるみたい。」

「ん。敵。倒す?」

「そうだね。もう少し近づいたら、魔法を飛ばしてくると思うよ。避けるか、弾くかしながら近づいて、ばっさり切っちゃってよ。」

「ん。」

目の前にいるのは、木のモンスターだ。この周りにはいくつも木が生えているけれど、他の木と違うことはすぐにわかった。

周りの木は、木の中で何かが循環しているだけで、外に向けて何かをするという気配が無い。ユーに見せてもらった、緑色の力だと思う。

だが、今見ている木は違う。確かに、他の木と同じように見えるのだけれど、地面や空から何かを引き寄せて集めている。むしろ、木の形をしている別の生き物のようだ。

私は、木に近づいた。すると、風の玉や、風の槍が飛んできた。私は、避けたり、剣で弾いたりした。リーネさんに教わったから、これくらいはできる。

さらに近づいていくと、緑色の弾も飛んできた。ユーが見せてくれたものだ。攻撃にも使えたんだ。

そして、木の近くまで来た。木は、また魔法で攻撃しようとしている。他のモンスターと同じだ。

「木は太いから、切り払ってみて、うまく切れないなら一度離れてね」と言われていた。なので、まずは「切払」を使用した。すると、モンスターはスパンと真っ二つになった。

「おぉ、ラフィちゃん、すごいすごい!一撃で真っ二つにできるなんて、さすがだね。」

リーネに褒めてもらえた。でも、たぶん剣が強いんだと思う。

私は、体術も教えてもらっている。でも、剣だと簡単に倒せる草原のモンスターが、パンチやキックだと倒せなかった。

「私、すごくない。この剣が、強い。」

「まぁ、そうだね。それじゃ、今度見つけたら、もう一本の剣や、体術で戦ってごらん。ユーさんは、木をパンチでへし折っているんだよ。」

言われて気づいた。2本の剣を使った訓練もしているので、私はもう一本の剣を持っている。その剣は軽いけれど、確かに草原のモンスターが倒せなかった。

ユーは、「この剣は、今のラフィが何とか持てる剣だな。今後、ラフィが強くなったら、それに見合う剣に変えていくぞ。折れちゃっても良いから、気楽に使ってくれ。」と言っていた。

その後、歩く茸とも戦った。動く草木ではあるけれど、他のモンスターと同じだった。

そこで、2本目の剣を使ったら、ちゃんと切れるけれど、真っ二つにはできなかった。でも、あともうちょっと強くなれば切れる気がした。

こうして、キトル山でのラフィの戦闘訓練は順調に進んでいった。そして…

「ラフィがレベル10になりました。」

「ラフィの進化が可能です。進化先を選択して下さい。」

剣舞の若魂:

種族: モンスター・ゴースト

説明: 剣を持つ少女の体を取る思念体。心身共に成長を続けている。

剣舞の氷幼魂:

種族: モンスター・ゴースト

説明: 思念によって、肉体に近い実態を得た霊体。その身に氷の力を祝している。剣を持つ幼女の姿を取っている。

剣の踊精:

種族: モンスター・妖精

説明: 妖精の眷属。魔力により人に似た実態を持ち、舞踊るように剣を振るう。

氷の踊精:

種族: モンスター・妖精

説明: 妖精の眷属。氷の魔力により人に似た実態を持ち、舞踊る。

順当ルートは「剣舞の若魂」だが、派生ルートがいくつかあるようだ。後者2つを選ぶと、種族が「ゴースト」から、「妖精」になるらしい。

これなら、「剣舞の若魂」か、「剣の踊精」が良いと思う。「剣舞の氷幼魂」の氷属性強化は魅力的だが、炎や熱属性に弱くなるのが大問題。いずれ行く予定の砂漠で戦えなくなるだろう。あそこは地面が砂だらけなのでブレイオにも厳しいからな。

「ラフィは、進化したい先はあるか?俺としては、今のまま強くなって欲しいから、 剣舞の若魂 を押すぞ。」

「ん?わからない。ユーに任せる。」

「聞き方を変えよう。ラフィは、これからどうしていきたい?」

「したいこと?」

「そうだ。思う通りでいい。聞かせてくれ。」

「ん。一緒に旅がしたい。楽しいから。そのために、強くなりたい。ユー、ブレイオ、リーネ、みんな、仲間。私も、仲間に入りたい。」

「なるほどな。もちろん、ラフィは仲間だぞ。だが、一緒に行くということは、見たことの無いモンスターにも出会うだろう。一緒に戦ってくれるか?」

「ん。私、剣、体、踊り、歌、魔法、使える。モンスター、やっつけられるかな?」

「できるさ。俺たちも一緒だからな。仲間とは助け合うものだ。」

「ん。がんばる。」

話の中で、ラフィの意思を聞けた。それに、方向性も示してくれた。特化ではなく、今の力を伸ばせる「剣舞の若魂」を選択しよう。

俺は、思考入力で進化先を決定した。すると、ブレイオの時と同様、何かエネルギーが噴き出すような音がしてきた。ラフィは、その力を取り込んでいったのだろう。

「ラフィは、剣舞の幼魂 から 剣舞の若魂 に進化しました。進化に伴い、能力値の再計算、並びに、技能が変化します。」