12-10 迷宮都市の観光

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時刻は14時…

薬草の仕分けの後、数名の浄化依頼に対応した。イベントコインは既に規定枚数を超えたためもらえなかったが、現金や貢献度、薬草を得ることができた。

今の俺は「祈祷術」のためにMPを注ぎ込んでいる。このため、「魔力草」がもらえる薬草の仕分依頼は、けっこう美味しかった。回復力こそポーションに劣るが、水気が無いため、たくさん食べても腹が膨れないからだ。

で、時間が微妙だったので、今日は街中を観光することにした。教えてもらった教会にも行ってみようと考えている。

「そこのユーさん、私を置いてどこへ行くのかな?」

「ん?リーネさんか。俺は、街中の散策だな。教会もあると聞いたし。」

「それじゃ、私も連れて行ってよ。パーティを組んでいるから、あまり離れられると困るんだよね。」

「そうか。ところで、ギルドの仕事は大丈夫なのか?」

「大丈夫。もともと自制できていた所だから、ちょっと教えたらすぐ身になったみたいだよ。」

どうやら、ついてくるらしい。街の外に出たり、ダンジョンに入ったりしなければ大丈夫かと思ったが…

「ちなみにリーネさんは、この街にどういった施設があるかは知っているか?」

「武具屋、雑貨屋、錬金術店、教会、あと浴場付の宿があるね。料理を扱っている露店もあったよ。」

「なるほど。時間もあるし、一通り行ってみるか。」

「ほ~い。じゃ、捕まって。ガイドは用意してあるから、私が案内するよ。」

というわけで、さっそく観光開始。今回はリーネさんに引っ張られ、雑踏を気にしながら歩いてみた。

地面はコンクリートのように整備された石の道だった。道幅は広く、少なくとも20メートルくらいあるだろう。このため、けっこうな人の足音や話し声は聞こえるが、とても開放的な空間に感じる。

なお、ブレイオとラフィについては、今は帰還させている。「プレイヤー溢れる街中なので様子を見よう」といった所だ。

「お、ユーさん。上級武道着があるよ。それと、剛体のベルトも。」

「マジか。それは交換だな。」

「あとは、ラフィちゃんがもうちょっと強くなったら… って感じかな?今の能力だと重さが厳しそう。」

最初に入ったのは武具屋だ。話を聞いた所、聖銀や魔銀、霊布や魔樹などの武具が多いようだ。魔力を含むものや、魔法への耐性の高い装備がポピュラーなのだろう。

上級武道着:

種別: 防具・軽装

説明: 霊布と魔銀糸から作成された拳士用の胴衣。鉄板をも超える頑丈さとしなやかさを有する。仮に傷ついても周囲の魔力を吸収して修復が行われる。体術の効果が上昇する。

性能: 物理防御32, 魔法防御22, 耐久値: 550/550, 体術補助(中), 耐久値自然回復(微)

品質: 4/10

価格: 60000p

剛体のベルト:

種別: 防具・アクセサリー

説明: 魔獣の革で作られたベルト。装着車の体力増幅を助ける力がある。

性能: 体力増幅(微), 剛体強化

品質: 4/10

価格: 50000p

さすが第6マップ装備だ。上の2点だけで11万もかかった。粘体の宮殿他で荒稼ぎしていなかったら足りなかっただろう。

「剛体のベルト」は、技能「剛体」所有時、「体力」が20%も増加する装備だ。この効果は最大HPの増幅にも反映されるため、まとめウィキでは、「前衛職で装備枠が空いていれば装備するべし」とされていた。

ラフィの装備についても見てもらったのだが、今のレベル帯と資金では難しいようだ。とりあえず、体が大きくなってサイズが合わなくなったものがあれば?という調整はしてもらった。

なお、リーネさんは、防具をいろいろ購入していたようだ。元の装備が第5マップ仕様だったため、換装することにしたのだろう。

普通に30万近く使っていたが、いわゆる退職金などを使っているんだと思う。元サブマスだが、俺が知る限り、彼女は贅沢をしているような印象が無い。故に、貯金はたっぷりあるのだろう。

「参拝者の方ですね。」

「そうだ。それで、可能なら像を触らせてもらいたい。見ることができなくてな。」

「あ、えぇと… それは、ちょっと困ります。」

「そう言われてもな。なら、こいつを教会へのお布施ということでどうだ?」

「え?あ、えっと…」

「神父さん、目がpになってるよ?そういう視線、ダメだと思う名。」

「あ!は はい。今回だけですからね!」

続いて、近かった教会に入った。ここでやることは、もちろん参拝だ。

だが、ここで像に触れることに反対されてしまった。そこで、10000pを積んでみたのだが、なんか押し通れることになった。いいのか?そんなんで… と思ったが、積んだ俺にそれを判断する資格は無いだろう。

この街の教会には、「始まりの街」と同様に、4神の像が全て奉納されているようだ。なので、もちろん、全ての像について触らせてもらった。

それでわかったことだが、「始まりの街」にあった像とは少しポーズなどが違うようだった。一つ一つ手作りしているから違うのかもしれない。俺としては、あえてポーズを変えているのなら、各地の像に触れる意味を感じられるので、良いことだと思う。

「ユーさん、なかなか有機あることするよね。まさか、お金を積むなんて思わなかったよ。」

「はっきり教会へのお布施と言ったぞ。」

「うん。お布施って言ってたね。神父さんがどう判断したのかは、ユーさんの知る所ではないと…」

「それにしても、目がpになるなんて表現、この世界にあったんだな。」

「あぁ、アレは比喩表現だからね。ユーさんの積んだお金にくぎ付けになっていたんだよ。」

「それはわかる。異人の言葉遊びの類だと思っていたんでな。」

何はともあれ、ちゃんと参拝することができた。これで、十全に祈祷術が効果を発揮してくれるといいな。できれば、十全を通り越して、強化されて欲しい所だが、そっちは俺が努力するしかないだろう。

「あ、経験の腕輪ってこれかな?」

「お、ちゃんと残っていたか。こいつは、ぜひ買いたいな。」

続いて訪れたのは雑貨屋だった。

販売されていたのは、テントや脱出の札など、いつも使っている類のアイテムだったが、掘り出し物があった。

それは、以前、トマの塔で検証を行なった時に借りたアイテム「経験の腕輪」だった。これがあれば、ラフィのレベル上げが加速するだろう。

なお、販売価格は10000pだった。まぁこのゲーム、レベル上限があるので、経験の腕輪があっても、極端に強くなれるわけじゃないからな。

「う~ん。この魚フライは、油控えめで食べやすいね。」

「衣はパリっとしているな。植物油だと思うが…」

「とりあえず、ここにいる間は食べ物には困らなさそうだね。」

「違いない。まぁ足りなくなったら、ソルットに転移して買い出しすれば良いだろう。」

錬金術店でポーション類の補充を済ませた後、俺たちは露店巡りをしていた。

売ってあるのは、ほとんどが料理だった。ここでしか食べられない特別な料理は無かったが、独自の味付けや工夫がされていたので、飽きは感じなかった。

「ハイハーイ!ホムク名物、カイロパンだよ~!ソルット名物の塩焼きパンもあるよ~!」

どうやら、各地の名物?迷物?料理を扱っているお店もあるようだ。まさかの「カイロパン」登場でびっくりした。ここ、寒くないのに、なんでカイロパンをチョイスしたのかが謎だ。

そこまで周って、一通りの観光はできたと思う。ちょうど夕方にもなっていたので、一度ギルドへ移動した所、薬草の仕分と浄化の依頼が復活していたのでこなした。

なお、滅び草の件だが、幻術を用いて紛れ込んでいたモンスターによるものだった。天井に張り付き、姿を隠して、斥候兼嫌がらせをしていたようだ。

おかげで、夕方に仕分けた薬草からは、滅び草は種も含めて1個も出てこなかった。代わりに、呪われた薬草が1個出てきたけれど、これ自体はダンジョンのある街だとよくある話だ。職員も、そんな感じのことを言っていた。

「ユー、何してるの?」

「散策だな。今終わった所だが。」

最後に、宿でチェックイン。リーネさんがパーティから外せないので、俺も宿を取った。寝室に入ったらログアウトする予定である。

で、中には「パーティ浴場」があったので現在利用中である。温泉ではないらしいが、パーティメンバーでの入浴が可能だった。なので、今はブレイオとラフィも召喚している。

歩いてみた結果、浴室の中の広さは8メートルくらいあり、中央部に5メートルくらいのお湯の貯まった池がある構造であることがわかった。それと、左右の壁沿いに洗い場もあることがわかった。

そして奥の壁には、木に登ったぐらいの高さから見下ろした森が映っているらしい。しかも、ゆっくりと風景が動いているそうだ。

「ユーさん。この風景って何だろう?って聞いてもわからないよね。」

「森らしい、ということしか聞いてないからな。まぁ、ここが一種のダンジョンであることは確かなんだろう。」

「う~ん、それは納得だね。でも、どうして風景が動いているのかな?」

「それはわからないな。ただ、見ていて楽しいようにできている、というのはありそうだぞ。」

「ん?どういうことかな?って、え?風景が変わった!」

「わ!海だ!波が動いてる!」

「主人。モンスターの気配はないが、大丈夫なのか?」

「どうやら、俺が風景を選べるようだ。危険は無いと思う。」

実は、この空間に入った時に、「バックグラウンドムービィの設定が可能です。現在は Forest 2D Day です。」という通知があった。最初は気にしていなかったが、リーネさんの話を聞いて合点がいった。どうやら、壁に移す映像を切り替えて楽しめるようなのだ。

なお、選択できる映像は以下の5種類だった。そして、 1D(静止画), 2D(動画) と、 Day(昼), Night(夜) の切り替えが可能なようだ。

  • Forest: 森の中
  • Beach: 浜辺
  • Snowy: 雪が降っている広場
  • Desert: 砂漠
  • Default: 普通の浴室

一通り風景を切り替えた結果、ブレイオとラフィからの希望で「Desert 2D Day」になった。砂漠は W5 のマップなので、まだ行ってない影響だろう。

、課金することで風景の追加や、特殊効果の追加ができるようだった。拝啓の追加以外にも、 3D(全方向が変化), 音響効果, 触覚再現, 環境効果(現地滞在時と同じ環境効果が発生) などの項目もあった。最後の効果って、「お風呂の中で心や耐性が育つ」ということだろうか?

それと、まとめウィキ情報によると、この機能は、 W8 の村で既に確認されていた。なので、ゲーム本編でも同じことはちゃんとできるようだ。課金した結果が共有なのかまでは知らないけれど…