12-17 迷宮都市悪魔戦、魔弾鋼の使い道

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本文

戦闘開始から2時間…

すっかり、こっちに来るモンスターがいなくなった。空のモンスターも来なくなったようなので、ちゃんと対空攻撃のできるプレイヤーが揃ったか、さっきので種切れになったと思われる。

ひとまず、リーネさんに草原の様子を見に行ってもらっている。

「あ!街の方、なんか黒い雲みたいなの降ってきてる!」

「黒い雲が降ってくる?」

「うん。なんか、だんだん大きくなりながら降ってきているよ。どれくらい大きくなるのかな?」

街の方でも動きがあったようだ。確か、今日の朝7時で、稼ぎ用のダンジョンが消えたはずだ。それと関係があるのだろうか?

「アヤは、見に行くか?こっちは、今の様子なら問題無さそうだからな。」

「あぁ、大丈夫だよ。ここからもよく見えているから。あ!魔法陣から光が出てる!」

「魔法陣の光というのは、例の、闇を取り払う魔法陣でいいか?」

「たぶん。今光が出ている所、一緒に治した所にあったんだ。」

「つまり、大悪魔アンデールが街中に出てきた… のかもしれないか。あるいは、空から降りてきているのかもな。」

「う~ん、どうだろう?今は雲しか見えないよ。」

とりあえず、外の様子をリョーマへ報告しつつ、情報を求めてみよう。それどころじゃないかもしれないけれど。

「おぉ!なんか、都市が凄いことになってるね。」

「あ、リーネさん!草原の方、どうでした?」

「予想通り、モンスターの方は落ち着いてきたよ。今は、あちこちで掃討中。それと、鎮静の歌はまだ続けて欲しいってさ。」

「そうか。なら仕方ない。現状維持だな。」

「そうだね。とりあえず、近場のモンスターを狩ってくるよ。ブレイオちゃんも行く?私の見立てでは、土魔法の使い手はいなかったよ。」

「主人。行ってきても良いだろうか?」

「そうだな。アヤさん、ラフィを守ってもらえるか?」

「ん?いいよ。ここから街を見ていたいから。」

鎮静の歌は、予想以上に活躍しているようだ。なので、俺はラフィと待機。代わりに、ブレイオとリーネさんを解き放ち、相当してもらうことにした。

そうして待っていると、リョーマから返信があった。要約すると、以下の通りだった。

  1. 現在、都市内に「アンデールの僕兵」というモンスターが複数出現しており、リョーマ自身も含めて戦闘中。
  2. 僕兵たちの出現場所から、その狙いは、魔法陣や司令部の無力化と考えられる。
  3. 上空にある雲の内側に巨大な悪魔が見えており、ダンジョンのあった広場に向かってゆっくりと降下中。まだ鑑定はできていないが、アンデール本体の可能性あり。
  4. 挟撃を割けるために、草原、及び山に入ってきたモンスターは殲滅して欲しい。

と、横から何かぽふってなった。流れ弾でも飛んできたのだろうか?

「見つけたぞ!貴様の眷属だったか!」

「え?いきなり何か出てきた!」

「我はアンデール様の僕兵。魔歌を操る者を従えるとは、人の子にして驚嘆に値する!だが、ここで消えてもらう!」

うん。どうやら、昨日戦ったのとは違うアンデールの僕兵が、こっちに来たようだ。そして、ターゲットはほぼ俺であるようだ。まぁラフィを召喚している以上、俺をどうにかしないと復活できちゃうしな。

あと、アヤの話だと、この近くに潜伏していたか、空をフラフラしていて、ようやく見つけた!といった所だろう。

で、戦いが始まったのだが…

「グッ!な なんだ!貴様!なぜ通らない!」

戦闘開始直後、あっちこっちから何かが飛んできてぽふぽふされた。魔法の弾幕に晒されたのだろうか?と思っている間に、ヤツに最初の「枷の報い」が発動した。

で、捕まえて、連気拳、超聖拳と繋げた所だ。なお、アヤから、「戦いの印」と「熱縛」をかけてもらっている。

アンデールの僕兵:

種別: モンスター、悪魔

レベル: 35

HP: 37%

状態: 敵対, 真理の枷+10

説明: かつて、この地を闇に沈めんとした大悪魔アンデールの僕兵。主の再臨に向けて暗躍を続けてきた。

識別:

体力: 105

魔力: 140

筋力: 87

防御: 52

精神: 87

知性: 52

敏捷: 70

器用: 70

属性: 闇

弱点: 光

野生のモンスターより強いのは確かだが、いわゆる下っ端なのだろう。昨日戦った「アンデールの僕」より弱かった。あと、裁定者に対する認識が無いようだった。

「ククク!貴様、やるではないか!だが、これは破れまい!魔力の逆壁!」

と、奥の手が出てきた。確か、第8か第9マップ辺りの要注意モンスターが使っていたヤツだ。魔力のある攻撃を90%くらいシャットアウトする上に、吸収した魔力を打ち出せるんだったか。

対策は、魔力を用いない武器を用いた物理攻撃だ。それで言うと、今装備している「シザーグローブ+1」はNGだ。魔力を含むダンジョン産武器だからな。

あぁ、なるほど。ここで「魔弾鋼」を使えば良いのか。俺は、トマで購入して、特効目当てに残していた武器「魔弾鋼のナックル」にパージした。これなら、あの壁は対処可能だ。

とはいえ、壁があると何かの事故があっても困るので、きっちり壊しておこう。というわけで、瓦割からの連拳、最後にアッパーだ!

「ぬっ!ぬぉぉぉぉぉ!」

壁破壊適性の高い「瓦割」の一発で、「魔力の逆壁」はパキーンと割れてしまった。そして、壁を張った耐性で固まっていた僕兵を、連拳でボッコボコにし、最後に殴り上げた。

「アンデールの僕兵を倒した。経験値630を獲得しました。」

あっさり倒せた。別に「魔弾鋼のナックル」は悪魔への特効は持っていなかったと思うので、こいつが弱かった、という認識で良いだろう。経験値も、アヤと分けたにしては低い。

「わぁ、ユーさんさすが!よくわからないけど、とにかく凄いよ!」

「わからないけど凄いって反応に困るな。まぁいいか。アヤさんは大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ルナーがちょっと大変そうだけど。」

「あぁ。回復できるぞ。出しておいてくれ。」

どうやら、あの弾幕に巻き込まれたのか、アヤのゴーレムであるルナーが危険息まで削られたようだ。なので、武器を戻した上で、「癒の古祈」で回復させた。

「ありがとう。ゴーレムのHPって、魔法で回復できるんだ!」

「いや、ちょっと特殊な魔法だな。一般的な治療魔法だと治せない。」

「あぁ、そういうのあるんだ。あの、インスタントキットだっけ?」

「普通はそうだな。振りかけるだけで回復するから、持っておくと良いぞ。」

「うん。お店で探してみるよ。」

ゴーレムの回復手段は、ラフィなどとは違う意味で特殊だ。

「生物」ではないため、「治療」系統の魔法は効かず、加えて「飲食」も不可能だ。ただし、「薬品」はOKなので、ポーションを振りかけて回復させることが可能だ。

これに対し、ラフィのような系統であるゴースト、アンデッド系は、「治療」に当たる回復手段、及び、ポーションを含む「薬品」カテゴリーがNGだ。ただし、飲食は可能なので、「魔力草」を飲んでmPを回復することは可能だったりする。

「ほ~い、ユーさん、アヤさん、足は付いてるかな?あぁ、でも、ラフィちゃんにも足が付いていたか。」

「あ、お帰りなさい。」

「主人。戻った。」

「戻ってきたということは、掃討も終わって撤収が始まった… という理解で良いのか?」

「さすがユーさん。もう、ラフィちゃんの歌も止めて大丈夫だよ。」

アンデールの僕兵戦からさらに1時間ほど経過した所で、ブレイオとリーネさんが帰ってきた。そして、もう掃討は終わったようだ。

「こっちにも、一対、アンデールの僕兵が襲ってきたが、撃退した所だ。強くは無かったが、対処を間違えるとやられる難敵ではあったな。」

「あぁ、そっちにも来たか。こっちでも近くの人と共闘で一対倒してきた所だよ。正確な数を数えたわけではないけれど、あと何対か抗戦したみたいだね。」

どうやら、あちこちにアンデールの僕兵が現れたようだ。「強くはないが放置はできない難敵」があちこちに現れた…

そこまで考えた所で、声が聞こえてきた。その声は、トマやホムクなどで聞いたのと同じ、耳に直接響くような声だ。

我は、この地に再臨せし者、アンデール!

深き枷から解き放たれ、今ここに舞い戻った。

む。懐かしいぞ、それは古の呪縛か!

だが、やはり人は愚かだ。今の陣は不完全。この程度では足りぬ!

さぁ、人どもよ。抗え!我を楽しませよ!

この闇を破り、我に届き得る刃があるならな!

「超大型ボス 大悪魔アンデール が出現しました。レイドクエストへと移行します。」

「条件を満たしたため、全参加者に対し、一時効果 古の守り4 が付与されます。」

「条件を満たしたため、全参加者に対し、一時効果 途切れぬ物資 が付与されます。」

「条件を満たしたため、全参加者に対し、一時効果 途切れぬ支援 が付与されます。」

「条件を満たしたため、パーティメンバーに対し、一時効果 草木の寵愛 が付与されます。」

「条件を満たしたため、パーティメンバーに対し、一時効果 呪い無効 が付与されます。」

「条件を満たしたため、技能 真理 が成長しました。」

超大型ボス 大悪魔アンデール:

種別: レイドクエスト

勝利条件: 迷宮都市に出現したボス「大悪魔アンデール」の討伐

敗北条件: 戦闘フィールドからの人類の死滅、または、一定数の人類の死亡、または、指定時間の経過。

中位: 戦闘フィールド内で死亡した人類は、5分後に戦闘フィールド外に復活する。デスペナルティとして、復帰後に恐怖状態を受ける。

ついに、大悪魔アンデールが出現し、レイド戦に突入した。

重要な点としては、死んでも比較的容易に復帰はできるが、死亡回数も敗北条件になっていることだ。また制限時間もあるので、プレイヤーには、死亡しないように中位しながら、アンデールのHPを削っていくことが求められる。

それはそうと、なんかヤバそうないろいろも付いてきた。

古の守り4:

説明: イベント限定効果。古の魔法陣4つの復元に成功した。特殊フィールドの影響を削減。

識別: 視界制限緩和(小), 闇属性スリップダメージ軽減(中), 精神異常削減(小), 光属性弱体の緩和(中)

途切れぬ物資:

説明: イベント限定効果。物資の供給を充実させることに成功した。アイテムの耐久度が自然回復する。「迷宮都市」で購入可能なポーション類、及び投擲アイテムに限り、使用から一定時間系か後に補充される。

途切れぬ支援:

説明: イベント限定効果。多くの現地住民、及び冒険者を助け、導いた。筋力、防御、精神、知性、敏捷、器用が上昇(小)。

草木の寵愛:

説明: イベント限定効果。多くの草木に触れ、使いこなした。薬草系統アイテムの効果増幅(極大)。木属性魔法の効果増幅(極大)。木属性耐性上昇(極大)。

呪い無効:

説明: イベント限定効果。数多くの呪いに触れ、浄化した。あらゆる呪いを無効にする。

なかなかの大盤振る舞いだな。まぁ過去のイベントのレイドボスの数値を読んだ限り、「イベントをしっかりこなさないと全く勝負にならない」というバランスなのだろう。「開始直後に耐性貫通付の必中全体石化攻撃が降り注いだ」という伝説もあったらしいからな。

そして、ついでみたいな乗りで「真理」まで成長していた。「裁定」の技能をたくさん使った影響だと思うが、一時効果じゃなくて永続効果となっている。いいのだろうか?