13-03 野生の検証班が現れた!

改定:

本文

「S4 迷宮の浮島 ナザ島 に入りました。」

さっそく、俺たちはナザ島にやってきた。そして、そのまま冒険者ギルドへと向かおうとしたのだが…

「あ、ユーさんは待っていてよ。私とアヤさんで行ってくるから。」

「ん?かまわないが、急にどうした?」

「個人的な用事。あと、図書室も時間かかりそうだし。」

「そうか。なら、滝に行っているぞ。」

どうやら、俺は自由にしていて良いらしい。

まぁ、カイムさんに召喚石を見てもらって、その後は図書室で情報収集するだけだからな。俺も、その辺りで離れていようと考えていたので、その予定が少し早くなっただけとも言える。

「ナビー。滝に先導してくれ。」

「了解しました。ナザ島 滝エリアへ向かいます。こっちです。」

ナビーの先導に従い、滝エリアへ向かった。なお、トマの塔攻略中に、滝行を数日に分けて実施していたので、ナビーがちゃんと先導できることは確認できている。

程なくして、聞き慣れた滝の音が聞こえてきた。そこで、ブレイオとラフィを召喚した。

「ん?滝?」

「ここは、ナザ島か。」

「そうだ。アヤさんとリーネさんはギルドに行っているので、俺たちは待機だな。というわけで、とりあえず滝にやってきた所だ。」

「滝修行か。モンスターの気配も無い、良い場所か。」

「ユー。私も、やっていい?」

「かまわないぞ。ちょっと待ってな。壁を作ったら着替えて挑もう。」

俺は、「盛り土用砂入り袋」を出して地面に砂を転回した後、土壁の魔法を発動。こうすると、地面から壁を生やすよりも素早く壁を作ることができる。

その後、水着に着替えてから、3人で滝へと突入した。

(ラフィ。滝、痛いか?)

(平気。もう、痛くも重くもない。でも、しゃべらないの?)

(水の音、うるさい。)

(ん。ユー。念話、まだできない?)

(今は、伝信。少しずつ、育てる。)

(主人。だが、滝修行は集中しなければならないのだろう?)

(そう。もう、話、止める。)

以前、キトル山での滝行を試した時、ラフィは水に耐えられなかった。体力や筋力が足りなかったからだ。

しかし、現在のラフィなら、しっかり耐えられるようだ。これなら、続けていけば「滝の心」も生えそうだ。

そのまましばらく滝行をしていると、フレンドチャットが届いた。相手は、検証班のカナミーだった。

「滝修行の所失礼します。イベントについて、情報交換を希望します。可能なら、滝から出てきてもらえますか?」

ん?滝修行をするなんて彼女に伝えた覚えは無い。というか、イベント中、及びその後は、特に連絡は取っていなかったはずだ。ということは…

「おぉ!ユーさんよ。通知の一つで滝から出てくるなんて、集中力が足りないぞ?」

「出てきてくれと言ったのはカナミーさんだけどな。ところで、どうやって俺を見つけたんだ?」

「それは本当に偶然だよ。今ナザ島のダンジョンで検証をしていたんだ。で、出てきたらユーさんが滝に向かって行くの発見したからさ、きっと運命があたしの味方になったに違いないよ!」

つまり、「野生の検証班カナミーが現れた!」と言った所か。

「というわけでユーさん。この運命的な出会いは大事だから、イベントでの話を聞かせてよ?」

「運命って、ずいぶんオーバーな。だが、なぜだ?」

「ユーさん、知らないの?いや、知らないか。イベントPVにちょっと出てたんだよ。」

「俺がか?」

「そう。今、まとめを作っていて、PVに出た人にいろいろ聞いて回っているんだよ。」

どうやら、昨日終了したイベントについて、もうPVが作られているらしい。そのPVには、いろいろなシーンが掲載されているのだが、俺もちょっと映っているそうだ。しかも、アンデールの僕とのスパシーンとのこと。

このPVに選出される基準は、イベント内で珍しいイベントを起こしたとか、貢献度の高いプレイヤーであるらしい。なお、蹂躙されたサーバーも掲載されており、そちらはアンデールやその僕たちの活躍が際立っていたそうだ。

「なるほどな。まぁ、俺も聞きたいことがあったから話すのはかまわないぞ。」

「ありがとう!お礼と言ってはアレだけど、最近判明したこの島のエクストラの情報教えちゃうよ。まぁ、ユーさんだと難しいかもしれないけれど。」

その後、俺は以下の情報を提供し、カナミーの見解を求めた。

  1. NPCなはずのリーネさんがパーティ固定状態でついてきた。彼女に称号「異界の門の到達者」が生えていた影響かもしれない。
  2. 7日目から、薬草の山に「滅び草の種」が紛れ込んでおり、それを仕込んだモンスターがギルド内で発見、討伐された。モンスターは幻術で隠れていた。
  3. アンデールの僕とのソロ戦闘があり、それに勝利したことで、限定称号をいくつか得た。また、迷宮都市の隠し小部屋に移動して、魔法陣復元のヒントなどを入手した。
  4. 草原に、「鎮静」の魔歌を放って、大集団を大人しくさせた。
  5. 超巨大ボス前に襲ってきたアンデールの僕が、「魔力の逆壁」を使用。これを粉砕するために、魔弾鋼装備が役立った。
  6. 超巨大ボス アンデール戦に向けて獲得したイベント限定技能等による影響や、大悪魔アンデールのステータス
  7. アインステーフ復興について
  8. 「中位裁定」、ラフィの進化、及び、「古式祈祷術」について

「まとめると以上だな。」

「あぁ、なるほど~。異界の門の到達者か。持っている住民は知っているけれど、そんな効果があるとは思ってなかったね。」

「あの称号、まとめウィキには載っていたみたいだな。後から確認した。」

「あたしもアインステーフに行けるんだけど、今でも住民は連れて行けないんだ。該当する人を探して検証してみないとだね。」

「連れて行くのはいいが、好感度とか気を付けたがいいぞ。」

「あぁ、わかってるわかってる。というか、いくら検証でも、住民と敵対するようなことはあたしの専門外だからね。」

少なくともカナミーは、称号持ちNPCを拉致して… みたいなことはしないようだ。

「それと、滅び草の件は、あたしもびっくりだったよ。常時依頼にあんな要素を仕込んでいたんだもん。ちなみに、他の常時依頼にも悪魔が関わっていたみたいだね。」

「やはりか。まとめは少し開いたが、アンデールの僕たちは、なかなか賢く立ち回っていたようだな。」

「そうだね。ちなみに復興したアインステーフの周辺は、通常マップみたいにランダムダンジョンが沸くみたいだよ。イベント参加時のレベル帯に準じた出現テーブルになっていて、普通の踏破報酬も出るんだって。もちろん、4箇所全てが別マップ扱いだから、報酬も4つ狙えるよ。」

「それは凄いな。だが、俺の場合第5~第6マップ相当になるのか。となると、もしかしてプレデターも出るか?」

「レベル30代だったよね?それなら、ばっちり出るよ。レベル55が襲ってくるね。」

どうやら、通常のランダムダンジョンと同じなようだ。ある意味では、良い素材を狙えるかもしれない。

ただ、第6マップのダンジョンから出現する超高レベルのモンスター「プレデター」の範囲にも重なっているようだ。相性が良ければ正々堂々からの真理抵抗が通るが、逆に相性が悪いと、あっさり蹴り散らされるだろう。

その後も、情報交換を進めた。そして、ナザ島のエクストラボスの情報を教えてもらった後、カナミーは去っていった。さっそく、称号持ちNPCを捕まえて検証をするのだそうだ。

一方、こちらはアヤ。

「ユーさん、お待たせ~。」

「あぁ、ユーさん聞こえてないみたい。滝の中だし。」

図書室での情報収集を終えたので、滝へやってきた。ユーさんは、ブレイオたちと滝に撃たれてくると言っていたからだ。

すると、そこでは、ユーさん、ブレイオちゃん、ラフィちゃんが3人揃って滝の中にいた。みんな、じっと集中しているようだ。

「アヤさん。ご飯行く?ユーさんたちなら、ほっといても良さそうだし。」

「えっと… そうかも。修行の邪魔は、しない方がいいよね?」

「滝の心があるユーさんだけならともかく、ブレイオちゃんやラフィちゃんの邪魔はしない方がいいね。」

その後、ユーさんたちが滝から出てきたのは、夜8時を過ぎた頃だった。