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「ダンジョン ナザ島の地下迷宮 に入りました。現在1層です。」
翌日、俺たちはナザ島の地下迷宮にやってきた。
目的の一つは、古式召喚のために奉納する素材を集めることだ。そしてもう一つは、昨日カナミーに教えてもらった「地下迷宮のエクストラボス」に挑むことだ。
「地下迷宮の秘密と聖魚?」
「検証班のフレンドがいてな、その人に教えてもらったんだ。」
「エクストラ… というと、トマの塔にいた雷霊鬼みたいなのだよね?この島の秘密みたいなのがまた一つわかった、ということかな?」
「出会う方法がわかった、という所だ。それが何者なのか等については、実際に会って確かめてくれと言われた。ということで、良ければ、協力してもらえるだろうか?」
「うん。いいよ。奉納するアイテム探しにもなるし、もう一度、最奥の天使を見ておきたいとも思っていたんだ。」
「私もかまわないよ。ラフィちゃんの氷銀の剣クラスの貴重品が得られるかもしれないし。あぁ、でも、カイムも誘ったがいいかな?」
昨晩、上の話を持ち掛けた結果、アヤもリーネさんも協力してくれることになった。また、今回はカイムさんも同行している。
「ユー。確認だが、この迷宮の光源を全て覆うことが必要なのかい?」
「そうらしい。ちなみに、松明など自分で持ってきた光源はOKだそうだ。」
カナミーから聞いたエクストラ出現条件… それは、このダンジョン内に所々存在する光源を何らかの手段で全て塞いでしまうことだった。
「ユーさんだと難しいかもしれない」というのは、納得である。光源を見つけること自体が難しいし、仮に見つけても、埋めるための手段も工夫がいるようなのだ。
「隙間からの光だね。これ、近くの岩で塞ぐのがいいんじゃないかな?」
「ふむ。召喚獣で動かそう。」
「あ、ユーさん、ここにいてね。モンスターが突っ込んできたら処理しちゃってよ。」
要は、周囲にある物や、技能を駆使してパズルを解くような作業が必要らしいのだ。しかし、そうやって光源を塞ぐと…
「ゲコ、ゲコ、ゲコゲコ!」
「おっと。お前、さっきまでここにいなかっただろう!」
「ん。上から落ちて来た。」
まるでトラップのように、まとまった数のモンスターが湧いてくるのだ。なので、露払いが必要となっている。
当然、こういう仕掛けについては、過去にも検証されたことがあった。しかし、ランダムダンジョンで似たようなトラップがあったり、一部の光源の塞ぎ方がわからなかったりしたため、検証が行き詰まっていたそうだ。
「光る床、あったよ。」
「よし。ナザ島産の土だ。これで覆ってくれ。魔法で固める。」
「これ、あの時の土だよね?袋に見覚えがあるんだけど!」
「今回は地面に撒いて固めるだけだぞ。だが、まさかここでも使えるとは思わなかったな。やはり砂は優秀ということか。」
光る床を、地上から持ち込んだ土で埋めなければならなかったり…
「う~ん、描けたよ。ここ、キレイなんだけど、全部倒さないといけないんだよね?」
「ここはラフィの出番だな。吹雪の歌で、胞子も残さず消し去ってくれ。」
「ん。でも、ここ、歌うとよく響く。モンスターいっぱい来る?」
「それは俺たちで対処する。」
「あぁ、ラフィちゃんの魔歌か~。まぁ、雑草畑よりは増しかな?って、うわぁ~!」
コンファーモスの群生地を、種も胞子も残さずに死滅させる必要があったり…
「この光、変だよ。真下しか光ってない。」
「となると、幻無効か。付与してみるな。」
「あ、見えた。鏡だ!鑑定すればいいのかな?」
「あ!アヤさんちょっと待った!」
「え?ひゃ!」
「知識の呪いか!」
「あぁ、即死しちゃったか。とりあえず復活の古祈っと。」
「ん?あ!えっと… あれ?今の、何だったんだろう?」
「アヤちゃん、わからなかったか~。たぶん、鏡に知識の呪いが付いていたんだよ。鑑定した者に激痛を与えてくる困った呪いで、アヤちゃん、それで死んでしまったんだと思う。」
「えぇ?そんなのあるんだ。あ!鏡の鑑定結果は… あれ?出てない。どうしよう?」
「そういうことなら、鑑定は俺がしよう。知識の呪いについては、確認したいこともあったからちょうど良い。」
「ユーさんなら、呪われても死ななさそうだね。あぁ、そっちじゃなくてこっちこっち。」
迷宮の鏡:
種別: オブジェクト
説明: 迷宮内に存在する鏡。光を屈折させて、冒険者を惑わす。また安易に詳細を知ろうとした者を、この世の理から断とうとする。この鏡を排除するには、魔術による隔離が望ましい。
注意: このオブジェクトを鑑定した時、「知識の呪い」により、鑑定者はダメージを受ける。また、このダメージによって鑑定者が死亡した場合、鑑定は中断される。
ヤバい鏡の排除が必要だったりした。
なお、初めて「知識の呪い」の付与された物体に相対したわけだが、結局、俺には何も影響が無かった。「真理」にある「鑑定時干渉の無効化」には、やはり「知識の呪い」も含まれていたようだ。
そんな苦難はあったが、ダンジョン自体の攻略は順調だった。レベル差10以上も離れているし、装備が第6マップ相当なのだから当然である。
なお、ナザ島の地下迷宮の下層では、光属性のモンスターが増えた。と言っても、「プチライトフェアリー」や、「ライトウィスプ」など、過去に別の場所で戦ったことのあるモンスターだから、特に触れるべき話題は無かった。
そうそう。今回、俺が召喚しているのはラフィだけだ。なぜなら、カイムさんもパーティに参加しているため、召喚枠を節約する必要があったからだ。
そして翌日の昼過ぎ… 俺たちは、ダンジョン内の光源を全て消した上で、最下層の直前まで到着した。あと消していない光源は、最下層だけだ。カナミーの話では、この状態で最下層に入るとイベントが発生して、エクストラ化するらしい。
「ナザ島の地下迷宮 最下層に入りました。」
「迷宮に挑む者よ。名を名乗れ。」
そして突入したわけだが、3度目になる、耳に直接響くような声が聞こえてきた。どうやら、通常のイベントはあるらしい。
「俺はユーだ。」
「ユー。この迷宮は、未知に挑む好奇心、そして、この島の先へ向かう資格を試す場所。あなたもそれを望むか?」
「望むぞ。」
「宜しい。では、その力を今、我に示しなさい。」
その後、ドシーンという音がした。この音は、動画では聞いたことが無かった。
確か、さっきの会話の後、フィールドボスである「地に眠る光天使ナザ」が現れるはずだ。
「条件を満たしたため、フィールドが変化します!」
「え?何!魚?」
「聖魚… だと。」
「あっ!水が降ってきたよ!」
「ウォータープロテクト!」
「光属性耐性付与!真理の守り!」
さて。今回のエクストラボスだが、俺は以下の通り情報を得ている。
聖魚ルトー:
種別: モンスター、エクストラボス、魚
レベル: 30
HP: 100% 24000/24000
説明: 海中と迷宮とを結ぶ光が実体を帯びた姿にして化身。その姿は、海中に光を届け、地上に恵みをもたらす聖魚として伝承されている。
真理: ルトーは光の自愛を受け、聖魚として名を与えられた。しかし、その力は、海全体を光で覆うほど強大であり、危険でもあったため、天の意思によって導かれた。その後、寿命を全うした聖魚が眠りに着いた地は、その地の記憶と結合し光の迷宮を築き挙げた。
識別:
体力: 75
魔力: 150
筋力: 15
防御: 15
精神: 150
知性: 30
敏捷: 90
器用: 60
属性: 光, 水
弱点: 月, 木
耐性: 光, 闇
例の真理持ちプレイヤーが同伴して鑑定したらしい。どうやら、この魚が、迷宮、さらにはナザ島の生まれる原因になっているようなのだ。
とりあえず俺も触れてみたいと思う所だが、難しいかもしれない。というのは、今回の戦闘フィールドが「水中」だからだ。
一応、俺は「水守」が使えるので、この水がどんな水であろうと、活動することはできる。「水中活動」技能もあるし、筋力的にも、泳ぐことに問題は無い。
ただ、水中という立体的な空間のどこにルトーがいるのかがわからないし、ルトーはちゃんと泳いで移動もするらしい。ルトーのサイズや移動速度はわからないが、ステータスからして、少なくとも向こうから体当たりや尻尾などの接触攻撃は仕掛けてくれないだろう。
「行くよ!ユーさんをルトーに投擲!」
などと考えていたら、後ろから俺を掴んでいたリーネさんに投擲された。そして、そのままぼふっと何かに引っかかって止まった。触鑑定したら、件の聖魚ルトーだった。
うん、これは、掴んだまま溢気法発動、で、ボッコボコにしろ!ということだろう。この敏捷値だと、掴んでいる手を離したら、二度と捕まえられないと思う。リーネさんがまた投げてくれるかもしれないけれど、うまくいく保証も無い。
ということで、その通りにやってみた。普通なら、何かしら抵抗を受けるはずなのだが、最後まで何も感じずに終わった。俺の防御力が高過ぎてダメージが通らなかったか、俺を投擲したリーネさん辺りが狙われて、回避しまくっていたのだろう。
こちらは、リーネ…
鑑定した結果、話に聞いていた隠されたモンスターだった。「精神」がびっくりするくらい高いので、魔法を使う魚ということは簡単に予想が付く。
そして、水中戦になることは、戦う前に聞いていたので準備は問題無い。だが、まさか、ダンジョン内から水中に放り出されるとは思っていなかった。
とりあえず、ユーさんを投擲で投げつけてみた。こうしないと、彼が聖魚に触れることができないと思ったからだ。あと、聖魚の魔法がユーさんに向いてくれたら、周りが安全だと思った。
結果、無事にユーさんは聖魚に張り付くことに成功し、そこからいつもの理不尽さでボッコボコにしていた。聖魚ルトーは、光柱や光線など、威力の高い攻撃魔法を使用していたのだが、ユーさんはそれを正面から全て無効にしていた。
たぶん、水中だから感覚が希薄になっていて、しかも光属性の魔法であるため、攻撃されたことを認識できていないのだろう。だからと言って、魔法を無視してボッコボコにするなんて、常人の所業ではないのだが…
しかし、今の私はそれほど驚かなかった。いや、慣れてしまった、というのが正しいだろう。なぜならば、この前の超巨大悪魔をボッコボコにしていた時の方が理不尽だったのだから。
「聖魚ルトーを倒した。」
「S4 エクストラボスの討伐に成功しました。特別報酬が授与されます。」
「ダンジョン ナザ島の地下迷宮 最下層に移動しました。」