13-05 S4 ナザ島誕生の真実と報酬

改定:

本文

聖魚ルトーをレベルの暴力で倒した。だが、こればっかりは水中戦なので仕方ないと思う。一応、呼吸時間を延長するポーション等は飲んであったが、長期戦をするのは、防御力の点でアヤが、水守が無いという意味でリーネさんが危険だったからだ。

あと、今回は投擲されたことで距離を詰められたが、それが無かったら、ほぼ詰んでいたと思う。能力的に接近戦を避けるであろうルトーが逃げる魚だとすると、俺の敏捷では追いつくことができないからだ。ブレイオやラフィも、まだ高速遊泳や水中活動を持っていないので、ルトー狩りを任せられるか?というと怪しかった。

え?そもそも、盲人が水中の魚を追いかけられるわけないだろう?だって。それは正しいが、俺にはナビーがいる。視界制限はあるが、とりあえず泳ぎ回りながらナビーに先導してもらえば、追いかけることはできたと思う。ソルットのビーチでも、そうやって海中を泳いでいたからな。

それはそうと、エクストラボスを倒したのに、俺たちはダンジョンの最下層に戻ってきていた。ついでに、ダンジョンボス討伐のアナウンスも無かった。ということは…

「聖魚の化身を打ち倒した者よ。その強さ、見事なり。」

「えっと、あんたが光天使ナザか?」

「その通り。我は、聖魚ルトーと共に、この地の循環を司る者。そして、我らを超える強気光を祝す者を、南の地へ送り出す者。」

正面から男声と女声の入れ混じったような声がした。この声は動画でも聞いたことのある、光天使ナザで間違いないようだ。

「ユー。私に話をさせて欲しい。」

「だそうだ。俺も知りたいことがあるんで、付き合って欲しいぞ。」

俺は、カイムさんに譲ることにした。とはいえ、ボス戦になる可能性はあるので、警戒はしておこう。

「直接、話がしたい。この迷宮と浮島との関係、そして、聖魚と共に、この地を維持している目的を知りたい。現世では、聖魚に関する伝承の大部分が失われている。」

「この地に眠るのは記憶。我らは、これに従い、迷宮に光を満たし、旅人を招き、力を試しているのみ。外については知る所ではない。」

「つまりあなたは、この迷宮をただ維持することのみを指令されたので、それを実行しているのみであると。」

「我らは、天の意思に従いそれを成す存在。それ以上の干渉は、天の理に反する。」

「では、聖魚もまた、同じ理によって動いているのだろうか?」

「聖魚と我らがこの地で共存していることが、その証明。」

結局の所、ナザ島や迷宮が生まれた原因は、その当時の記憶が失われている今となってはわからないようだ。真理のテキストからも、聖魚は、迷宮のエネルギー源にはなれど、迷宮が生まれた根本的な要因ではないように読める。

「光の自愛を受けた聖魚は、もう寿命を全うしているぞ。死後であっても、その力は残っているというのか?」

「この地は記憶の地。記憶の中で聖魚が生きている限り、終わりは訪れない。」

「記憶の中だから、輪廻、いや、例えば運命神タラスタも関係ない… といった所か?」

「現世から記憶が失われていると答えたな。ならば、それは輪廻を終えていると同義であろう。」

「なるほど。理解が深まった。対話に応じてくれたこと、感謝する。」

やはり、ダンジョンというのは、記憶の入れ混じった世界であり、一部を覗いて考察を深めることはあれど、現実のあれこれとは切り離して考えた方が良さそうだ。そういうのは、研究者や検証班がやれば良いだろう。

あと、ここが南の地だから、生命神アーレムの力が強く、運命神タラスタの力が弱い!なんてことは考えなくて良さそうだ。そんな状態だったら、南が生物で溢れて大変なことになるだろう。

「冒険者ユーよ。既に、その力は我を超えている。故に、我と戦い力を示す必要は無い。この地の踏破を認めよう。」

おっと。歴史の話から、本編に戻ってきたようだ。一応フィールドボスなんだが、この辺の判断をしてくるんだな。

「S4 フィールドボス 地に眠る光天使ナザ との交渉に成功しました。 S5 のマップが解放されます。」

「ダンジョンボス 地に眠る光天使ナザ との交渉に成功しました。」

「ダンジョン ナザ島の地下迷宮 の攻略に成功しました。報酬を選択して下さい。」

「特定の条件を満たしたため、 地に眠る光天使ナザ の討伐報酬に対応する報酬が授与されました。」

どうやら、エクストラ討伐のために戦闘を回避した場合、ボスドロップの代わりに何かもらえるようだ。なお、通常のボスドロップは、光属性の魔石や鉱石、魔布、あと、「天使の息粉」や「妖精の羽」などの素材らしい。

それはそうと、エクストラ討伐報酬と、ダンジョン踏破報酬を確認してみよう。

聖なる光の石:

種別: 素材・鉱石

説明: 長い年月をかけて、清き光の力に晒され、変質した功績。邪を払う力を祝している。

品質: 6/10

光の心の技能書:

種別: 技能書

説明: 使用することで、技能「光の心」を習得できる。

聖銀の剣+1:

種別: 武器・剣

説明: 魔法金属性の剣。強い聖の力を祝しており、実態を持たないものも切り裂くことができる。ダンジョン内で強い光の力に晒されたことで、より鋭く、より濃い魔力を祝した。

性能: 攻撃力40(斬), 耐久値: 680/680, 光属性, 魔力制御補助(中), 霊体無効, 霊特攻

品質: 6/10

聖銀の槍+1:

種別: 武器・槍

説明: 魔法金属性の槍。強い聖の力を祝しており、実態を持たないものも貫くことができる。ダンジョン内で強い光の力に晒された槍は、たとえ深い海の底でもその鋭さを衰えさせないだろう。

性能: 攻撃力40(突), 耐久値: 680/680, 光属性, 魔力制御補助(中), 霊体無効, 水中戦闘補助(中)

品質: 6/10

水守の指輪:

種別: 防具・アクセサリー

説明: 魔法のアクセサリーの一つ。持ち主の水中での活動を補助する。また、魔力を込めることで、その力を強められる。

性能: 水中活動補助(小)、呼吸時間延長(小)、水属性耐性(小)、魔法(水守)

品質: 6/10

聖魚ルトーの討伐報酬は、上記の5種類であり、俺たちはそれぞれ、以下のアイテムを受け取った。

  • ユー: 聖なる光の石, 聖銀の槍+1
  • アヤ: 聖なる光の石, 水守の指輪
  • リーネ: 聖銀の剣+1, 光の心の技能書
  • カイム: 聖なる光の石, 光の心の技能書

「光の心」は、第10マップで習得できる特殊な技能であり、効能としては「海の心」や「山の心」などと同じ、能力や耐性の微上昇だ。

それにしても聖銀の槍か。使い道が無いし、知り合いに槍使いもいない。イベントでフレンド登録したリョーマ辺りに聞いてみて、それでダメなら強化素材としよう。

続いて、俺に提示されたダンジョン踏破報酬だが、「魔法(光)の技能書」、「浮遊照球」、「解放の証(視覚)」、「天使の聖水」だった。なので、「天使の聖水」を取得した。

「浮遊照球」は、使用者の周囲を浮遊して勝手に追尾する松明だ。使用者のMPで起動する代わりに繰り返し使用可能なことと、モンスターに攻撃されても復活する特性があるため、暗い道を歩く冒険者には重宝されている。だが、俺には縁が無いだろう。

それと、「解放の証(視覚)」は、以前ナビーに浸かったものだ。もし、今回使うと、距離の制限が緩和されるので、ブレイオやラフィがいなかったら一考の余地はあったかもしれない。ただ、観光の用途でしか使っていないので、「他の報酬が微妙」という理由が無ければ選ばないのは確かだ。

そして、俺が選んだ本命「天使の聖水」。不死特攻があり、レベル20くらいまでのモンスターなら、それがボスモンスターでも一撃で葬るほどのびっくりな聖水だ。検証班による検証結果では、第9マップに登場する、レベル65のボスでも、HPを40%近く削り取れるそうだ。

しかし、俺の使い道は、これを飲むことだ。というのも、これを飲むことが、僧侶系技能を特級以上に至らせるための条件の一つだからだ。

一応、救済処置として、第8マップにある職業限定クエストをクリアできれば、この聖水を飲むことができるらしい。だが、そのクエストの難易度は「正気を疑うほどの厳しさ」とされているため、まとめウィキでは「ダンジョンの報酬で天使の聖水が出たら選択すること」が推奨されていた。なお、その「正気を疑うクエスト」とは、以下の内容だ。

  • HPと装備耐久値に秒間2%の固定ダメージを受けるフィールドで、レベル50のボスモンスターを倒す。
  • 戦闘開始から15分間、ボスモンスターには一切の攻撃、デバフ等が効かない。ノックバックもしないし、相手の技、魔法も妨害できない。
  • 上級の槍技、及び、光、闇属性魔法を使ってくる。物理も魔法も分け隔てなく使う。
  • 上記の制限があるため、まともに戦闘できるようになるまでに、上級クラスの攻撃に耐えられる装備品を、少なくとも20セットは破壊される。
  • 回復魔法を使ってくる。さすがに回復量は人類と同じ水準だが、連発されるとボスのHP5%くらいは戻される、とのこと。

そんなヤバいクエストを回避できるのだ。他の選択肢が微妙だったこともあり、俺は即決したのだった。

なお、後日知ったことだが、俺が調べた時には情報が無かっただけで、今は、「僧侶をしっかり育ててパーティで挑めば普通に突破できるクエスト」であるらしい。というのも、事前に「30分間、耐久値の減少を防ぐ」祝福をかけられる場所が見つかったからだ。